夢中むちう)” の例文
望蜀生ぼうしよくせいとは、夢中むちうつて、それを採集さいしふした。其數そのすうじつに二ひやく七十六ほん。それを四大布呂敷おほふろしきつゝみ、二づゝけてことにした。
原稿げんかうく、もちよくふではこぶので夢中むちうになつた、その夢中むちうましたこゑねこである、あら座蒲團ざぶとんすはつて、すましてゐる。
ねこ (旧字旧仮名) / 北村兼子(著)
ふゆ夜長よながに、粉挽こなひうたの一つもうたつてやつて御覽ごらんなさい。うたきな石臼いしうす夢中むちうになつて、いくらいても草臥くたぶれるといふことをりません。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
いきつぎにみづもとめたが、注意ちうい水道すゐだう如何いかんこゝろみたたれかが、早速さそく警告けいこくしたのであらう。夢中むちうたれともおぼえてない。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
後向うしろむきにりてなほ鼻緒はなをこゝろつくすとせながら、なかば夢中むちう此下駄このげたいつまでかゝりてもけるやうにはらんともせざりき。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
けれど何程なにほどのことがあらうと運命うんめいてんにゆだね、夢中むちうになつてけだしました。それからのことは一さいわかりません
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
つくせば千太郎は彌々いよ/\夢中むちうになり契情けいせい遊女にとがはなく通ふ客人にとが有りとは我が事なりねがはく明鏡かゞみとなつて君がおもかげを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、この出來事できごとわたし眠氣ねむけ瞬間しゆんかんましてしまつた。やみなか見透みすかすと、人家じんか燈灯ともしびはもうえなくなつてゐた。Fまち夢中むちうとほぎてしまつたのだつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
ナントおつ出来でかしたではござらぬか、此詩このし懐中くわいちうしたれば、もんたゝいておどろかしまをさんかとは思ひしが、夢中むちう感得かんとくなれば、何時いつ何処どこにても、またやらかすとわけにはかず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
ラツカダイヴ諸島しよたうそら流星りうせいごとかけつて、それから何處いづくへ、如何いかくものやら、四晝夜しちうやあひだまつた夢中むちう空中くうちう飛走ひさうしたが、その五日目いつかめ午前ごぜんになつて、かぜやうやくをさまり
ひるのうち復習ふくしふが出來なかつたものだから、せめて電車の中でゝもと思つて、動詞どうし語尾ごび變化へんくわ夢中むちうになつてゐるうちに、いつか水道橋すゐだうばしぎてしまひ、ふとがついてみると
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
此度このたび改暦かいれきにても其譯そのわけらずして十二月の三日が正月の元日ぐわんじつになるとばかりいふて、夢中むちうにこれを夢中むちうにこれをつたへなばじつおどろくべきことなれども、平生へいぜいよりひとむべき書物しよもつ
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
あゝいやだ/\と道端みちばた立木たちき夢中むちうよりかゝつて暫時しばらくそこにたちどまれば、わたるにやこわわたらねばと自分じぶんうたひしこゑそのまゝ何處どこともなくひゞいてるに
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
おもはず飛上とびあがつて総身そうしんふるひながら大枝おほえだしたを一さんにかけぬけて、はしりながらまづ心覚こゝろおぼえやつだけは夢中むちうでもぎつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仕直しなほして夫さへきかして下さらば如何なる事でも貴方あなた次第しだいと聞て忠兵衞夢中むちうになりお前のをつと道十郎殿にむじつなん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
やまなかふゆは、うしてふゆごもりの支度したくにかゝるぢいやのところへも、『シヨクノ』のあそびに夢中むちうになつてとうさんたちのところへも一しよにやつてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
衝突しようとつだ! 衝突しようとつだ! 衝突しようとつだ!』と百數十ひやくすふじふ船員等せんゐんら夢中むちうになつて甲板上かんぱんじやう狂奔きやうほんした。
あたつたぞ/\』と山頂さんてう大歡呼だいくわんこである。余等よら夢中むちうつて、驅上かけあがつてると、たのはたが、古墳こふんには無關係物むくわんけいぶつで、石器時代せきゝじだい遺物ゐぶつたる、石棒頭部せきぼうとうぶ緑泥片岩りよくでいへんがん源平時代げんぺいじだいの五輪塔りんとう頭部とうぶ
いはく==陰陽界いんやうかい==とあつたので、一竦ひとすくみにちゞんで、娑婆しやば逃出にげだすばかりに夢中むちう此處こゝまでけたのであつた。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うまれてはじめて『わるい』といふことをほんたうにつた、自分じぶんわるいとおもひながらぼう振上ふりあげ/\してかめつのに夢中むちうになつてしまつた、あんな心持こゝろもちはじめてだ
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さりとて今更いまさらはんもうしろめたかるべしなんど、まよひには智惠ちゑかゞみくもりはてゝや、五夢中むちう彷徨さまよひしが、流石さすがさだむるところありけん、慈愛じあひ二となき母君はゝぎみに、一日あるひしか/″\と打明うちあけられぬ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それと同時どうじに、吾等われら陸上りくじやう一同いちどう萬歳ばんざいさけぶ、花火はなびげる、はたる、日出雄少年ひでをせうねん夢中むちうになつて、猛犬稻妻まうけんいなづまともに、飛鳥ひちやうごと海岸かいがんすな蹴立けたてゝ奔走ほんさうした。じつこのしまつて以來いらい大盛况だいせいけう
見るやいな直樣すぐさま横町にかくれ候事三度に及び候故餘り殘念に存じ其翌日より千太郎のもどり道に待受をり漸々やう/\面會めんくわい致し候間土手下より中反圃までむなぐらを取て連行つれゆきくやしいやらかなしいやらにて夢中むちうに成萬一もし手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
いぬすゝはうは、まるでちがつたみちでありました。が、わたし夢中むちうで、のあとにつゞいたのであります。
雪霊続記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かほねば承知しようちせぬぞと威張いばりたてるを聞流きゝながしに二かい座敷ざしき結城ゆふきれあげて、今夜こんや頭痛づゝうがするので御酒ごしゆ相手あいて出來できませぬ、大勢おほぜいなかれば御酒ごしゆふて夢中むちうになるもれませぬから
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いきほひつて、わたし夢中むちう駈上かけあがつて、懷中電燈くわいちうでんとうあかりりて、戸袋とぶくろたなから、觀世音くわんぜおん塑像そざう一體いつたい懷中くわいちうし、つくゑしたを、壁土かべつちなかさぐつて、なきちゝつてくれた
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……「それで、矢來やらいから此處こゝまで。」「えゝ。」といきいて、「夢中むちうでした……なにしろ、正體しやうたいを、あなたにうかゞはうとおもつたものですから。」いまむかし山城介やましろのすけ三善春家みよしはるいへ
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それたゞくるしいので、なんですか夢中むちうでしたが、いまでもおぼえてりますのは、其時そのとききりを、貴方あなた身節みふし揉込もみこまれるやうに、手足てあしむねはらへも、ぶる/\とひゞきましたのは
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、うツかりした、つかてた、たふれさうな自分じぶんからだは、……夢中むちうで、いろせた、天井てんじやうひくい、しわだらけな蚊帳かや片隅かたすみつかんで、くらくなつたかげに、かして蚊帳かやうちのぞいた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
をとこだから、いまでは逸事いつじしようしてもいから一寸ちよつと素破すつぱぬくが、柳橋やなぎばしか、何處どこかの、おたまとか藝妓げいしや岡惚をかぼれをして、かねがないから、岡惚をかぼれだけで、夢中むちうつて、番傘ばんがさをまはしながら、あめれて
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のもひとツの廣室ひろま夢中むちう突切つツきつたが、くらがりで三尺さんじやくかべところ突當つきあたつて行處ゆきどころはない、此處こゝおそろしいものにとらへられるのかとおもつて、あはれかみにもほとけにもきこえよと、其壁そのかべ押破おしやぶらうとしてこぶしたゝくと
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
大變たいへんだ。」わたし夢中むちうで、鐵瓶てつびん噴火口ふんくわこう打覆ぶちまけた。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)