にん)” の例文
ちょうどわたしおなじい七つ、八つばかりの子供こどもが、毎日まいにち五、六にんあつまって鬼事おにごっこをしたり、こまをまわしたりしてあそんでいました。
子供の時分の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
弟 ——姉さん、俺が一にんまえになつたら、そしたら、姉さんは黙つてりやいゝんだ。俺が稼ぐ。それに、あの人もやつて来てくれる。
疵だらけのお秋 (新字旧仮名) / 三好十郎(著)
追放の刑を受けて他国に赴いたものが、容易に安住の場所を得難かった事は、別項「きたにんの地位と職業」中にも述べた通りである。
エタ源流考 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
とねんをおして、四にん弟子でしっていきました。かしらも、もうじっとしておれなくて、仔牛こうしをひきながら、さがしにいきました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
はじめて、白玉のごとき姿を顕す……一にん立女形たておやま、撫肩しなりとはぎをしめつつつまを取ったさまに、内端うちわ可愛かわいらしい足を運んで出た。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこで本町橋の東詰ひがしづめまで引き上げて、二にんたもとを分ち、堀は石川と米倉とを借りて、西町奉行所へ連れて帰り、跡部は城へ這入はひつた。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
百五十人は少なくとも坑の中にはいっていた。そのうちいくにん竪坑たてこうに上がったろうか。わたしたちのようににげ場を見つけたろうか。
『おまへ洋卓テーブルだとはらなかつたのよ』とあいちやんはつて、『それは三にんばかりでなく、もつと多勢おほぜいのためにかれてあるんだわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
実をいふと、お高婆さんもその皮肉家の一にんで、伊達太夫などは稽古のたんびに随分こつぴどおろされるばかりか、うかすると
いたにはあまり人がりませぬで、四五にんりました。此湯このゆ昔風むかしふう柘榴口ざくろぐちではないけれども、はいるところ一寸ちよつと薄暗うすぐらくなつてります。
年始まはり (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
頼光らいこうはそれをいてやっと安心あんしんしました。そしてしばらく小屋こやの中にはいって足のつかれをやすめました。そのときにんのおじいさんは
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
するととりりてたので、二十にんこなひきおとこは、そうががかりで、「ヨイショ、ヨイショ!」とぼうでもって石臼いしうすたかげました。
玄竹げんちくてこすりのやうなことをつて、らにはげしく死體したいうごかした。三にん武士ぶしは、『ひやア。』とさけんで、またした。——
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
諭吉ゆきちは、そのおとうさんのすえっとして大阪おおさかまれました。いちばんうえにいさんの三之助さんのすけで、そのしたに三にんのねえさんがありました。
達磨だるまはそれぎり話題わだいのぼらなかつたが、これがいとくちになつて、三にんめしまで無邪氣むじやき長閑のどかはなしをつゞけた。仕舞しまひ小六ころくへて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
子孫相継ぎ弟子相受け今日に及びましてござりますが、三家三勇士の随一人、和佐大八郎は竹林派における高名の一にんにござります
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
話しながら野道を縫って、磯の方へ廻ってゆきますと、よく湯治場にあるやつで、甚だよくない眼つきをした遊びにんていの男が三名
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勘次かんじ菜種油なたねあぶらのやうに櫟林くぬぎばやしあひせつしつゝ村落むら西端せいたん僻在へきざいして親子おやこにんたゞ凝結ぎようけつしたやうな状態じやうたいたもつて落付おちついるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ヒースというのは、根も枝も葉もちっぽけで、ちぢこまっているくせに、まるでじぶんでは一にんまえの木のようなつもりでいるのです。
闔廬かふろいはく、『こころみに婦人ふじんもつてすきか』と。いはく、『なり』と。ここおいこれゆるす。宮中きうちう美女びぢよいだし、百八十にんたり。
同月どうげつ二十八にちには、幻翁げんおう玄子げんしとの三にん出掛でかけた。今日けふ馬籠方まごめがた街道かいだうひだりまがつた小徑こみち左手ひだりてで、地主ぢぬしことなるのである。
打物は折れ、矢種はつき、船はくだけ、人は沈んで果つるまで、一にんも卑怯に降参するものなく、口々にかたきを呪うて死んだ。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
畏れ多い事だが、かみにん御障おさはりさへなければ、日本国中、誰一人、死んぢやならねえといふ人間はねえんだ。畜生め、承知しねえぞ。
長吉はひげはやした堅苦しい勤めにんなどになるよりも、自分の好きな遊芸で世を渡りたいという。それも一生、これも一生である。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
番甲 これにをりまする老僧らうそう、またころされましたるロミオのしもべにんいづれもはかあばきまするに屈竟くっきゃう道具だうぐをばたづさへてをりまする。
どうせ違ってるさ。それでね、僕も看客の一にんになってその花道を行ったとし給え。そして、並んで歩いてる人から望遠鏡を借りて前の方を
火星の芝居 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
その淋しさを慰める為、つはあなたの猟奇癖を満足させる為、あなたはふと一にん三役という恐ろしいトリックを思いついた。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
人間ちうもなア、そのにんそのにんに具はつた器量があつて、わきからどうせついて見たところで、その器量以上に拔けて出られるもんぢやない。
生活の探求 (旧字旧仮名) / 島木健作(著)
商売に来たのも、見物に来たのも、とまり客は大抵たいてい外出してしまう。下宿しているつとにんたちも勿論午後までは帰って来ない。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
所詮つまり周三がお房をよろこぶ意味が違つて、一ぶつ體が一にんの婦となり、單純たんじゆんは、併し價値かちある製作の資れうが、意味の深い心のかてとなつて了つた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
けれども三にんともあしうごかさない。そして五六にんおな年頃としごろ小供こどもがやはり身動みうごきもしないでばあさんたち周圍まはりいてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
そこで、漢青年はいくにんとなく、死んだ知友ちゆうの霊と話をした「死後の世界」というものが、なんだか実在するように感ぜられて来たのだった。
西湖の屍人 (新字新仮名) / 海野十三(著)
先刻玄関先に二にんびきをおりし山木は、早湯に入りて、早咲きの花菖蒲はなしょうぶけられし床を後ろに、ふうわりとした座ぶとんにあぐらをかきて
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
白い糸が山のように積んであると、そのそばでやとにんがしきりにそれをり分けている。反物たんものを入れる大きな戸棚も見える。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
畢竟ひつきやうにんいろで、けつして一りつにはかぬものでしよく本義ほんぎとか理想りそうとかをいてところ實際問題じつさいもんだいとしてはあまやくたぬ。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
三四にん先客せんきゃくへの遠慮えんりょからであろう。おきぬがちゃみにってしまうと、徳太郎とくたろうはじくりと固唾かたずんでこえをひそめた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
もうこれで四にんられている。諸君はどう思われるかしらんが、これだけ屈強の士、しかも、多くは将軍家御警衛ごけいえいの任に当る天下の旗本である。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
文ちゃんはかせにんで、苦しい中から追々工面くめんをよくし、古家ながら大きな家を建てゝ、其家から阿爺おやじの葬式も出しました。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
今度こんどこの弦月丸げんげつまる航海かうかいには乘客じやうきやくかずは五百にんちか船員せんゐんあはせると七百にん以上いじやう乘組のりくみであるが、其中そのなか日本人につぽんじんといふのは夫人ふじん少年せうねんわたくしとの三めいのみ
これより小厠こづかいを一にん使用するの必要は無論感ずる所なりしといえども、しいてこれをともなわんとすれば、非常に高き賃金を要し、またたまたま自ら進んで
僕はテラピアに住まつてゐた。その時此女も矢張テラピアに住まつてゐたので、僕をも此女をも知つてゐた人があつて、二にんを引き合せてくれたのだ。
不可説 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
ところで、この四にんの、大きい人たち、つよい人たち、元気げんきひとたちは、きゅうちどまります。地面じめんに一ぴきの生きものがんでいるのを見つけたのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
余を悪人視するものは万人まんにんにして弁護するものはおのれにんなり、万人の証拠と一人の確信といずれが重きや、しからば余は基督信者にはあらざりしなり
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
おれ先達せんだつ先祖せんぞ計算けいさんをして、四十代前だいまへおれ先祖せんぞすうが、一まん九百九十五おく二千一百六十二まん五千七百七十六にんだといふ莫大ばくだい數字すうじ發表はつぺうしたときには
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
根本的の考えは更に変らない、恐らく昔の聖人といえども時と場合によって説きようを自在に変えたであろう。にんを見て法を説くとは即ちこのいいである。
平民道 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
もうになつたころだ。ふか谷間たにまそこ天幕テントつた回々教フイフイけう旅行者りよかうしやが二三にん篝火かがりびかこんでがやがやはなしてゐた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
つまるところ、本書ほんしょ小櫻姫こざくらひめ通信者つうしんしゃ、Tじょ受信者じゅしんしゃ、そしてわたくし筆録者ひつろくしゃ総計そうけいにんがかりで出来できあがった、一しゅ特異とくい作品さくひん所謂いわゆる霊界れいかい通信つうしんなのであります。
にん一人の人ではなくて、人類です。恋をしてゐる人ではなくて、恋そのものです。天才の人や悪人ではなくて、天才や罪悪です。お分かりになりますか。
にんは三じやくおびつツかけ草履ぞうり仕事師しごとし息子むすこ、一にんはかわいろ金巾かなきん羽織はをりむらさき兵子帶へこおびといふ坊樣仕立ぼうさましたておもことはうらはらに、はなしはつねちがひがちなれど
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、やがて不意ふい松葉まつばからはなれるとはちはぶんとあがつた。三にんははつとどよめいた。けれども、はち大事だいじ犧牲ぎせい蜘蛛くも死骸しがい警戒けいかいしにつたのだつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)