かた)” の例文
「きっと、先生せんせいにおあいにまいります。」と、お約束やくそくをしたのです。すると、そのとき、先生せんせい年子としこかたくおにぎりなさいました。
青い星の国へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぶたい花みちは雪にて作りたる上に板をならぶる、此板も一夜のうちにこほりつきて釘付くぎづけにしたるよりもかたし。だん国にくらぶればろんほかなり。
るりをしきつめたみちをとおって、さんごでかざった玄関げんかんはいって、めのうでかためた廊下ろうかつたわって、おくおく大広間おおひろまへとおりました。
田原藤太 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とこにも座敷ざしきにもかざりといつてはいが、柱立はしらだち見事みごとな、たゝみかたい、おほいなる、自在鍵じざいかぎこひうろこ黄金造こがねづくりであるかとおもはるるつやつた
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
キッコはもうあんまりびっくりして顔を赤くしてかたくなってだまっていましたら先生がまた「さあできたらせ算をして下さい。」
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
で、わたくしかたしんじています。もし来世らいせいいとしたならば、そのときおおいなる人間にんげん智慧ちえなるものが、早晩そうばんこれを発明はつめいしましょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
よび右の話をなしたるに上方の衆は關東者とちがねんいれ候へば物をかたくする心ならんとて松葉屋桐屋共に立出たちいで對面たいめんに及びしかば大金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
奇麗に結った日本髪のかたくふくれた髷が白っとぼけた様な光線につめたく光って束髪に差す様なくしが髷の上を越して見えて居た。
千世子(二) (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
俄盲目にはかめくらかんるいけれども、もらつた手拭てぬぐひきず二重ふたへばかりいて、ギユツとかためますと、くすり効能かうのう疼痛いたみがバツタリ止まりました。
するとおとこいたって志繰こころたしかな、やささしい若者わかもので、ほかおんななどにはもくれず、かたかた決心けっしんをしてることがよくわかりました。
それでも狡獪かうくわいすゞめためもみのまだかたまらないであま液汁しるごと状態じやうたいをなしてうちからちひさなくちばしんでしたゝかに籾殼もみがらこぼされた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「爆弾にしては、少しかたすぎるやうに思ふが、爆発さすべき性質のものなら、あの真鍮の口から三千度の火熱なぞ吹く筈はないんだがな。」
フアイヤ・ガン (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
みごとなともえげの大業おおわざぽん。モンクスのからだは空中でぐるッと一回転すると、だーんとあおむけにたたきつけられた。かたい板の間だ。
柔道と拳闘の転がり試合 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
奉公をしようと云ったって請人うけにんというものが無けりゃあかたい良いうちじゃあ置いてくれやしないし、他人ばかりの中へ出りゃあ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いずれは何処かへ身をかためなくちゃならないんだけど……そういうことについて、別に相談する所も、親身になって下さる所もないのでしょう。
女の一生 (新字新仮名) / 森本薫(著)
わが今視し物をよくさとらむとねがふ人は、心の中に描きみよ(しかしてわが語る間、その描ける物をかたいはほの如くにたもて)
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かたくつでおれの背中の上へ乗った奴がある。両手と膝を突いて下から、ね起きたら、乗った奴は右の方へころがり落ちた。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
積った雪はかたこおりついてともすればすってんころりんところばねばならぬ。折々、満州おろしが、雪交りの砂を遠慮なく顔や脚にたたきつける。
女子おなごの口から言いだしたこと。わたしも、ひっこみがつきませぬ。源様、そうおかたいことをおっしゃらずとも、よろしいではございませんか」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
されば奧方おくがた町子まちこおのづから寵愛てうあいひらつて、あなが良人おつとあなどるとなけれども、しうとしうとめおはしましてよろ窮屈きうくつかたくるしきよめ御寮ごりようことなり
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうしてこの水田すいでん東西南とうざいなん三方さんぽう比較的ひかくてきかた地盤ぢばんもつかこまれてゐる。かういふ構造こうぞう地盤ぢばんであるから、地震ぢしん比較的ひかくてきはげしかつたであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
といつて、れいくるまをさしせると、不思議ふしぎにもかたとざした格子こうし土藏どぞう自然しぜんいて、ひめからだはする/\とました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
恐ろしくなりて急ぎ家に帰り入り、門の戸をかたとざしてひそみたれども、夜通し狼の家をめぐりて吠ゆる声やまず。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
堪忍かんにんしておくんなさい。みちぱたではおにかけねえようにと、こいつァいもうとからの、かたたのみでござんすので。……」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
月目つきめぎると、杜松ねずかたく、にくづいてましたが、おんなはただじっとしてました。七つきになると、おんな杜松ねずおとして、しきりにべました。
属名の Lithospermum は石の種子しゅしの意で、この属の果実が、石のようにかたい種子のように見えるから、それでこんな字を用いたものだ。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
議論好で、かた意地で、どうしても負けないぞといふ根性が深い。さういふ人の姿が、燒土にしつかりとまきついて離れない蔓草にも想ひ見る事が出來た。
山を想ふ (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
「決して仲が好いとは申されませんでした。市太郎はかたい良い男ですが、商売熱心で地味で、——若い娘などに好かれる男ではございません、——でも」
來年らいねんはこれよりもうつくしい初日はつひをがみたいものだ。』とつた言葉ことば其言葉そのことばかたおぼえてて、其精神そのせいしんあぢはうて、としとも希望きばうあらたにし
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
崖端のロマネスクの休亭は古城塞こじょうさいのように視覚から遠ざかって、これ一つ周囲と調子外れにかたいものに見えた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
御覽ごらんわたしへたかたいこと。まるでたけのやうです。これをおまへさんのにいさんのところへつてつて、このうらたひらなところへなにつておもらひなさい。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
逸早いちはやく、駈けつけて、岡崎の諸門をかためていた譜代ふだいの者に迎えられると、それらの多年手塩にかけて来た面々めんめんの顔が、いつもより数倍も、たのもしく見えた。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かた地伏ぢふくの上に立てられた、がっしりした大きなお宮である。お宮のそとには大きなけやきの木がそびえたっている。その大木たいぼくの上のえだは天をおおっている。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
『そ、そんなにつよいのですか。』と彌次馬やじうま士官しくわん水兵すいへいわれも/\とやつてたが、成程なるほど武村たけむらすね馬鹿ばかかたい、みな一撃いちげきもと押倒おしたをされて、いたい/\と引退ひきさがる。
それまでの間は、手前らの黒丸はかたパン一つほどの値打もねえんだ。それがすんでから、考えるとしよう。
或は他の石片をつちとしてただちに其周縁そのまわりき或は骨角こつかくの如きかたき物にて、作れる長さ數寸のばうの一端を、石斧とすべき石片の一部分にて、此棒の他端たたんをば
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
乳母 御家來ごけらいくちかたいおひとかいな? 二人ふたりぎりの祕密ひみつれぬ、三人目にんめらねば、とひますぞや。
かたそうで痛そうであった。自分は変に不愉快に思った。疲れ切ってもいた。一つには今日の失敗しくじり方が余りひど過ぎたので、自分は反抗的にもなってしまっていた。
泥濘 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「新太郎はあゝいうかたい子ですが、その娘さんを貰いたいとか何とかとお前に言いはしなかったの?」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
その花の名をわたしは知らないけれど子供たちには馴染なじみの深い花である。それは小さな袋の形をした花で、それで何かかたいものを叩くと、ぽんぽんはじけ返るのであった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ところが、人間にんげん青銅せいどう使つかつてゐるあひだに、てつほうどうよりもかたくて刃物はものなどにはつごうのいことをつてたので、つひ青銅せいどうかはつててつもちひられるようになりました。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
あなたのそばのデッキ・チェアにすわり直してはみましたが、やはり、はげしい羞恥しゅうちにいじかんだような、かたいあなたの容子ようすをみていると、ぼくも同様あがってしまい、そのくせ
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
ただかたい一方と思えるものが案外弱いところもあるというのは天性てんせい両面を備うるのである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「おい、ちやああぶないぞ‥‥」と、わたし度毎たびごとにハラハラしてかれ脊中せなかたたけた。が、瞬間しゆんかんにひよいといて足元あしもとかためるだけで、またぐにひよろつきすのであつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
「全体、狐ッて奴は、穴一つじゃねえ。きつと何処にか抜穴ねけあなを付けとくって云うぜ。一方口いっぽうぐちばかしかためたって、知らねえうちに、裏口からおさらばをきめられちゃ、いい面の皮だ。」
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
又婦人を当て込んだ某社の『姥鶏うばとり著作集』と、某会の『かた果実かじつ大系』なども競争の共倒れで、儲けたのは諸新聞社の営業部だけであった、結局甲は雛鳥の如くヒヨ/\の悲鳴を挙げ
あたしの申上まをしあげること合点がてんなさりたくば、まづ、ひとつかういふこと御承知ごしようちねがひたい。しろ頭巾づきんあたまつゝんで、かた木札きふだをかた、かた、いはせるやつめで御座ござるぞ。かほいまどんなだからぬ。
数日の食糧をたづさへてるも中途に餓死がしせんのみ、ふ今夜此地に露宿ろしゆくし、明朝出立二日間位の食糧をたづさへて水源探究たんきうおもむき、而してふたたび当地に帰らんのみと、人夫等異口同音かたく此説を
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
私の過去くわこの罪科の跡を彼の心からり消さうと切に願つてゐたのに、そのかたい表面に、私は更に新しい、そしてもつとずつと深い捺印おしいんを押してしまつた。私はそれをきつけてしまつたのだ。
それはたとへば堂塔だうたふ伽藍がらんつく場合ばあひに、巨大きよだいなるおも屋根やねさゝへる必要上ひつえうじやう軸部ぢくぶ充分じうぶん頑丈ぐわんぜうかためるとか、宮殿きうでんつく場合ばあひに、その格式かくしきたもち、品位ひんゐそなへるために、優良いうれうなる材料ざいれうもち
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)