ふく)” の例文
いつものように、おかあさんは、洋服屋ようふくやへこられて、こんどは、せい一が、新学期しんがっきからるためのあたらしいふくを、おたのみなさったのでした。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
コスマは、赤茶あかちゃけたふくをつけて、古いマンドリンをかかえていました。そして広場の中には、うすいむしろがしいてあるきりでした。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かれ生活せいくわつかくごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかへてちやみ、れから書齋しよさいはひるか、あるひ病院びやうゐんくかである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのまっくらなしまのまん中に高い高いやぐらが一つ組まれて、その上に一人のゆるふくて赤い帽子ぼうしをかぶった男が立っていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「もう夜だからこんばんはというもんだよ。」という声がして、白いふくをきたわかい女が顔をだし、「なあに、くすりをとりにきたの。」
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
風俗ふうぞく派手はででない、をんなこのみ濃厚のうこうではない、かみかざりあかいものはすくなく、みなこゝろするともなく、風土ふうどふくしてるのであらう。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
長いヴェールをかぶった花よめもいますし、りっぱなふくをきた紳士しんしもいます。それから、美しいまっ白な服をきた、まき毛の子もいます。
「どこかふくの下にでもまぎれこんではおらんかな、え? ひょっとしたら、長靴ながぐつの中にナイフがちてるかも知れんぞ、え?」
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
よごれたふく、まぶかく冠ったもみくちゃの鳥打帽とりうちぼう、そのひさしの下から、機械の油で真黒になった顔がのぞいている。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
やがて地主は、えんびふくをきて、シルクハットをかぶって、かた手に竹のむちを持ち、銅像どうぞうの台の上にあらわれました。
丘の銅像 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
四五海若わたつみみことのりあり。老僧かねて四六放生はうじやう功徳くどく多し。今、江に入りて魚の遊躍あそびをねがふ。かり金鯉きんりふくを授けて四七水府すゐふのたのしみをせさせ給ふ。
呂宋兵衛るそんべえが身をぬいた空駕籠からかごのなかへ、咲耶子さくやこのからだをしこんで、その、人目ひとめにつく身なりの上へ、蚕婆かいこばばあと同じくろいふくをふわりとかぶせた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
透明人間でいようと思えば、寒くてもふくをきることができなくなるばかりか、もっとこまることが起こってきたんだ
それは親兄弟、妻子さいし朋友ほうゆうのごときはもちろん敵ではないが、彼らが我々の心にふくさぬことがあれば、その不服ふふくの範囲において敵のごときものである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
眼をかへすと喜太郎が草鞋を作つて居たむしろの座と、その前に据ゑた藁打臺と藁打槌わらうちづちと、小さいなたが一梃と、それから藁のふくを取るのに使ふ、鐵の小さい熊手
そして自分の号令を天皇の名に於て発令し、自分自身がその号令にふくして見せる。そして、自分が服したことによって、同じ服従を庶民に強制するのである。
道鏡 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
単身たんしんさってその跡をかくすこともあらんには、世間の人も始めてその誠のるところを知りてその清操せいそうふくし、旧政府放解ほうかい始末しまつも真に氏の功名にすると同時に
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
動物園のおぢさん「あるときしろ夏服なつふく巡査じゆんさが、けんなんかでこのとらをおどかしたことがありました。それからといふものしろふく巡査じゆんさるとおこります」
まどガラスの中には、小さな人形にんぎょうが三つ、赤やみどりふくて、まるで、ほんとに生きているようだった。
交際上かうさいじやう得失とくしつ大関係だいくわんけいのある事ぢやから是非ぜひとも世辞せじうたらからうと忠告ちゆうこくを受けたのぢや、ぼく成程なるほど其道理そのだうりふくしたから出かけてはたものの奈何いかんせん
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのれいになく元氣げんきよく格子かうしけて、すぐといきほひよく今日けふうだいと御米およねいた。御米およね何時いつものとほふく靴足袋くつたび一纏ひとまとめにして、六でふ這入はいあとからいて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なしけるが新道の玄柳げんりう方にて調合てうがふなしもらはんと出行いでゆくていゆゑ素知そしらぬかほ臺所だいところ立戻たちもどりたり又彼の玄柳げんりうは毒藥のことを請合うけあひけれども針醫はりいの事なれば毒藥どくやくもとめんことかたしと思へば風藥かぜぐすりふく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「まず、おらにあたらしい着物きものをこせえさせてくんねえ。なあ、そうだろ、ポケットにこんなにたくさんのかねをもってる男がよ、古いおんぼろふくのまんまでいかれもしねえじゃねえか。」
隣室りんしつには、Aの夫人ふじん、Cの母堂ぼだうわかいTの夫人ふじんあつまつてゐた。病室びやうしつはうでのせはしさうな醫員いゐん看護婦かんごふ動作どうさしろふくすれおと、それらは一々病人びやうにん容態ようたいのたゞならぬことを、隣室りんしつつたへた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
奧方おくがた火鉢ひばち引寄ひきよせて、のありやとこゝろみるに、よひ小間使こまづかひがまいらせたる、櫻炭さくらなかばはひりて、よくもおこさでけつるはくろきまゝにてえしもあり、烟管きせる取上とりあげて一二ふく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
至善しぜん大道たいだう遊芸いうげい小技せうぎ尊卑そんひ雲泥うんでいは論におよばざれども、孔子七十にして魯国ろこく城北しろのきた泗上にはうふり心喪こゝろのもふくする弟子でし三千人、芭蕉五十二にして粟津の義仲寺にはうむる時まねかざるに来る者三百余人
途中とちう大なる蝮蛇まむしの路傍に蜿蜒えん/\たるあり、之をへば忽ち叢中さうちうかくる、警察署の小使某ひとり叢中にり、生擒せいきんして右手にひつさきたる、衆其たくふくす、此に於て河岸に出でて火をき蝮のかわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
さててきしくすりなどふくして、木村氏のもとにありしが、いつまでも手をむなしくしてあるべきにあらねば、月給八円の雇吏やといとしぬ。その頃より六郎酒色しゅしょくふけりて、木村氏に借銭しゃくせん払わすること屡々しばしばなり。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
それから二人ふたり連立つれだつて學校がくかうつた。此以後このいご自分じぶん志村しむらまつたなかくなり、自分じぶんこゝろから志村しむら天才てんさいふくし、志村しむらもまた元來ぐわんらい温順おとなしい少年せうねんであるから、自分じぶん又無またな朋友ほういうとしてしたしんでれた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ふく白茶しらちやのだぶだぶとおどけ澄ました身のまわり
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
これあげるわ ふくのボタンだけれど
づ人さきに白のふくいへづる
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
コスモはなんのかざりもない色のあせたくろふくをつけ、まんなかにすりきれたふさのついてる大黒帽だいこくぼうをかぶり、木靴きぐつをはいていました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
かれ生活せいかつはかくのごとくにしていた。あさは八き、ふく着換きかえてちゃみ、それから書斎しょさいはいるか、あるい病院びょういんくかである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「うん、そうだ。間違まちがいないよ。」も一人の黒いふくの役人が答えました。さあ、もう私たちはきっところされるにちがいないと思いました。
二人の役人 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
なかに、一人ひとり、でつぷりとふとつた、にくづきのい、西洋人せいやうじんのおばあさんの、くろふく裾長すそながるのがました。何處どこ宗教しうけう學校がくかうらしい。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どことなくきざにえる、そのおとこはサングラスをかけ、青地あおじふくて、毎日まいにち空気銃くうきじゅうち、この付近ふきんをぶらついていました。
春はよみがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
もうひとりの男は、ポケット小僧に手つだわせて、ヘリコプターのふたりのふくをつぎつぎとぬがせたうえ、手足をしばり、さるぐつわをはめました。
奇面城の秘密 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
幾抱いくかかえあるかわからないような老木ろうぼくだ。まるで、青羅紗あおラシャふくでもきているように、一面にあつぼったいこけがついていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
むらほうから行列ぎょうれつが、しんたのむねをりてました。行列ぎょうれつ先頭せんとうにはくろふくくろ帽子ぼうしをかむった兵士へいし一人ひとりいました。それが海蔵かいぞうさんでありました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
きゃく姿すがたはどこにもみえない。ベッドの中はもぬけのからで、ぬぎちらしたふくがあたりにちらばっている。ホールは、おかみさんのところにかけおりていった。
するときゅう生徒監せいとかんはシューラにやさしくなって、あたまでたり、なぐさめたり、ふくを着るのを手伝ったりした。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
盡し先年洪水こうずゐせつさるまたつゝみきれし時も夫々に救ひ米并に金銀等きんぎんとう差出さしいだせし程の儀故村中の者一同よくふくし居候間勿々なか/\遺恨ゐこんなど受べきおぼえ無御座候と申立るに半左衞門殿否々いや/\に非ず假令たとへ陰徳いんとく
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三四郎はもう一遍いつぺん、女の顔付かほつき眼付めつきと、ふく装とを、あの時あの儘に、繰り返して、それを病院の寝台の上に乗せて、其そばに野々宮君を立たして、二三の会話をさせたが、あにでは物足らないので
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
至善しぜん大道たいだう遊芸いうげい小技せうぎ尊卑そんひ雲泥うんでいは論におよばざれども、孔子七十にして魯国ろこく城北しろのきた泗上にはうふり心喪こゝろのもふくする弟子でし三千人、芭蕉五十二にして粟津の義仲寺にはうむる時まねかざるに来る者三百余人
騎兵大隊長きへいだいたいちやう夫人ふじん變者かはりものがあつて、いつでも士官しくわんふくけて、よるになると一人ひとりで、カフカズの山中さんちゆう案内者あんないしやもなく騎馬きばく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぼくはいやで仕方なかったので内藤先生が行ってからそっと球根をむしろの中へかえして、急いで校舎へ入って実習ふく着換きがえてうちに帰った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それが、つぎつぎに、お仕事しごとがあっていけないのだそうです。おまえの、いまているふくも、どれほどおじいさんのお世話せわになったかしれません。
窓の内と外 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この歸途かへりに、公園こうゑんしたで、小枝こえだくびをうなだれた、洋傘パラソルたゝんだばかり、バスケツトひとたない、薄色うすいろふくけた、中年ちうねん華奢きやしや西洋婦人せいやうふじんた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そいつは、はじめ黒馬旅館くろうまりょかんにとまっていたんだそうだ。頭にほうたいをまいてふくをきこんでいたから、だれひとり透明人間とうめいにんげんだなんて気づかなかったそうだ」