やなぎ)” の例文
唯吉たゞきちは、襟許えりもとから、手足てあし身體中からだぢうやなぎで、さら/\とくすぐられたやうに、他愛たわいなく、むず/\したので、ぶる/\とかたゆすつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
六条ろくじょう 千春ちはる 平河ひらかわみね子 辰巳たつみ 鈴子すずこ 歌島かしま 定子さだこ やなぎ ちどり 小林こばやし 翠子すいこ 香川かがわ 桃代ももよ 三条さんじょう 健子たけこ 海原かいばら真帆子まほこ くれない 黄世子きよこ
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
柳橋やなぎばしに柳なきは既に柳北りゅうほく先生『柳橋新誌りゅうきょうしんし』に「橋以柳為名而不一株之柳はしやなぎもっすに、一株いっしゅやなぎえず〕」
末男すゑを子供こどもきながら、まちと一しよ銀座ぎんざあかるい飾窓かざりまどまへつて、ほしえる蒼空あをそらに、すきとほるやうにえるやなぎつめた。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
すこかたむきかけた初秋はつあきが、じり/\二人ふたりけたのを記憶きおくしてゐた。御米およねかさしたまゝ、それほどすゞしくもないやなぎしたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これを草木にたとうれば、みどりやなぎくれないの花と現れる世の変化も思想なる根より起こるものであるから、なにはさておき根の培養ばいようおこたれない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
やなぎのつじの鳥居とりいの下に立ち、竹生島神伝ちくぶしましんでん魔独楽まごま! 水をらす雨乞独楽あまごいごま! そうさけんで声をからし、半時はんときばかり人をあつめて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つばめは、あきすえまで、毎日まいにちそのやなぎのあたりをんで、ないていました。けれど、さむくなったときに、どこへかんでいってしまいました。
木と鳥になった姉妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此うなツては、幾らえらい藝術家も、やなぎ飛付とびつかうとするかはづにもおとる………幾ら飛付かうとして躍起やツきになツたからと謂ツて取付くことが出來ない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
らへて郡長ぐんちやうせがれづらが些少いさゝかおんはなにかけての無理難題むりなんだいやりかへしてりたけれど女子をなご左樣さうもならずやなぎにうけるを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「我がかげの我をおひけりふゆつき」と人之をうたがふ時はやなぎかゝ紙鳶たこ幽靈いうれいかとおもひ石地藏いしぢざう追剥おひはぎかとおどろくがごとし然ば大橋文右衞門の女房お政はをつとの身の上を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
山田やまだ読売新聞よみうりしんぶんへは大分だいぶ寄書きしよしてました、わたしは天にも地にもたゞ一度いちど頴才新誌えいさいしんしふのにやなぎえいじた七言絶句しちごんぜつくを出した事が有るが、其外そのほかにはなにも無い
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
四季刻々うつりかわる景色が如何様どんなに面白く珍らしく見えたであろう! 背戸せどやなぎ緑の糸をかけそめて枯葦の間からぽつぽつ薄紫の芽がふく頃となれば
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
この周囲の泥沙でいさやなぎの多いところで、復一は金魚に卵を産みつけさせる柳のひげ根をりに来てここを発見した。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
赭顔あからがおの快活らしい院長は、消毒衣の太った腹の前で、両手をやなぎの様に、シナシナと二三度振って見せて、ニコニコ笑いながら病室を出て行ってしまった。
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
もしかの女が私はやなぎの娘ですからたくへ届けてくださいといったなら、おかみさんはふた返事へんじで応ずるのであった、ところが文子にはそれができなかった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
太平洋沿岸の旅を終わって、日本へ帰る便船を待ちながらP街の『やなぎホテル』に滞在していたわたしは、ある早春の午後、その公園の疎林の中を歩いていた。
謎の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
現に仏画師はダアワのことを蓮華れんげ夫人と渾名あだなしている。実際川ばたの枝垂しだやなぎしたのみ児をいている妻の姿は円光えんこうを負っているといわなければならぬ。
第四の夫から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そのかたちにも種々しゆ/″\かはつたのがあつて、なががたちやなぎかたちのようなものや、三角形さんかくけいのものや、またふたつのあしのついたもの、そのあしながくなつてゐるもの
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
すなはち「墨染櫻すみぞめのさくら」のさくら「三十三間堂げんだう」のやなぎ、などそのれいで、此等これらすこしもこわくなく、きはめて優美いうびなものである。
妖怪研究 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
おかあさんは海岸のやなぎの木陰に足をとめましたが、その柳の幹と枝とにはさまったが、風のまにまに柳がなびくにつれて、ゆれ動いて小鳥らをゆめにさそいます。
煙草たばこの煙りを口へ吸って、それを口から吐き出して、やなぎ蹴毬けまりとか、仮名かな文字とか、輪廓だけの龍虎りゅうことかそういうものを空へかいて、見物へ見せる芸なのである。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
やなぎまゆかすかにうごいて、そつとわたくしむかひ『なにかやつてませうか。』といふのはうでおぼえのあるのであらう
運動場の見わたせる土手どてやなぎの下に立つと、竹一は見あたらず、まっさきにとらえたのは松江だった。松江はなぜかひとり校舎のかべにもたれてしょんぼりしていた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
駅の前には、白く芽立った大きなやなぎの木があった。柳の木の向うに、すすよごれた旅館が二三げんならんでいた。町の上には大きい綿雲が飛んで、看板に魚の絵が多かった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
が、きょうびはあの飄逸な万橘の唄も、我らの欣喜渇仰するほどこの頃の寄席のお客には迎えられず春風やなぎの田舎唄に一蹴されて、到底、そのかみの意気だにないという。
寄席行灯 (新字新仮名) / 正岡容(著)
一方のやなぎ派には大将の談洲楼燕枝、副将の柳枝、柳橋、小さん(禽語楼)、音曲の古今亭今輔、一時円朝の塁をますといわれた桂文楽など、巨匠輩出して落語界の全盛期
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
をちのやなぎといふのも、はっきりと、何本なんぼんあるとも、どのくらゐ距離きよりにあるともいはれないで、まづほのかないろあひで、幾本いくほんならんでゐるといふかんじをおこさせるためなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
「ダゴダア、ダゴダア、ダゴダア。」嘉ッコはもう走ってかきの出口のやなぎの木を見ていました。
十月の末 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いけはたやなぎの木の下にうずくまって、落ちた木片きぎれで地に何か字を書きながら、伊藤は続けた。
地震ぢしんおこさうといふちから大陸たいりくまた其周圍そのしゆういおいては次第しだい蓄積ちくせきすることをゆるされても、ふか海底かいていとく地球ちきゆう内部ないぶおいては、たとひかようなちからはたらくことがあつても、かぜやなぎたとひとほ
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
うめいて、紫色むらさきいろ雑木林ざふきばやしこずゑが、湿味うるみつたあをそらにスク/\けてえ、やなぎがまだあら初東風はつこちなやまされて時分じぶんは、むやみと三きやく持出もちだして、郊外かうぐわい景色けしきあさつてあるくのであるが
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「それから、やなぎのイスやテエブルを一くみと、ちやだんすのいいのをしいわね。」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
落語界に於いて三遊亭円朝に対峙したのは柳亭燕枝りゅうていえんしである。円朝一派を三遊さんゆう派といい、燕枝一派をやなぎ派と称し、明治の落語界は殆んどこの二派によって占領されているような観があった。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
吉野口で乗りかえて、吉野駅まではガタガタの軽便鉄道けいべんてつどうがあったが、それから先は吉野川に沿うた街道かいどうを徒歩で出かけた。万葉集にある六田むつだよど、———やなぎわたしのあたりで道は二つに分れる。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かわらのおもてに、あとからあとからまれて秋雨あきさめの、ときおり、となりいえからんでやなぎ落葉おちばを、けるようにらしてえるのが、なに近頃ちかごろはやりはじめた飛絣とびがすりのようにうつった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
つばめとまるただち揺れ立つやなぎの枝つかのま水につきつつかへる (五〇頁)
文庫版『雀の卵』覚書 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのころには河岸かしやなぎして、やさしいえだかぜなびかせはじめます。それからだん/\に、ふゆあひだすっかりおとしてゐた落葉樹らくようじゆ一齋いつせいに、ぽか/\したびてみどり若芽わかめしはじめます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たひらなるくがにかたまり青きをばやなぎかとおもひつつ居る
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝風に若菜売る児の声すなり朱雀すざくやなぎまゆいそぐらむ
人々に答ふ (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
やなぎ散り清水しみずかれ石ところところ
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
の——やなぎ——ひめ落髮おちがみ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
やなぎのひと葉
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
やなぎ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
やなぎみどりかして、障子しやうじかみあたらしくしろいが、あきちかいから、やぶれてすゝけたのを貼替はりかへたので、新規しんき出來できみせではない。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その一方の土手どてむこう、そとぼりをへだてた城外じょうがいやなぎのかげに、耳に手をかざして、館のなかの騒音そうおんをジッといている者がある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
宗助そうすけしろすぢふちつたむらさきかさいろと、まだらないやなぎいろを、一歩いつぽ遠退とほのいてながはしたこと記憶きおくしてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
井戸は江戸時代にあつては三宅坂側みやけざかそばさくら清水谷しみづだにやなぎ湯島ゆしま天神てんじん御福おふくの如き、古来江戸名所のうちに数へられたものが多かつたが
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
まちてから、田舎道いなかみちにさしかかったところに居酒屋いざかやがありました。そこまでくると、おとこは、うしまえやなぎにつないで、みせなかへはいりました。
ある男と牛の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
弦吾は素早く「やなぎちどり」と名前をプログラムから千切ちぎりとって、隣りにピタリと寄り添っているQZ19同志帆立介次ほたてかいじのうちに、ねじこんだ。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)