微笑びせう)” の例文
折々をり/\には會計係くわいけいがゝり小娘こむすめの、かれあいしてゐたところのマアシヤは、せつかれ微笑びせうしてあたまでもでやうとすると、いそいで遁出にげだす。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
兒玉こだま先程來さきほどらいおほくちひらかず、微笑びせうして人々ひと/″\氣焔きえんきいたが、いま突然とつぜん出身しゆつしん學校がくかうはれたので、一寸ちよつとくちひらなかつたのである。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
相談さうだん半分はんぶん細君さいくんはなしてると、御米およねどくさうなかほをして、「でも、けないんだから、仕方しかたがないわね」とつて、れいごと微笑びせうした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「まりや」はやつと得心とくしんしたやうに、天上の微笑びせうを輝かせた。それから又星月夜の空へしづしづとひとり昇つて行つた。……
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
勘次かんじなくつてから卯平うへいはむつゝりしたかほ微笑びせうかべては與吉よきちいてかれることもあつた。與吉よきちよるにはかしてまぬことがある。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
だんじて/\、たとへこのくちびるかるゝとも。』とわたくし斷乎だんことしてこたへた。大佐たいさ微笑びせうびてわたくしかほながめた。
女はお光を見て、微笑びせうらしつゝ、立つて行つたが、やがて荒い格子縞かうしゞま浴衣ゆかたを二組持つて來て
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
刹那せつなに、二人の口元にはなんとない微笑びせうながれあつた。さつきまでの氕持きもち興奮こうふんはいつとなくさめかかつてゐたが、それは心のどこかにまだほのかな明るさをげてゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
就中なかんづくドナテロのダ※ツドのなさけもあり勇気も智慧もある微笑びせうの立像に心を惹かされた。又有名なダンテの肖像をも壁画の中に仰ぎ見た。ダンテは頭巾づきん上衣うはぎも共に赤かつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
目元めもと宿やどれるつゆもなく、おもりたる決心けつしんいろもなく、微笑びせうおもてもふるへで、一通いつゝう二通につう八九通はつくつうのこりなく寸斷すんだんをはりて、さかんにもえ炭火すみびなか打込うちこみつ打込うちこみつ
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
英語えいごたまへ!』とつて小鷲こわしは、『そんなながッたらしいこと半分はんぶんわからない、いくつたつて駄目だめだ、いづれもしんずるにらん!』つて微笑びせうかくすためにあたまげました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「お手紙てがみ上書うはがきおぼえましたの……下郎げらうくちのさがないもんですわね。」とまた微笑びせうす。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「そんなことないわ。わたしおくさんとはなしてこようとおもふ。」Iつてたが、わたしむねにうづまつた彼女かのじよかおには、自然ひとりで善良ぜんれう微笑びせうかんでゐるのを、わたしかんじないわけかなかつた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
『え、幸福かうふく?』夫人ふじん微笑びせうかへした。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
ちらとの微笑びせう、端的の叫び。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
小六ころくさんがおこつてよ。くつて」と御米およねはわざとねんしていて微笑びせうした。宗助そうすけ下眼しため使つかつて、つた小楊枝こやうじ着物きものえりした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
れぢや基督ハリストスでもれいきませう、基督ハリストスいたり、微笑びせうしたり、かなしんだり、おこつたり、うれひしづんだりして、現實げんじつたいして反應はんおうしてゐたのです。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
わたしはいまでもこのことだけは、感心かんしんだとおもつてゐるのです。わたしと二十がふむすんだものは、天下てんかにあのをとこ一人ひとりだけですから。(快活くわいくわつなる微笑びせう
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ小柄こがらぢいさんで一寸ちよつとばあさんかへりみて微笑びせうしながらいつたのである。かれのどへ二ぢゆうにした珠數じゆずいてた。かれこゑおそろしくおほきかつた。ばあさん
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれかしらげては水車みづぐるままた畫板ゑばんむかふ、そしてり/\愉快ゆくわいらしい微笑びせうほゝうかべてかれ微笑びせうするごとに、自分じぶん我知われしらず微笑びせうせざるをなかつた。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
此時このときさき端艇たんてい指揮しきして、吾等われら兩人りやうにんすくげてれた、いさましき虎髯大尉こぜんたいゐは、武村兵曹たけむらへいそうわたくしやうや平常へいじやうふくした顏色かほいろて、ツトすゝめた、微笑びせううかべながら
微笑びせうふくみてみもてゆく、こゝろ大瀧おほだきにあたりて濁世じよくせあかながさんとせし、それ上人しやうにんがためしにもおなじく、戀人こひゞとなみだ文字もじ幾筋いくすぢたきほとばしりにもて、うしなはん心弱こゝろよわ女子をなごならば。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そでいておもてはらへば、はるかくもなかに、韓湘かんしやうあり。唯一人たゞいちにんゆきをかして何處いづこよりともなく、やがて馬前ばぜんきたる。みの紛々ふん/\として桃花たうくわてんじ、微笑びせうして一揖いちいふす。叔公をぢさんのちはと。
花間文字 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
うはさだけでも、死刑しけいといふものには、覿面てきめん效力かうりよくがあるとおもつて、但馬守たじまのかみ微笑びせうした。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
つま微笑びせうをつづけながらつたが、そこで不意ふい眞顏まがほになると
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
色々いろん人間にんげんがゐるのさ。」M、H微笑びせうしてゐた。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
かれ微笑びせうもつくるしみむかはなかつた、輕蔑けいべつしませんでした、かへつて「さかづきわれよりらしめよ」とふて、ゲフシマニヤのその祈祷きたうしました。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
さびしき微笑びせう)わたしのやうに腑甲斐ふがひないものは、大慈大悲だいじだいひ觀世音菩薩くわんぜおんぼさつも、お見放みはなしなすつたものかもれません。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
時過じすぎかれははつとして、このゆめからめた。御米およね何時いつものとほ微笑びせうして枕元まくらもとかゞんでゐた。えたくろなかとく何處どこかへつてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つひにはにしたかま刄先はさきすこしづゝつちをほじくりつゝをんなしろ手拭てぬぐひはし微動びどうさせては俯伏つゝぷしなから微笑びせうしながら際限さいげんもなく其處そこ凝然ぢつとしてようとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
『イヤそう眞面目まじめはれてはこまる。ぼく小兒こどもとき回想くわいさうして當時たうじ學校がくかうなつかしくおもふだけの意味いみつたのです』とハーバードはつみのない微笑びせううかべて言譯いひわけした。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
艦橋かんけうよりは艦長松島海軍大佐かんちやうまつしまかいぐんたいされいによつてれいごと鼻髯びぜんひねりつゝ、微笑びせううかべてながめてつた。
こゝろつうずる、驛員えきゐんも、滿足まんぞくしたらしい微笑びせううかべて
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
但馬守たじまのかみしづつたかほには、すご微笑びせうがあつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
と、微笑びせうとともにつぶやいた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
わらひは量的に分てば微笑びせう哄笑こうせうの二種あり。質的に分てば嬉笑きせう嘲笑てうせう苦笑くせうの三種あり。……予が最も愛する笑は嬉笑嘲苦笑と兼ねたる、爆声の如き哄笑なり。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
兒玉こだま此席このせき同好倶樂部どうかうくらぶ一條いちでうはなした、二人ふたり微笑びせうしたばかり、べつなんともひやうしなかつた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その見解のうちには、今日こんにちはわれわれを微笑びせうせしめるものもあるけれども、傾聴けいちやうすべきものもないわけではない。これがまた、マツクフアレエンの本などには、全然見られぬ特色である。
日本の女 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
成程なるほどながれない、をとこ立派りつぱきてゐる、——しかしそれでもころしたのです。つみふかさをかんがへてれば、あなたがたわるいか、わたしがわるいか、どちらがわるいかわかりません。(皮肉ひにくなる微笑びせう
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)