彼處かしこ)” の例文
新字:彼処
我は聖光みひかりいと多く受くる天にありて諸〻の物を見たりき、されど彼處かしこれてくだる者そを語るすべを知らずまたしかするをえざるなり 四—六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
燈の光は窓々より洩れたり。フランチエスカとフアビアニとは、彼處かしこにて禮をへつるなり。家の内より、樂の聲響き來ぬ。
さうしてあれから我々は長いこと騎つてきた。もういまは秋だらう。少くとも、悲しい女たちが我々のことをよく知つてゐる、彼處かしこでは、秋だらう。
しんならず、せんならずして、しかひと彼處かしこ蝶鳥てふとりあそぶにたり、そばがくれなる姫百合ひめゆりなぎさづたひのつばさ常夏とこなつ
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
甚麼話どんなはなしるのでらうか、彼處かしこつても處方書しよはうがきしめさぬではいかと、彼方あつちでも、此方こつちでも、かれ近頃ちかごろなる擧動きよどう評判ひやうばん持切もちきつてゐる始末しまつ
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
行所にはるか向ふに火の光りの見えければ不思議に思ひ此原は未だ人里ひとさとまでは程あるを彼處かしこに火の光り見ゆるは如何にも心得こゝろえずと思ひ段々だん/\ちかづきて樣子を見れば野火のび
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
顧客とくい廓内かくないつゞけきやくのなぐさみ、女郎ぢよろうらし、彼處かしこ生涯せうがいやめられぬ得分とくぶんありとられて、るもるも此處こゝらのまちこまかしきもらひをこゝろめず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
獅子しゝ友呼ともよび!。』と一名いちめい水兵すいへいさゝやいた。成程なるほど遠雷えんらいごと叫聲さけびごゑ野山のやま響渡ひゞきわたると、たちま其處そこもりからも、彼處かしこ岩陰いはかげからも三頭さんとう五頭ごとう猛獸まうじうぐんをなしてあらはれてた。
バルタ わたくしめは、ヂュリエットさま死去しきょことをば、マンチュアの主人方しゅじんがたつたへましたるところ、主人しゅじんすぐ驛馬はやうまにて、彼處かしこから御廟所ごべうしょまでまゐられ、はかはひられまするまへ
或日あるひ近所きんじよかはれふに出かけて彼處かしこふち此所こゝあみつてはるうち、ふと網にかゝつたものがある、いて見たが容易よういあがらないので川にはひつてさぐこゝろみると一抱ひとかゝへもありさうないしである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
野を、水を、時間をえて、彼處かしこ
つちなる愁を去らむ、彼處かしこにては
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
彼處かしこにはよい國あり……)
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
彼處かしこ、いまはなはひからび
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
彼處かしこ此處こゝたはぶるゝ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
常は一人ひとりのひと取らるゝならひなるに、我等は二人ふたりながら彼處かしこにとられき、我等のいかなる者なりしやは今もガルディンゴの附近あたりを見てしるべし —一〇八
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
六百枚なくば、我等の義兄弟となりて生きんとも、彼處かしこなる枯井の底にて、相擁して永く眠れる人々の義兄弟となりて終らんとも、二つに一つと思はれよ。
が、おもむきちがふ。彼處かしこのは、よこなびいて婉轉ゑんてんとしてながれあやつり、此處こゝのは、たてとほつて喨々れう/\としてたき調しらぶる。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
定め其處よ彼處かしこと思へ共つひに其日は捨兼て同じ宿なる棒端ぼうばな境屋さかひやと云旅籠屋はたごやに一宿なして明の朝此所の旅店やどやを立出て人の往來ゆきゝの無中にすてなんとおいつ其場所がらを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三十有餘名いうよめいの、日頃ひごろおにともまん水兵等すいへいらも、いままつた無言むごんに、此處こゝ一團いちだん彼處かしこ一團いちだんたがひかほ見合みあはすばかりで、其中そのうちに二三めいは、萬一まんいちにも十二のたるうち一つでも、二つでも
口惜くちをしげに相手あひてにらみしこともありしがそれは無心むしんむかしなり性來せいらい虚弱きよじやくとて假初かりそめ風邪ふうじやにも十日とをか廿日はつか新田につた訪問はうもんおこたれば彼處かしこにもまた一人ひとり病人びやうにん心配しんぱい食事しよくじすゝまず稽古けいこごとにきもせぬとか
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
はいへり、彼處かしこには舟
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
彼處かしこひづめれけんの
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
我に告げよ、汝誰なりしや、汝等何ぞ背を上にむくるや、汝わが汝の爲に世に何物をか求むるを願ふや、我はいきながら彼處かしこよりいづ。 九四—九六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
我に彫刻を喜ぶこゝろを生ぜしめしは彼處かしこなり。プロメテウスが死者に生を與ふるに同じく、人間の心の偉大なるを、わが悟りしはかしこなり。彼廊に一室あり。
此時このとき、われにかへこゝろ、しかも湯氣ゆげうち恍惚くわうこつとして、彼處かしこ鼈甲べつかふくしかうがい行方ゆくへおぼえず、此處こゝ亂箱みだればこ緋縮緬ひぢりめんにさへそでをこぼれてみだれたり。おもていろそまんぬ。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くらし居たりしが如何なるえんか其後家ごけの處へ兄清兵衞がはひこみそれより辛抱しんばうして段々とかせぎ出し夫に又女房が勿々なか/\針仕事はりしごとよくこゝ彼處かしこにて頼まれ夫婦にてかせぎしかばたちまち三四年のあひだに金が出來て普請ふしん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『いざ、吾等われら彼處かしこいて、とも大日本帝國だいにつぽんていこく※歳ばんざいとなへませうか。』
今日けふとりいち目茶々々めちや/″\此處こゝ彼處かしこあやしきことりき。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼處かしこにはまた——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
そのひとりはヴィルジリオに向へり、またひとり彼處かしこに坐せる者にむかひ、起きよクルラード、來りて神の惠深き聖旨みむねより出し事を見よと叫び 六四—六六
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
彼處かしこに、はるかに、みづうみ只中たゞなかなる一點いつてんのモーターは、ひかりに、たゞ青瑪瑙あをめなううりうかべる風情ふぜいがある。また、ふねの、さながら白銀しろがねしゝけるがごとえたるも道理ことわりよ。
十和田の夏霧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さらば彼處かしこ
独絃哀歌 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
何人なんびと何用なにようありてひたしといふにや親戚しんせき朋友ほういう間柄あひだがらにてさへおもてそむけるわれたいして一面いちめんしきなく一語いちごまじはりなきかも婦人ふじん所用しよようとは何事なにごとあひたしとは何故なにゆゑ人違ひとちがひとおもへばわけもなければ彼處かしこといひ此處こゝといひまはりし方角はうがく不審いぶかしさそれすらこと不思議ふしぎなるにたのみたきことありあし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
我等汝を導いて彼の目のほとりに到らむ、されどそのうちなる悦びの光を見んため、物を見ること尚深き彼處かしこ三者みたり汝の目をば強くせむ。 一〇九—一一一
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
みち太郎稻荷たらういなりあり、奉納ほうなふ手拭てぬぐひだうおほふ、ちさ鳥居とりゐ夥多おびたゞし。此處こゝ彼處かしこ露地ろぢあたりに手習草紙てならひざうししたるがいたところゆ、いともしをらし。それより待乳山まつちやま聖天しやうでんまうづ。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わが目の彼處かしこにてベアトリーチェを離れしに及ばじ、されど是我にかゝはりなかりき、そはその姿あひだまじる物なくしてわがもとに下りたればなり 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
地方ちはう風物ふうぶつ變化へんくわすくない。わけてたゞ一年いちねん、ものすごいやうにおもふのは、つきおなつきはたゞ前後ぜんごして、——谿川たにがはたふれかゝつたのもほとんおな時刻じこくである。むすめ其處そこ按摩あんま彼處かしこに——
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
されど我は何故に彼處かしこにゆかむ誰か之を我に許せる、我エーネアに非ず我パウロに非ず、わがこの事に堪ふべしとは我人倶に信ぜざるなり 三一—三三
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
屈竟くつきやうなる壯佼わかものしたるが、くるまゆるやかに、蜘蛛手くもでもり下道したみちを、ひといへたづなやみつとおぼしく、此處こゝ彼處かしこ紫陽花あぢさゐけりとところかならず、一時ひとときばかりのあひだ六度むたび七度なゝたびであひぬ。
森の紫陽花 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
されど人もし一切の美をす諸〻の生くる印がその高きに從つて愈〻強く働く事と、わが未だ彼處かしこにてかの目に向はざりし事とを思はゞ 一三三—一三五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
數限かずかぎりもない材木ざいもくみづのまゝにひたしてあるが、彼處かしこへ五ほん此處こゝへ六ぽん流寄ながれよつたかたちはんしたごとく、みな三方さんぱうからみつツにかたまつて、みづ三角形さんかくけい區切くぎつた、あたりはひろく、一面いちめん早苗田さなへだのやうである。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あゝやまなかはうむつた、はゝのおくつきは彼處かしこちかい。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)