したが)” の例文
旧字:
呂州判官ろしゅうはんがんとは、日本軍にまできこえた明の豪将ごうしょう、一万の兵をしたがえる呂州判官兵使柯大郎へいしかたいろうといって、紺地錦こんじにしきよろいを着ていたのであった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
ガチョウはこんどもこの忠告にしたがおうとしました。けれども高くのぼろうとしますと、息ぎれがして、まるでむねがはりさけそうです。
が、かれ年月としつきつとともに、この事業じぎょう単調たんちょうなのと、明瞭あきらかえきいのとをみとめるにしたがって、段々だんだんきてた。かれおもうたのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それですから、北上川のきしからこの高原の方へ行く旅人たびびとは、高原に近づくにしたがって、だんだんあちこちに雷神らいじんを見るようになります。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そのうちもなく日がれて、よるになりました。けるにしたがって、もりの中はいよいよものすごい、さびしい景色けしきになりました。
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしは、むしとなって、かみさまのおぼしめしにしたがって、自由じゆう生活せいかつをしたいとおもいます。かみさま、どうぞ、わたしむしにしてください!
おけらになった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
嫁も起きでて泣きながらいさめたれど、つゆしたがう色もなく、やがて母がのがれ出でんとする様子ようすあるを見て、前後の戸口をことごとくとざしたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
死後しごわたくしはしばらくは何事なにごとらずに無自覚むじかくくらしました。したがってその期間あいだがどれくらいつづいたか、むろんわかはずもございませぬ。
「恐龍は爬虫類はちゅうるいだろう。爬虫類といえばヘビやトカゲがそうだ。ヘビは人間をのむからね。したがって恐龍は人間を食うと思う」
恐竜艇の冒険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
わたしは目つきで母さんにすくいをもとめてみた。かの女もご亭主ていしゅに気がつかないようにして、いっしょに行けと目くばせした。わたしはしたがった。
深山しんざん孤家ひとつや白痴ばかとぎをして言葉ことばつうぜず、るにしたがふてものをいふことさへわすれるやうながするといふはなんたること
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
三四郎は、とらはれた儘、さからはずに、寐たりさめたりするあひだに、自然にしたがふ一種の快感を得た。病症がかるいからだと思つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
付近に肥溜こえだめなぞがあって、むろん若様がたの立ち入るところでない。しかし運動にあきた照彦てるひこ様はまもなく正三君をしたがえて、この方面へこころざした。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
また先生のおしえしたがいて赤十字社病院にいりたる後も、先生来問らいもんありてるところの医官いかんに談じ特に予が事をたくせられたるを以て、一方ひとかたならず便宜べんぎを得たり。
「やわ、かかる身なりで都へ行けよう。しいて連れ行きたくば、武家どもみな礼を以て、くるま供奉ぐぶしたがえ」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
したがってこの役所に集まって来る人々は、国民性の長所を備えているものであるというも過言であるまい。
真の愛国心 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
むかうのきしかんとしたまひしに、ある学者がくしやきたりてひけるはよ。何処いづこたまふともしたがはん。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
したがって家内いえ中ではれものにでも触るような態度を取り、そばを歩くに、足音さえもぬすむようになる。
良人教育十四種 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
はじめから気質きしつはない家族かぞくとの折合をりあひふにしたがつて円滑ゑんくわつにはかなくなり、なにかにつけておたがひかほあからめ言葉ことばあらくするやうなこと毎日まいにちのやうになつてたので
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
したがつて越後と上野の国界とすべき所もさだまり、利根とね山奥の広袤こうばう概算がいさんするを得たり、此上は上越二国の間によこたはれる利根とねの山脈に攀登はんとうし、国界をさだめて之を通過つうくわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
甚兵衛はあぶながりましたが、さる大丈夫だいじょうぶだというものですから、そのいうとおりにしたがいました。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
……これから案内あんないしたがつて十二でふばかり書院しよゐんらしいところとほる、次は八でふのやうで正面しやうめんとこには探幽たんにゆう横物よこものかゝり、古銅こどう花瓶くわびんに花がしてあり、煎茶せんちや器械きかいから、莨盆たばこぼんから火鉢ひばちまで
士族の商法 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
世の中の進歩趨勢すうせいはその停止する所を知らずという有様で、したがってすべての思想界にも、頻々ひんぴん新主義を産出してくる今日であるのに、ことに文学美術の上に写実主義の大潮流は
竹乃里人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
それは、王女のお婿むこさまになる人のいうことに、むろん、番兵たちはしたがったからです。
屋内おくないはべつに取乱とりみだされず、犯人はんにんなにかを物色ぶっしょくしたという形跡けいせきもないから、盗賊とうぞく所為しょいではないらしく、したがつて殺人さつじん動機どうきは、怨恨えんこん痴情ちじょうなどだろうという推定すいていがついたが、さて現場げんばでは
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
このとし漢王かんおう高煦こうこう反す。高煦は永楽帝の子にして、仁宗の同母弟、宣徳帝せんとくてい叔父しゅくふなり。燕王の兵を挙ぐるや、高煦父にしたがって力戦す。材武みずからたのみ、騎射をくし、はなはだ燕王にたり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
もう一つの木は、南米およびその付近ふきんの島だけに生ずる、アルガロッペとしょうするもので、これも酒をつくることができる、一同はゴルドンの指揮しきしたがって、この二種の木の実を採集さいしゅうした。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
われよりも息子むすこまたはむすめあいするものは、われ相応ふさわしからず。またおのが十字架じゅうじかをとりてわれしたがわぬものは、われ相応ふさわしからず。生命いのちものは、これをうしない、がために生命いのちうしなものは、これをべし
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
この疑問ぎもんわたしなどにも兎角とかくおこりやすい疑問ぎもんである。歌舞伎俳優かぶきはいゆう近代的きんだいてきになるにしたがつて、以前いぜんのやうな荘重典雅そうてうてんが風貌ふうぼうがなくなつて、そこいらのわかしうたいしたちがひがなくなるとおなじことである。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
もゝ照姫てるひめしたがへて
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
アッカはみんなからたいへん尊敬そんけいされている鳥で、どんなに、りっぱなガンでも、アッカの言いつけにはしたがうほどだったのです。
すると為朝ためともしたがえられた大名だいみょうたちは、うわべは降参こうさんしたていせかけながら、はらの中ではくやしくってくやしくってなりませんでした。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みち両側りょうがわには、ゆきえかかって、あおくさているところもありました。けれど、だんだんとすすむにしたがって、ゆきおおくなったのであります。
角笛吹く子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはカピがそうして、いやいやわたしの命令めいれいしたがいながらも、ゼルビノとの格闘かくとうにわざと負けてやったことがわかった。
それにまたかみさまからも『折角せっかくであるから通信つうしんしたがよい』との思召おぼしめしでございますので、今回こんかいいよいよおもってお言葉ことばしたがうことにいたしました。
そつゆすぶる、したがつてゆすぶれるのが、んだうをひれつまんで、みづうごかすとおな工合ぐあひで、此方こちらめればじつつて、きもしづみもしないふう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ミドリはさすがに女だけあって、とても猿田の半分のスピードも出ず、したがって三人は一緒に遅れて、猿田との距離はみるみる非常に大きくなっていった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこでは、あらゆることが可能かのうである。人は一瞬いっしゅんにして氷雲ひょううんの上に飛躍ひやく大循環だいじゅんかんの風をしたがえて北にたびすることもあれば、赤い花杯はなさかずきの下を行くありかたることもできる。
したがって彼女をしてその特長の新感覚に広くみがきをかけさせたく思う。色調、形式美、音等に対する感覚ばかりでなく対人的、ことに異性に対する感覚をもっと洗練させい。
ただ冒進ぼうしんの一事あるのみと、ひとり身をぬきんで水流をさかのぼり衆をてて又顧みず、余等つゐで是にしたがふ、人夫等之を見て皆曰く、あに坐視ざしして以ていたづらに吉田署長以下のたんやと
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
統計年度とうけいねんどにおいて、一万二千にん患者かんじゃけたとすれば、すなわち一万二千にんあざむかれたのである。おも患者かんじゃ病院びょういん入院にゅういんさせて、それを学問がくもん規則きそくしたがって治療ちりょうすることは出来できぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
では、筑前守秀吉ちくぜんのかみひでよしは、かならずしも、悪意があって勝頼のゆくえをたずねさせたのではなかろう……と伊那丸いなまるも心がとけ、忍剣にんけん龍太郎りゅうたろうも、さらばと、そのしたがうことになった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
漸々だん/″\さかづきがまはつてまゐるにしたがつて、二人ともふちほんのり桜色さくらいろとなりました。小
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
したがって動き等も主演者より遥かに些いのが通例である。
能とは何か (新字新仮名) / 夢野久作(著)
年月の前後にしたが順次じゅんじ編集へんしゅうせられたる実事談じつじだんなり。
といって、しましたがえてしまいました。そのうち方々ほうぼうにかくれていた為朝ためとも家来けらいが、一人ひとり二人ふたりとだんだんあつまって為朝ためともにつきました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
でも、けっきょく、いまは言いつけにしたがうのがいちばんだと思いました。そこで、牧師館ぼくしかんのひじかけイスにこしをおろして、読みはじめました。
正直しょうじきで、しんじやすいかみなりは、たかのいうことにしたがいました。そして、かみなりは、方向ほうこうてんじて、みやこほうすすんでいきました。黒雲くろくもかみなりに、したがいました。
ぴかぴかする夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれども明け方に近づくにしたがって、寒さはいよいよひどくなった。戸口からはいって来る風がほねまでこおるようであった。
さてやがて乗込のりこむのに、硝子窓ガラスまど横目よこめながら、れいのぞろ/\と押揉おしもむでくのが、平常いつもほどはだれ元気げんきがなさゝうで、したがつてまで混雑こんざつもしない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)