)” の例文
そして、あたりはしずかであって、ただ、とおまちかどがる荷車にぐるまのわだちのおとが、ゆめのようにながれてこえてくるばかりであります。
花と人の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
草がからだをげて、パチパチったり、さらさら鳴ったりしました。霧がことしげくなって、着物きものはすっかりしめってしまいました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、ここで余一よいちはことばをきって、オオ、じぶんはなにをきかれて、なにを答えようとしていたのかと、かわいい首をすこしげた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
其処そこでもう所詮しよせんかなはぬとおもつたなり、これはやまれいであらうとかんがへて、つえてゝひざげ、じり/\するつち両手りやうてをついて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しな硬着かうちやくした身體からだげて立膝たてひざにして棺桶くわんをけれられた。くびふたさはるのでほねくぢけるまでおさへつけられてすくみがけられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「是からさきは図書館でなくつちや物足りない」と云つて片町かたまちの方へがつて仕舞つた。此一言で三四郎は始めて図書館に這入る事を知つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これはつかあたまつちあたま、あるひはこぶしげたようなかたちをしてゐるもので、おほくはきんめっきをしたどう出來できて、非常ひじようにきれいなものであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
その濠に沿ってがって一町ほど行った所が役場だと清三は教えられた。かれはここで車代を二十銭払って、車を捨てた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
ロミオ マーキューシオーどの、ゆるしてくだされ、じつ是非ぜひない所用しょようがあったからぢゃ。あんなをりには、つい、その、れいぐることがあるならひぢゃ。
そだちのいい家鴨あひるはそのおとうさんやおかあさんみたいに、ほら、こうあしひろくはなしてひろげるもんなのだ。さ、くびげて、グワッってって御覧ごらん
嘘つき佐平、で有名な佐平爺は、嘘をつくときには、いつも口尻をげるのが癖だった。併し、その口尻の曲がりは、より話に真実性を持たせるのだった。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
私と木村氏とはありとあらゆる秘戯の限りを尽して遊んだ。私は木村氏がこうしてほしいと云うことは何でもした。何でも彼の注文通りに身をげた。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
雑木林を抜けて、裏街道を停車場の方へ足を向けた菜穂子は、前方から吹きつける雪のために、ときどき身をげて立ち止まらなければならなかった。
菜穂子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
殿様とのさまはそこで、そのたまを手にってよくごらんになりますと、たまの中にごくちいさなあながりくねってついていて、どうしたっていととおるはずがありませんでした。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なかにも婦人客は、神様が接吻キツスと嘘とのために特別きやしやに拵へたらしい唇を、邪慳にげて、軽蔑さげすみきつた眼つきをして、この黄いろい肌の日本人を見た。
ふでぢくさきはうだけを小刀こがたななにかでいくつにもりまして、朝顏あさがほのかたちにげるといゝのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
はなから羽織はおりッたくった伝吉でんきちは、背筋せすじが二すんがったなりにッかけると、もう一はなりもぎって、喧嘩犬けんかいぬのように、夢中むちゅう見世みせした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
うつかり金の話をすると、お靜の髮の物までもねない、錢形平次の氣性が、八五郎に取つては、嬉しいやうな悲しいやうな、まことに變てこなものだつたのです。
背中をすべっこい壁にもたせかけ、あしげ、両手をひざの上に組み、じっとしていると、まことに工合がよい。実際、これ以上場所を取らないというわけには行くまい。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
釜右ヱ門かまえもんきん茶釜ちゃがまのあるいえを五けんとどけますし、海老之丞えびのじょうは、五つの土蔵どぞうじょうをよくしらべて、がったくぎぽんであけられることをたしかめますし、大工だいくのあッしは
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
あるいはごく上等に出来たとしても、話頭はなし漸々ぜんぜんげて自分の痛いところより遠く離さんとし、然らざれば正反対に自分の弱点を弁護するごとき議論や物語をしたりする。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
かきあみとは攩網すくひだまなり、鮏をすくるをいふ。そのすくだまの作りやうは又ある木のえだげあはせて飯櫃いひびつなりに作りこれにあみふくろをつけ、長きありてすくふたよりとす。
窓のへりなどにつかまって身をげていると、勝った方の子がそれに馬乗うまのりになって、指を出して、その数を下の子にいい当てさせ、それが当るまではこの問答をくりかえし
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
はゝこゝろ何方いづかたはしれりともらで、ちゝきれば乳房ちぶさかほせたるまゝおもことなく寐入ねいりちごの、ほゝ薄絹うすぎぬべにさしたるやうにて、何事なにごとかたらんとや折々をり/\ぐる口元くちもとあいらしさ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
前髮まへがみさげ可愛かはゆこれ人形じんぎやうのやうにおとなしくして廣庭ひろにはでは六十以上いじやうしかいづれも達者たつしやらしいばあさんが三人立にんたつその一人ひとり赤兒あかんぼ脊負おぶつこしるのが何事なにごとばあさんごゑ
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
保吉は少しからだげ、向うの窓の下をのぞいて見た。まず彼の目にはいったのは何とか正宗まさむねの広告を兼ねた、まだ火のともらない軒燈けんとうだった。それから巻いてある日除ひよけだった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして自分じぶん部屋へやはひると、ふるびたあをいビロードの椅子いすこしをおろして、そのひざをもんだり、いたさをこらへてすこしでもげやうとしたり、または罨法あんはふしてそつとのばしたりなどした。
追憶 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
胴体どうたいも、手も、足も、黒い鉄の輪が、何十となく、かさなりあったような形をしています。ですから、鉄でできていても、自由自在に、がるらしいのです。大きな鉄のくつをはいています。
電人M (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
酒田山王山でえびンコとかんじかコ(かんじかコはかじか=鰍のこと)と相撲すも取つたば(取ったれば)コバエテ/\、蝦コなして(何故に)又こしがた、かんじかコと相撲すも取つて投んげられて
春雪の出羽路の三日 (新字新仮名) / 喜田貞吉(著)
もともと神霊界しんれいかいありての人間界にんげんかいなのでございますから、今更いまさら人間にんげん旋毛つむじげて神様かみさま無視むしするにもおよびますまい。神様かみさまほうではいつもチャーンとお膳立ぜんだてをしてってくださるのでございます。
全川の水はげられた様に左に折れて、また滔々とう/\と流してく。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それを彼方あちら此方こちらげなければなりませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
かぜがなくていいな。」とゆめなかだけれどおもっていたときです。蒸気じょうきポンプのわだちが、あちらのひろとおりをよこほうがったようです。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お母さんは、ものの二つのひつと、達二たつじの小さな弁当べんとうとを紙にくるんで、それをみんな一緒いっしょに大きなぬの風呂敷ふろしきつつみました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、静かに、がった烏帽子えぼしをむすび直すあいだに、薄い自嘲と度胸をすえた太々ふてぶてしさとを、どこやらにたたえていた。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おつぎは二ちやうばかり上流じやうりう板橋いたばしわたつてつて、やうやくのことでえだげてそのはりをとつた。さうしてまた與吉よきちぼうけてやつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
取り上げて、障子しょうじの方へ向けて見る。障子には植木鉢の葉蘭はらんの影が暖かそうに写っている。首をげて、のぞき込むと、もくの字が小さく見える。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しま羽織はおり筒袖つゝそでほそた、わきあけのくちへ、かひなげて、ちつさむいとつたていに、兩手りやうて突込つツこみ、ふりのいたところから、あか前垂まへだれひもえる。
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
つまりあのかた見失みうしわないようにしてみんながくばってる証拠しょうこなの。さあさ、そんなにあしゆび内側うちがわげないで。
岸にはやなぎがその葉を水面にひたしてさざなみをつくっている。細い板橋が川のがったところにかかっている。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
そこでまた国中くにじゅうへおふれをして、がりくねったたまあな絹糸きぬいととおものがあったら、たくさんの褒美ほうびをやるとらせました。これでまた国中くにじゅうのさわぎになりました。
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
げてねじって紺屋こうやなどにも持って行くのだが、以前ははたを織る女がそのままで首に掛けていることもあったらしく、それが大きな蚯蚓の首に白い輪のあるものと似ているので
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
自己の心のえどころこそ成敗をはか尺度しゃくどであって、この尺度ががらぬ以上は、いかなる失敗に遭遇そうぐうしても心にうれうることがない、これ霊丹れいたんりゅう、鉄をてんじてきんと成すものか。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
母が心の何方いづかたに走れりとも知らで、乳にきれば乳房に顔を寄せたるまゝ思ふ事なく寐入ねいりちごの、ほう薄絹うすぎぬべにさしたるやうにて、何事を語らんとや、折々をり/\ぐる口元の愛らしさ
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
イズムと云ふ意味や必要と云ふ意味が、考へ次第でどうにでもげられさうです。
「もう一つ。三人のうち二人、或は三人共無實であらう。父親が娘をかばひ、娘が父親を庇ふ心根がいかにも不憫ふびん、助けられるものなら助けてやりたい、げて力を貸してはくれまいか」
もっとおとなしいものは、運動場の中を千篇一律せんぺんいちりつに廻っていたが、これは、「さようなら」のしるしに手を振ってみせる。小使いは、鞄の下で背中をげ、へだたりを保つために止まっている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
マーキュ ふん、あんなをりには、足腰あしこしかたちがふといふのぢゃな?
なかには、かおさえあらやもうようはねえと、ながしのまんなか頑張がんばって、四斗樽とだるのようなからだを、あっちへげ、こっちへのばして、隣近所となりきんじょあわばすひま隠居いんきょや、膏薬こうやくだらけの背中せなかせて、弘法灸こうぼうきゅう効能こうのう
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
佐平は眼を釣りあげて口尻をげた。
熊の出る開墾地 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)