我家わがや)” の例文
しるべの燈火ともしびかげゆれて、廊下らうかやみおそろしきをれし我家わがやなにともおもはず、侍女こしもと下婢はしたゆめ最中たゞなかおくさま書生しよせい部屋へやへとおはしぬ。
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我家わがやにかへり、かなたこなたにつぶやくさまさながら幸なき人のせんすべしらぬごとくなれども、のち再びいづるにおよびて 一〇—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
いつになく元のいい、明るい顏付かほつきつとめ先からかへつて※たM会社員くわいしやゐんの青木さんは、山ののあるしづかな裏通うらとほりにある我家わがやの門口をはひると
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
もちおもりのする番傘ばんがさに、片手腕かたてうでまくりがしたいほど、のほてりに夜風よかぜつめたこゝろよさは、横町よこちやう錢湯せんたうから我家わがやかへおもむきがある。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その家が以前の我家わがや——倒産した油堀の伊勢八のあとであろうとは——彼女は目くらめく心地で台所の敷居を踏んだ。
明治美人伝 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
是非なくに紛れて我家わがやに帰れば、こはまた不思議や、死人の両手は自然に解けてたいは地にち、見る見る灼々しゃくしゃくたる光輝を発して無垢むくの黄金像となりけり。
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
さてなにがしぼくしたが我家わがやをさしてかへみちすがらさき雲飛うんぴが石をひろつた川とおなじながれかゝつて居るはしまで來ると、ぼくすこかたやすめるつもりで石を欄干らんかんにもたせてほつ一息ひといき
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
年季が明けて一旦我家わがやに帰っては来ましたが、元来、十二歳から十一年間、師匠の家におり、ほとんど内の者同様にされ、我が家のように思っておったこととて
と圓次郎のいえを出まして、我家わがやの門まで来ると、生垣の榎木の所に青がにょきりと立って居りました故
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
全市ぜんしとみへても、我家わがや危害きがいくはへたうない。ぢゃによって、堪忍かんにんしてふりをしてゐやれ。
彼は案内もわず、わしの家へ入って来る程親しかった。わしの家を我家わがやの様にふるまった。瑠璃子とも大の仲よしで、三人鼎座ていざして、罪もなく笑い興じる日が多かった。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
も云ず面を見詰みつめて居たりしが今日は仕方なし明日あすからはせいを出してかふやうに致されよ左右とかく其樣な事にては江戸えど住居すまひは出來難し先々御やすみなされと云捨いひすて我家わがやへこそはかへりけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いざ我家わがやへとて、いなむをうながし、つれ還へり、酒をまうけ、にはとりを殺し、ねんごろに、ふるまひなすうちに、村のものども、まれびとありと聞きつ、みなこの家へ尋ね來りぬ
桃花源記序 (旧字旧仮名) / 狩野直喜(著)
処が此間大坂の我家わがやから、もー学校の始まるのも近々ちか/″\になつたのだから早く帰れと云ふて手紙が来たので仕方がなく帰る事にした で、今朝けさ立つと云ふ処であつたのが、馴染なぢみになつためい
夜汽車 (新字旧仮名) / 尾崎放哉(著)
八重何が故に我家わがやを去れるや。われまた何が故にその後を追はざりしや。『矢筈草』の一篇もとこの事を書綴りて愛読者諸君のお慰みにせんと欲せしなり。新聞紙三面の記事は世人せじんの喜ぶ所なり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
老栓は歩いて我家わがやに来た。店の支度はもうちゃんと出来ていた。茶卓は一つ一つ拭き込んで、てらてらに光っていたが、客はまだ一人も見えなかった。小栓は店の隅の卓子テーブルに向って飯を食っていた。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
ちかよりみればくらひゐたるは人のあしなり。農夫大におどろき、さては村ちかくきつるならんと我家わがやをきづかひおほかみはそのまゝにしてはせかへりしに、家のまへの雪の白きにのくれなゐをそめけり。
晝の野に子らと出て來てかへり見る我家わがやにしあれや白木槿しろむくげの花
白南風 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かみもおはしまさば我家わがやのきとゞまりて御覽ごらんぜよ、ほとけもあらば此手元このてもとちかよりても御覽ごらんぜよ、こゝろめるかにごれるか。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わがそびらを之にむけしはたゞ昨日きのふの朝の事なり、この者かしこに戻らんとする我にあらはれ、かくてこの路により我を導いて我家わがやに歸らしむ 五二—五四
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
かつあめのふるひといへよりして我家わがやかへることありしに、もとよりおやいまさず、いろと提灯ちやうちんたぬの、やぶまへほこらのうしろ、左右さいうはたけなかひろひて
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たとへば、緩漫なまのろふゆしりへにはなやかなはるめがるのをて、血氣壯けっきさかんわか手合てあひかんずるやうなたのしさ、愉快こゝろよさを、つぼみはな少女をとめらと立交たちまじらうて、今宵こよひ我家わがやりゃうせられませうず。
母の手前そういう訳にもまいりませぬから、渋々しぶ/\我家わがやへ帰り、様子を尋ねますると、友之助という者が大伴蟠龍軒おおともばんりゅうけん賭碁かけごを打って負けましたので、女房お村をられた上に
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
にしきにつゝみ女中一人ほかつきの女中三人そひ捨子すてごとし給ふ加納將監は乘物のりものかゝせ行き直樣すぐさまひろひ上乘物のりものにて我家わがやへ歸り女房にわたしてやしなひ奉つりぬ加納將監は本高ほんだか六百石なるが此度このたび二百五十石を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それはおなじ九州のある豪家へ武子さんがばれた時には、何千円かを差上げて来ていただいたというのに、我家わがやへは無償でこられるということより何より、それほどの人にわが成金なりきんぶりと
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
世界の如何いかなる片隅をも我家わがやのように楽しく談笑している外国人の中に交って、自分ばかりは唯独り心淋しく傾けるキァンチの一壜ひとびんに年を追うて漸く消えかかる遠い国の思出を呼び戻す事もあった。
銀座 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ちかよりみればくらひゐたるは人のあしなり。農夫大におどろき、さては村ちかくきつるならんと我家わがやをきづかひおほかみはそのまゝにしてはせかへりしに、家のまへの雪の白きにのくれなゐをそめけり。
昼の野に子らと出て来てかへり見る我家わがやにしあれや白木槿しろむくげの花
白南風 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夜風よかぜやぶ屏風びやうぶうち心配しんぱいになりてしぼつてかへるから車財布ぐるまざいふのものゝすくなほど苦勞くらうのたかのおほくなりてまたぐ我家わがやしきゐたか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たゝみのへりもへびか、とばかり、我家わがやうちもおど/\しながら二日ふつか無事ぶじぎた、とふ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
若江は頭巾を被って居りますから田舎者の方では分りませんが、若江の方で見ると、旧来我家わがやに勤めている清藏せいぞうという者ゆえ、嬉しさの余り草臥れも忘れて前へすさり出まして
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
かここゝの身代にて八十兩位は我が百文の錢程にも思ふまじ何事も御主人の爲と思ひあの金八十兩を盜取ぬすみとらんと喜八が不※ふとむねうかみしはこれ災難さいなんもとゐなり夫より喜八は質物を我家わがや持歸もちかへりて吉之助を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
我家わがやほうり出しておいて、故中沢彦吉さんに見出みいだされたからと、意気に感じて、の目もないで尽した誠実はみとめられずに、喧嘩けんかのように出されて、子たちがいる家にも足むけが出来ないと
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
苔清水ひびきつたふるかすかなる金閣寺の庭を我家わがやにぞ聴く
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
住みあきし我家わがやながらも青簾あをすだれ
自選 荷風百句 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
何處どこ姉樣あねさまからお手紙てがみやうぞ、眞赤まつかうそをと我家わがや見返みかへられて、何事なにごと御存ごぞんじなしによいおかほをしてひまくださる勿躰もつたいなさ、あのやうなどく
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
二三枚にさんまいものを始末しまつして、風呂敷包ふろしきづつみをこしらへると、ぐに我家わがや駈出かけださうとして、ゆきがけの駄賃だちんに、なんと、姿すがたこゝろ消々きえ/″\つていてるおつやおび一度いちどぐい、といた。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今長兵衞は着物まで取られてしまい、仕方なく十一になる女の子の半纒はんてんを借りて着たが、余程短く、下帯の結び目が出ていますが、平気な顔をして日暮にぼんやり我家わがやへ帰って参り
文七元結 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鍋二つ汲水場くみづに伏せて明らけき夏真昼なり我家わがやなりにし
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなればはじめより此上このうへらで、世間せけん裏屋うらやかぎれるものとさだめ、我家わがやのほかに天地てんちのなしとおもはゞ、はかなきおもひにむねえじを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
翌朝よくちょうになり伴藏は志丈を連れて我家わがやへ帰り、種々いろ/\昨夜ゆうべ惚気のろけなど云っている店前みせさき
駆けて出て我家わがやかど飛着とびついて、と思ふに、けて、他人ひとの家からは勝手が分らず、考ふれば、毎夜つきに聞く職人が湯から帰る跫音あしおとも、向うと此方こちら、音にも裏表うらおもてがあるか
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
卑賤ひせんにそだちたる我身わがみなれば、はじめよりこの以上うへを見も知らで、世間は裏屋に限れる物とさだめ、我家わがやのほかに天地のなしと思はゞ、はかなき思ひに胸も燃えじを
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
是は女房を頼んで取るよりほかに仕方が無いと、にくいけれども勘忍して、丁度午後三時少し廻った時分でございましょう、恐々ながら江川村へ這入りました、此処から我家わがやに近いから
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
にはかぞうるほどの乗客じようかくもなさゝうな、あまさびしさに、——なつ我家わがや戸外おもてからのぞくやうに——上下あとさき見渡みわたすと、なりの寄席よせほどにむら/\とへやも、さあ、ふたつぐらゐはあつたらう。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
後刻のち學校がくかうはうぜの約束やくそく信如しんによ田町たまちあねのもとへ、長吉ちようきち我家わがやかたへと行別ゆきわかれるにおもひのとゞまる紅入べにいり友仙ゆうぜん可憐いぢらしき姿すがたむなしく格子門かうしもんそとにととゞめぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と是から仙太郎が駕籠屋の安と重三郎の二人を連れて我家わがや立帰たちかえりました。
をつけてるのだから、臺所だいどころ、ものおきあらしても、めつたにたゝみませないのに、大地震おほぢしん一搖ひとゆれで、家中うちぢうあなだらけ、隙間すきまだらけで、我家わがや二階にかいでさへ、壁土かべつち塵埃ほこりすゝと、ふすま障子しやうじほねだらけな
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やはらかきひとほどはつよく學士がくし人々ひと/″\なみだあめみちどめもされず、今宵こよひめてとらへるたもとやさしく振切ふりきつて我家わがやかへれば、おたみものられしほどちからおとして
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
跡をも見ず飛ぶが如くに我家わがやに立帰り、あわたゞしくこぶしをあげてかどの戸を打叩うちたゝ