どく)” の例文
平生へいぜいからあざけるものはあざけるが、心優こゝろやさしい衣絵きぬゑさんは、それでもどくがつて、存分ぞんぶんかしてむやうにとつた厚情こゝろざしなのであつた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
少年しょうねんどくおもって、さかのぼるときに、そのくるまあとしてやりました。するとくるまうえから、ちいさないしころが一つころちました。
石をのせた車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし段々だんだん落着おちつくにしたがって、さすがにミハイル、アウエリヤヌイチにたいしてはどくで、さだめし恥入はじいっていることだろうとおもえば。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからまたどく』としるしてあるびんから澤山たくさんめば、それが屹度きつとおそかれはやかれからだがいになるものだとふことをけつしてわすれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
いました。おばあさんはこれこれの目にあったとはなして、「ああもう、こりごりだ。」といますと、おじいさんはどくそうに
舌切りすずめ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
パリス いづれも名譽めいよ家柄いへがらであらせらるゝに、ひさしう確執なかたがひをなされたはおどくでござった。ときに、吾等われら申入まうしいれたこと御返答ごへんたふは?
宗助そうすけこの可憐かれん自白じはくなぐさめていか分別ふんべつあまつて當惑たうわくしてゐたうちにも、御米およねたいしてはなはどくだといふおもひ非常ひじやうたかまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
とうさんが石垣いしがきそばとほたびに、蛇苺へびいちご左樣さうつてはとうさんをさそひました。蛇苺はびいちごどくだとひます。それをとうさんもいてつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
とうなりながら、むね弦音つるおとを鳴らせ、口もきかずにうでばかりさすっているようすは、はたからみてもなんとも気のどくらしかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不運ふうんにもかれ誘惑いうわくされたどくをんなだともおもへるのであつたが、しかし恋愛れんあい成立せいりつについては、かれくはしいことらなかつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
花薄荷はなはくか双鸞菊とりかぶと風鈴草ふうりんさうどくの薄い、浮れやうの足りないほかの花よりも、おまへたちのはうが、わたしはすきだ。ほろんだ花よ、むかしの花よ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「あれだ。おもしれえはどくだぜ。千きちいもうとのおせんをえさにして、若旦那わかだんなから、二十五りょうという大金たいきんをせしめやがったんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それで、ほうぼう姫のからだをしらべてみますと、どくくしが見つかりましたので、それをひきぬきますと、すぐに姫は息をふきかえしました。
そなたもわかいのに歿なくなって、まことにどくなことであるが、なかはすべて老少不定ろうしょうふじょう寿命じゅみょうばかりはんとも致方いたしかたがない。
神楽坂上かぐらざかうえ御箪笥町おたんすまちまでやっておくれ。あの、ほら、南蔵院なんぞういんさまの前だよ。長丁場でどくだけれども南鐐なんりょうでいいかえ」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この至情しゞやうをあざけるひとは、百萬年まんねんも千萬年まんねんきるがい、御氣おきどくながら地球ちきうかはたちま諸君しよくんむべくつてる、あわのかたまり先生せんせい諸君しよくん
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
おかみさんはうしろ姿すがたどくづきながら、ちょっと考えて、勘定書かんじょうがきをひょいとぼんの上にのせ、きゃくのへやにはいっていった。
落付思ひ定めて歸らるべしヤヨ氣のどくなる病氣ぞと長庵更に取合とりあはねば千太郎は其儘にもどるにも戻られず進退しんたい爰ぞと覺悟を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
何處どこ姉樣あねさまからお手紙てがみやうぞ、眞赤まつかうそをと我家わがや見返みかへられて、何事なにごと御存ごぞんじなしによいおかほをしてひまくださる勿躰もつたいなさ、あのやうなどく
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
(いいえ。さっきのいずみあらいますから、下駄げたをおりして。)老人は新らしい山桐やまぎりの下駄とも一つ縄緒なわおくりの木下駄を気のどくそうに一つもって来た。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
勘次かんじさんそんでもえんなよ、どくだつちんだから、おれ折角せつかくべつにしてたんだから」おしなすこおこけていつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私は、お前さんを、ほんとうに気のどくだと思っていますよ。けれどもお前さん、私が、しじゅうのんきにくらしているのだと、思っちゃあこまります。
何うかして其の全ての考を引ツくるむでゐるどくガスさへ消えて了ツたならば、自ら立派な名案が出て來るやうに思ふ。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
「こんな夜に働かせておくのはどくだ。それにあの男は、おとなしい。明日あしたはもうあの仕事をやめさせよう。」
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
これもやはり東京人の僕には妙にどくな言葉だった。しかし彼はいつのにか元気らしい顔色かおいろに返り、彼の絶えず愛読している日本文学の話などをし出した。
彼 第二 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
で、かれはムキになればなるだけ教練けうれん武術ぶじゆつ失敗しつぱいし、上官達じやうくわんたちしかりつけられ、戰友達せんいうたちにはなぶりものにされるのだつた。——どくだな‥‥と、おもふことがわたし度々たび/\あつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そのとき、まだくちのこつていたどく水中すいちゅうへしたたりおちたために、金魚きんぎょんだのだとおもわれる。しかし、問題もんだいはこの毒殺死体どくさつしたいだつた。だんじてまきぞえをくつた金魚きんぎょではない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
かずらざる無學むがくひとには、一時いちじおどろかすの不便ふべんあらん文盲人もんまうじん不便ふべんどくながらかへりみるにいとまあらず。其便不便そのべんふべんしばらさしをき、かく日輪にちりんもとなり、つきつきものなり。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
かつはその可哀あわれな境遇をどくと思うのとのために、これもまたいろいろに親切にしてやる。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其の一〇一端詞はしことばに、高野たかのの奥の院へまゐる道に、玉川といふ河の水上みなかみどく虫おほかりければ、此の流を飲むまじきよしをしめしおきて後よみはべりける、とことわらせ給へば
子あるまゝを塩引にしたるを子籠ここもりといふ、古へのすはよりといひしも是ならんか。本草にさけあぢはひうま微温やはらかどくなし、主治きゝみちうちあたゝさかんにす、多くくらへばたんおこすといへり。
そして、それがなんとなくかれたいしてどくな、彼女かれの一しやうつうじてすまないことのやうに、おもはれるのであつた。まちは、もはや不自由ふじいうあしわるい、自分じぶん肉體からだについてはあきらめてゐる。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
夫人ふじんはいひしぶつたが、どくさうに病人びやうにんていふのだつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
あなあはれ、明日あすも亦にぶき血のどくをや吐かむ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
にうんとちからむれば、さしものどく
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
じつにまずいね、どくだが。」
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
どくなものならなんでまあ
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
どくあるきばみてゆく
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
どくとげぬくもおそからん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
どくガスだん
豆潜水艇の行方 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そうして、そのさけみずには、ことごとくどくれておきました。大将たいしょうは、てきがきっとはららして、のどをかわかしてくるにちがいない。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
がないものだから、ついおそくなりまして御氣おきどくです。すぐ御膳ごぜんいたしませう。しかしこんなところだからげるものがなくつてこまります。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いまや、お慈悲じひ、お慈悲じひこゑれて、蒋生しやうせい手放てばなしに、わあと泣出なきだし、なみだあめごとくだるとけば、どくにもまたあはれにる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ヂュリ ほんにどくぢゃ、氣分きぶんわるうてはなァ。したが、乳母うば乳母うばや、乳母うばいなう、何卒どうぞうてたも、戀人こひゞとなん被言おッしゃった?
「まあ、それはおどくですね。ではそのわりに、これをげましょう。のどがかわいたでしょう、おがりといって、げておくれ。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
どくだが、またあらためて、ってやっておもらいもうすより、仕方しかたがないじゃなかろうかと、じつ心配しんぱいしているわけだが。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
『さア、それは鹽梅あんばいだ!』とあいちやんは獨語ひとりごとひました、女王樣ぢよわうさま宣告せんこくされた死刑しけい人々ひと/″\を、如何いかにもどくおもつてたところでしたから。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その扇縄の区域へ、裏切うらぎり者がひそかにどくをしずめたので、夕方の兵糧時ひょうろうどきに、すべての者の腹中ふくちゅうへ、おそるべき酔魚草すいぎょそう毒水どくすいがめぐっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したためんとするに先よりかたはらにさけ呑居のみゐたりし後藤半四郎は長八が話しを聞夫は何にしてもどくなる事なり併し其金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
らずひきしかばなどたまるべき微塵みぢんになりてうらみをのこしぬぢやうさま御覽ごらんじつけてどくがりたまこのそこねたるは我身わがみらせよかはりにはあたらしきのを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)