“占(し)” の例文
それに成効の実力を付与する軍国主義なるものも亦(また)決して活力評価表の上に於て、決して上位を占(し)むべきものでない事は明かである。
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
つまり河流(かりゆう)と上汐(あげしほ)とが河口(かこう)で暫時(ざんじ)戰(たゝか)つて、遂(つひ)に上汐(あげしほ)が勝(かち)を占(し)め、海水(かいすい)の壁(かべ)を築(きづ)きながらそれが上流(じようりゆう)に向(むか)つて勢(いきほひ)よく進行(しんこう)するのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
雜木林(ざふきばやし)の間(あひだ)には又(また)芒(すゝき)の硬直(かうちよく)な葉(は)が空(そら)を刺(さ)さうとして立(た)つ。其(その)麥(むぎ)や芒(すゝき)の下(した)に居(きよ)を求(もと)める雲雀(ひばり)が時々(とき/″\)空(そら)を占(し)めて春(はる)が深(ふ)けたと喚(よ)びかける。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
田舎には郡司(ぐんじ)、県吏(けんり)もいるものを、そんな大それた群盗が、天もおそれず、山東の一角を占(し)めておるなど、信じられんことではないか
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『何(なに)が何(なん)でも望遠鏡(ばうゑんきやう)のやうに篏(は)め込(こ)まれては堪(たま)らない!些(ちよツ)と始(はじ)めさへ解(わか)ればもう占(し)めたものだ』此頃(このごろ)では身(み)にふりかゝる種々(いろ/\)の難事(なんじ)を
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
この様子を見て美留藻は、先(ま)ず占(し)めた、両親は飽(あ)くまで自分を紅矢と思っていると安心しました。そしてなおも弱り切った声で——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作、杉山萠円(著)
しかのみならず百姓が中間(ちゅうげん)と為(な)り、中間が小頭(こがしら)となり、小頭の子が小役人と為れば、すなわち下等士族中に恥(はず)かしからぬ地位を占(し)むべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
ジナイーダが、わたしたちの一座を、新しい気分のものに切り替(か)えたのだ。わたしは小姓(こしょう)の役目がら、彼女(かのじょ)のそばに席を占(し)めた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
さあ占(し)めたというところで、二本の巻軸をつなぎ合わせたところ、これが千代田の絵図面でな。まことに詳細を極めていました。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
人類の食料と云えば蓋(けだ)し動物植物鉱物の三種を出(い)でない。そのうち鉱物では水と食塩とだけである。残りは植物と動物とが約半々を占(し)める。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
遠くの呼鈴(ベル)が鳴つた。間もなく三人の婦人がこの室に這入つて來た。銘々(めい/\)卓子(テエブル)について座を占(し)め、ミラア先生は四番目の空席(くうせき)に腰を下した。
成程(なるほど)、時(とき)が來(く)れば監獄(かんごく)や、瘋癲病院(ふうてんびやうゐん)は廢(はい)されて、正義(せいぎ)は貴方(あなた)の有仰(おつしや)る通(とほ)り勝(かち)を占(し)めるでせう、然(しか)し生活(せいくわつ)の實際(じつさい)が其(そ)れで變(かは)るものではありません。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
巧いだろう? 斯ういう具合で君は坊ちゃんを家へ置いて又小僧に連れられて此処へ引き返す。残余(あと)は最早(もう)占(し)めたもんだ。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
一疋(ぴき)で金串がまったく占(し)められるような大きなのも二つ三つはあった。薄くこげるくらいに焼いて、それを藁(わら)にさした。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
占(し)めたツと飛込むと、お勝手の灯が射したほの明るい中に洗濯物を水に投り込んだまゝ、中には人の影もありません。
でも、何かの話の拍子に大阪の雀鮨が好きだと、つい浮(うつ)かり口を滑らしたので、その男はもう占(し)めたものだと思つた。
そは耳をとゞむる能力(ちから)は魂を全く占(し)むる能力(ちから)と異なる、後者はその状(さま)繋(つな)がるゝに等しく前者には紲(きづな)なし 一〇—一二
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
さて、ケモノたちは会場につきますと、さっそく、まるい丘の上にそれぞれ場所を占(し)めました。同じ種類のものどうしがいっしょにかたまっています。
もう占(し)めたもの……そう思って、何気なさそうに切り出したのだったが、ところで、他の人々は、そうは取らない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
球根もきわめて大きく、鱗片(りんぺん)も大形で肉厚く黄色を呈(てい)し、食用ユリとしても上位を占(し)むるものといってよろしい。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
やはり十字架の御威光の前には、穢(けが)らわしい日本の霊の力も、勝利を占(し)める事はむずかしいと見える。しかし昨夜(ゆうべ)見た幻は?——いや、あれは幻に過ぎない。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
夕食の食卓(しょくたく)は、これもやはり地域別に配列され、双方の塾生が一人おきに入りまじって座を占(し)めることになっていた。ごちそうはあたたかいさつま汁(じる)だった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
ここは農夫の客に占(し)められたりしがようやく明(あ)きしなり。隣(となり)の間(ま)に鬚(ひげ)美(うるわ)しき男あり、あたりを憚(はばか)らず声高(こえたか)に物語するを聞くに、二言(ふたこと)三言(みこと)の中に必ず県庁(けんちょう)という。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
婦人は毀誉(きよ)を耳にも懸けず、いまだ売買の約も整わざる、襯衣を着けて、膚(はだえ)を蔽い、肩を納め、帯を占(し)め、肩掛(ショオル)を取りて颯(さ)と羽織り、悠々として去らんとせり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
船長は不服そうに、「此処(ここ)は船底だぞ、その鉄板のもう一重(ひとえ)下は海だぞ」「そうでしょうか……」と落着(おちつ)いた声で答えた時、伊藤青年は思わず占(し)めた! と叫び
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
寐屋(ねや)の燈火(ともしひ)またヽく影(かげ)もあはれ淋(さび)しや丁字頭(ちやうじがしら)の、花(はな)と呼(よ)ばれし香山家(かやまけ)の姫(ひめ)、今(いま)の子爵(ししやく)と同(おな)じ腹(はら)に、双玉(さうぎよく)の稱(とな)へは美色(びしよく)に勝(かち)を占(し)めしが、さりとて兄君(あにぎみ)に席(せき)を越(こ)えず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
命の綱にしっかりと捉(つか)まえて見ていた、そうして立ちすくむ足を踏み占(し)めて、空を仰ぐと、頭上には隆々たる大岩壁が、甲鉄のように、凝固した波を空に抛(な)げ上げ
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
ある日ふと気が付くと、窓の虱が馬のような大きさに見えていた。占(し)めたと、紀昌は膝(ひざ)を打ち、表へ出る。彼は我が目を疑った。人は高塔(こうとう)であった。馬は山であった。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
したようなもの。しかしこうなってみると、怖(こわ)いところにまた有難いことがある、あれを藤堂様なり紀州様なりに訴人(そにん)をすれば、莫大(ばくだい)な御褒美(ごほうび)にありつける、占(し)め占め
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
町内あづけとでも來れば占(し)めたものだが、吟味中は一先づ入牢(じゆろう)といふことになるかも知れないな。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
しかし次(つぎ)の日(ひ)の暮(く)れ方(かた)、おれは帰(かへ)りゆく労働者(らうどうしや)のすべての拳(こぶ)しの中(うち)に握(にぎ)り占(し)められたビラの端(はし)を見(み)た電柱(でんちう)の前(まへ)に、倉庫(さうこ)の横(よこ)に、風(かぜ)にはためく伝単(でんたん)を見(み)た、同志(どうし)よ安(やす)んぜよ
(ニ)寒帶林(かんたいりん)(又(また)は白檜(しらべ)、椴松帶(とゞまつたい))。 この帶(たい)は水平的(すいへいてき)には北海道(ほつかいどう)の中央(ちゆうおう)以北(いほく)、つまり温帶林(おんたいりん)の北部(ほくぶ)で、同温線(どうおんせん)攝氏六度(せつしろくど)以下(いか)の地方(ちほう)と、千島(ちしま)、樺太(からふと)の全部(ぜんぶ)を占(し)めてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
この外投者は常に走者に注目し走者基(ベース)を離るること遠き時はその基に向って球を投ずる事等あり。投者攫者二人は場中最枢要(さいすうよう)の地を占(し)むる者にして最も熟練を要する役目とす。
ベースボール (新字新仮名) / 正岡子規(著)
若(も)し英米(えいべい)霸(は)を稱(せう)すれば、靡然(ひぜん)として英米(えいべい)に走(はし)り、獨國(どくこく)勢力(せいりよく)を獲(う)れば翕然(きうぜん)として獨國(どくこく)に就(つ)き、佛國(ふつこく)優位(いうゐ)を占(し)むれば、倉皇(さうこう)として佛(ふつ)に從(したが)ふならば、わが獨立(どくりつ)の體面(たいめん)は何處(いづこ)にありや。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
詰(つま)る所(ところ)は大紛爭(だいもんちやく)を引起(ひきをこ)して、其間(そのあひだ)に多少(たせう)の利益(りえき)を占(し)めんと企(くわだ)てゝ居(を)る、實(じつ)に其(その)狡猾(かうくわつ)なる事(こと)言語(げんご)に絶(ぜつ)する程(ほど)だから、今(いま)櫻木大佐(さくらぎたいさ)は公明正大(こうめいせいだい)に此(この)島(しま)を發見(はつけん)し、名(なづ)けて朝日島(あさひとう)と呼(よ)び
而(しか)して現今の医学の主要なる部分を占(し)むる薬物療法なるものは、実に原始人類から伝へられて来た種々の毒に関する口碑(こうひ)が基(もと)となつて発達して来たものであつて、この意味に於て
毒と迷信 (新字旧仮名) / 小酒井不木(著)
人々が悲劇の劇場に近づいたとき、みんなは円形劇場の石の段の上にすわりました。こうして数千年前と同じように、ふたたびこの劇場のわずかな場所が人々に占(し)められたのです。
当時一般世人から軽蔑されたスピリチュアリズムが、漸(ようや)く堅実なる地歩を、天下に占(し)むるに至ったことにつきてはモーゼスの功労が、どれ丈(だ)け与(よ)って力あるか測り知れないものがある。
それ占(し)めたといふのであつたらう、忽ちに手対(てむか)ふ者を討殺(うちころ)し、七八艘(さう)の船に積載した財貨三千余端を掠奪し、かよわい妻子を無漸(むざん)にも斬殺(きりころ)してしまつたのが、同月十九日の事であつた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
刧(おび)やかし味方に付る時は江戸表(えどおもて)へ名乘(なのり)出(いづ)るに必ず便利(べんり)なるべしと不敵にも思案を定め彼奧座敷に至り燭臺(しよくだい)に灯(あか)りを點(とも)し茵(しとね)の上に欣然(きんぜん)と座を占(し)め胴卷(どうまき)の金子は脇(わき)の臺に差置(さしお)き所持の二品を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
他人を踏台(ふみだい)としたり甚だしきは友人までも売って位地を占(し)めんとしたら、これまた勝利にあらずして敗北(はいぼく)なりと心得(こころえ)、よし名を挙げるにしても、卑劣(ひれつ)な賤(いや)しき方法によりて得たならば
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
眼のきれの長い佳人(かじん)である。更衣室も無いので、仕切りの障子をしめ、二畳の板の間を半分(はんぶん)占(し)めた古長持の上に妻の鏡台(きょうだい)を置いた。鏡台の背には、破簾(やれみす)を下げて煤(すす)だらけの勝手を隔てた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎、徳冨蘆花(著)
山の頂上に出で其後(そのご)国境(こくけう)とする所を踏(ふ)みて帰(かへ)らんとするを云ふなり、二派各其困難(こんなん)の度を比較して利害得失(りがいとくしつ)を述(の)べ、甲論乙駁容易(ようゐ)に决(けつ)せず、数時間を経(へ)て遂(つひ)に水源論多数(たすう)を占(し)め之れに一决す
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
われわれが実行せんとしてあたわざりしものを、十五少年諸君がまず実行された、これじつにおどろくべきことではありませんか。共同一致の力は、二年間の風雨と戦って、全勝を占(し)めました。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
私(わたし)たちはサロンルームの片隅(かたすみ)に、辛(から)うじて座席(ざせき)を占(し)めることが出来(でき)た。
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
〔譯〕人は須らく忙裏(ばうり)に間(かん)を占(し)め、苦中(くちゆう)に樂(らく)を存ずる工夫を著(つ)くべし。
そして佛教(ぶつきよう)が盛(さか)んになつて來(き)てからは御陵(ごりよう)は一(いつ)そう簡單(かんたん)になり、また後(のち)には火葬(かそう)が行(おこな)はれまして、小(ちひ)さな御堂(おどう)や石(いし)の塔(とう)を御陵(ごりよう)に建(た)てることになり、ことに武家(ぶけ)が勢力(せいりよく)を占(し)めるに至(いた)つた時代(じだい)からは
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
喧嘩好(けんくわず)きの少年(せうねん)、おまけに何時(いつ)も級(くらす)の一番(ばん)を占(し)めて居(ゐ)て、試驗(しけん)の時(とき)は必(かな)らず最優等(さいゝうとう)の成績(せいせき)を得(う)る處(ところ)から教員(けうゐん)は自分(じぶん)の高慢(かうまん)が癪(しやく)に觸(さは)り、生徒(せいと)は自分(じぶん)の壓制(あつせい)が癪(しやく)に觸(さは)り、自分(じぶん)にはどうしても人氣(にんき)が薄(うす)い。
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
生糸専売(きいとせんばい)の利益を占(し)むるの目的(もくてき)を達し得べしと考(かんが)えたることならん。
占(し)めた、パイプがあれば、二日や三日は煙草を食っても生きてられる、早速近藤君を累(わずら)わして、刻みをつめて貰って、一寸西洋の御大名みたいだが、片手では詰められないから、是(これ)も已むを得ない
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)