あらた)” の例文
こう注意ちゅういしてやると、後方こうほうから、前線ぜんせんおくられたばかりの、わか兵士へいし一人ひとりが、目前もくぜんで、背嚢はいのうをおろして、そのうちあらためていました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あけしに驚きさす旅宿屋やどやの主人だけよひことわりもなき客のきふに出立せしはいかにも不審ふしんなりとて彼の座敷をあらためしにかはる事もなければとなり座敷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「ああ、そうか」少佐は、それはざんねんだという顔をしたが、それから彼はあらたまった調子で「この店は、よく売れるかね」と聞いた。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
らおめえにちつと相談さうだんつてもれえてえとおもふことつてたんだつけがなよ」おつたはわざあらたまつた容子ようすでなくいひけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あらためてこゝふ。意味いみおいての大怪窟だいくわいくつが、學術がくじゆつひかり如何どうらされるであらうか。ふか興味きようみもつ此大發掘このだいはつくつむかへざるをない。
といって、そのあくる日あらためて匡房まさふさのところへ出かけて行って、ていねいにたのんで、いくさ学問がくもんおしえてもらうことにしました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いまあらためてうかゞひにやうとしてましたといふ、れはなんことだ、貴君あなたのおをさとげられて、馬鹿ばか/\おりきおこるぞと大景氣おほけいき
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
あらたまつてのはなしとは何事なにごとだらうと、わたくしにわかにかたちあらためると、大佐たいさ吸殘すひのこりの葉卷はまきをば、まど彼方かなたげやりて、しづかにくちひらいた。
うしたんです、なにきふ御用ごようですか」「いや、あらたまつてお聞きまうしたいのだが、おまへ塩原しほばらといふ炭問屋すみどんやよめになつた事がるさうだ」
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「おあらため以来というもの一列一体のひでりだ、恥かしいが女房を裸にしてやっとかゆすすってる有様よ、——急ぐんだろうなあ」
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
ヂュリ ほんにさうもあらうか、わたしものではないゆゑ。……(ロレンスに)御坊樣ごぼうさまいまひまでござりますか、あらためてばんのお祈祷頃いのりごろまゐりませうか?
けれども彼らの服装は、題のあらたまるごとに、閑雅な上代の色彩を、代る代る自分達の眼に映しつつ過ぎた。あるものは冠に桜の花をしていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「てめえはまたなぜ芸も出来ないくせに、人の身代わりなどになったのだ。」と、またあらためて新吉をどなりつけました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
それからうま呼名よびなでございますが、わたくしかねての念願ねんがんどおり、若月わかつきあらためて、こちらでは鈴懸すずかけぶことにいたしました。
あくやうや下刻げこくになつて、ちやんと共揃ともぞろひをした武士ぶしあらためて愚老ぐらうむかへにえましたが、美濃守樣みののかみさまはもうまへごろ御臨終ごりんじうでござりまして。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「けどもネ、梅子さん、」と銀子はかたちあらためつ「貴嬢あなたまでも独身主義をとほさうと云ふ御決心なの」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
あらため「誰があなたを我が国及びチベットに送ったのであるか。貴国の外務大臣かはたまた大将軍であるか。真実にその秘密を告げろ」というおたずねであったが
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
で、群集ぐんしゅうのなかには、百人の伊賀衆いがしゅう変装へんそうさせてまきちらし、かたっぱしからその顔をあらためていたのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「大層あらたまりやがつたな。金の工面と情事いろごとの橋渡しは御免だが、外のことなら大概たいがいのことは引受けるぜ」
されば彼らはまず間接にこの事を暗示して、ヨブをしてその理由を認めてくいあらためしめんとしたのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
いまさらあらためようもないから、まずそのままにしておくよりほか仕方しかたがない。そしてこのバショウは、元来がんらい日本のものではなく昔中国から渡って来た外来がいらい植物なのである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
このほかにべつ美術びじゆつ工藝こうげいもないわけでありますが、いまあらためてそれのものから、とくにこの時代じだい建築けんちくはどんなものであつたか、彫刻ちようこく繪畫かいがはどんなものであつたかを
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
年があらたまったと云って、すぐに世のなかが改まるわけでないのは判り切っているが、それでも年があらたまったらば、心持だけでも何とか新しくなり得るかと思うが故に
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
今更いまさらこれをあらためて苗字めうじさきにしのちにするにもおよばない。餘計よけいことであるといふひともあるが、わがはいはさうはおもはない。あやまちてあらたむるにはゞかるなかれとは先哲せんてつ名訓めいくんである。
誤まれる姓名の逆列 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
貴方の都合に依ツて、假にあたへられた目的、目的に附隨ふずゐする資格、其はあらためて唯今ただいま返上へんじやうする。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
さういふ町内にぼく將棋せうき好敵こうてき手がゐる。あらたまつて紹介せうかいすれば、新美じゆついんいん、國ぐわ總帥そうすいの梅原りう三郎畫伯ぐわはくその人だが、なアにおたがひに負けずきらひで相當地つりでもある二人。
唯一本の銚子に一時間もかゝりながら、東京へ行つてからの事——言語ことば可成なるべく早くあらためねばならぬとか、二人がまだ見た事のない電車への乘方とか、掏摸すりに氣を附けねばならぬとか
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そこで先生せんせいしたがきをると「ヰルナラタヅネル」一字いちじのことだ。わたしかう一考いつかうしてしかして辭句じくあらためた。「ヰルナラサガス」れなら、局待きよくまち二字分にじぶんがきちんとはひる、うまいでせう。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
これまたその功名のあたいを損ずるところのものにして、要するに二氏の富貴こそその身の功名をむなしうするの媒介ばいかいなれば、今なおおそからず、二氏共に断然だんぜん世をのがれて維新いしん以来の非をあらた
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「ほほほ。あらたまっていうから、どれほどむずかしい頼みかと思ったら、いっそ気抜けがしちまったよ。二時ふたときでも三時みときでも、あたしの体でりる用なら気のすむまで、ままにするがいいさ」
歌麿懺悔:江戸名人伝 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一日あるひ、瀧口は父なる左衞門に向ひ、『父上にことあらためて御願ひ致し度き一義あり』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
眉山人びさんじんふのははるのちあらためた名で、其頃そのころ煙波散人えんばさんじんつてました
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
りよ衣服いふくあらた輿つて、台州たいしう官舍くわんしやた。從者じゆうしやすうにんある。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
洋傘ようがさ直しはそれをってひらいてをよくあらためます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「おれはくいあらためる。おれはくい改める」
受出うけいだし名も千代とあらためて我妻となしけるが實親じつおやは越後に在るとのこと故彼れが實家じつかたづねんと此地へ來り今朝こんてう馬丁うまかたの惡漢が我が妻ちよを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あら、あらたまってお礼を仰有おっしゃられると困るわ。——だけど勉強していただきたいわ、あたしが紹介した、その名誉のためにもネ」
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そしてあらためて征夷大将軍せいいたいしょうぐんというやくにおつけになりました。みんなはそれからのち田村麻呂たむらまろ田村将軍たむらしょうぐんというをつけて、尊敬そんけいするようになりました。
田村将軍 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
なんでもながあいだに、できてしまったことは容易よういのことであらたまるものでないごとく、こうしたくせもまた、その一つです。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あらためて名告なのるほどのものではないのですが、うしたふか因縁いんねんきずなむすばれているうえからは、とお自分じぶん素性すじょう申上もうしあげてくことにいたしましょう。
息子むすこ嗜好すき色々いろ/\もの御馳走ごちさうして「さて、せがれや、おまへ此頃このごろはどうしておいでだえ。矢張やはりわるしわざあらためませんのかえ。」となみだながらにいさめかけると
然し、その秋から断行された町奉行の、放火ひつけ盗賊とうぞくあらための厳しさは、彼等の仲間にもひどくたたって、二両などと云う金の都合のつく者は一人もなかった。
お美津簪 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それから以後あらたまつて両人ふたりはらなかを聞いたことはないが、それが日毎にくない方に、速度を加へて進行しつゝあるのは殆んど争ふべからざる事実と見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
したが、マンチュアへはあらためて書送かきおくり、ロミオがおやるまでは、ひめ庵室あんじつにかくまっておかう。不便ふびんや、きたむくろとなって、死人しにんはかなかうもれてゐやる!
猫間川ねこまがはきし柳櫻やなぎさくらゑたくらゐでは、大鹽おほしほ亡魂ばうこんうかばれますまい。しかし殿樣とのさま御勤務役ごきんむやくになりましてから、市中しちう風儀ふうぎは、ちがへるほどあらたまりました。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
それはあらたまつて不馴ふなれ義理ぎりべねばならぬといふ懸念けねんが、わづかながら彼等かれらこゝろ支配しはいしてるからである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「何だ。智慧ならあらたまるに及ぶものか、小出しの口で間に合ふなら、うんと用意してあるよ」
いまからわたしさへあらためれば、のおひととてさのみ未練みれんおつしやるまじく、おたがひにあさ交際つきあひをして人知ひとしらぬうちにけがれをすゝいで仕舞しまつたなら、いまからのちのあのかたためわたしため
うらむらさき (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
校長や先生は勿論、小使こづかいに至るまでも髪を刈り、ひげって、試験中は服装をあらためていた。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ことに厳粛げんしゅくきわまる武神ぶしん武人ぶじん大行事だいぎょうじ、おのずから人のえりをたださしめて、一しゅんののちは、まるで山雨さんうして万樹ばんじゅのいろのあらたまったように、シーンと鳴りしずまったまま
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)