かち)” の例文
彼処の釣になると、上手も下手も有ツたもんで無く、只、氷こわし棒の、長いのでも持ツてる者が、かちを取るだけですから…………。
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
つまり河流かりゆう上汐あげしほとが河口かこう暫時ざんじたゝかつて、つひ上汐あげしほかちめ、海水かいすいかべきづきながらそれが上流じようりゆうむかつていきほひよく進行しんこうするのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
まことに、つみな、まないことぢやあるけれども、同一おなじ病人びやうにんまくらならべてふせつてると、どちらかにかちまけがあるとのはなしかべ一重ひとへでも、おんなじまくら
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そら今度こんだこさ雪子ゆきこかちだ」とつて愉快ゆくわいさうに綺麗きれいあらはした。子供こどもひざそばにはしろだのあかだのあゐだのゝ硝子玉がらすだま澤山たくさんあつた。主人しゆじん
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
成程なるほどときれば監獄かんごくや、瘋癲病院ふうてんびやうゐんはいされて、正義せいぎ貴方あなた有仰おつしやとほかちめるでせう、しか生活せいくわつ實際じつさいれでかはるものではありません。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
でもそうすると亀の方が大きくなりすぎて、兎が居眠りしないでも亀の方がかけっこにかちそうだった。だから困っちゃった。
碁石を呑んだ八っちゃん (新字新仮名) / 有島武郎(著)
女房にようぼいわく、御大層ごたいそうな事をお言ひでないうちのお米が井戸端ゐどばたへ持つて出られるかえ其儘そのまゝりのしづまつたのは、辛辣しんらつな後者のかちに帰したのだらう(十八日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
つまり調てう子がよければ持てんを一き切る事もたびたびで、自然しぜんかちが多いが、それがぎやくになると、どうにもたりがわるくて、負がかさなつて苛々しい
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
はゝ大方おほかたかゝること今朝けさよりの懸念けねんうたがひなく、幾金いくらとねだるか、ぬるき旦那だんなどのゝ處置しよちはがゆしとおもへど、れもくちにてはかちがたき石之助いしのすけべん
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
英国の軍艦を買い独国の大砲を買いそれでいくさに勝ちたりとも運用したる人にして日本人ならば日本のかちと可申候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
腹がへってはかちはとれぬから、もう仕方がない、横丁よこちょうにでもはいって家のかげで食べようと話をきめたとき、二人は大きい門構もんがまえの家の前を通りかかった。
最後の胡弓弾き (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「何んと云う呑気のんきな人だろう、——お待ちなさいまし、旦那、山浦さん、——ね、あなたの力を貸して下されば、この勝負は此方こっちかちなのに、——ちょいと」
大江戸黄金狂 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
もっと端的に云えば、世間では腹の悪いものがかちだという意見の方が昔から勝を占めているようであります。
鼻の表現 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
変事の為に遠方から集って来た親族の人達の間には、これはきっと、あまり恐ろしい出来事の為に逆上して、気が変になったせいだろうという説がかちを占めた。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それで要するに私の級がかちになって、皆は私を擁して喜んだが、そのかえりがけ一人になったところを、米村一派の連中から取りまかれて、散々さんざんになぐられたのだった。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
とにかく河内平野は、この戦勝で沸騰ふっとうしていた。兵はかちどきに酔い、散所民には、豊年だった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
燕王はかちに乗じて諸将を進ましめぬ。燕兵の済南に至るに及びて、景隆なお十余万の兵を有せしが、一戦にまた敗られて、単騎走り去りぬ。燕師の勢いよいよさかんにして城をほふらんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
付居たりしに十日ばかり立と博奕ばくちに廿兩かちたりとて家の造作を始しが押入おしいれ勝手元迄かつてもとまで總槻そうけやきになし總銅壺そうどうこ光輝ひかりかゞやかせしかば偖こそ彼奴きやつに違ひなしと思ふうち小間物屋彦兵衞と云者いふもの隱居いんきよ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「この競走は大丈夫、私のかちですよ。私は兎みたいにしりごみなどはしませんよ。」
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
此の書付かきつけさえなければ喧嘩けんかわたくしかちだけれども、書付が出たから私の方がまけに成ったのですが、何方どっちが悪いかとくと貴方あなたの胸に聞いて御覧遊ばせ、私は御当家様の家来でございます
一列に並べて置き同時に戸を開いて空へ放ちやり最後に戻って来たものをかちとする。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
龐涓はうけんみづから・きはまりへいやぶるるをり、すなは(五七)自剄じけいしていはく、『つひ(五八)豎子じゆしせり』と。せいつてかちじようじてことごと其軍そのぐんやぶり、太子たいししんとりこにし(五九)かへる。
彌次連やじれん其中そのなかからだい一にわたくし飛掛とびかゝつてた一にんは、獨逸ドイツ法學士はふがくしとかいふをとこ隨分ずゐぶん腕力わんりよくたくましい人間にんげんであつたが、此方こなた多少たせう柔道じうだう心得こゝろえがあるので、拂腰こしはらひ見事みごときまつてわたくしかち、つゞいてやつ
武装しておいでなさるような、軍におかちなさるような
これはどうやらお前さんのかちらしい
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
成程なるほどときれば監獄かんごくや、瘋癲病院ふうてんびょういんはいされて、正義せいぎ貴方あなた有仰おっしゃとおかちめるでしょう、しかし生活せいかつ実際じっさいがそれでかわるものではありません。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もし、あの、わたしかちとなれば、のおかた奥様おくさまを、つゝがなう、おもどしになりますやうに……お約束やくそく出来できませうか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
両足をそろえて真直まっすぐに立ったままどっちにも倒れないのをかちにして見たり、片足で立ちっこをして見たりして、三人は面白がって人魚のようにまわりました。
溺れかけた兄妹 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
寐屋ねや燈火ともしひまたヽくかげもあはれさびしや丁字頭ちやうじがしらの、はなばれし香山家かやまけひめいま子爵ししやくおなはらに、双玉さうぎよくとなへは美色びしよくかちめしが、さりとて兄君あにぎみせきえず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
剣をあんじて右におもむきて曰く、諸君うらくはつとめよ、昔漢高かんこうは十たび戦って九たび敗れぬれどついに天下を有したり、今事を挙げてよりしきりかちを得たるに、小挫しょうざしてすなわち帰らば
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
無論会に加わっている位だから、一応の理解はあるのだけれど、信仰というよりは、寧ろ好奇心の方がかちを占めている程度だ。自然、こういう異常な場合になると、つい常識が頭をもたげて来る。
悪霊 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
誘引さそひに來たれども夫は用向ようむきもあればゆかれぬとことわりしに其時貴殿おまへ扇子あふぎを落して來たからかしくれろと云ふ故てつあふぎかしつた其日鴻の巣の金兵衞が金五百兩かちしを見ておのれは先へ廻り金兵衞が歸りを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
どうやら麾下きかの軍隊が、おかちになっておまけ
むかうにくまでねこなけりやかちだ。」
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
みごとなかちをしめられてしまいました。
幻術天魔太郎 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
かちすなわちあやうからず
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つれなくへされなば甲斐かひもなきこと、兎角とかく甚之助殿じんのすけどの便たよきたしとまちけるが、其日そのひ夕方ゆふがた人形にんぎやうちて例日いつよりもうれしげに、おまへうたゆゑ首尾しゆびよくかち
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしです、新生活しんせいくわつあかつきかゞやいて、正義せいぎかちせいするやうになれば、我々われ/\まちでもおほいまつりをしてよろこいはひませう。が、わたし其迄それまでたれません、其時分そのじぶんにはもうんでしまひます。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かちつたる秀吉ひでよし一騎驅いつきがけにうませると、こしよりさいいだし、さらりとつて、れは筑前守ちくぜんのかみぞや、又左またざ又左またざ鐵砲てつぱうつなと、大手おほて城門じやうもんひらかせた、大閤たいかふ大得意だいとくい場所ばしよだが
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ただ炳文の陣に熟せる、大敗してしかついえず、真定城しんていじょうに入りて門をじて堅く守る。燕兵かちに乗じて城を囲む三日、下すあたわず。燕王も炳文が老将にして破りやすからざるを知り、を解いてかえる。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
以て向ふ敵にわたあひ八九人薙伏なぎふせられしかば諸軍此勢ひに乘て追討おひうちしたる故木村も後藤も遂にかなはず柵の中へ迯込にげこみしが共大坂の者には夫にては面白からぬに付木村が十分にかちし樣にかきたると思はれ候と辯を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
るといつたらうそいが、るべく喧嘩けんくわはうかちだよ、いよ/\先方さきりにたら仕方しかたい、なにいざとへば田中たなか正太郎位しようたらうぐらゐ小指こゆびさきさと、ちからいはわすれて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
しかしです、新生活しんせいかつあかつきかがやいて、正義せいぎかちせいするようになれば、我々われわれまちでもおおいまつりをしてよろこいわいましょう。が、わたしはそれまではたれません、その時分じぶんにはもうんでしまいます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はつはつはつい! 私等わしらかちぢや。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
田舍ゐなかりしとき先生せんせいなりしゆゑ其和歌そのわか姉樣ねえさまにおにかけておどろかしたまへ、それこそかならず若樣わかさまかちるべしとへば、はや其歌そのうためとせがむに懷中ふところよりぶみいだ
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はゞやと奔走ほんそうせしかどそれすらも調とゝのはずして新田につた首尾しゆびよくかち
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)