)” の例文
「その代り貴方も文句なしにれを取って下さい、そして明日の朝になったら宿賃を払って、きれいに此処から立っていって下さい」
金五十両 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
太祖崩じて、抔土ほうど未だかわかず、ただちに其意を破り、諸王を削奪せんとするは、れ理において欠け情に於て薄きものにあらずして何ぞや。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
の故に智識に預る者はねもごろに至誠を発して各介福おほいなるさきはひを招かば、よろしく毎日三たび廬舎那仏を拝し、自ら念を存し各廬舎那仏を造るべし
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
かつ如此かくのごとき事をこゝろみし事なし、こゝろみてそのはなは馬鹿気ばかげきつたる事をみとめたれば全然ぜん/\之を放棄はうきせり、みちおこなことみちく事なり
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
時頼の時年二十三、せい濶達にして身のたけ六尺に近く、筋骨飽くまでたくましく、早く母に別れ、武骨一邊の父の膝下ひざもとに養はれしかば
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
しかし大阪に行けば中津の倉屋敷で賄の代を払う事にして、れも船宿ふなやど心能こころよく承知して呉れる。悪い事だが全く贋手紙の功徳でしょう。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
よつかくの如き獅子身中の虫を退治せんが為めに本組合ただちに彼を除名することの決議をして貰ひたい——緊急動議の要旨はれである
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
れはこん明治二十四年から六百六十三年ぜんのことで、又祥瑞五郎太夫しょんずいごろだゆう頃になりまして、追々と薄作の美くしい物も出来ましたが
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
〔譯〕死を畏るゝは生後の情なり、躯殼くかく有つて後にの情あり。死を畏れざるは生前の性なり、躯殼くかくはなれて始て是の性を見る。
五八も驚きしつかといだは若旦那にてありしか私し事は多く御恩ごおんあづかり何かと御贔屓下ごひいきくだされし者なれば先々まづ/\わけあとの事手前の宿やどへ御供を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
生中なまなかこがれて附纒つきまとふたとて、れてはれるなかではなし、可愛かあいひと不義ふぎせてすこしもれが世間せけんれたらなんとせう
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
で、わたくしかたしんじてゐます。來世らいせいいとたならば、其時そのときおほいなる人間にんげん智慧ちゑなるものが、早晩さうばんれを發明はつめいしませう。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「神武紀」にはまた「やつかれれ国つ神、名を珍彦うずひこふ」とあり、また同紀吉野の条には、「臣は是れ国つ神名を井光いひかす」
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼がたとえ若死わかじにをすればとてこの遠大なる理想を有するにおいては、これをもってただちに長命ちょうめいと呼ぶ、なんの不可ふかれあらんやである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
同廿四年、予の遠江とほたふみにあるや友人明石桜井君、一書を予に贈れり、題して蓬莱曲ほうらいきよくと曰ふ。れ楚囚の詩と作者を同ふする者。
北村透谷君 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
老イタル者ハからかさにな竿さおヲ擁シテ以テおのレガ任トナスといひ、於戯ああ翠帳紅閨すいちょうこうけい、万事ノ礼法異ナリトイヘドモ、舟中浪上、一生ノ観会かんかいレ同ジ
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
諸君、祭司長は、只今ただいますでに、無言をもって百千万言を披瀝ひれきした。れ、げにも尊き祭始の宣言である。しかしながら、いまだ祭司長の云わざる処もある。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
こゝを以て一たんを二丈七尺としても二万四千四百八十四度*5手をはたらかせざればたんをなさず、其凡そのおよそをいふのみ。
はひつて来たのは列車に乗込んだ役人と、支那に雇はれて居る英人の税関吏とである。荷物はれとれかと云つて、見たまゝ手を附けないで行つた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
なれど、愚老のいうのは——おおやけな大事のためには、私ごとの小事はれを天も咎めず人もゆるす——と申すのでござる。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
分ッたにも、う明白に分ッたよ、罪人は此老人が死切れた物と思い安心して逃て仕舞ッたが実はれが本統ほんとう天帝てんていの見張て居ると云う者だろうよ
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
あいちやんはうさぎ襯衣チヨツキ衣嚢ポケツトから時計とけい取出とりだして、面白おもしろさうにそれをいてしまうなんてことを、れまでけつしてたことがないわとこゝろ一寸ちよつとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
これこそは吉事よきこと凶事まがごとのいつぐべき世の中の道なるをもつて、さやうには推し量り知られることでござる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
たとへば両箇ふたつの犬の孤牝こひんづるに相似たり、浅ましきこといふべうもあらねど、さすがに我児のいとほしければ、お夏はこれすらいなむによしなし。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
まことれ一の夢幻界なり。湾に沿へる拿破里ナポリまちは次第に暮色微茫びばうの中に没せり。ひとみを放ちて遠く望めば、雪をいただけるアルピイの山脈こほりもて削り成せるが如し
ヴエスヴイオ山 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
あゝれ『きたるこゝろ』だらうか、何故なにゆゑ自然しぜんあいするこゝろきよたかくして、少女せうぢよ人間にんげん)をふるこゝろは『きたるこゝろ』、『いやらしいこゝろ』、『不健全ふけんぜんなるこゝろ
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
天子よりもって庶人に至るまで、一にれ皆身を修むるをもってもとす。その本乱れて末治まる者はあら
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
「徳川の政府に雇われたからというた所がれはいわば筆執る翻訳の職人で……ただ職人のつもりでおるのだから政治の考というものは少しもない」(『自伝』)。
福沢諭吉 (新字新仮名) / 服部之総(著)
の故に、空の中には色もなく、受、想、行、識もなく、眼、耳、鼻、舌、身、意もなく、色、声、香、味、触、法もなく、眼界もなく、乃至ないし、意識界もなし」
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
すなは作者さくしや精神せいしんめて脚色きやくしよくしたるもの、しかしてその殺人罪さつじんざいおかすにいたりたるも、じつれ、この錯亂さくらん、この調子てふしはづれ、この撞着どうちやくよりおこりしにあらずんばあらず。
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
若し此推測が當つてゐるとすると、伊澤の刀自の記憶してゐる蒔繪師は、ひとしくれ壽阿彌の妹の子ではあつても、手紙の中の「愚姪」とは別人でなくてはならない。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
月より流るゝかぜこずえをわたるごとに、一庭の月光げつくわう樹影じゆえい相抱あひいだいておどり、はくらぎこくさゞめきて、其中そのなかするのは、無熱池むねつちあそぶのうをにあらざるかをうたがふ。
良夜 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
黒河内尚網くろこうちひさあみというれでも子爵ししゃくなのですよ。伯母の子爵夫人というのは、京子といいました」
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(略)はちと余計なことなれど同人の昔の境界を存じ居るゆゑ筆次手ついでここに及び候也。(略)
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
蚊の食を求めるのもまたれ行、盲目の恋をするのもまたこれ行、生死も亦是れ行ではないか。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
貴詠ちと御ひまになり候はゞ御認め下され度、れ又希上候。匆々不備。九月十二日、鶴所。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
しかも日を経るにしたがって、蛙は一匹に止らず、二匹三匹と数増して、はては夜も昼も無数の蛙が椽に飛び上り、座敷に這込むという始末に、一同も尋常事ただごとでないと眉を顰め
池袋の怪 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蝸牛角上かぎゅうかくじょう何事をか争わん……石火光中の身を寄す……富にしたがい貧に随いしばらく歓楽す……口を開いて笑わざるは痴人ちじんのみ……老人は、何時かそんな詩を低吟ていぎんしていた。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
なんとくしたがそのもつとおほい(五三)彰明しやうめい較著かうちよなる者也ものなり近世きんせいいたるがごとき、(五四)操行さうかう不軌ふきもつぱ(五五)忌諱ききをかし、しか終身しうしん逸樂いつらくし、富厚ふうこうかさねてえず。
もちろん一方では上述の子路の面影をさらに拡大して、「れあるかな、子の迂なる」などと孔子に突っ掛かりながら、しかも孔子から愛撫包容せられる子路が描かれてはいる。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
場面はれヴェネチアに近き、チチアンが別荘の高台テラスの上である。この高台、うしろはところどころ打崩れたる石欄に仕切られてあり。それを越えて遠方の松樹白楊の梢が見られる。
昌黎しやうれいまこととせず、つまびらか仔細しさいなじれば、韓湘かんしやうたからかにうたつていはく、青山雲水せいざんうんすゐくついへ子夜しや瓊液けいえきそんし、寅晨いんしん降霞かうかくらふ。こと碧玉へきぎよく調てうたんじ、には白珠はくしゆすなる。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
われその男に近づきて慇懃いんぎんに笠を傾け、これはれ山路に踏み迷ひたる六部也。
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「それはれから探ぐるのだが……オヤ! オヤ! こいつは広東葱かんとんねぎだ!」
広東葱 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
不二よりるに、眼下に飜展ほんてんせられたる凸版地図レリイヴオ・マツプの如き平原のうち白面の甲府をぐりて、毛ばだちたるしわの波をたゝみ、その波頭に鋭峻えいしゆんとがりをてたるは、れ言ふまでもなく金峰山、駒ヶ嶽
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
つるぎつゑに。松陰まつかげの。いはほさゝへて。吐息といきつく。時哉をりしも見ゆる。若武者わかむしやは。そもいくさの。使つかひかや。ればころもの。美麗うるはしさ。新郎はなむことかも。あやまたる。其鬚髯そのほうひげの。新剃にひそりは。秋田あきたを刈れる。刈稻かりしねの。そろへるさまに。
「西周哲学著作集」序 (旧字旧仮名) / 井上哲次郎(著)
いや、重たい、くびの骨が折れて了ひさうだ。ところでればかりじやない、其處ら中に眼に見えぬはりがあつて、始終俺をつついて、いらつかせたり、いきどほらせたり、悶々させたり、ふさがせたりする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
見れば世の中には不可思議無量の事なしと言いがたこと仏家ぶっかの書には奇異の事をいだこれ方便ほうべんとなし神通じんつうとなして衆生しゅじょう済度さいどのりとせりの篇に説く所の怪事もまた凡夫ぼんぷの迷いを示して凡夫の迷いを
怪談牡丹灯籠:02 序 (新字新仮名) / 総生寛(著)
みなにくいがもととはへ、可愛かはゆいにもふかい/\えんがある……すればりゃにくみながらの可愛かはゆさ! 可愛かはゆいながらのにくさといふもの! からぢゃ! かなしいたはぶれ、しづんだ浮氣うはき目易めやすみにく
伏して念う、某、殺青さつせいを骨となし、染素せんそたいと成し墳壟ふんろうに埋蔵せらる、たれようを作って用うる。面目機発、人に比するにたいを具えてなり。既に名字めいじの称ありて、精霊しょうりょうの異にとぼしかるべけんや。
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)