あら)” の例文
洗ったように綺麗で、砂一つついていない。古い物なら腐ってもいようし、色も少しは変っていよう。あらなら新でまたそのしるしがあるはず。
この方面であらたに発見された諸国のうちでは、日本国民のみがキリスト教を伝えるのに適している。かく彼は力強く主張しているのである。
鎖国:日本の悲劇 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
彼女かのぢよ恐怖きようふは、いままでそこにおもいたらなかつたといふことのために、餘計よけいおほきくかげのばしてくやうであつた。彼女かのぢよあらたなるくゐおぼえた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
読み返しくに、はづかしきことのみ多き心の跡なれば、あきらかにやはらぎたるあら御光みひかりもとには、ひときはだしぐるしき心地ぞする。晶子
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
其他そのたあらたに温泉おんせん冷泉れいせんはじめることもあり、また炭酸瓦斯たんさんがす其他そのた瓦斯がす土地とちからして、とり地獄じごくむし地獄じごくつくることもある。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
やがて時計とけいが、十一時半じはんになろうとしたときです。ゴウ、ゴウといってあらたに電車でんしゃがつくと、まもなく人々ひとびとが、ばらばらと階段かいだんりてきました。
夕焼けがうすれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
小説ならば、パアトが改まるところである。で、かれはページの裏を半分白いままにしておいて、次の頁からあらたに書き始めた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
つまり、アメリカが深い地下街爆撃用にとあらたに作った爆弾で、A種弾とB種弾と二つに分れているんだ。まず初めにA種弾をどんどんとすのさ。
日本は三千年の古い帝国なりといえども、明治の気運は全く新たなり。ただめいあらたなり。世界的に活動を要する。欧州の大戦も早晩平和は来る。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
やがて青木さんはその冷やかな現実げんじつ意識いしきのがれようとするやうに、あらたな空さうをゑがきながら、おくさんを振返ふるかへつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
來年らいねんはこれよりもうつくしい初日はつひをがみたいものだ。』とつた言葉ことば其言葉そのことばかたおぼえてて、其精神そのせいしんあぢはうて、としとも希望きばうあらたにし
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
其内そのうちやまなかは、一日々々いちにち/\つた。御米およねからはなりなが手紙てがみがもう二ほんた。もつとも二ほんともあらたに宗助そうすけこゝろみだやう心配事しんぱいごといてなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
風雨氷雪の外には未だ曾て経験したことのないこの山に、更にあらたなる破壊力の加わったことを思うと、此時寧ろ予定を変更して其いただきを窮めなかったことが
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
みがき格子こうしあらのれん、小僧の数も四人あまりちらついて、年の瀬を控えた店先には客足もまた多いのです。
外國語ぐわいこくごやくして日本語にほんごとするのは勿論もちろん結構けつこうであるが、そのやく適當てきたうでなかつたり、拙劣せつれつであつたり不都合ふつがふなものが隨分ずゐぶんおほい、あらたに日本語にほんごつくるのであるから
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
あのお爺様じいさまむかしから産土神うぶすなのお神使つかいとして、あらたに帰幽きゆうしたもの取扱とりあつかうことにかけてはこのうえもなくお上手じょうずで、とてもわたくしなどの足元あしもとにもおよぶことではありませぬ。
船橋屋も家はあらたになつたものの、大体は昔に変つてゐない。僕等は縁台えんだいに腰をおろし、鴨居かもゐの上にかけ並べた日本アルプスの写真を見ながら、葛餅を一盆ひとぼんづつ食ふことにした。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やゝとき乘客じようかくは、活佛くわつぶつ——いまあらたにおもへる——の周圍しうゐあつまりて、一條いちでう法話ほふわかむことをこひねがへり。やうや健康けんかう囘復くわいふくしたる法華僧ほつけそうは、よろこんでこれだくし、打咳うちしはぶきつゝ語出かたりいだしぬ。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一、右数条余いたずらに書するにあらず。天下の事を成すは、天下有志の士と志を通ずるに非ざれば得ず。しこうして右数人は余この回あらたに得る所の人なるを以て、これを同志に告示するなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
けれどもさいわいに子家鴨こあひるはうまくげおおせました。ひらいていたあいだからて、やっとくさむらなかまで辿たどいたのです。そしてあらたにつもったゆきうえまったつかれたよこたえたのでした。
けれど、その年の夏から、翌元禄十五年の秋までの、一年余りの佗暮わびぐらしは、丹女にとって、もう一度あらたに十内へして、百年ももとせのちぎりを結び直したほど、欣ばしくもあり楽しくもあった。
やまきたの濃染手拭、酒の名の「うしほ」の盃、引出よと祝ふとわけて、我が老舗しにせ酒はよろしと、あらの桝酒にみがくと、春や春、造酒みき造酒みきよと、酒はかり、朱塗の樽のだぶすぬき、神もきかせとたがたたき
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
實質が既に違つた以上は、その形の破れてあらたまるのを認める法律が必要だ。
なにとせんとかうてゝ、垣根かきねひまよりさしのぞけば、いましも雲足くもあしきれてあらたにらしいだつきひかりに、見合みあはしてたつたるひと何時いつ此所こゝへはて、いままでかくれてゞもしものか
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
冷泉れいぜんをレンゼイ(後にはさらにレイゼイと訛る)、定考じょうこうをコウジョウ、称唯しょういをイショウ、あらたしいをアタラシイ、身体からだをカダラ、茶釜ちゃがまをチャマガ、寝転ぶをネロコブという類みなこれである。
彼が経験なき壮年の身にしては、頼みなき身を慰むることの行き届けるに、感心したり、阿園はまた二三日ごとに墓の掃除せられ、毎朝己れに先だって線香立ち、花され、花筒の水もあらたまり
空家 (新字新仮名) / 宮崎湖処子(著)
つけ追出し候儀と存じ奉つり候其後右九助多分の金子にて質地取戻し其上そのうへあらたに田地でんぢ買請かひうけ當時名主役つかまつり候へ共私欲しよく押領あふりやう宜しからざる儀共多く有之に付惣内歸役きやく願ひも致させたく小前こまへの百姓共時々とき/″\寄合も有之由之に依て其等それらの儀を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ふる怨恨うらみまたあらたに
またあらたなる世にいでて
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
あらたなり流離のうれ
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
枕山が律詩の前半に曰く「餞歳依然問水浜。喜看結構画楼新。樽前相会十除夕。城裏誰如両散人。」〔餞歳依然トシテ水浜ヲ問フ/喜ビ看ル結構画楼ノあらタナルヲ/樽前相会ス十タビノ除夕/城裏誰カカン両散人ニ〕松源楼は大正の初まで残っていたので今なお都人に記憶せられている酒楼である。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
此頃このごろおい日本地震學界につぽんぢしんがつかい解散かいさんむなきにいたつたが、あらたにわが政府事業せいふじぎようとしておこされた震災豫防調査會しんさいよぼうちようさかいこれかはつた。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
「まあ台所だいどこで使う食卓ちゃぶだいか、たかだかあら鉄瓶てつびんぐらいしか、あんな所じゃ買えたもんじゃありません」と云った。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そのうちに、風雨ふううわって、せっかくがったが、いくたびとなくされたのです。けれど、おつは、熱心ねっしんに、そのたびにあらたにつけたのでした。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
旧邦といえどもそのめいあらたなり。古い国もここに大改革をして将来に新しい運命を開き、人心を新たにし、国民の思想を新たにし、国民の働きを新たにする。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
「では、戦争否定同盟の同志として、あらたに命令する。大至急で、全国放送の用意をして呉れ給え」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ただ一つここで御披露ごひろうしてきたいとおもいますことは、神馬しんめけんで……。つまり不図ふとした動機どうきから小桜神社こざくらじんじゃ神馬しんめが一とうあらたにわれることになったのでございます。
また、そう訊くのがおきまりだと申します。……三度のもの、湯水より、蝋燭でさえあれば、と云ううちにも、そのおんなは、あらのより、燃えさしの、その燃えさしのにおいが、何とも言えず快い。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なにかしらむねほこらしさにいつぱいで、丁度ちやうどひとから稱讃しようさん言葉ことばちうけてゐでもするやうにわく/\する。彼女かのぢよなほもそのよろこびと安心あんしんあらたにしようとするやうにふたゝ手紙てがみをとりあげる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ふかく筐底きょうていに秘めて、人にも示さず、翌年またあらたに一代の工夫と体験の精髄とをしるし、その年の末、ふたたび晩年に悟得ごとくした吹毛剣のことについて書き加えなどしていたが、翌年の春になると
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
味噌漉し縞縮緬の女物の紙入れを素膚すはだに、これだけは人柄の掴み絞りの三尺、亀島町の薬種問屋近江屋がお年玉に配ったあらの手拭いを首に結んで、ここ合点小路の目明し親分、釘抜藤吉身内の勘次は
鶴の巣と松の根方に敷く藁は今朝けささやさやしあら麥稈むぎから
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「まあ臺所だいどころ使つか食卓ちやぶだいか、たか/″\あら鐵瓶てつびんぐらゐしか、んなところぢやへたもんぢやありません」とつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これにつきてはあとくわしく申上もうしあげますが、かくあらたに幽界ゆうかいはいったもので、ったかみ神使つかい西洋せいようもう天使エンゼルのお世話せわあずからないものは一人ひとりもございませんので……。
活火山かつかざんあらたに活動かつどう開始かいししようとするとき何等なんらかの前兆ぜんちようともな場合ばあひがある。土地とち噴火前ふんかぜん次第しだい隆起りゆうきしたことは、大正三年たいしようさんねん櫻島噴火さくらじまふんかおいはじめてづかれた事實じじつである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
獣医じゅういのもとへいってみますと、ほかにもたくさんの、病気びようきいぬねこ入院にゅういんしていました。ほかの病気びょうきいぬは、おりなかから、くびをかしげて、あらたにきた患者かんじゃをながめていました。
おじいさんの家 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは貴方をもあらたに悲しませることになるかもしれないが、武夫君を救うためには、それもむを得ない。さあ、ではこれからソッと武夫君を見せてあげますから、私の背中におんぶなさい
地球盗難 (新字新仮名) / 海野十三(著)
鶴の巣と松の根方に敷く藁は今朝けささやさやしあら麦稈むぎから
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あらも新、四時よときばかりの——。」
御米およねすゝめどほりかみつたはうが、結局つまりあらたにする効果かうくわがあつたのを、つめたい空氣くうきなかで、宗助そうすけ自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)