なゝ)” の例文
平次の聲ははずみました。お勝手の外、日蔭の柔かい土の上に、なゝめにめり込んだ、梯子の足特有の跡が印されてゐるではありませんか。
鹿しかはおどろいて一度いちど竿さをのやうにちあがり、それからはやてにかれたのやうに、からだをなゝめにしてしました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
身を寄せてなかを窺ふと、なかくらかつた。立て切つた門の上に、軒燈がむなしく標札をらしてゐた。軒燈の硝子がらす守宮やもりかげなゝめにうつつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
みづあるうへには、よこわたつてはしとなり、がけなすくまには、くさくゞつてみちとなり、いへあるのきには、なゝめにめぐつて暮行くれゆあきおもひる。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
入れ又口の缺たる土瓶どびんは今戸燒の缺火鉢かけひばちの上へなゝめに乘て居る其體たらく目も當られぬ困窮こんきう零落れいらく向う三軒兩隣は丹波國の荒熊三井寺へ行かう/\といふ張子の釣鐘つりがね
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たけみきけながらなゝめにはやしをのぼつてうしろ戸口とぐちからうちへもどつたときさらさけんだ勘次かんじこゑくとともに、天秤てんびんかついだまゝぼんやりつて商人あきんど姿すがた庭葢にはぶたうへた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
きはめてせま溝板どぶいたの上を通行の人はたがひに身をなゝめに捻向ねぢむけてちがふ。稽古けいこ三味線しやみせんに人の話声はなしごゑまじつてきこえる。洗物あらひものする水音みづおときこえる。赤い腰巻こしまきすそをまくつた小女こをんな草箒くさばうき溝板どぶいたの上をいてゐる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
ならてなば力車ちからぐるまうしあせなんせきれるものかははぬがはなぞおまへさまはさかりのはるめきたまふはいまなるべしこもかぶりながら見送みおくらんとことば叮嚀ていねい氣込きごみあらくきり/\とひしばりてぐる眉根まゆねおそろしく散髮さんぱつなゝめにはらひあげてしろおもてくれなゐいろさしもやさしきつねには
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此女このをんなうへすわつて、むらさきをんなが、なゝめになよ/\とこしけた。おとしたもすそも、かゞめたつまも、痛々いた/\しいまでみだれたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけおほきな姿見すがたみうつ白壁しらかべいろなゝめにて、ばんるのをつてゐたが、あまり退屈たいくつになつたので、洋卓テーブルうへかさねてあつた雜誌ざつしけた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
持てぶら/\淺草へいでける處遠乘馬とほのりうま十四五疋烈敷はげしく乘來のりきたりしかば三吉後へにげんとするをり其の馬一疋なゝめに駈出し往來わうらいの者を踏倒す故三吉は狼狽うろたへて漸々馳拔はせぬけ諏訪町へ來り酒屋へ這入て懷中を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
八五郎は少しばかりなゝめです。
しづんでふ。はたせるかな殿しんがり痩按摩やせあんまで、くちをきくときもやぐ、つゑかいに、なゝめににぎつて、さかの二三ひくところに、伸上のびあがるらしく仰向あをむいてた。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけにはそのすないてむかふのほりはうすゝんでかげが、なゝめにかれるあめあしやう判然はつきりえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
すゝむるにやゝ三四升ほども飮しかば半四郎は機嫌なゝめならずうたひを謠ひ手拍子てびやうしうつて騷ぎ立るにとなり座敷のとまり客は兎角に騷がしくしてねむる事もならず甚だ迷惑めいわくなし能加減いゝかげんしづまれよとふすま一重ひとへ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あゝ、いとも、」といつて向直むきなほつて、おしな掻潛かいくゞつてたすきはづした。なゝめに袈裟けさになつて結目むすびめがすらりとさがる。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くもつたのかと思つて、わざ/\椽側迄て、かす様にしてのきを仰ぐと、ひかるものがすぢを引いてなゝめにそらを流れた。代助は又蚊帳かやまくつて這入つた。寐付ねつかれないので団扇をはたはた云はせた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おつこちるといきほひよくみつツばかりくる/\とまつたあひだに、鮟鱇博士あんかうはかせいつツばかりおまはりをして、をのばすと、ひよいとよこなぐれにかぜけて、なゝめにんで
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
くるまは遠いはらなかちいさく見えた。はらくるまちいさくえる程、ひろかつた。の様に毒々しくつた。代助は此光けいなゝめにながら、かぜつて電車に持つてかれた。おもあたまなかがふら/\した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
くすのき材木ざいもくなゝめにつて、屋根裏やねうられてちら/\する日光につくわううつつて、ふべからざる森嚴しんげんおもむきがある。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
美女たをやめたもとつて、そでなゝめに、ひとみながせば、こゝろあるごとさくらえだから、花片はなびらがさら/\としろかざしはなかすめるときくれないいろして、そで飜然ひらりまつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それからにちおなじことをしてはたらいて、黄昏たそがれかゝるとうすづき、やなぎちからなくれてみづくらうなるとしほ退く、ふねしづむで、いたなゝめになるのをわたつていへかへるので。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふねどう嬰兒あかご一人ひとり黄色きいろうらをつけた、くれなゐたのがすべつて、婦人をんなまねくにつれて、ふねごときつけらるゝやうに、みづうへをする/\となゝめにく。
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かたなゝめにまへおとすと、そでうへへ、かひなすべつた、……つきげたるダリヤの大輪おほりん白々しろ/″\と、れながらたはむれかゝる、羽交はがひしたを、かるけ、すゞしいを、じつはせて
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なんでございます、まあ、」と立停たちどまつてたのが、ふたツばかり薄彩色うすさいしき裾捌すそさばきで、にしたかごはなかげが、そでからしろはださつ透通すきとほるかとえて、小戻こもどりして、トなゝめに向合むきあふ。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「おくんな。」とつて、やぶしたをちよこ/\とた、こゝのツばかりのをとこ脊丈せたけより横幅よこはゞはうひろいほどな、提革鞄さげかばんふるいのを、幾處いくところ結目むすびめこしらへてかたからなゝめに脊負せおうてゐる。
山の手小景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
やつこかほげ、かたなゝめにしながら、一息ひといきばた/\團扇うちはをばツばツとあふいで
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……がとびらひらいて、伝説でんせつなき縁起えんぎなき由緒ゆいしよなき、一躰いつたい風流ふうりうなる女神によしんのまざ/\としてあらはれたか、とうたがはれて、かたはらたなのこつた古幣ふるぬさなゝめにつたのにたいして、あへはゞかるべきいろかつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まただまつて俯向うつむいた、しばらくするとかほげてなゝめに卷煙草まきたばこ差寄さしよせて
三尺角拾遺:(木精) (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
戸袋とぶくろへ、立身たちみなゝめにちかづいて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
莞爾につこり。で、なゝめにる……
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なゝめに黄色きいろゆきつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)