安心あんしん)” の例文
そして、ここがいちばん安心あんしんだというふうに、あたまをかしげて、いままでさわいでつかれたからだを、じっとしてやすめるのでありました。
山へ帰ったやまがら (新字新仮名) / 小川未明(著)
「うん、うん、それはおまえうとおりだとも。だからねずみのうことはげずにかえしてやったのだから、安心あんしんおしなさい。」
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
安心あんしんなさい。きさきはまだ生きています。じつは、わたしはメジカをこっそりころさせて、ここにある証拠しょうこしなをとっておいたのですよ。
にたゝへておたかくとはいひしぬ歳月としつきこゝろくばりし甲斐かひやうや此詞このことばにまづ安心あんしんとはおもふものゝ運平うんぺいなほも油斷ゆだんをなさず起居たちゐにつけて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いまさらおまえさんとこの太夫たゆうが、金鋲きんびょうった駕籠かごむかえにようが、毛筋けすじぽんうごかすようなおんなじゃねえから安心あんしんしておいでなせえ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
わたしりあのSさんのやうにみなさんにもうおわかれです、でもねわたしいまおほきなおほきな丘陵きうりようのやうに、安心あんしんしてよこたはつてゐますのよ。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
たずねて村役人むらやくにんいえへいくと、あらわれたのは、はなさきちかかるように眼鏡めがねをかけた老人ろうじんでしたので、盗人ぬすびとたちはまず安心あんしんしました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あっさりとさばけた態度たいどで、そうわれましたので、わたくしほうでもすっかり安心あんしんして、おもうかぶまま無遠慮ぶえんりょにいろいろなことをおききしました
掛ずわるゆめだと斷念あきらめて御辛抱しんばうを成されなば大旦那にも安心あんしん致され家督かとくを御ゆずり有れんと思ひめぐらすことも有ば何は扨置さておき御家督を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
また彼方此方あつちこち五六けん立場茶屋たてばぢややもござりますが、うつくしい貴女あなたさま、たつた一人ひとりあづけまして、安心あんしんなは、ほかにござりませぬ。
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
(ここは何かの寄宿舎きしゅくしゃか。そうでなければ避病院ひびょういんか。とにかく二階にどうもまだだれのこっているようだ。一ぺん見て来ないと安心あんしんができない。)
ガドルフの百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのうちにとうさんは出掛でかけてきました。『大丈夫だいぢやうぶ榎木えのきはもうあかくなつてる。』と安心あんしんして、ゆつくりかまへて出掛でかけてきました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
勘次かんじ醫者いしやと一しよかへるからさういつておしな安心あんしんさせてれといつて醫者いしやもんたゝいた。醫者いしや丁度ちやうどそつちへついでつたからと悠長いうちやうである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しか此方こつちからつてけば、叔母をばさんだつて、やすさんだつて、それでもいやだとははれないわ。屹度きつと出來できるから安心あんしんしてらつしやい。わたし受合うけあふわ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
貴方あなた思想家しそうか考深かんがえぶかかたです。貴方あなたのようなひとはどんな場所ばしょにいても、自身じしんにおいて安心あんしんもとめることが出来できます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
其後ふっつりM君の消息を聞かなかったが、翌年よくとしある日の新聞に、M君が安心あんしんを求む可く妻子を捨てゝ京都山科やましな天華香洞てんかこうどうはしった事を報じてあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
てきにおそわれたり、たべものに不自由ふじゆうする心配しんぱいもなく、安心あんしんして、卵をかえしたり、ひなをそだてたりすることのできるところがたくさんあるのです。
それだけのさいなんで、いのちびろいをしたと思えば、あきらめがつく。もう、これでおまえのからだから、悪霊あくりょうがきえさったのじゃから、安心あんしんするがよい。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
いまいままでりつめてゐた一寸ちよつとゆるんで、彼女かのぢよは一安心あんしんのためにがつかりしてしまつたのである。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
おきなすこ安心あんしんして、れい五人ごにんひとたちのあつまつてゐるところにつて、そのことをげますと、みな異存いぞんのあらうはずがありませんから、すぐに承知しようちしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
明るいところにまないごとく、花前のような生活には虚偽きょぎ罪悪ざいあくなどいうものの宿やどりようがない。大悟徹底だいごてっていというのがそれか。絶対的ぜったいてき安心あんしんというのがそれか。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「——お前が日本人であることがはっきりわかるか、それとも空魔艦がなぜお前を下ろしたかその理由わけが分るか、そのどっちかが分らない間は安心あんしんしていられないのだ」
大空魔艦 (新字新仮名) / 海野十三(著)
むかしひとめたのだからといふので、安心あんしんしてよいものだとおもつてゐることがたび/\あります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
だが、あいてのダッタン人はおそろしく力の強い男で、めったにへたばるようなやつじゃない。だからなぐるほうも、安心あんしんして気がすむまでなぐりつづけたというわけなのです。
カーテンをひいて、へやがうす暗くなると、それで安心あんしんしたのか、食卓しょくたくにつくと、まるで三日も四日もたべずにいたかのように、さらのなかの物をかたっぱしからたいらげていった。
それさへうてたもったら、詳細事くはしいことあとでもよい。はや安心あんしんさしてたも、きつか、きょうか?
全線中で一ばん危険きけん場所ばしょになっている急勾配きゅうこうばいのカーブにさしかかるにはまだだいぶがあるので、わたしは安心あんしんしてまた腰をおろすと、いろいろと内地の家のことなどを思いだして
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
で、その存在そんざいをたしかめると、安心あんしんしたやうにまたすぐあなところりてた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
るたけ手持てもち商品しやうひんげんじてつたが、すで爲替相場かはせさうばあがつてしまつて、其方面そのはうめんから物價低落ぶつかていらくがなくなつたからして、最早もはや安心あんしんして手持てもちふやすことが出來できる、すなは商取引しやうとりひきえる
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
無論むろん絶海ぜつかい孤島ことうであれば、三年さんねん五年ごねんあひだ他國たこく侵犯しんはんを、かうむるやうなことはあるまいが、安心あんしんのならぬはげん弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつ結果けつくわ偶然ぐうぜんにもこのしま漂着へうちやくした吾等われら兩人ふたり實例じつれいてらしても
来往らいおうつねならずして身を終るまで円満えんまん安心あんしん快楽かいらくはあるべからざることならん。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
『さァ、もうい!』とあいちやんはおもひました。『これで安心あんしん
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
安心あんしん立命りつめいの一境地に立って心中に叫んだ。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
やれやれ やつと安心あんしんした
そのとき、わしは、もし、こえがよかったら、ほかのとりにそねまれたり、人間にんげんにねらわれたりして、安心あんしんした生活せいかつおくられないといった。
すみれとうぐいすの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
頼光らいこうはそれをいてやっと安心あんしんしました。そしてしばらく小屋こやの中にはいって足のつかれをやすめました。そのときにんのおじいさんは
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きんのおしろの王女は、これをきいて、ようやく安心あんしんしました。そして、王さまがすきになり、おきさきさまになることをよろこんで承知しょうちしました。
安心あんしんはしているけれど、ちっともはやたいのが人情にんじょうじゃないか。野暮やぼをいわずに、ちょいとでいいから、ここでおせよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
かくしてくにも、なんなかも、どんなはこ安心あんしんならず……じやうをさせば、此處こゝ大事だいじしまつてあると吹聽ふいちやうするも同一おなじります。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そうわれるおじいさんのおかおには、多年たねんがけたおしかたのついたのをこころからよろこぶとった、慈愛じあい安心あんしんいろただよってりました。
引拔て三吉が眞向より殼竹割からたけわりに切割りければ三吉はうんともいはず二ツに成て死したりけり仁左衞門は小猿に向ひ先々まづ/\是にて安心あんしんせりとて彼死骸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「いや若様わかさま、雷がまいりましたせつ手前てまえ一身いっしんにおんわざわいをちょうだいいたします。どうかご安心あんしんをねがいとうぞんじます」
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
其樣そのやうなつまらぬことはづい、おまへおもふてれるほど世間せけんしをおもふてれぬから、まあ安心あんしんしてるがいと子細わけことつれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼等かれら他人ひと自分じぶん同等どうとう以下いかくるしんでるとおもつてあひだ相互さうごくるしんでることに一しゆ安心あんしんかんずるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大丈夫だいぢやうぶよ」とつた。このこたへとき宗助そうすけなほこと安心あんしん出來できなくなつた。ところ不思議ふしぎにも、御米およね氣分きぶんは、小六ころく引越ひつこしててから、ずつと引立ひきたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
貴方あなた思想家しさうか考深かんがへぶかかたです。貴方あなたのやうなひと甚麼場所どんなばしよにゐても、自身じしんおい安心あんしんもとめること出來できます。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
じゅうぶん心得こころえている花前は、なんのもなくはね牛の乳をしぼってしまった。主人は安心あんしんすると同時どうじに、つくづく花前の容貌風采ようぼうふうさい注視ちゅうしして、一種の感じをきんじえなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
なにかしらむねほこらしさにいつぱいで、丁度ちやうどひとから稱讃しようさん言葉ことばちうけてゐでもするやうにわく/\する。彼女かのぢよなほもそのよろこびと安心あんしんあらたにしようとするやうにふたゝ手紙てがみをとりあげる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ロミオ そもじには安眠あんみんが、そもじむねには安心あんしん宿やどるやう! あゝ、その安眠あんみんとも安心あんしんともなって、きみうつくしいむね宿やどりたいなア!……これから上人しゃうにんいほりて、今宵こよひ仕合しあはせをはなしたうへ
それをると、とうさんはその蝶々てふ/\ころしてしまはないうちは安心あんしん出來できないやうながして、にした竹竿たけざをで、滅茶々々めちや/\枳殼からたちえだはうつていて、それから木戸きどうちみました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)