まる)” の例文
これが全身まるで彫刻製作されるとなると、原図案とはまたかわったものとなることであるが、おおむねこの原図によったものでありました。
まる年間ねんかん小言こごとはず、うらみもはず、たゞ御返事ごへんじつてります』でめられたのだからたまらない。をとこはとう/\落城らくじやうした。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
やがて思いついたことがあって、わたしはそれをまるいてネクタイにした。大将たいしょうがもっとわらった。カピがまたでんぐり返しを打った。
つまりは百年前には一人の力で、一月以上もついやすべかりし仕事を、今ではまる一日もかからずに片づけるようになってしまったのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しばらくしてあをけむり滿ちたいへうちにはしんらぬランプがるされて、いたには一どうぞろつと胡坐あぐらいてまるかたちづくられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
当時私は二十五歳の青年で、まるうちのあるビルディングにオフィスを持つ貿易商、合資会社S・K商会のクラークを勤めていた。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「えっ、すずめの?」と、みんなは、うえていると小田おだは、さおをばして、いただきについているまるいものをとしました。
すずめの巣 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はなしそれからまへうちはなれて、家主やぬしはううつつた。これは、本多ほんだとはまる反對はんたいで、夫婦ふうふからると、此上このうへもないにぎやかさうな家庭かていおもはれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わたしが妻籠つまごの青山さんのお宅へ一晩泊めていただいた時に、同じ定紋じょうもんから昔がわかりましたよ。えゝ、まるびきと、木瓜もっこうとでさ。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その暗いまるうちやみの中のところどころに高くそびえたアーク燈が燦爛さんらんたる紫色の光を出してまたたいていたような気がする。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
といって、これまでのことをのこらずもうげました。殿様とのさまはいちいちびっくりして、目をまるくしていておいでになりました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その年夏のさかりに毎夜まるうち芝原しばはらへいろいろ異様な風をした人が集って来て、加持祈祷かじきとうをするのを、市中の者がぞろぞろ見物に出かけた。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
お許しなさろうと思召せば、それで四方八方まるくおさまって、何より重畳ちょうじょうなわけ——だが、あんなにうちしおれておるものを
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
昨夜さくや以來いらいわが朝日島あさひじま海岸かいがんは、およかぎ裝飾さうしよくされた。大佐たいさいへ隙間すきまもなくまる國旗こくき取卷とりまかれて、その正面せうめんには、見事みごと緑門アーチ出來できた。
そのはよほど家柄いえがらうまれらしく、まるポチャのあいくるしいかおにはどことなく気品きひんそなわってり、白練しろねり下衣したぎうすうす肉色にくいろ上衣うわぎかさ
最近まるうち辺りの会社に勤めだしたらしい。彼は白麻の背広をかなぐりすてながら、慌て気味にバルコニーへ出てきた。
街頭の偽映鏡 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
とほきそのむかしらず、いまのをとこは、牛込南榎町うしごめみなみえのきちやう東状ひがしざまはしつて、矢來やらいなかまるより、通寺町とほりてらまち肴町さかなまち毘沙門前びしやもんまへはしつて、みなみ神樂坂上かぐらざかうへはしりおりて
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「何を言やがる、手前がおごった酒じゃあるめえし、好い機嫌だって悪い機嫌だって、文句を言われる覚えはねえ、すっ込んでいやがれ、まるタン棒奴ぼうめ
が、どつちかとへば、愛嬌あいけうもある、く、趣味しゆみわたし莫迦ばかにするほどでもない。これ長所とりゑ面白味おもしろみもないが、気質きしつ如何いかにもまる出来できてゐる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
折りから西南の風が強かったので、その火は白金しろかね麻布あざぶ方面から江戸へ燃えひろがり、下町全部とまるうちを焼いた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
はじめてつく/″\とそれを見れば、ながい顏、まるい顏、眼のつツたのやくちの大きいのと、さまざまなうちにも、おしなべてみんながとしりましたこと。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
徳川の一門にも随分忠義の国これ有り、加薩仙肥など頼母たのもしく相見え候えども、まるにこれらへ御委任され候わば、やはり義仲よしなかならざれば董卓とうたくに御坐候。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
で、いまではこの安土城あづちじょうのあとへ、信長のぶなが嫡孫ちゃくそん、三法師ぼうしまる清洲きよすからうつされてきて、焼けのこりの本丸ほんまるを修理し、故右大臣家こうだいじんけ跡目あとめをうけついでいる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あめいとはずいださんとせしが、あゝ彼奴あいつだと一トことふりかへつて、美登利みどりさんんだつてもはしないよ、一けんだもの、と自分じぶんつむりまるめてせぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大正十一年たいしようじゆういちねん四月二十六日しがつにじゆうろくにち浦賀海峽地震うらがかいきようぢしんいためられたまるうちびるぢんぐ、大正十二年たいしようじゆうにねん關東大地震かんとうだいぢしんによつてこしられた東京會館とうきようかいかんなどがその適例てきれいであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それからモー一つは今のようにブラウンソースばかりでえた肉へ生玉子を入れて混ぜて塩胡椒で味をつけて長さ二寸親指の太さ位にまるめて中身にします。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
川崎備寛かはさきびくわん長尾克ながをこくなどの面面めんめんで、一とうとうを一まるまる、一さうさうを一たけたけといふふうび、三元牌サンウエンパイポンされたあとのこりの一まいてると、それがカンになり
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
そしてさういふ人達は前の時代の人達の経験したり理解したりした形とまるで没交渉で進んで来る。先の人の言つた利益ある言葉も、かれに取つては何でもない。
解脱非解脱 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
屏風浦を引上げて、大月と秘書の秋田がまるうち事務所オフィスへ帰ったのは、その日の午後二時過ぎであった。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
する者あり其者の羽織はおりの紋がまるに三つ引ゆゑはてな羽織はおりの紋と言葉遣ことばづかひと云大橋文右衞門によくるがもしや浪人でもして零落されたることかと思ひて有合ありあひぜに
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
僕はコンクリイトの建物の並んだまるうちの裏通りを歩いてゐた。すると何かにほひを感じた。何か、?——ではない。野菜サラドの匀である。僕はあたりを見まはした。
春の夜は (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
えんじゅの下の大きな水鉢みずばちには、すいれんが水面すいめんにすきまもないくらい、まるけて花が一りんいてる。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
御臨終のみぎり嫡子ちゃくしまる殿御幼少なれば、大国の領主たらんこと覚束おぼつかなく思召され、領地御返上なされたき由、上様うえさまへ申上げられ候処、泰勝院殿以来の忠勤を思召され
まる二や山東さんとう丸菱まるびしぢやもう買収を始めてゐるんだぜ。奴等只でさへ腰がフラフラしてゐるんだ。
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
かう云つてしまへば世の中に悪人はまるでないことになる。けれども俺は此弁明をただちに認容することは出来ない。人間に自由があると云ふことは空中の鳥の様な自由でない。
公判 (新字旧仮名) / 平出修(著)
この人はなんでも十三四のころから読売新聞よみうりしんぶん寄書きしよしてたので、文章ぶんしやうを見た目でこの人をると、まるうそのやうなおもひがしました、のち巌谷いはや初対面しよたいめんの時の事を言出いひだして
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
小唄まじりに日ごと夜ごとのせりあいをつゞけておりましたが、そのうちに、御いん居ひさまさ公のまると長政公の丸のあいだの、中の丸をあずかっておられた浅井七郎どの
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
代診だいしんちひさい、まるふとつたをとこ頬髯ほゝひげ綺麗きれいつて、まるかほいつあらはれてゐて、氣取きどつた樣子やうすで、あたらしいゆつとりした衣服いふくけ、しろ襟飾えりかざりをしたところ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
練習帆船ことまるに乗り組んでいたとき、私たちの教官であった、中川倉吉なかがわくらきち先生からきいた、先生の体験談で、私が、腹のそこからかんげきした、一生わすれられない話である。
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
その他の町々まちまちを遍歴し、ほとんどまる一年のあいだ、人麿の研究にき身をやつして、『鴨山考補註篇』を書くことに没頭し、そのとし(つまり、昭和十一年)は、箱根の強羅の山荘で
茂吉の一面 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
なんだらうと思つてすぐ飛出とびだして格子かうしを明けて見ますると、両側りやうがはとも黒木綿くろもめん金巾かなきん二巾位ふたはゞぐらゐもありませうか幕張まくはりがいたしてございまして、真黒まつくろまる芝居しばゐ怪談くわいだんのやうでございます。
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、怪青年の黒影こくえいが、ぱッと目に入るだけだった。私達と弥次馬とは、ずっと間隔かんかくができてしまった。そして、いつの間にか、まるうちりの、ほりちかくまで来ているのに気がついた。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「野布袋のまるでさア」と付足つけたした。丸というのはつなぎ竿になっていない物のこと。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
瑣細ささいな凶事がおこる時などは、まるで何か爪の先でく様な微かな音がする、他人がもしはたればその人にも聞えるそうだ、私はこういう仕事をしているから、もしそういうひびきを聞けば
頭上の響 (新字新仮名) / 北村四海(著)
博士はくしは、なんにもないところに、ねこのまるいひとみがふたつ、みどり色にひかり、かなしそうに食べ物をもとめてなく声だけがきこえる光景こうけいを、ありありと思いうかべて身ぶるいした。
あゝ ええですとも その長いらうかを通つて きあたりのまるい建物です
水源きて進行しんこう漸やく容易やうゐとなる、六千四百呎の高にたつすれば前日来経過けいくわし来れる所、歴々れき/\眼眸がんばうり、利根河の流域りうえきに属する藤原村の深山幽谷、まるで地図中の物となり、其山の広袤こうばう水の長程
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
工合ぐあひにそれを方法はうはふかんがへつくやいなや、(それをこぶのやうにまるめてしまつて、それかられがけないやうに、そのみぎみゝ左足ひだりあしとを緊乎しツかりつて)あいちやんはそれを廣場ひろばつてきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
まるうち三菱みつびしが原で、大きな煉瓦の建物を前に、草原くさはらに足投げ出して、悠々ゆうゆうと握飯食った時、彼は実際好い気もちであった。彼は好んで田舎を東京にひけらかした。何時いつも着のみ着のまゝで東京に出た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『船は辛いだろうな。なにまるかね?』