つと)” の例文
いとな七日々々なぬか/\追善供養つゐぜんくやうも心の及ぶだけはつとめしが何分男の手一ツでをさなき者の養育やういく當惑たうわくひるは漸く近所きんじよとなりもらちゝなどしよる摺粉すりこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だが、犯罪の裏にはほとんど例外なく恋がある。その犯罪の解決に当る探偵家が、恋知らずの木念人ぼくねんじんでどうしてつとまるものぞ、とも云える。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
つとめがらにたいしても、いさゝとりつくろはずばあるべからずと、むねのひもだけはきちんとしてゐて……あついから時々とき/″\だらける。……
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
役場やくばつとめてからも、まじめ一ぽうはたらくばかりでした。しかし、なにか、うまいものがかれはいると、だれのまえもはばからず、きっと
万の死 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おなじ宿やどに木村篤迚、今新潟始審裁判所の判事つとむる人あり。臼井六郎が事をつまびらかに知れりとて物語す。面白おもしろきふし一ツ二ツかきつくべし。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
長吉ちやうきちひげはやした堅苦かたくるしいつとにんなどになるよりも、自分の好きな遊芸いうげいで世を渡りたいとふ。それも一生、これも一生である。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
皇孫命様こうそんのみことさま竜神様りゅうじんさままた産土神様うぶすなかみさま礼拝らいはいし、今日きょうにち任務つとめ無事ぶじつとめさせてくださいますようにと祈願きがんめることにしました。
次の日曜がまた幸いな暖かい日和ひよりをすべてのつとにんに恵んだので、敬太郎は朝早くから須永を尋ねて、郊外にいざなおうとした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いつになく元のいい、明るい顏付かほつきつとめ先からかへつて※たM会社員くわいしやゐんの青木さんは、山ののあるしづかな裏通うらとほりにある我家わがやの門口をはひると
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
御機嫌ごきげんちがひたらばれまでとしてあそびのかはりのおいとまねがひしに流石さすが日頃ひごろつとめぶりもあり、一日すぎてのつぎはやきてはやかへれと
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
商売に来たのも、見物に来たのも、とまり客は大抵たいてい外出してしまう。下宿しているつとにんたちも勿論午後までは帰って来ない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
小田島傳藏老人の三十何年を始め大抵たいていは五年十年とつとめた者ばかり、一番短いので一年以上ですから、主人を怨む者があらうとも思はれません。
リーズはモルヴァンのかの女のうちへ行ってやしなわれることになった。アルキシーはセヴェンヌ山のヴァルスで鉱夫こうふつとめているおじの所へ行く。
いつの間にか十五の少年の姿に戻された僕は、カビ博士とその学生たちの前で、さんざんに標本としてつとめさせられた。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その菖蒲模様を背景にぜんつとめの鳴物、引抜きで浅黄の襦袢ひとつになって圓朝は、ものの見事な立廻りを見せた。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
勘次かんじとおしな相思さうし間柄あひだがらであつた。勘次かんじ東隣ひがしどなり主人しゆじんやとはれたのは十七のふゆで十九のくれにおしな婿むこつてからも依然いぜんとして主人しゆじんもとつとめてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
人間の罪をひとりに引受けた孤獨の老僧と見立てるにれよ、祈念きねんつとめるにれの木、潮風はゴモラびとの涙よりからい。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
要吉が徴兵検査ちょうへいけんさまでつとめあげるという約束やくそくで、要吉の父は、水菓子屋の主人から何百円かのお金をかりたのです。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
あるとき宰相さいしょうは、天子てんしさまの御用ごようつとめて手柄てがらてたので、ごほうびに大和やまと河内かわち伊賀いがの三箇国かこくいただきました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
正三君はつとめ大事と考えているし、照彦様がはなすまいとするから、土曜日でも帰宅しないことにきめていた。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
号室ごうしつだい番目ばんめは、元来もと郵便局ゆうびんきょくとやらにつとめたおとこで、いような、すこ狡猾ずるいような、ひくい、せたブロンジンの、利発りこうらしい瞭然はっきりとした愉快ゆかい眼付めつき
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
何をつとむといえどもすすことはやけれどもそのまま怠惰の気発す。これにより武士の風俗善といい難しとぞ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
レイクランヅの少年達は日曜日のおつとめに、交代に彼女のオルガンのポンプを押すことを誇りとした。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
二十二でせがれの千きちみ、二十六でおせんをんだその翌年よくねん蔵前くらまえ質見世しちみせ伊勢新いせしん番頭ばんとうつとめていた亭主ていしゅ仲吉なかきちが、急病きゅうびょうくなった、こうから不幸ふこうへの逆落さかおとしに
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
まことに簡単至極かんたんしごくな花ではあるが、これに引きえその白色四へんほうはたいせつな役目をつとめている。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
千八百八十三ねん、ペテルブルグの師範学校しはんがっこう卒業そつぎょうしたソログーブは、各地かくちうつみながら、教師きょうしつとめ、かたわつくっていたが、もなく長篇小説ちょうへんしょうせつ重苦おもくるしいゆめ
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
わたくしどもがはじめ別れてつとめおうたのが、みんな間違うて行ったはじまりのように思われます。
津の国人 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
ハテ恵比寿麦酒ゑびすびーる会社長くわいしやちやうで、日本にほん御用達ごようたしおこりは、蛭子ひるこかみが始めて神武天皇じんむてんのうへ戦争の時弓矢ゆみやさけ兵糧ひやうろう差上さしあげたのが、御用ごようつとめたのが恵比須えびすかみであるからさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
私はもう何の因果で此様な人と夫婦いつしよになツたんだらうと思いながら、種々義理の絡まツてゐることもあツたんですし、嫌でもつとめるだけのことは勤めなければならない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
毎日の授業もおつとめだからしかたがなしにやるというふうに、蒼白あおじろい不健康な顔ばかりしていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼女かのぢよはすぐに自分自身じぶんじしんのために、また子供達こどもたちためめにはたらかなければならなかつた。彼女かのぢよもなく親戚しんせき子供こどもあづけて土地とち病院びやうゐんつとめるとなつた。彼女かのぢよ脇目わきめらなかつた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
白衣はくえはかま股立もゝだちを取つて、五しきたすきを掛け、白鉢卷に身を固めて、薙刀なぎなたを打ち振りつゝ、をどり露拂つゆはらひをつとめるのは、小池に取つてむづかしいわざでもなく、二三日の稽古けいこで十分であつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
こういう尊い方があるから、その弟の大臣があやまって悪いところへ陥っても、結局自分で真実に懺悔ざんげして未来の大安心だいあんじんを得ようということにつとめるようになったのであろうと私は察しました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
それ其筈そのはづ実家さと生計向くらしむきゆたかに、家柄いへがら相当さうたうたかく、今年ことし五十幾許いくつかのちゝ去年きよねんまで農商務省のうしやうむしやう官吏くわんりつとめ、嫡子ちやくし海軍かいぐん大尉たいゐで、いま朝日艦あさひかん乗組のりくんでり、光子みつこたつ一人ひとり其妹そのいまうととして
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
五二百姓おたからつとめてたなつものを出し、工匠等たくみらつとめてこれを助け、商賈あきびとつとめてこれかよはし、おのれおのれが五三なりをさめ家を富まして、みおやを祭り子孫のちはかる外、人たるもの何をかさん。ことわざにもいへり。
一切の奉行をつとわし、今日まで同地に止まっていたものであろう。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
結婚した当座、じいちゃんのおつとめにうんざりして、ベッド・ワインにアドルムを仕込むようないたずらをしたこともあったけど、そのうちに、そんなこともめんどうくさくなってやめてしまったの。
雪間 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
二十年はおろか三年だってつとおおせる人はないだろう。
神使にあたりたる人潔斎けつさいして役をつとむ。これを大夫といふ。
夕立ゆふだち出會であつたときの樹陰位こかげぐらゐやくつとめるであらう。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼は、父親と母親の間で、橋渡しをつとめる。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
蛋白質は体中にりて二種の役目をつとむ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一人ひとり如何どうあってもつとめにゃならぬ。
無言しゞまつとめも此までぢや。
死者の書:――初稿版―― (新字旧仮名) / 折口信夫(著)
つとめなればかな。
悲しき玩具 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
もおいとひ無くて態々わざ/\と娘のつとめ先までも御連れ下さる御心切御れいの申上樣も御座らぬ迄に有難う存じますると云ふをきゝ三次はかぶりを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
神様かみさまのおみちおしえたり、また時々ときどきはあちこち見学けんがくにもしてたり、こころからきでなければとても小供こども世話せわつとまる仕事しごとではござらぬ。
かれは、あめかぜくる渺茫びょうぼうたる海原うなばら想像そうぞうして感歎かんたんこえはなちました。龍夫たつお父親ちちおやは、南洋なんよう会社かいしゃつとめていて、その病死びょうししたのです。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
女主人公じょしゅじんこうの熊野をつとめた婦人は、このお腰元にくらべていたく品形しなかたちおとっていたので、なぜあの瓢箪ひょうたんのようなのがシテをする。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一つとおもへばうらみもる、なんれがつとめなり、ことにはれほどがらの相違さうゐもあることなればひとばいもある道理だうり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)