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がほ
と
出した
時、……
翁の
赭ら
顏は、
其のまゝ
溶けさうに
俯向いて、
目をしばたゝいた、と
見ると、
唇がぶる/\と
震へたのである。
『
日出雄さん、
餘りやると
胃を
損じますよ。』と
氣遣顏の
私さへ、
其生臭い
肉を
口中充滿に
頬張つて
居つたのである。
今の
身の
上には
憎くし
剛慾もの
事情あくまで
知りぬきながら
知らず
顏の
烟草ふか/\
身に
過りあればこそ
疊に
額ほり
埋めて
歎願も
吹出だす
烟の
輪と
消して
彼等は
自己の
心のある
部分に、
人に
見えない
結核性の
恐ろしいものが
潛んでゐるのを、
仄かに
自覺しながら、わざと
知らぬ
顏に
互と
向き
合つて
年を
過した。
『百
年てさうも
行かんでせうが、二十
年や
其邊は
生き
延びますよ。』ハヾトフは
慰め
顏。『
何んでも
有りませんさ、なあ
同僚。
悲觀ももう
大抵になさるが
可いですぞ。』
夢かな‥‥と
思ふと、
木の
空洞を
叩くやうな
兵士達の
鈍い
靴音が
耳に
著いた。——
歩いてるんだな‥‥と
思ふと、
何時の
間にか
知らない
女の
笑ひ
顏が
眼の
前にはつきり
見えたりした。
例へば、
曾て
日本を「
東洋の
英國」などとほこり
顏にとなへたことがある。
そのうちに一
羽空から
舞ひ
降りたかと
思ふと、
何十
羽といふ
燕が一
時に
村へ
降りて
來ます。そして
互に
嬉しさうな
聲で
鳴き
合つて、
舊い
馴染の
軒塲を
尋ね
顏に、
思ひ/\に
分れて
飛んで
行きます。
振ひ宜しく申し爲し給ふべしと何か
耳語ければ左仲は
微笑此書面は貴殿の認められしことなれば我れ能々
腹に
納めて持參致し某し日頃の
能辯を以て天晴
上首尾に
仕課せ申すべしとて獨り
誇り
顏に支度を
此時ロミオ
物思ひ
顏にて一
方へ
出る。
「へい、
何方で、」と
云ふのが、
赤ら
顏の
髯もじやだが、
莞爾と
齒を
見せた、
人のよささうな
親仁が
嬉しく
うす
氣味わるやにたにたの
笑ひ
顏、
坂本へ
出ては
用心し
給へ
千住がへりの
青物車にお
足元あぶなし、三
島樣の
角までは
氣違ひ
街道、
御顏のしまり
何れも
緩るみて
窓際の
紫檀の
卓を
挾んで
腰を
降し、お
互に
疲れ
顏でぼんやり
煙草をふかしてゐると、
女が
型通り
瓜子と
茶を
運んでくる。
一人は
丸顏、
一人は
瓜實顏、
其に
口紅赤く、
耳環の
翡翠が
青い。
見よ、
硝煙の
裡をぬけ。
月の
光を
耻ぢ
顏に。
然ればよなと
思ひながら、
殊更に
知らず
顏粧ひつゝ、
主人は
御婦人なるにや、
扨は
何某殿の
未亡人とか、さらずは
妾なんどいふ
人か、
別して
與へられたる
邸宅かと
問へば
白木綿の
布子、
襟が
黄色にヤケたのに、
單衣らしい、
同じ
白の
襦袢を
襲ね、
石持で、やうかん
色の
黒木綿の
羽織を
幅廣に、ぶわりと
被つて、
胸へ
頭陀袋を
掛けた、
鼻の
隆い、
赭ら
顏で
知り
顏して
欲しきにもあらず
詞かけられては
身の
置場もなけれどそれにも
何か
色のあるもの
今までは、
春雨に、
春雨にしよぼと
濡れたもよいものを、
夏はなほと、はら/\はらと
降りかゝるを、
我ながらサテ
情知り
顏の
袖にうけて、
綽々として
餘裕ありし
傘とともに
肩をすぼめ
物思ひ
顏の
若者が
襟のあたり
冷いやりとしてハツと
振拂へば
半面を
射る
瓦斯燈の
光蒼白し
裏の
田圃を、
山の
裾から、
藜の
杖を
支いて、
畝路づたひに、
私が
心細い
空の
雲を
見て
居ります、
離座敷へ、のそ/\と
入つて
來ました、
髯の
白い、
赤ら
顏の、
脊の
高い、
茶色の
被布を
着て
取たてゝ
何も
斯う
自分ばかり
美事な
寶を
持つて
居るやうに
誇り
顏に
申すことの
可笑しいをお
笑ひに
成りましやう、だから
私は
口に
出して
其樣な
仰山らしい
事は
言ひませぬけれど
若い
人の、
窶れ
顏に、
血の
色が
颯と
上つて、——
國々島々、
方々が、いづれもお
分りのないとある、
唯一句、
不思議な、
短かい、
鸚鵡の
聲と
申すのを、
私が
先へ
申して
見ませう……もしや?……
お
前はまだ
寐ないのかえ、と
障子の
外から
聲をかけて、
奧さまずつと
入り
玉へば、
室内なる
男は
讀書の
腦を
驚かされて、
思ひがけぬやうな
惘れ
顏をかしう、
奧さま
笑ふて
立ち
玉へり。
人に
其の
生命あることを
知らせ
顏に
裝つた。
御新造は
驚きたるやうの
惘れ
顏して、
夫れはまあ
何の
事やら、
成ほどお
前が
伯父さんの
病氣、つゞいて
借金の
話しも
聞ましたが、
今が
今私しの
宅から
立換へようとは
言はなかつた
筈
もう
逢つては
下さらぬかなどヽ
敷居の
際にすり
寄つてお
園の
泣けるも
知らず、
學士はその
時つと
起つて、
今日はお
名殘なるに
切めては
笑ひ
顏でも
見せて
給はれとさらり
障子を
明くれば
ちらり
姿は
夏の
簾ごし
憎くや
誰れゆゑ
惜しみてか
藥師さまの
御縁日にそヾろあるきをするでもなく、
人まち
顏の
立姿かどに
拜みし
事もなけれど
美人と
言ふ
名この
近傍にかくれなしと
聞くは
見ぬやうに
見て
知らず
顏を
信如のつくるに、ゑゝ
例の
通りの
心根と
遣る
瀬なき
思ひを
眼に
集めて、
少し
涙の
恨み
顏、
何を
憎んで
其やうに
無情そぶりは
見せらるゝ、
言ひたい
事は
此方にあるを
哀れ
手向の
花一
枝に千
年のちぎり
萬年の
情をつくして、
誰れに
操の
身はひとり
住、あたら
美形を
月花にそむけて、
世は
何時ぞとも
知らず
顏に、
繰るや
珠數の
緒の
引かれては
御佛輪廻にまよひぬべし
假令身にかへ
命にかへても
盡くし
參らする
心なるを、よしなき
御遠慮はお
置き
下されたしと
恨み
顏なり、これ
程までに
思ひくるゝ、
其心知らぬにも
有らぬを、この
頃の
不愛想我が
心の
悶ゆるまゝに