石段いしだん)” の例文
おとこが、石段いしだん心配しんぱい以外いがいには、なにも自分じぶんたちをしかる理由りゆうがなく、また、自分じぶんたちはしかられるはずがないとおもったからです。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうさんの祖母おばあさんの隱居所いんきよじよになつてた二かい土藏どざうあひだとほりぬけて、うら木小屋きごやはうおり石段いしだんよこに、その井戸ゐどがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
稲妻形いなずまがたについている石段いしだんの道を見まわしても、きれいな朝露あさつゆがたたえられて、人の土足どそくにふみにじられているようすはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして一人ひとりずつ石段いしだんをあがってつくのだが、一人ひとりのつくかずは三つにきめられた。お菓子かし配給はいきゅうのときのことをおもいして、ぼくはおかしかった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
と、いいつけ、玄関げんかん石段いしだんをあがりかけた。とたんに、いぬはひときわ高くうなり声をあげ、ぱっと男の手にかみついた。
その小高こだか所々ところ/″\に、したから石段いしだんたゝんで、てららしいもんたかかまへたのが二三軒目げんめいた。平地ひらちかきめぐらして、點在てんざいしてゐるのは、幾多いくらもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのはずみに、銅貨がすべり落ちて、入口の石段いしだんでちゃりんとった。まっかになった指はまげることができず、銅貨をにぎっていられなかったからだ。
身體からだゆすり、下駄げたにて板敷いたじき踏鳴ふみならすおとおどろ/\し。そのまゝ渡場わたしばこゝろざす、石段いしだん中途ちうとにて行逢ゆきあひしは、日傘ひがささしたる、十二ばかりの友禪縮緬いうぜんちりめん踊子をどりこか。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
往来おうらいのすみずみ、家いえの石段いしだん、そのほかちょっとした店を開くことのできる場所にはきっと花を売っていた。
廣小路ひろこうぢよりながむるに、石段いしだんのぼひとのさま、さながらありとうつるがごとく、はな衣類きもの綺羅きらをきそひて、こゝろなくには保養ほやうこのうへ景色けしきなりき
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はばひろ石段いしだん丹塗にぬり楼門ろうもんむらがるはとむれ、それからあのおおきなこぶだらけの銀杏いちょう老木ろうぼく……チラとこちらからのぞいた光景ありさまは、むかしとさしたる相違そういもないように見受みうけられました。
尤も今日は、刻限こくげんおそいせいか、一羽も見えない。唯、所々ところどころ、崩れかゝつた、さうしてそのくづれ目に長い草のはへた石段いしだんの上に、からすくそが、點々と白くこびりついてゐるのが見える。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
二人ふたりは、いえかけました。そして、電車でんしゃりて、石段いしだんがり、さくらしたあるいて、動物園どうぶつえんほうへきかかりました。
町の真理 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それから逆戻ぎやくもどりをして塔頭たつちゆう一々いち/\調しらべにかゝると、一窓庵いつさうあん山門さんもん這入はいるやいなやすぐ右手みぎてはうたか石段いしだんうへにあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私が例のように常夜燈じょうやとうの下をすみからすみまでさがしまわっていると、いつのまにきたのか林太郎が常夜燈じょうやとう石段いしだんにもたれてとうもろこしをたべていた。
花をうめる (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そして、あたかも、深岳しんがくおおかみが、れをなしてさとへでるごとく、れつをつくって、てんおか石段いしだんくだりはじめる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのおひな井戸ゐどから石段いしだんあがり、土藏どざうよことほり、桑畠くはばたけあひだとほつて、おうち臺所だいどころまでづゝみづはこびました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其處そこる、……百日紅さるすべりひだりえだだ。」上野うへの東照宮とうせうぐう石段いしだんから、不忍しのばずいけはるかに、大學だいがく大時計おほどけいはり分明ぶんめいえたひとみである。かゝるときにもするどかつた。
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
石段いしだんうえからはうみえて上総かずさ房州ぼうしゅう見渡みわたされたようにおぼえてります。
うちまえには、おおきな銀杏樹いちょうのきがありました。そのがしだいにいろづいてきました。さよこわれかかった石段いしだんこしをかけて、雑誌ざっしんでいました。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたり蓮池はすいけまへとほして、五六きふ石段いしだんのぼつて、その正面しやうめんにあるおほきな伽藍がらん屋根やねあふいだまゝすぐひだりへれた。玄關げんくわんしかゝつたとき宜道ぎだう
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
神殿しんでん石段いしだんにそって、裏宮うらみやの方へしのびやかに歩いてくる。おお、そのかげのいたましくもおそろしい。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山續やまつゞきに石段いしだんたかく、木下闇こしたやみ苔蒸こけむしたるをかうへ御堂みだうあり、觀世音くわんぜおんおはします、てら觀藏院くわんざうゐんといふ。
逗子だより (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
祖母おばあさんはあのかぎようむと、くらまへ石段いしだんりて、かきあひだとほりましたが、そこにとうさんがよくあそんでたのです。味噌藏みそぐら階上うへには住居すまゐ出來できた二かいがありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「おばあさん。」と、雑誌ざっしきたさよは、あちらの石段いしだんから、こちらをいて、さびしいのでびかけました。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
道端みちばた石段いしだんがあつた。代助はなかば夢中で其所そこへ腰を掛けたなり、ひたひを手でおさえて、かたくなつた。しばらくして、さいだけて見ると、大きな黒いもんがあつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
氷川神社ひかはじんじや石段いしだんしたにてをがみ、此宮このみや植物園しよくぶつゑん竹藪たけやぶとのあひださかのぼりて原町はらまちかゝれり。みち彼方あなた名代なだい護謨ごむ製造所せいざうしよのあるあり。職人しよくにん眞黒まつくろになつてはたらく。護謨ごむにほひおもてつ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとこ権幕けんまくおそろしかったので、三にん石段いしだんはなれてあるしました。あには、じっとおとこかおいてていました。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まだ可怪おかしかつたのは、一行いつかうが、それから過般いつかの、あの、城山しろやまのぼ取着とつつき石段いしだんかゝつたときで。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さよは、石段いしだんうえって、いつまでもあわれな乞食こじき行方ゆくえ見守みまもっていましたが、いつしからず、その太鼓たいこおととおくかすかになっていったのであります。
善いことをした喜び (新字新仮名) / 小川未明(著)
みやは、報徳神社はうとくじんじやといふ、二宮尊徳にのみやそんとくをうまつれるもの、石段いしだん南北なんぼくかしこくも、宮樣みやさま御手植おんてうゑつゐさかき四邊あたりちりとゞめず、たかきあたりしづかとりこゑきかはす。やしろまうでて云々しか/″\
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
みやへおまいりをして、おばあさんはやまりてきますと、石段いしだんしたに、あかぼういていました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
にくさげな、高慢かうまんな、ひと馬鹿ばかにしたかたちうだい、總別そうべつはない畜生ちくしやうだ、とこゝろから、石段いしだんれたかけらひろつて、ぞくにねことふ、川楊かはやぎがくれに、ぢつねらつて、ひしりとげる
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
街道かいどうをいくと、かたわらおおきな屋敷やしきがありました。みちからすこしくたかいところに、そのいえてられていたのでした。そして、石段いしだんとおみちから、そこまでついていました。
石段に鉄管 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ちやうひとみはなして、あとへ一歩ひとあし振向ふりむいたところが、かは曲角まがりかどで、やゝたか向岸むかうぎしの、がけうち裏口うらぐちから、いはけづれるさま石段いしだん五六段ごろくだんりたみぎはに、洗濯せんたくものをしてむすめが、あたかもほつれくとて
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たかくつづいた石段いしだんんで、上野うえのやまのぼると、東京とうきょうまちが、はてしなく、したに、おろされました。しばらく、そこでおじいさんは、あたりをながめていました。
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いつしか、石段いしだんりて、電車でんしゃとおっているほうへまごついてゆきました。おじいさんのあたまなか
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれらは、石段いしだんのところで、ひとまず、ったものをおいて、やすみました。
ひとをたのまず (新字新仮名) / 小川未明(著)
少年しょうねんは、しばらくじっとしていたが、そのうちはうようにして、やっと背中せなかおも荷物にもつ銀行ぎんこうぐち石段いしだんうえせて、はげしくめつけるむねおもみをゆるめたが、まだ気分きぶんわるいとみえて
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
とつぜん、へいが、石段いしだんりて、鳥居とりいそとていきました。
ひとをたのまず (新字新仮名) / 小川未明(著)