夫人ふじん)” の例文
あるときは、隣室りんしつてゐるKの夫人ふじんゆすおこされてましたが、彼女かのぢよにはそれがたんゆめとばかり、すことができなかつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
言葉ことばやさしく愛兒あいじ房々ふさ/″\せる頭髮かみのけたまのやうなるほゝをすりせて、餘念よねんもなく物語ものがたる、これが夫人ふじんめには、唯一ゆいいつなぐさみであらう。
書斎しょさいのドアは、ほんのすこしひらいている。まっさおな顔でついてきた夫人ふじんをうしろにかばいながら、牧師ぼくしは、そっとのぞきこんだ。
裾野すそのけむりながなびき、小松原こまつばらもやひろながれて、夕暮ゆふぐれまくさら富士山ふじさんひらとき白妙しろたへあふぐなる前髮まへがみきよ夫人ふじんあり。ひぢかるまどる。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さてあのおしとやかなふうをした歌い雌犬めすいぬはドルス夫人ふじんです。あの子はイギリスだねで、名前はあの子のやさしい気だてにちなんだものだ。
騎兵大隊長きへいだいたいちやう夫人ふじん變者かはりものがあつて、いつでも士官しくわんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゆう案内者あんないしやもなく騎馬きばく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あいちやんはたゞほかにはなんにもかんがへつきませんでした、『それは公爵夫人こうしやくふじん受持うけもちよ、ことなら夫人ふじんたづねたはういわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
S、H京都けうとからたT連中れんちうが、どこかでつてゐるといふので、夫人ふじんなに打合うちあわせをして、すこまえかえつてつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
所のつたへに大なるを時平しへいの塚とし、小なるを時平の夫人ふじんの塚といふ。時平大臣夫婦の塚此地にあるべき由縁いはれなきことは論におよばざる俗説ぞくせつなり。
かりに家庭の事情を打破ツて、結婚したとしてからが、お房が美術家の妻として、また子爵ししやく家の夫人ふじんとして品位ひんゐを保ツて行かれるかどうかといふことが疑問ぎもんである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
叔父御をぢごカピューレット殿どのおなじく夫人ふじんおなじく令孃達むすめごがたうるはしきめひのローザライン。リヸヤ。
こちらの世界せかいてからの私達わたくしたち全然ぜんぜん飲食いんしょくをいたしませぬので、したがってこまかいことはわかりませぬが、ただわたくし守護しゅごしているこのおんな(T夫人ふじん)の平生へいせい様子ようすからかんがえてますと
万屋よろづやに吾を訪ひまし物語ものがたるよりえ夫人ふじん長塚節ながつかたかしのこと
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
だが——夫人ふじんは既に知っていた。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどほんとうに正直なことを言えば、わたしがいちばん深く感じたのは、この夫人ふじんと子どもの、めずらしい親切と愛情あいじょうであった。
……すこしばかり巾着きんちやくからひきだして、夫人ふじんにすゝむべく座布團ざぶとん一枚いちまいこしらへた。……お待遠樣まちどほさま。——これから一寸ちよつとうすどろにるのである。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
騎兵大隊長きへいだいたいちょう夫人ふじん変者かわりものがあって、いつでも士官しかんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゅう案内者あんないしゃもなく騎馬きばく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
『えゝ、無責任むせきにんなる船員せんいん! 卑劣ひれつなる外人くわいじん! 海上かいじやう規則きそくなんためぞ。』と悲憤ひふんうでやくすと、夫人ふじんさびしきかほわたくしむかつた、しづんだこゑ
病人びやうにんはK夫人ふじんかほしたで、小兒こどものやうにあごうなづいてせた。うへはう一束ひとたばにしたかみが、彼女かのぢよを一そう少女せうぢよらしく痛々いた/\しくせた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
牧師ぼくしは、夫人ふじんの言うとおりに、はっきり足音がしているのをきくと、さっとガウンをはおりスリッパをつっかけて部屋へやをでた。
夫人ふじん牢屋らうやる』とつて女王樣ぢよわうさま死刑執行者しけいしつかうしやに、『此處こゝれてまゐれ』そこ死刑執行者しけいしつかうしやごとはしりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
所のつたへに大なるを時平しへいの塚とし、小なるを時平の夫人ふじんの塚といふ。時平大臣夫婦の塚此地にあるべき由縁いはれなきことは論におよばざる俗説ぞくせつなり。
この夫人ふじんうつくしいが、LIがゐたら、これも一きわつであらうことを想像そうぞうしたりしたが、しかし今夜こんやLIのゐないことはかへつて自由じゆうであつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
カピューレット長者ちゃうじゃ寢衣ねまきのまゝにて、そのつまカピューレット夫人ふじんはそれをとゞめつゝ、る。
ところで周三が家庭に於ける立場である。自體じたい彼は子爵ししやく勝見家かつみけに生まれたのでは無い。成程ちゝ子爵ししやくは、彼のちちには違ないが、はは夫人ふじんは違ツたなかだ。彼は父子爵のめかけの]はらに出來た子で、所謂庶子しよしである。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それをミリガン夫人ふじんやアーサに知られることをこのまなかった。それを知られたら、あの人たちはわたしをきらうようになるだろう。
妙齡としごろいたらせたまひなば、あはれ才徳さいとくかねそなはり、希有けう夫人ふじんとならせたまはん。すなはち、ちかごろの流行りうかう良妻賢母りやうさいけんぼにましますべし。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『でも、おまへ!』と公爵夫人こうしやくふじんつて、『何事なにごとでも徳義とくぎつてるのさ、よくをつけて御覽ごらん夫人ふじんほもあいちやんのそば近寄ちかよりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ホールとホール夫人ふじんがおそい昼食ちゅうしょくをとっていると、その部屋へやからいらいらと歩きまわるきゃく足音あしおとがひびき、そのうちにはげしいいかこえとともに
わたくしちうんで船室せんしつかたむかつた。昇降口しようかうぐちのほとり、出逢であひがしらに、下方したからのぼつてたのは、夫人ふじん少年せうねんとであつた。
時平或日あるひ国経くにつねもとえんし、酔興すゐきやうにまぎらして夫人ふじんもらはんといひしを、国経もゑひたれば戯言たはぶれごととおもひてゆるしけり。
西にしそらはいま、みどろなぬまのやうに、まつゆふやけにたゞれてゐた。K夫人ふじんつて西窓にしまどのカーテンをいた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
はなしくと、なんでも韃靼人だったんじんむらに、その夫人ふじんと、土地とち某公爵ぼうこうしゃくとのあいだ小説しょうせつがあったとのことだ、とかと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
調子てうしづいた独唱どくせうが二つばかりつづいた。そしてまえ叙事詩じよじしのやうなものを朗読らうどくした多分たぶん代理大使だいりたいし夫人ふじんだとおもはるゝ婦人ふじん其後そのあとで又舞台ぶたいのうへで朗読らうどくをはじめた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
カピューレット長者ちゃうじゃさきに、おなじく夫人ふじん乳母うばならびに下人げにんかふおついて出る。
「あなたはなにもこわがることはないのよ」とミリガン夫人ふじんやさしく言った。「ここへおいで。あなたの手をわたしの手におきなさい」
博士はかせ旅行たびをしたあとに、交際つきあひぎらひで、籠勝こもりがちな、夫人ふじん留守るすしたいへは、まだよひも、實際じつさいつたなか所在ありかるゝ山家やまがごとき、窓明まどあかり
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
時平或日あるひ国経くにつねもとえんし、酔興すゐきやうにまぎらして夫人ふじんもらはんといひしを、国経もゑひたれば戯言たはぶれごととおもひてゆるしけり。
運河うんがの岸を歩きながら、わたしはたびたびミリガン夫人ふじんと、アーサと、それからかれらの美しい小舟こぶねのことを思い出していた。
そのかくはま、と夫人ふじんとに、紹介状せうかいじやう頂戴ちやうだいして、春葉しゆんえふ二人ふたりかけた。あゝ、この紹介状せうかいじやうなかりせば……おもひだしても、げつそりとはらく。……
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此人の乱行らんぎやうの一ツをいはば、叔父をぢたる大納言国経卿くにつねきやう年老としおい叔母をばたる北の方は年若く業平なりひら孫女まごむすめにて絶世ぜつせい美人びじんなり。時平是に恋々れん/\す、夫人ふじんもまたをつとおいたるをきらふの心あり。
「ぼくたちはミリガン夫人ふじんさがしながら、あの人たちにも会える。運河うんがをのぼって行きながらとちゅう止まってリーズをたずねることができる」
振離ふりはなすと、ゆかまでちず、ちうではらりと、かげみだして、黒棚くろだなに、バツとる、と驚駭おどろき退すさつて、夫人ふじんがひたと遁構にげがまへのひらきもたれたときであつた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此人の乱行らんぎやうの一ツをいはば、叔父をぢたる大納言国経卿くにつねきやう年老としおい叔母をばたる北の方は年若く業平なりひら孫女まごむすめにて絶世ぜつせい美人びじんなり。時平是に恋々れん/\す、夫人ふじんもまたをつとおいたるをきらふの心あり。
夫人ふじん、あなたの御病気はそんな手軽いのではありません。肉をいで、骨を削るのです。ちっとの間御辛抱なさい」
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ふと蓮葉はすはに、ものをつて、夫人ふじんはすつとつて、對丈つゐたけに、黒人くろんぼ西瓜すゐくわけつゝ、鸚鵡あうむかごをコト/\と音信おとづれた。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ところで、夫人ふじんむかへたあとを、そのまゝ押入おしいれしまつていたのが、おもひがけず、とほからず、紅葉先生こうえふせんせいれう用立ようだつた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
りながら、君主との無禮なめなるにはさふらへども、ひめ殿との夫人ふじんとならせたまふまへに、餘所よそをつとさふらふぞや。
妙齢 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
同時どうじに一昨年さくねんふゆ衣絵きぬゑさん、婿君むこぎみのために若奥様わかおくさまであつた、うつくしい夫人ふじんがはかなくなつてる……新仏しんぼとけは、夫人ふじんの三年目ねんめに、おなじ肺結核はいけつかく死去しきよしたのであるが……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あゝ、したじめよ、おびよ、えてまたひかかげむなり。きみはだたしかゆき。ソロモンと榮華えいぐわきそへりとか、白百合しらゆりはなづべきかないなはぢらへるは夫人ふじんなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)