)” の例文
なかいたやうな……藤紫ふじむらさきに、浅黄あさぎ群青ぐんじやうで、小菊こぎく撫子なでしこやさしくめた友染いうぜんふくろいて、ぎんなべを、そのはきら/\とつてた。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれこもつくこをかついでかへつてとき日向ひなたしもすこけてねばついてた。おしな勘次かんじ一寸ちよつとなくつたのでひどさびしかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
偶然のこととは云いながら、二、三怪しき事件に逢い、疑惑容易にき難きについては、先生のご意見承わりたく、左に列記つかまつり候。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
欽吾の財産を欽吾の方から無理に藤尾に譲るのを、厭々いやいやながら受取った顔つきに、文明の手前をつくろわねばならぬ。そこで謎がける。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ああ、これは、いさむちゃんもたべていいんですよ。」と、おかあさんが、おっしゃったので、やっといさむちゃんのいかりはけましたが
お母さんはえらいな (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、理を説きて帰航を促したれば、船頭も、意けて、釣具を納め、錨を挙げ、暗流を下りけるが、更に再遊を約して、相分れき。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
彼女はたけ長いけた髪に小さい青白い花をさして、それを光りある枕の代りとし、豊かなき毛はさらにあらわなる肩を包んでいます。
ふりきようのない魅惑がお駒ちゃんをつかんで、磯五とのあいだに持った場面の一つ一つがお駒ちゃんの眼のまえを通り過ぎた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
直臣の忠勝にすら行く先がけなかったのであるから、今日知った異変の報とともに、堺の人々が、家康の行方不明をも語り合わせて
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはただに儒学じゅがくのみでなく、仏教においても同然で、今日こんにちもなおがたき句あれば「珍聞漢ちんぷんかん」とか、あるいは「おきょうよう」なりという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おもむきを如何どういふふういたら、自分じぶんこゝろゆめのやうにざしてなぞくことが出來できるかと、それのみにこゝろられてあるいた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
斯くて鳥の地に落ちたる時は、捕鳥者は直ちに其塲にけ獲物をおさひもくなり。石鏃とちがひて此道具は幾度にても用ゐる事を得。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
ですから、いったんしめた手をゆるめて、そのき方を示すべき時に、竜之助は、無意味にその手をゆるめられなくなりました。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わたしたちがみんな船の上に乗ってしまうと、まもなく船をつないだ大づなはかれて、船頭はかじを、御者ぎょしゃづなを取った。
すこしもながく、おせんをめておきたい人情にんじょうが、たがいくち益々ますますかるくして、まるくかこんだ人垣ひとがきは、容易よういけそうにもなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
それで穴穂王あなほのみこは囲みをいて、ひきあげて待っておいでになりますと、二人の宿禰すくねは、ちゃんと軽皇子かるのおうじをおひきたて申してまいりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
特にこのことを感じたのは私が彼とけようとするときであつた。私の打ち開いた心に對して何等の答へもないのであつた。
山寺の一室に行李こうりいた宣揚は、遠く本堂の方かられて来る勤行ごんぎょうの声に心を澄まし、松吹く風に耳をあろうて読書三昧ざんまいに入ろうとしたが
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
二人はわらじをいてそれからほこりでいっぱいになった巻脚絆まきぎゃはんをたたいて巻きにわかにいたひざをまげるようにして下駄をもって泉に行った。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それは彼が何かがたい謎を発見し、解く前の楽しさに酔っているような場合に限って、必ずやって見せる一つの芸当げいとうだった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
路に逢ふほどの農人はみな丁寧にその青い頬かむりをいて會釋した、私はまた何事もわが意の儘に左右し得るものと信じた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
香織かおりくしかしながらも、『折角せっかくこうしてきれいにしてあげても、このままつくねてくのがしい。』とってさんざんにきました。
兎角とかくするほどむすびのつなかれて、吾等われら兩人りやうにんせたる輕氣球けいきゝゆうは、つひいきほひよく昇騰しようたうをはじめた。櫻木大佐等さくらぎたいさら一齊いつせいにハンカチーフをつた。
風は夜の間に北に吹き変わって、氷はけそうな徴候を示した。食糧を大いに制限されたにもかかわらず、船員らはみな機嫌をよくしている。
乃至ないし眞夜中まよなかうまたてがみ紛糾こぐらからせ、また懶惰女ぶしゃうをんな頭髮かみのけ滅茶滅茶めちゃめちゃもつれさせて、けたら不幸ふかう前兆ぜんてうぢゃ、なぞとまするもマブが惡戲いたづら
思へば三界の火宅くわたくのがれて、聞くも嬉しきまことの道に入りし御身の、欣求淨土ごんぐじやうどの一念に浮世のきづなき得ざりしこそ恨みなれ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
をりからかしボート桟橋さんばしにはふなばた数知かずしれず提燈ちやうちんげた凉船すゞみぶねもなくともづないてやうとするところらしく、きやく呼込よびこをんなこゑが一そう甲高かんだか
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
しかしをとこころすにしても、卑怯ひけふころかたはしたくありません。わたしはをとこなはいたうへ太刀打たちうちをしろとひました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
盗賊とうぞくどもがなくなった時、押入おしいれの中にかくれていたさるは、ようようでてきて、甚兵衛のしばられてるなわいてやりました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
と等分に二人へ云いかけながら、先ず青木の脚の繃帯をいた。色の黒い毛ムクジャラのすねのあたりを、拇指おやゆびでグイグイと押しこころみながら
一足お先に (新字新仮名) / 夢野久作(著)
渋江氏の一行では中条が他郷のものとして目指めざされた。中条は常陸ひたち生だといって申しいたが、役人は生国しょうこく不明と認めて、それに立退たちのきさとした。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そこで大分にその雹がけてかさが低くなったものですから、ようやく半ヵ月前からこの通行が出来るようになったという。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
わたしは法廷で、真の意味を明かにしようと努めましたが、彼らはわたしが妻の名誉を恢復しようと望んでいるのだ、とこうってしまいました。
忠太はアタフタと出て行つた、が、早速すぐと復引き返して來た。後には一人物が隨つて居る。多分既に草鞋をいて、玄關に上つて居つたのであらう。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
腹立たしきよりは先ずあきれられて、更に何故なにゆえともきかねたる折から、の看守来りて妾に向かい、「景山かげやまさん今夜からさぞさびしかろう」と冷笑あざわらう。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
身の女姪めひの姫が神隠しにあうた話か。お身は、あの謎見たいないきさつを、さうるかね。ふん。いやおもしろい。女姪の姫も定めて喜ぶぢやらう。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
彼は神奈川条約をむを得ずして是認せり、しかれども下田条約に至っては、決して是認せざりしなり。その所以ゆえん何ぞや。彼れみずからこれをいて曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人のうれひを憂ひ人のたのしみを樂むは豪傑がうけつ好義かうぎの情なり然ば與惣次は如何にもして此無實むじつの罪をき命を助せんと種々しゆ/″\心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
えうするに、このごろにいたつて地震ぢしんおそろしさがやうやかつたので、かみまつつてそのいかりをかんとしたのであらう。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
しかりといえども勝氏もまた人傑じんけつなり、当時幕府内部の物論ぶつろんはいして旗下きかの士の激昂げきこうしずめ、一身を犠牲ぎせいにして政府をき、以て王政維新おうせいいしんの成功をやすくして
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのうちゆきがそろそろけはじめて、時々ときどきもりの中に小鳥ことりこえこえるようになって、はるちかづいてきました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
はるになつてゆき次第しだいけた或日あるひ墓場はかばそばがけあたりに、腐爛ふらんした二つの死骸しがい見付みつかつた。れは老婆らうばと、をとことで、故殺こさつ形跡けいせきさへるのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
されどなおその火を躍り越えて入り来るにより、ついには馬のつなきこれをめぐらせしに、おとしあななどなりとや思いけん、それよりのちは中に飛び入らず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そして彼女は、姉の秘密な生活に対する自分の疑いが、最早もはやそれでけてしまったような気がするのだった。
秘密の風景画 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
(三六)かうきよき、(三七)かたちそむいきほひきんずれば、すなはおのづかめにけんのみいまりやうてう相攻あひせむ。輕兵けいへい鋭卒えいそつかならそとき、(三八)老弱らうじやくうちつかれん。
よほど苦しんだとみえて、夫人は、湯の中でかれた頭髪を口中いっぱいに飲み込んでしっかりんでいた。
浴槽の花嫁 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ところが今度の戦争は民族的の戦争で急に恨みがけぬ。この戦いは長く続くのである。しかして独露だけではない。日耳曼ゲルマンスラブニックの戦いばかりでない。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
ンヤデヤなア、ユギゲデセエ、ニシゴト日當ひあダりの屋根ヤネサ干すエネればタコエそがしグテ、オド晝間シルマまでタコ掻廻カマして、それガラ田畔タノクロサあがテせ、ママ
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
恭助あるじいたつかれて禮服れいふくぬぎもへずよこるを、あれ貴郎あなた召物めしものだけはおあそばせ、れではいけませぬと羽織はをりをぬがせて、おびをもおくさまづからきて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
少くも骨の一片位はなくてはならんはずだが、品物はそのまま其処そこに身体は何処どこ渓間たにまへでも吹飛されたものか、この秘密はおそらくはれもくものはあるまい
越中劍岳先登記 (新字新仮名) / 柴崎芳太郎(著)