こゑ)” の例文
旧字:
おくさんのこゑにはもうなんとなくりがなかつた。そして、そのままひざに視線しせんおとすと、おもひ出したやうにまたはりうごかしはじめた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
百樹もゝきいはく、我が幼年えうねんの頃は元日のあしたより扇々と市中をうりありくこゑ、あるひは白酒々の声も春めきて心ものどかなりしが此声今はなし。
こゑが、五位鷺ごゐさぎの、げつく、げつくともこえれば、きつねさけぶやうでもあるし、いたちがキチ/\とぎしりする、勘走かんばしつたのもまざつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
本堂ほんだうはうではきやうこゑかねおともしてゐる。道子みちこ今年ことしもいつかぼんの十三にちになつたのだとはじめてがついたときである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
此家うちでは賓客きやくかへつたあとと見えまして、主人あるじみせ片付かたづけさせて指図さしづいたしてりますところへ、おもてからこゑけますから、主
わすられぬは我身わがみつみひととがおもへばにくきは君様きみさまなりおこゑくもいや御姿おすがたるもいやればけばさるおもひによしなきむね
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
泣出なきだしもしまいとつたから、ひさしぶりで、こちらも人間にんげんこゑきたくなつて、口元くちもとはなしてやると、あとをきさうにもしないのだ。よそてゐるやうだ。
わたしつとめて平気へいきらしく、「ウムた。あんなことがあつたのか。」とこゑかすれて、ふるへてゐた。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
神南備かむなび浅小竹原あさしぬはらのうるはしみきみこゑしるけく 〔巻十一・二七七四〕 作者不詳
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
け、資本家しほんか利権屋りけんやの一たいのあげる歓呼くわんここゑを、軍楽隊ぐんがくたい吹奏すゐそうする勝利しやうりよしを!
ある猟人かりうどが、やまかりにゆきますと、何処どこからか鸚鵡あうむ啼声なきごゑきこえます。こゑはすれども姿すがたえぬ、猟人かりうど途方とはうにくれて「おまへはどこにゐる」とひますと「わたしはこ〻にゐる」とこたへた。
其後荊棘けいきよくの為めにこと/″\破壊はくわいせられ、躰をふべきものさらに無く、全身こぞりて覆盆ふくぼんの雨に暴露ばうろせらる、其状そのじやう誠にあはれむにへたり、衆相対してひらくもげきとしてこゑなく、あほぎて天の無情をたん
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
その水晶すゐしやうふえのやうなこゑに、嘉十かじふをつぶつてふるえあがりました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
俗人ぞくじんをしふる功徳くどく甚深じんしん広大くわうだいにしてしかも其勢力せいりよく強盛きやうせい宏偉くわうゐなるは熊肝くまのゐ宝丹はうたん販路はんろひろきをもてらる。洞簫どうせうこゑ嚠喨りうりやうとして蘇子そしはらわたちぎりたれどつひにトテンチンツトンの上調子うはでうしあだつぽきにかず。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
かくてただこゑもなし。あをひか硝子戸がらすど真白ましろなるかほふりむけて
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ことこゑこゝろのあらはれてやさしきひと底井そこゐらるゝ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
おや 博士が大きなこゑで何かつてゐるよ
哀れなる臨終いまはこゑは、血の波の湖の岸
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
犬のこゑ、さはれ五分時ごふんじ
霜夜 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
八千八はつせんやこゑ
蛍の灯台 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
百樹もゝきいはく、我が幼年えうねんの頃は元日のあしたより扇々と市中をうりありくこゑ、あるひは白酒々の声も春めきて心ものどかなりしが此声今はなし。
つく/″\とれば無残むざんや、かたちのないこゑ言交いひかはしたごとく、かしらたゝみうへはなれ、すそうつばりにもまらずにうへからさかさまつるしてる……
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
をりからかしボート桟橋さんばしにはふなばた数知かずしれず提燈ちやうちんげた凉船すゞみぶねもなくともづないてやうとするところらしく、きやく呼込よびこをんなこゑが一そう甲高かんだか
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
おくさんははり無意識むいしきなやうにひざに休めて、ほの白んだ、硬つたかほを青木さんのはうに向けながら、眞劍しんけんこゑでいつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
りやうさん今朝けさ指輪ゆびわはめてくださいましたかとこゑほそさよこたへはむねにせまりてくちにのぼらず無言むごんにさしひだりせてじつとばかりながめしが。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
よつ三升みます目印めじるし門前もんぜんいちすにぞ、のどづゝ往来わうらいかまびすしく、笑ふこゑ富士ふじ筑波つくばにひゞく。
落語の濫觴 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
信濃しなぬなる須賀すが荒野あらのにほととぎすこゑきけばときぎにけり 〔巻十四・三三五二〕 東歌
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
朝おきて戸を開けると、葉の黄ばんだむかふの林に鳥の群が来て囀づりかはしてゐたり、またとほくの方でつぐみこゑきこえたりした。くい/\と啼く鶇の啼声が、殊にも彼に故郷を思ひ出させた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
ティウトンのはしげしげとてゐたが、きとほつたこゑこたへた。
おれたちのくちびる歓呼くわんここゑさけぶにはあまりに干乾ひからびてゐる
一ばんみぎはじにたつた鹿しかほそこゑでうたひました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
哀れ、さはひかりにほはぬいろもなくこゑもなき野に
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なんだ なさけないこゑを出すね
は母のふところにあり、母の袖かしらおほひたればに雪をばふれざるゆゑにや凍死こゞえしなず、両親ふたおや死骸しがいの中にて又こゑをあげてなきけり。
たゞ、いひかはされるのは、のくらゐなこと繰返くりかへす。ときに、鶺鴒せきれいこゑがして、火桶ひをけすみあかけれど、山茶花さざんくわかげさびしかつた。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
青木さんのこゑなんとなく上ずつてゐた。そして、わざとらしいはしやぎかた身體からだをゆすぶりながらわらつた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しくて屏風べうぶほかに二あしばかりいとよりほそこゑりやうさんとめられてなにぞとへれば。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つてりますと、突然いきなりうしろふすまをがらりとけて這入はいつて婦人ふじんいかりのこゑにて、婦人
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
古池ふるいけには早くも昼中ひるなかかはづこゑきこえて、去年のまゝなる枯草かれくさは水にひたされてくさつてる。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
たまくしげ二上山ふたがみやまとりこゑこひしきときにけり 〔巻十七・三九八七〕 大伴家持
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
くるひいづる北極熊ほつきよくぐまの氷なす戦慄をののきこゑ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いいこゑだなア
此男やがてひざをすゝめ娘の母にむかこゑをひそめていふやう、今はなにをかつゝみ申さん、われ娘御むすめごと二世の約束やくそくをしたるもの也。
珊瑚さんごえだつてゐた、焚火たきびから、いそいでつて出迎でむかへた、ものやはらかな中形ちゆうがた浴衣ゆかたの、かみいのをときは、あわてたやうにこゑけた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いやだよ、大概たいがいこゑでも知れさうなもんだアね、小春こはるだよ。梅「え……小春姐こはるねえさんで、成程なるほど……うつくしいもんですなア。小春「いやだよ、大概たいがいにおし。梅「へゝゝおはつにおかゝりました。 ...
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
れぬをんなこゑきつけ、またもやまどからくびしてると、日本髪にほんがみ日本服にほんふくおくさまらしいわかをんなと、その母親はゝおやかともおもはれる老婆らうば二人ふたりが、手桶てをけをさげた寺男てらをとこ案内あんないされて
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
悲しともなくしゆけど、ひびらぐこゑ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
むしこゑ
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『えゝ、おほきこゑをさつしやりますな、こえるがのエ』と、あをかほして、をとこは、足許あしもとこずゑからいてえる、ともしびかげゆびさしたんです。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いはひとて男女ともうちまじりてこゑよく田植哥たうゑうたをうたふ、此こゑをきけば夏がこひしく、家の上こす雪のはやくきえよかしとおもふも雪国の人情なり。