をど)” の例文
騙詐かたり世渡よわた上手じやうず正直しやうぢき無気力漢いくぢなし無法むはう活溌くわつぱつ謹直きんちよく愚図ぐづ泥亀すつぽんてんとんびふちをどる、さりとは不思議ふしぎづくめのなかぞかし。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
キヤツとく、と五六しやく眞黒まつくろをどあがつて、障子しやうじ小間こまからドンとた、もつとうたくはへたまゝで、ののち二日ふつかばかりかげせぬ。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をどり狂ふ烟の下に自若として、おもてただれんとすばかりに照されたる姿は、この災を司る鬼女などの現れ出でにけるかと疑はしむ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
その枝は不二と愛鷹あしたかとを振り分けて、ことに愛鷹の両尖点りやうせんてん(右なるは主峰越前嶽にして位牌ゐはいヶ嶽は左のこぶならむ)は、をどつて梢に兎耳とじを立てたり
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
鉤には誰かが河豚ふぐにでも切られたらしい釣鉤と錘具おもりとが引つ懸つてゐるばかしで鱚らしいものは一ぴきをどつてゐなかつた。
神々かう/″\しき朝日あさひむかつて祈念きねんこらしたこともあつたのです。ふとおもあたつたときにはかれおもはずをどあがつてよろこんださうです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
(あの星がかの女を守つてゐる! かの女の美しさと純潔さとをいつまでもいつまでも守つてゐる……)かう考へると、静夫の心は堪らなくをどつた。
赤い鳥居 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
じつ感謝かんしやえません。』とわたくし不測そゞろ憘涙うれしなみだながるゝをきんなかつた。無邪氣むじやきなる日出雄少年ひでをせうねんをまんまるにして、武村兵曹たけむらへいそう肩上かたをどると。
頭を振りつゝ松本はをどり上つて叫ぶ「諸君はよろしく自ら決断せねばならぬ、諸君は果して僕を信ずるか、信じないか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
先天の理想はこの時暗中よりをどり出でゝ此聲美なり、この色美なりと叫ぶなり。これ感納性レチエプチヰテエトの上の理想にあらずや。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
こつちでは五ひきがみんなことりことりとおたがひにうなづきつてりました。そのときにはかにすゝんでつた鹿しか竿立さをだちになつてをどりあがつてげてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
此処の顔ものぞきたく、身は一つ心は千々に走せまはつて、匆々そう/\忙々ばう/\と茫然自失する折から人ををどり立たす様な奏楽そうがくの音起つて、舞踏室の戸は左右に開かれぬ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ガラツ八は物置からをどり出すと、何やら一と抱への着物を持つて、風呂場に驅け込む女の後を追ひました。
此の二人たちまをどりたちて、滝に飛び入ると見しが、水は大虚おほぞらきあがりて見えずなるほどに、雲すみをうちこぼしたる如く、雨二七六しのを乱してふり来る。
あの頃がなつかしくてたまらぬと言つた風に、お光は膚理きめこまかい顏に筋肉ををどらせつゝ、小池に寄り添うた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
また獲物えものするどみづつてすゝんでるのを彼等かれら敏捷びんせふ闇夜あんやにもかならいつすることなく、接近せつきんした一刹那せつな彼等かれら水中すゐちうをどつて機敏きびんあみもつ獲物えものくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
体中の血がをどるやうな、何とも云ひやうのない、愉快な昂奮です。銃を手にして、待つてゐた猟師が、獲物の来るのを見た時のやうな心もちとでも、云ひませうか。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
予はこの景色を打眺うちながめて何となく心をどりけるが、この刹那せつな忽然こつぜんとして、吾れは天地の神とともに、同時に、この森然たる眼前の景を観たりてふ一種の意識に打たれたり。
予が見神の実験 (新字旧仮名) / 綱島梁川(著)
自分ひとりでの心からをどり出たものであるから、一層その人の生得の性質、つまり個性といふものにも根據してゐるし、また至極單純な心で得られるものでもあるから
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
細流こながれある所にいたれば紅唇べに粉面おしろい哥妓げいしや紅裩あかきゆもじかゝげわたる、花姿くわし柳腰りうえう美人等びじんらわらじをはいて水をわたるなどが江戸の目にはいとめづらしくきやうあり。酔客すゐかくぢんくをうたへば酔妓すゐぎ歩々あるきながらをどる。
で、腕の血色けつしよくを見ても、にごりれて、若い血が溌溂はつらつとしてをどツてゐるかと思はれる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
と、をつとは四五けんむかうにつてゐる子供こどもはういろどりしたゴムまりげた。が、夏繪なつゑ息込いきごんでゐたのがまたもりそこねて、まり色彩しきさいをどらしながらうしろの樹蔭こかげへころがつてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
翌日あくるひばん宗助そうすけはわがぜんうへかしらつきのうをの、さらそとをどらすさまながめた。小豆あづきいろまつためしかをりいだ。御米およねはわざ/\きよつて、坂井さかゐいへうつつた小六ころくまねいた。小六ころく
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
追取松のかげよりをどり出でこゝな欲心衆生の惡漢わるもの共命が惜くば逃去べしコレ若衆氣をたしかに持れよ我等助けてまゐらせんと聲を懸けるに雲助共は振返りヤアこゝな入らざる入道めおのれともに成佛させんと打て蒐るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
風くれば薔薇はたちまち火となれりをどりあがるらむうれしき風に
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
進み、をどり、飛ぶ、さあれただ押移る。
りようのごとくむなしき空にをどでて
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
素早すばや横手よこて小路こみちをどらせた
彼女はわく/\と胸がをどつた。
父の帰宅 (新字旧仮名) / 小寺菊子(著)
魚竜ひそをどりて水あやをなす
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
をどれば長髮ちやうはつかぜなつ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
君が心はをどれども
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
うかとおもふと、ひざのあたりを、のそ/\と山猫やまねこつてとほる。階子はしごしたからあがつてるらしく、海豚いるかをどるやうな影法師かげぼふしきつねで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その面色、その声音こわね! 彼は言下ごんか皷怒こどして、その名にをどかからんとするいきほひを示せば、愛子はおどろき、狭山はおそれて、何事とも知らず狼狽うろたへたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
上さんの胸は愈々いよ/\をどつた。何より先に、車をさがした。そしてそこから一里位しかない村へと志した。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
まどから半身はんしんしてゐたれいむすめが、あの霜燒しもやけのをつとのばして、いきほひよく左右さいうつたとおもふと、たちまこころをどらすばかりあたたかいろまつてゐる蜜柑みかんおよいつむつ
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ここもとにこそありつれと、禅師が前を幾たび走り過ぐれども、更に禅師を見る事なし。堂の方にかけりゆくかと見れば、庭をめぐりてをどりくるひ、つひに疲れふして起き来らず。
かれ從來じうらいたことのない綺麗きれい菓子くわし發見はつけんしたとおもつてこゝろをどつた。それでもかれ半分はんぶんつていきなりくだした。かれのどがぢり/\とげつくほど非常ひじやう苦惱くなうかんじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
勇ましいともわからずに、心がゾク/\をどり立つて、思ふさま有りたけの涙を流したんですよ、インスピレーションと云ふのは、彼様あゝした状態さまを言ふのぢやないか知らと思ひますの
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
細流こながれある所にいたれば紅唇べに粉面おしろい哥妓げいしや紅裩あかきゆもじかゝげわたる、花姿くわし柳腰りうえう美人等びじんらわらじをはいて水をわたるなどが江戸の目にはいとめづらしくきやうあり。酔客すゐかくぢんくをうたへば酔妓すゐぎ歩々あるきながらをどる。
「惡黨の自惚うぬぼれだよ、惡黨に自惚れがなきやア、こちとらの仕事は上がつたりだ。重三郎も多分平次の懷中に飛込んで、存分にをどらせてやらうと思つたんだらう。甘く見られたんだね」
ニコライ堂のやうな高い/\たふの屋根に登ツてをどツたり跳たりしてゐる。
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
藥屋くすりやしゆ寫眞材料店しやしんざいれうてん、名かたかん板のはんダース、現像液げんぞうえきていえきさら、赤色とう、それだけは懇願こんぐわんすゑ母から金をもらつたのだつたが、むねをどらせながら、おし入へもぐりんでかん板を裝置そうちして
とら比較的ひかくてきおろか動物どうぶつで、憤然ふんぜんをどらして、鐵車てつしや前方ぜんぽうから飛付とびついたからたまらない、おそ旋廻圓鋸機せんくわいえんきよきのために、四肢しゝや、腹部ふくぶ引裂ひきさかれて、苦鳴くめいをあげて打斃うちたをれた。もつと狡猾こうくわつなるは猛狒ゴリラである。
呼に此方の後藤は先刻せんこくより表に立て懸合かけあひの樣子を聞居きゝゐたりしが元より氣象きしやう濶達くわつたつの人故ぢり/\氣をいらち今に見よとうでさすつてまつ處に八五郎が呼込や否や油屋の見世へをどあがりたり其體そのてい赤銅造しやくどうづくりの強刀がうたう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つぶら眼の童子かまどの前に居りあなひもじさよ焔のをど
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
おほいなるてき目の前にをどでよと
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
かなたて、をどりぬ、むね
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
体中からだぢう珠数生じゆずなりになつたのを手当次第てあたりしだいむして、りなどして、あしんで、まるをどくるかたち歩行あるきした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宮はすかさずをどかかりて、我物得つと手に為れば、遣らじと満枝の組付くを、推隔おしへだつるわきの下より後突うしろづきに、𣠽つかとほれと刺したる急所、一声さけびて仰反のけぞる満枝。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)