なら)” の例文
旧字:
秘密警備隊員の笹枝弦吾ささえだげんごは、さだめられた時刻が来たので、同志の帆立介次ほたてかいじと肩をならべてS公園のわきをブラリブラリと歩き始めていた。
間諜座事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とう時、わたしの一家は長さきんでゐた。その長さきには、下岡蓮杖おうならんで、日本寫しんかい元祖ぐわんそである上野彦馬おうが同じくんでゐた。
まちまして、いろいろりっぱなものをならべた店頭みせさきとおりましても、それは、ただるばかりで、すららなかったのであります。
赤い手袋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまおきならんでうかこれも無用なる御台場おだいば相俟あひまつて、いかにも過去すぎさつた時代の遺物らしく放棄された悲しいおもむきを示してゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
一ツの羽子をならびたちてつくゆゑに、あやまちて取落とりおとしたるものははじめに定ありて、あるひは雪をうちかけ、又はかしらより雪をあぶする。
私はそのくびから鉄鎖てつぐさりを取り、羊飼ひつじかいに手伝わせて、ロボをブランカの死体をおいた小舎こやへ運び入れて、そのかたわらにならべてやった。
大体、三番のかじさんと、四番のぼくはならんで引くのが原則ですが、下手糞へたくそため、時々、五番の松山さんや整調の森さんとも引きます。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
みちみち孔子と昨夜の老人とをならべて考えてみた。孔子の明察があの老人におとる訳はない。孔子のよくがあの老人よりも多い訳はない。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
其晩そのばん宗助そうすけうらからおほきな芭蕉ばせうを二まいつてて、それを座敷ざしきえんいて、其上そのうえ御米およねならんですゞみながら、小六ころくことはなした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はしのあつたのは、まちすこはなれたところで、堤防どてまつならむではつてて、はしたもと一本いつぽん時雨榎しぐれえのきとかいふのであつた。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして二まい大畫たいぐわ今日けふ所謂いはゆ大作たいさく)がならべてかゝげてあるまへもつと見物人けんぶつにんたかつてる二まい大畫たいぐわはずとも志村しむらさく自分じぶんさく
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
三条さんじょうまでると、たくさんりっぱなお屋敷やしきならんだ中に、いちばん目にたってりっぱな門構もんがまえのお屋敷やしきがありました。一寸法師いっすんぼうし
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
白はただ夢のように、ベンチのならんでいるみちばたへ出ました。するとその路の曲り角の向うにけたたましい犬の声が起ったのです。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
教会と市役所のあいだには、広場をとりかこんで、さまざまのかざりのついた、見るも美しい破風はふのある家々が立ちならんでいました。
程なく彼の船と、警固けいごはしけとが、両国下の横堀へ入ると、そこの一つ目橋の上に、先刻さっきの十一名が欄干に姿をならべていた。そして
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この広い屋敷の中には、私達の家の外に、同じような草花や木に囲まれた平家ひらやが、円をえがいたようにまだ四軒ほどもならんでいた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
それとも、ご馳走ちそうのたくさんならんでいる食卓しょくたくについて、一さらごとに銀の紙で口もとをふきたいものだと望んでいたのでしょうか。
をどり周圍しうゐにはやうや村落むら見物けんぶつあつまつた。混雜こんざつして群集ぐんしふすこはなれて村落むら俄商人にはかあきんどむしろいて駄菓子だぐわしなし甜瓜まくはうり西瓜すゐくわならべてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
勞働者勞働者と一口にいやしんだツて、我々われ/\も其の勞働者と些ツとも違やしないぢやないか。下らぬ理屈りくつならべるだけかえツて惡いかも知れない。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
で、松竹梅しょうちくばいと三つならべてたら、つよいのとよわいのとの両極端りょうきょくたんまつたけとで、うめはその中間ちゅうかんくらいしてるようでございます。
そんなたけやぶの大きなたけを割って、それをならべてこしらえた、八絃琴はちげんきんは、それはそれは調子がよくととのって申し分がない。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
ならてる内にアノ山口巴から來る若旦那かへと小夜衣は空然うつかり長庵の口にのせられさればなりその三河町の若旦那はとんいたちみち
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ながらぢやうさまは何處いづこへぞお姿すがたえぬやうなりと人騷ひとさわがせするもあり乳母うばろく/\あはさずおたかかたへ寢床ねどこなら浮世うきよ雜談ざふだん諷諫ふうかん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ロミオ はて、びるとへば、そのびるとは足下きみはなしたぢゃ、いま天下てんかならびもない拔作ぬけさくどのとは足下きみのことぢゃ。
スミレの果実は三殻片かくへんからなっているので、それが開裂かいれつするとまったく三つの殻片かくへんに分かれる。そしてその各殻片内かくへんないに二列にならぶ種子を持っている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
わたくし斷言だんげんする、わしごとたけく、獅子しゝごといさましき列國れつこく艦隊かんたい百千舳艫ひやくせんじくろならべてきたるとも、日章旗につしようきむかところおそらくば風靡ふうびせざるところはあるまいと。
洋傘ようがさ直しは農園のうえんの中へ入ります。しめった五月の黒つちにチュウリップは無雑作むぞうさならべてえられ、一めんにき、かすかにかすかにゆらいでいます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いざ入ってみるとそこは、あまり小奇麗こぎれいとも言えぬ手狭な一間で、貧乏びんぼうくさい家具のならかたも、まるで急場しのぎにやってのけたといった様子だった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
入り口と周壁しうへきの或る部分ぶぶんにはむしろを下げ置きしなるべく、地上ちじやうには木材をならべ、其上に席、もの獸皮じうひ木皮抔もくひなどつらねて座臥の塲所とせしなるべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
御徒士町辺おかちまちあたりとほつて見るとお玄関げんくわんところ毛氈もうせん敷詰しきつめ、お土蔵くらから取出とりだした色々いろ/\のお手道具てだうぐなぞをならべ、御家人ごけにんやお旗下衆はたもとしゆう道具商だうぐやをいたすとふので
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そのクリスマス・ツリーには、あかりや、金紙きんがみや、りんごが、どっさりつるさがっていて、そのまわりは、人形にんぎょうやおもちゃの馬が、ぎっしりならべてある。
復一の家の縁に、立てかけてしてある金魚おけならんで腰をかけて鼎造は復一の育ての親の宗十郎と話を始めた。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
モイセイカは今日けふ院長ゐんちやうのゐるために、ニキタが遠慮ゑんりよしてなに取返とりかへさぬので、もらつて雜物ざふもつを、自分じぶん寐臺ねだいうへあらざらひろげて、一つ/\ならはじめる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
どっさりと酒を買うて百十四、五名のラマ及び尼さんを招き、銘々本堂の仏の前にずらりとならんで椀を持って居ります側からどしどしいでまわるのです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それが次第に近寄って、むくむくと大蛇だいじゃが横にうように舟のへさきへ寄って来たかと思うと、舳をならべていた小舟は一斉いっせいに首をもたげて波の上に乗りました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
ベートーヴェンとブラームスのヴァイオリン協奏曲コンチェルトならべて、世に所謂いわゆる三大ヴァイオリン協奏曲の一つである。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
象の背中せなかには、桃色ももいろの洋服をきたかわいい少女が三人、人形のようにちょこんとならんでのっかっています。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
すなわち彼等の目的もくてき時機じきに投じて恩威おんいならほどこし、くまでも自国の利益りえきらんとしたるその中には、公使始めこれに附随ふずいする一類いちるいはいにも種々の人物じんぶつありて
そのうちに、赫映姫かぐやひめならぶものゝないほどうつくしいといふうはさを、ときみかどがおきになつて、一人ひとり女官じよかん
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
この日に家康は翠色みどりいろ装束しょうぞくをして、上壇じょうだんたたみを二帖敷じょうしかせた上に、暈繝うんげんの錦のしとねを重ねて着座した。使は下段に進んで、二度半の拝をして、右から左へ三人ならんだ。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
美佐子はベッドの上に腹匐はらばって、青年紳士はその頭のところへ立って。——青年紳士は蟇口がまぐちから何枚かの紙幣をつかみ出してベッドの上にならべているところであった。
秘密の風景画 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ちょうどならんだ隣の寝台に父は繃帯した片手を胸にあてて眠っている、ひげもびんも焼けちぢれてところどころ黒ずんでいるほおは繃帯のあいだからもれて見える。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
わたしふたゝびS、Hかたならべてゐたとき、これといふ話題わだいもなかつたので、ふとIのことをはなした。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
奈良を立ったのが早かったので、われわれはひる少し過ぎに上市の町へ這入はいった。街道にならぶ人家の様子は、あの橋の上から想像した通り、いかにも素朴そぼくで古風である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その翌日の二月朔日はことに名が多く、ならべ正月、重ね正月、正月ともヒシテ正月とも、またひと日正月ともいう処があって、この一日だけが多くは休みであった。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
がけうへ觀音樣くわんのんさまには茶店ちやみせがありました。密柑みかんやたまご 、駄菓子だぐわしなんどをならべて、參詣者おまへりびと咽喉のど澁茶しぶちやしめさせてゐたそのおばあさんは、苦勞くらうしぬいてひとでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
1か7か9か6かと眼をらした途端とたん、はやゴール直前で白い息をいている先頭の馬にならび、はげしく競り合ったあげく、わずかに鼻だけ抜いて単勝二百円の大穴だ。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
あれだ、若旦那わかだんな。あっしゃァうしろにいたんじゃねえんで。若旦那わかだんなならんで、のぞいてたんじゃござんせんか。こしすにもさないにも、まず、とどきゃァしませんや。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
祖母おばあさんはふるこけえたおはかのいくつもならんだ石壇いしだんうへ綺麗きれいいたり、みづをまいたりして
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれは、田川の声には無頓着むとんちゃくなように、ならべられていく机の列をじっとにらんでは、そのみだれを正していた。——二人とも、それぞれに室長に選ばれていたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)