)” の例文
さかんにえていた、西にしうみほのおが、いつしかなみあらわれて、うすくなったとおもうと、まどからえるそらも、くらくなりかけていました。
雲と子守歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
烈々れつ/\える暖炉だんろのほてりで、あかかほの、小刀ナイフつたまゝ頤杖あごづゑをついて、仰向あふむいて、ひよいと此方こちらいたちゝかほ真蒼まつさをつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
言いつけられたとおりにわたしがしていると、かれは火の中から一本小えだを引き出して、火をふき消して、えている先をいた。
いいえ、」とおかあさんがった。「わたしはむねくるしくって、がガチガチする。それでみゃくなかでは、えているようですわ。」
左手のなぎさには、なみがやさしい稲妻いなずまのようにえてせ、右手のがけには、いちめんぎん貝殻かいがらでこさえたようなすすきのがゆれたのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
よる燭火ともしびきて、うれしげなあしためが霧立きりたやまいたゞきにもうあし爪立つまだてゝゐる。はやぬればいのちたすかり、とゞまればなねばならぬ。
というのは、いまズルスケにむかって投げつけたあさたばから、とうとうベッドのカーテンにまで火がえうつってしまったのです。
裏戸口うらとぐちかきしたゑられた風呂ふろにはうししたしてはなめづつてやうほのほけぶりともにべろ/\とつていぶりつゝえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、自在鉤じざいかぎかっている下には、つい昨夜さくや焚火たきびをしたばかりのように新しいはいもり、木のえだえさしがらばっていた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ひながら、とうさんは蝙蝠かうもりと一しよになつてあるいたものです。どうかすると狐火きつねびといふものがえるのも、むら夕方ゆふがたでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
天井てんじようまであがつたならば、屋根やねまで打拔うちぬいて火氣かきくこと。これはほのほ天井てんじようつてひろがるのをふせぐに效力こうりよくがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
母親は二階のとこの間に、ゆるような撫子なでしこと薄紫のあざみとまっ白なおかとらのおといろいこがねおぐるまとをぜてけた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
惜しい夜もけた。手をきよめに出て見ると、樺の焚火たきびさがって、ほの白いけむりげ、真黒な立木たちきの上には霜夜の星爛々らんらんと光って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さてその農民小屋のうみんごやにはひつてると爐邊ろへんにはまきやされてあつて、その地方ちほう風俗ふうぞくをしたぢいさんがたばこをいぶらしてゐたり
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
しゅうたおのずとわたくしくちいてたのもそのときでございます。真嶺さねし、相摸さがむ小野おのに、ゆるの、火中ほなかちて、いしきみはも……。
というと、木隠龍太郎こがくれりゅうたろうは、手ばやく、用意ようい松明たいまつ焚火たきびっこんでえうつし、それをふりかざしてまっさきに走りだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれどあいにくなことには、ほうがだんだん心細こころぼそくなって、ありったけのまきはとうにやしつくしてしまいました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
脊戸せどした雨傘あまがさに、小犬こいぬがじやれゝつて、じやいろがきら/\するところ陽炎かげろふえるごと長閑のどかおもはれるもあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そんなはなし最中さいちうにサァーツとおとをたてゝうるしのやうにくらそらはうから、直逆まつさかさまにこれはまた一からすがパチパチえてる篝火かがりびなかちてきた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
やま陽炎かげらふえてきます。ところによつて時季じきはむろんちがひますが、東京附近とうきようふきんでは三月さんがつ中旬頃ちゆうじゆんごろから五月頃ごがつごろまでに、します。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
工夫くふうでなくとも、自然しぜんにその作者さくしやこゝろつてゐると、かういふふうにつごうのよい氣分風きぶんふうあらはかたが、くちをついてるのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
のついていない部屋へやくらかった。ただ赤々あかあかとさかんにえている暖炉だんろの火が、あたりをぼんやりと照らしだしていた。
なにしろさむくていかぬとて、焚火たきびなんかはしめて、松薪まつまき完全くわんぜん、これはえがいから珍品ちんぴんだなんてつてるのである。
老人のせきする声と源四郎がときどきへっついにやす火の音のほか、声立てる人もない。かくていまこの一家は陰悪いんあくな空気にとざされているのである。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それほど、このをとこの惡を憎む心は、老婆のゆかに挿した松の木片のやうに、勢よくあがり出してゐたのである。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
それから四半刻ばかり經つて、線香がきると、鐵砲は獨りでドンと鳴つた。彈丸は寸分の狂ひもなく、唐紙を突き拔けて、半兵衞の首筋から胴へ——
本町橋ほんまちばし東詰で、西町奉行堀に分れて入城した東町奉行跡部は、火が大手近くえて来たので、ゆふ七つ時に又坂本以下の与力同心を率ゐて火事場に出馬した。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなればはじめより此上このうへらで、世間せけん裏屋うらやかぎれるものとさだめ、我家わがやのほかに天地てんちのなしとおもはゞ、はかなきおもひにむねえじを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
すだのって、茲辺ここいらにまごまご出来て宜いじゃねえか、そのうちにあ、吉さん(下男の名)が野良から帰って足洗いに来るものなあ、それ、お前果報かほうだんべい
かやの生立 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
(私はいまもそのじゅうを記念として大事にしている)両眼りょうがんにくしみといかりに青くえ、私をにらんで底うなりを発したとき、私の乗馬はふるえてあとずさりした。
時々とき/″\使童ボーイ出入しゆつにふして淡泊たんぱく食品くひもの勁烈けいれつ飮料いんれう持運もちはこんでた。ストーブはさかんえてる——
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ういたしましてお蔭様かげさまで助かりましてございます。女「そこにがありますよ、焚付たきつけがありますから。囲炉裡ゐろりなか枯木かれきれフーツとくとどつとあがりました。 ...
其様な場合ばあひには、まぶたのはれぼツたいせいか、層波目ふたかわめ屹度きつとふかきざみ込まれて、長い晴毛まつげしたうるみつ。そしてうちえてゐるねつが眼に現はれて來るのでは無いかと思はせる。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
その秘密をまた知って、おかんは嫉妬のほむらをいよいよした。世間しらずのお朝は、いたずらの罰が忽ち下されたのに驚いて、自分のからだの始末を泣いて重吉に相談した。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
安は連れて来た職人と二人して、なたで割った井戸側へ、その日の落葉枯枝を集めて火をつけ高箒たかぼうきでのたうち廻って匍出す蛇、蟲けらを掻寄せてした。パチリバチリ音がする。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
巨象が行水ぎょうずいしているようでもある。船体からは、例の青白い燐光りんこうがちらちらとえている。
幽霊船の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
是等の中には煮焚にたきの爲、温暖おんだんを取らん爲、又は屋内おくないを照さん爲、故意に焚き火せし跡も有るべけれど、火災くわさいの爲屋根のちたる跡も有らん。屋根の事は次項に記すべし。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
すでに三十のではあったが、十四五のころからはやくも本多小町ほんだこまちうたわれたおれんは、まだようやくく二十四五にしかえず、いずれかといえば妖艶ようえんなかたちの、情熱じょうねつえたえて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そしていざお産をなさるというときに、そのお家へ火をつけておやしになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
かれその火の盛りにゆる時に、れませる子の名は、火照ほでりの命(こは隼人阿多の君の祖なり。)次に生れませる子の名は火須勢理ほすせりの命、次に生れませる子の御名は火遠理ほをりの命
えたゝせたことか! なんと素晴しい感動をその光は私に與へたことだらう! そしてその新らしい感情が如何に私をはげましたか! それはあたかも殉教者や英雄が奴隷どれいや犧牲者の側を
たはむれに枯草かれくさうつした子供等こどもらは、はるかにえる大勢おほぜい武士ぶし姿すがたおそれて、周章あわてながらさうと、青松葉あをまつばえだたゝくやら、えてゐるくさうへころがるやらして、しきりにさわいでゐた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わたくし人並ひとなみ生活せいくわつこのみます、じつに、わたくし恁云かうい窘逐狂きんちくきやうかゝつてゐて、始終しゞゆうくるしい恐怖おそれおそはれてゐますが、或時あるとき生活せいくわつ渇望かつばうこゝろやされるです、非常ひじやう人並ひとなみ生活せいくわつのぞみます、非常ひじやう
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ひたむきの執念に、こがれたお初、かごに揺られながら、もう広小路を越して、いよいよ湯島の切りどおし、それも、半ばは上って来たと思っていると、ふと足音がだしぬけに近づいて
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ただうらみだけがわしの生命をやしているのだ。わしは死んでただわしの恨みだけが生きているのだ。わしは恨みそのものだ。わしは生きながらの怨霊おんりょうだ。(耳をそばだてる)あゝ風の音か。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
火がえ出したらテン太郎さん そこのボタンをして下さい
空黄色にぽうつとゆる翌朝の たゆき瞼をとぢてたゝずむ
女郎買の歌 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
ゆくりなく闇に大きく菊動くと見れば向うに火のえあがる
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あわただしゆる焔の火車を忘れてにしつらき君かな
短歌 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
未だえるだけ燃えたことのない太陽の子である
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)