あつま)” の例文
余は昨夜も例の如く街にの見ゆるや否や、たゞちに家を出で、人多くあつまり音楽湧出わきいづるあたりに晩餐を食してのち、とある劇場に入り候。
夜あるき (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その前夜には、二人の弟もその妻たちも妹もそろって大森の両親のもとにあつまった。そうして一同が私のために盛んにさかずきをあげてくれた。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
弁当にあつまった。吸筒すいづつの酒も開かれた。「関ちゃん——関ちゃん——」私の名を、——誰も呼ぶもののないのに、その人が優しく呼んだ。
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つうじけるに名主も駈來かけきた四邊あたり近所きんじよの者も追々おひ/\あつまり改め見れば何樣いかさま酒に醉倒ゑひたふ轉込まろびこみ死したるに相違さうゐなきていなりと評議一決し翌日よくじつ此趣このおもむきを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
零時半の開門の時間まで横町よこちやうの角の店前テラス午飯ひるはんを取つて待つて居ると、見物人が自動車や馬車で次第に髑髏洞カタコンブの門前にあつまつて来た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
そしてまた旅館の客間にあつまっていた旅行者の一団にそれを報告したりした。しかし彼が行ったどこにでも神秘の雲が彼に横たわっていた。
いましも船首甲板せんしゆかんぱんける一等運轉手チーフメート指揮しきしたに、はや一だん水夫等すいふら捲揚機ウインチ周圍しゆうゐあつまつて、つぎの一れいとも錨鎖べうさ卷揚まきあげん身構みがまへ
「おい、どうしたんだい」と、その周圍まはりあつまりました。「またか。晝稼ひるかせぎになんかにるからさ。しつかりしろ、しつかりしろ」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ふたゝび荊棘けいきよくえだとり香花かうくわ神前しんぜんさしはさみくうず。次にあつま各童わらべども手に木刀をとりみち隊閙たいだうしすべて有婚こんれいして无子こなきをんな木刀をもつ遍身へんしん打之これをうち口に荷花蘭蜜こばらみとなふ。
みちの角に車夫が五六人、木蔭こかげを選んで客待きやくまちをしてた。其傍そのかたはらに小さな宮があつて、その広場で、子供があつまつて独楽こまを廻してた。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
文士が三人もあつまってお酒をのんで、それぞれ懐にお金があるときには、お勘定、となると最も貧乏なのがムキになって真ッ先に払いたがる。
オモチャ箱 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
ちょうど僕たちはお八つを食べに食堂にあつまった時、あいつは、ほろ酔い機嫌のしゃがれ声で自分のその考えを云い出したのだ。
しかし夕方になってもやはり何のかわったことも見つけられなかった。この時もうこの邸へあつまってきた多くの新聞記者に向って
れだから彼等かれら婚姻こんいん當日たうじつにも仕事しごと割合わりあひにしてはあまりに多人數たにんずぎるので、ひと仕事しごとあつまつては屈託くつたくない容子ようすをして饒舌しやべるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ひとり私塾においては、遠近の人あいあつまり、その交際ただ読書の一事のみにて他に関係なければ、たがいにその貴賤貧富を論ずるにいとまあらず。
「ここら、岩もやわらかいようだな。」と云いながらすなおに私たちに貸し、自分はまた上流じょうりゅうなみあらいところにあつまっている子供こどもらの方へ行きました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
おもいがけないやまいが急におもって、それとなく人々が別れを告げにあつまるとき、その人も病院を訪れたというが、武子さんはわなかったのだった。
九条武子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
時に厚いくちが、急に煮染にじむ様に見えて、しばらく眺めてゐるうちに、ぽたりと椽におとがした。切口きりくちあつまつたのは緑色みどりいろの濃いおもしるであつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「何、賊だ。」と、人々は眼を皿にして衾の周囲まわりにどやどやとあつまった。重太郎は土龍もぐらもちのように衾の下でうごめくのであった。が、彼も流石さすがに考えた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
またたびたびのようなことがあった。騒々しい笑声が起ると、子供等はどこからとなくあつまって来て孔乙己を取囲む。
孔乙己 (新字新仮名) / 魯迅(著)
やがて親戚や近所の人達が、あつまって来て、彼地あちらでいう夜伽よとぎ東京とうきょうでいえば通夜つやであるが、それがある晩のことはじまった。
子供の霊 (新字新仮名) / 岡崎雪声(著)
彼が罪なくて牢獄の人となった時には勿論もちろん人をうらまなかった、弟子などがあつまって来て、しきりに弁護せよ弁護せよと勧告するけれど断乎だんことしてうけがわない。
ソクラテス (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
吉野川よしのがはそばにある象山きさやまやまのま、すなはちそらせつしてゐるところのこずゑ見上みあげると、そこには、ひどくたくさんあつまつていてゐるとりこゑ、それがきこえる。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
何十人という人夫土工あるいは庭師などの群が、別仕立てのモーター船に乗って、日毎ひごとに島の上にあつまって来ました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
おきなすこ安心あんしんして、れい五人ごにんひとたちのあつまつてゐるところにつて、そのことをげますと、みな異存いぞんのあらうはずがありませんから、すぐに承知しようちしました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
各〻又我が火焚き塲の傍にあつまり座して且つだんじ且つくらひ、けば即ち横臥わうぐわして漁獵の夢抔をむしびしならん。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
日本にっぽんもうくに古来こらい尚武しょうぶ気性きしょうんだお国柄くにがらであるめ、武芸ぶげい偵察ていさつ戦争いくさ駈引等かけひきとうにすぐれた、つまり男性的だんせいてき天狗てんぐさんはほとんど全部ぜんぶこのくにあつまってしま
往々おうおうにあったのだが、その頃に、其処そこあとから汽車で通過とおりすごすると、そんな山の中で、人家の無い所に、わいわいいって沢山の人々があつまっているのが、見えるのだ。
大叫喚 (新字新仮名) / 岩村透(著)
従兄いとこと兄はその前へ置いた碁盤で五目並べをして居る。将棋盤の廻りには十人程の丁稚でつちが皆あつまつて居た。花毛氈の上であるから並んだその白足袋が美くしく見える。
住吉祭 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しかし、あの、灰色にぎらぎらしてる硝子ガラスのかけらのようなやつはいけない。多勢スキイヤアスのあつまる陽かげの丘なぞに、よくこの「硬い雪」の展開が発見される。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
田舎の者などは御歌所おうたどころといえばえらい歌人のあつまり、御歌所長といえば天下第一の歌よみのように考え
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
地球ちきゆうからえる火星くわせいくろいところは、だからうみといふよりもぬまか ちいさなぬまあつまったのか、かわだ。)
その分身した身体が一つ所にあつまるときは二十四ときのうちに一方の身体は消えてしまい、一方の身体はそのまゝ死ぬものと古い本などに書いてあることを思い出され
群集が、宮廷の陰謀や商業やよからぬ欲望満足の目的で、流行病の大都市にあつまることもない。簡素な健康な合理的な娯楽が飲酒や賭博や放逸にとって代ることとなる。
それからふたゝみんながあつまつたときに、ドードてうおごそかに指環ゆびわしめして、『吾輩わがはいこの優美いうびなる指環ゆびわ諸君しよくん受納じゆなふせられんことをのぞむ』このみじか演説えんぜつむと一どう拍手喝采はくしゆかつさいしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
諸君のここに参集し来るもまた父の愛をなお深く知らんため、そして人に対するわが愛を増さんがためでなくてはならぬ。しからずしてこのあつまりを幾度なすも無効である。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
たい多數たすうひとあつまつて一組織そしきすれば自然しぜんいきほひとして多數人たすうじん便宜べんぎといふこと心掛こゝろがけねばなりません、多數たすう都合つがふよろしいとやうにといふのが畢竟ひつきやう規則きそく精神目的せいしんもくてきでありませう。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
これは兒童じどう心理作用しんりさようもとづくものゝようであるから、とく父兄ふけい教師きようし注意ちゆういようすることであらう。元來がんらい神社じんじや寺院じいんには石燈籠いしどうろうおほい。さうして其處そこおほ兒童じどうあつまところである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
その局には、アメリカ各地からの諜報が、ひっきりなしにあつまってくる。その諜報は、アメリカの軍関係事件だの重要会談だの大ものから始まり、ちまたの民衆の声までを集録しゅうろくしている。
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あるいは幾人いくたりあつまって遠い処に行っている一人を思ったり、あるいはたれか一人に憂き事があるというと、みんなが寄って慰めるのだ。しかし己は慰めという事を、ついぞ経験した事がない。
一體に日本のカフヱにあつまる客の樣子が、自分のやうな性分の者には癪に障つて堪らず、殊に一頃半熟の文學者に限つてカフヱ邊りで、しだらなく醉拂ふのを得意とした時代があつたが
それは子規がだ生きている時分に、現在子規の周囲にあつまって来ている俳人たちの未来の進歩も計り知られぬものがあるが、それよりも今木登りなんかをして遊んでいる腕白わんぱくの子供の
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
いつかの日本麻雀選手權大會にほんマアジヤンせんしゆけんたいくわいときのやうに百くみも百五十くみもの人達ひとたちが一だうあつまつてあらそふとなれば、紫檀したん卓子テーブルうへでぢかになどといふことはそれこそ殺人的さつじんてきなものになつてしまつて
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
隣室りんしつには、Aの夫人ふじん、Cの母堂ぼだうわかいTの夫人ふじんあつまつてゐた。病室びやうしつはうでのせはしさうな醫員いゐん看護婦かんごふ動作どうさしろふくすれおと、それらは一々病人びやうにん容態ようたいのたゞならぬことを、隣室りんしつつたへた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
其時そのときあつまツてツた、一どうものよろこびはくらいりましたか、商家抔せうかなどではおうおわし取扱とりあつかつてるから、醫者いしやぶもはぬとようときは、實驗上じつけんぜう隨分ずいぶんもちひて宜敷よろしほうようぞんじます。
はじめて瞭乎りやうこたり、てんじて北方を俯視ふしすれば、越後の大部岩代の一部脚下にあつまり、陸地のくる所青煙せいえん一抹、とほく日本海をながむ、たたうらむむらくは佐渡の孤島ことう雲煙をふて躰をあらはさざりしを
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
〔譯〕もの其の好む所にあつまるは、人なり。ことせざる所におもむくは、天なり。
壯丁さうていくるまはなれてみづむもあり、みな掛茶屋かけぢやゝえんあつまつてやすんでた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
人々ひと/″\爐邊ろばたあつまりまして、きたてのおいしいところをべるのです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
殿様もお側の方々も、皆さんぐるりとあつまって6385