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町子
されば
奧方の
町子おのづから
寵愛の
手の
平に
乘つて、
強ち
良人を
侮るとなけれども、
舅姑おはしまして
萬づ
窮屈に
堅くるしき
嫁御寮の
身と
異なり
谷中に
知人の
家を
買ひて、
調度萬端おさめさせ、
此處へと
思ふに
町子が
生涯あはれなる
事いふはかりなく、
暗涙にくれては
我が
身が
不徳を
思しゝる
筋なきにあらねど
目鏡が
中だと
笑はるゝもありき、
町子はいとゞ
方々の
持はやし
五月蠅く、
奧さん
奧さんと
御盃の
雨の
降るに、
御免遊ばせ、
私は
能う
頂きませぬほどにと
盃洗の
水に
流して