)” の例文
一度は私と約束までした仲を、何時の間に冷たい心持になつたか、それは知らないが、近頃は私をけてばかりゐるお通さんだつた。
私がこの日頃そこに近寄るのを努めてけるようにしていた、私のむかしの女友達の別荘べっそうの前を通らなければならないことを認めたのだ。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
けようと思ふ代りに、私は却つて思ひ切つて——それを見極みきはめたいと願ふのであつた。そしてイングラム孃は幸福な人だと思つた。
ゆうべの夢見ゆめみわすれられぬであろう。葉隠はがくれにちょいとのぞいた青蛙あおがえるは、いまにもちかかった三角頭かくとうに、陽射ひざしをまばゆくけていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
しかし、仕事の上でどうしても話しあわなければならないことが多かったので、いつもいつも二人をけてばかりはおれなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
には木陰こかげけてしんみりとたがひむね反覆くりかへとき繁茂はんもしたかきくり彼等かれらゆゐ一の味方みかた月夜つきよでさへふか陰翳かげ安全あんぜん彼等かれらつゝむ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「あ、あすこ石炭袋せきたんぶくろだよ。そらのあなだよ」カムパネルラが少しそっちをけるようにしながら天の川のひととこをゆびさしました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
第八条 (1) 天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ災厄さいやくクルため緊急ノ必要ニリ帝国議会閉会ノ場合ニおいテ法律ニ代ルヘキ勅令ちょくれいヲ発ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
ところで、その陽虎様がこの間から孔丘を用いようと何度もむかえを出されたのに、何と、孔丘の方からそれをけているというじゃないか。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
女も自分がとかく接近するのをけもせず、自分が毎日隣に来るのをそれと気づいてるらしいが、それをいやに思うようなふうでなかった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
わけて感情を口に出すのを敬蔵は絶対にけた。そういうことは嫌味いやみとして旧東京の老人はついにそれに対する素直な表現欲を失っていた。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
爆撃ばくげきをさけるためですかって。もちろんそれもありましょうが、もう一つの理由は、金博士は宇宙線を極度きょくどけて生活していられるのです。
火につつまれたらげ途はない。だから早く逃げられる中に、とっさに難をけさせた。家は、私一人だけが残って守った。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
かの者止まらず、彼に此に耳を傾け、また手を伸べて與ふればその人再び迫らざるがゆゑに、かくして身をまもりて推合おしあふことをく 七—九
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
燕王此の勢を、国に帰れるよりやまいたくして出でず、これを久しゅうして遂にやまいあつしと称し、以て一時の視聴をけんとせり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
閉じあるいは視線をらすようにした故に春琴の相貌がいかなる程度に変化しつつあるかを実際に知らなかったしまた知る機会を自らけた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
わたしは、わかい牝牛めうし腎臓脂肪じんぞうしぼうへチーズを交ぜ、それを陶器皿とうきざらに入れてとろ火でた。金物かなものにおいをけるために、中のほねを小刀がわりに使った。
そのままでゆけば何でもないのであったけれど……。千穂子は臆病おくびょうであったために、ふっとした肉体の誘惑ゆうわくけることが出来なかったのだ……。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
一枝ひとえだかつられ、一輪いちりんはなめ。なんぞみだりにつまあだして、われをしてくるにところなく、するにすべなからしむる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おおきなふねがいったぞ。そのときは、おれたちは、なみなかきこまれようとした。やっといそいでほどへだたった、安全あんぜん場所ばしょけることができた。
なまずとあざみの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
貴公のいう通り、所詮、るなと祈っても、いくら警固や防ぎをしてみても、先は、空をけてくる疾風雲はやてぐものようなものだ。一暴風雨ひとあらしけられまい
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むかしはかういふことの自由じゆう出來できるのが名人めいじんだとおもはれたのですが、いまではかへって、文學ぶんがくあぢはうへ足手纏あしてまとひとして、けねばならぬことであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
かく歌ひつつ幸でましし時に、御杖もちて、大坂一二の道中なる大石を打ちたまひしかば、その石走りりき。かれ諺に堅石かたしは醉人ゑひびとるといふなり。
自動車は余の嫌いなものゝひとつである。曾て溜池ためいけ演伎座前えんぎざまえで、微速力びそくりょくけて来た自動車をけおくれて、田舎者の婆さんが洋傘こうもりを引かけられてころんだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
自分じぶん在學ざいがく當時たうじ舊友きういうふのを、とくけたい理由りいうつてゐたので、かれ旅館りよくわんたづねる毛頭まうとうなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
熱するというのはすなわち感情の昂奮こうふんするいいである。しかしことにあたるか否かを判断するときは、すべからく感情をけ冷静に是非曲直ぜひきょくちょくの判断を下すを要する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
あへて往路を俯瞰ふかんするものなし、荊棘けいきよくの中黄蜂の巣窟すうくつあり、先鋒あやまつて之をみだす、後にぐもの其襲撃しうげきを被ふるもあへて之をくるのみちなし、顔面ためれし者おう
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
それには種々しゆ/″\理由りゆうがあるでせうが、そのひとつはてき襲撃しゆうげきのがれ、猛獸もうじゆうがいけるためであつたでせう。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
いそに漂着ひょうちゃくしたる丸太や竹をはりけたとし、あしむすんで屋根をき、とまの破片、藻草もぐさ、松葉等を掛けてわずかに雨露あめつゆけたるのみ。すべてとぼしく荒れ果てている。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
したほうでちょうど子家鴨こあひるがやっとすべませられるくらいいでいるので、子家鴨こあひるしずかにそこからしのび入り、そのばんはそこで暴風雨あらしけることにしました。
ジナイーダは、わたしをけていた。わたしの顔が見えると——これはわたし自身、いやでも気づかざるを得なかったのだが——彼女は厭な気持がするらしかった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
俺はとにかく誘惑をけよう。俺はどれほど蠱惑的こわくてきでもそんなところにまごついてはいられない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
僕も父もしばらくの間毎朝水を浴びて精進し、その間に喧嘩けんくわなどをけ魚介虫類のやうなものでも殺さぬやうにし、多くの一厘銭を一つ一つ塩で磨いて賽銭さいせんに用意した。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
けられるならばけるがよろしいとかんがへからして、短期期限附たんききげんつき金解禁きんかいきん發表はつぺうしたのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
關東大地震後かんとうだいぢしんご、この方面ほうめんける研究けんきゆうおほいにすゝみ、あるひ鐵管てつかん繼手つぎて改良かいりようあるひ地盤不良ぢばんふりよう場所ばしよけて敷設ふせつすること、むをなければ豫備よび複線ふくせんまうけることなど
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
日本太古にほんたいこ原始的家屋げんしてきかをくはともかくも、すでに三かん支那しな交通かうつうして、建築けんちく輸入ゆにふされるにあたつて、日本人にほんじんなにゆゑににおいて賞用しやうようせられたいしせん構造こうざうけて
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
女は急にくべからざる、恐ろしい運命に自分が襲われるのだという事を感じて、一に何もかも分かったように思った。やはりこの男が我が幸福、我が生命であったのだ。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
自分じぶんみことのお指図さしずで、二人ふたりばかりの従者ともにまもられて、とあるおか頂辺いただきけて、みこと御身おんみうえあんじわびてりましたが、そのうちほうからきゅうにめらめらとひろがる野火のび
今それを人間にたとうれば、同族結婚をけて他族結婚をしたこととなる。実際えんの近い人同士の結婚はあまり有利でなく、これに反して縁の遠い人同士の結婚が有利である。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
をつとのおのれをよくをさめて教へなば、此のうれひおのづからくべきものを、只一〇かりそめなるあだことに、女の一一かだましきさがつのらしめて、其の身のうれひをもとむるにぞありける。
おまけに小雨こさめさへしたので、一先ひとまあやしき天幕てんとしたに、それをけてると、うしろはたけにごそめくおとがするので、ると唯一人たゞひとり、十六七の少女せうぢよが、はたなかくさつてる。
けてられじとするあつかひも他人たにんなんかんじもなくちがつて見合みあはすまなこ電光いなづま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一筋道ひとすじみち何処どこへもけることが出来ません、一角はうろたえてあとへ帰ろうとすれば村が近い、仕方がないからさっさっと側の薄畳の蔭の処へ身を潜め、小さくなって隠れて居ります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
にんじんは附け加える——「一般的には、たしかにそういえるんだ。個人的の問題はけよう。だから、かあさんがもしここにいれば、母さんの前で、僕あ、おんなじことをいうよ」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
みち出合であ老幼らうえうは、みな輿けてひざまづく。輿なかではりよがひどく心持こゝろもちになつてゐる。牧民ぼくみんしよくにゐて賢者けんしやれいするとふのが、手柄てがらのやうにおもはれて、りよ滿足まんぞくあたへるのである。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
なんでも無遠慮ぶゑんりよはな老人らうじんうへことけてはないやうにしてた。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
悠然いうぜん車上しやじようかまんで四方しはう睥睨へいげいしつゝけさせる時は往来わうらいやつ邪魔じやまでならない右へけ左へけ、ひよろひよろもので往来わうらい叱咜しつたされつゝ歩く時は車上しやじようの奴やつ癇癪かんしやくでならない。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
人目ひとめくるは相身互あひみたがひ、浮世うきようるさおもをりには、身一みひとつでさへもおほいくらゐ、あなが同志つれはずともと、たゞもうおのこゝろあとをのみうて、人目ひとめくる其人そのひとをば此方こちらからもけました。
しかるに幕府の始末しまつはこれに反し、おだやかに政府を解散かいさんして流血りゅうけつわざわいけ、無辜むこの人を殺さず、無用むようざいを散ぜず、一方には徳川家のまつりを存し、一方には維新政府の成立せいりつ容易よういならしめたるは
雪沢ゆきさわ村の枝郷えだむらの黒沢という部落では、鎮守ちんじゅ雷神様らいじんさまがお嫌いだからと謂って、一村の者すべて煙草をのまず、甚だしくこれをけたということだが、現在はどうなっているかを知らぬ。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)