一所いつしよ)” の例文
ふいとつて、「一所いつしよな。」で、とほりて、みぎ濱野屋はまのやで、御自分ごじぶん、めい/\に似合にあふやうにお見立みたくだすつたものであつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
宗助そうすけはもうすこ一所いつしよあるいて、屏風びやうぶこときたかつたが、わざ/\まはみちをするのもへんだと心付こゝろづいて、それなりわかれた。わかれるとき
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二人は何時いつ頃から一所いつしよの組になつたのでせう、それはもう余程小さい頃のことで、何年級制にならない何級制だつた頃のことかと思ひます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それぢや祝盃の主意を変へて、仮初かりそめにもああ云ふ美人と一所いつしよに居て寝食をともにすると云ふのが既に可羨うらやましい。そこを祝すのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
お光は立つて、小池の背後うしろからしわくちやになつたインバネスをがし、自分のひと羽織ばおり一所いつしよに黒塗りの衣桁いかうへ掛けた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
おまへもならば、将軍様せうぐんさま御手おてにとまつて、むかしは、富士ふじ巻狩まきがりなぞしたものだが、いまぢやふくろう一所いつしよにこんなところへか※んでるのはつらいだろうの。
丁度自分が、お祖父樣ぢいさま父樣とうさま母樣かあさま姉樣ねえさま一所いつしよに、夕餐ゆうげ團欒まどゐ最中さなかに、此の聲が起るのだからたまらない。
水郷 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
御飯ごはんたべたらむかひに来てよ。」とつたがあとで、「をばさんも一所いつしよにいらツしやるでせうね。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
虫が知らせるといふものかうか分らぬが、「おもつて而して知るにあらず、感じて而して然るなり」で、動物でも何でも牝牡ひんぼ雌雄が引分けられてもいつかたがひに尋ねあてゝ一所いつしよになる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ばんぶつは一所いつしよにあつまりて
悶えて居るゆゑ後藤は可笑をかしく思ひ是はしたり成程なるほど御前さんには持れぬはずどれ此方こつちへと引取ひきとつて駕籠の棒へ下緒さげをにてくゝりつけコレ御女中お前も一所いつしよに乘り給へ然すればかへつて道もはかどらんと云ふに女は否々いへ/\どう致して勿々なか/\勿體もつたいなしと辭退じたいなしければナニ遠慮なさるな夜中の事ゆゑ外に誰も見る者なしサア/\乘り給へと手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ずぶぬれの、一所いつしよつゝんだくさに、弱々よわ/\つて、のまゝ縋着すがりついたのもあつたから、手巾ハンケチそれなりに土手どててておこした。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれ時々とき/″\椅子のかどや、洋卓デスクの前へまつた。それから又あるした。かれこゝろの動揺は、かれをして長く一所いつしよとゞまる事を許さなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
芝居で与一平よいちべいなどと云ふおぢいさん役の着て居ますあの茶色と一所いつしよの茶なんですものね。それは私のねえさんの袢纏だつたのを私が貰つたのだつたらうと思ひます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
併し何方にも何等の興味きようみを感ぜず、單に一所いつしよに行ツたお房とおふくろを悦ばせたといふに過ぎなかツた。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
観音くわんおんさまのいちだわね。今夜こんや一所いつしよに行かなくつて。あたい今夜こんやとまつてツてもいゝんだから。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
『十三の年から、もう一遍も出えしまへんがな。……あんたに別れてから一遍も出えしまへんのや。……十二の時、あんたと一所いつしよに祭に出ましたな、あれが出納でをさめだしたんや。』
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
利を入れるだけでもほうが付かんのだから、長くこれを背負つてゐた日には、体も一所いつしよに沈没して了ふばかり、実に一身の浮沈にかかる大事なので、僕等も非常に心配してゐるやうなものの
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
となりかた身代みがはりにつてくだすつたやうなものだから、此方こちらなほつたら、おはかたづねて、わたしまゐる、おまへ一所いつしよ日參につさんしようね。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけ一所いつしよになつて以來いらい御米およね毎日まいにちぜんともにしたものは、をつとよりほかになかつた。をつと留守るすときは、たゞひとはしるのが多年たねん習慣ならはしであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ある夏の晩に、私は兄弟や従兄いとこ等と一所いつしよに、大屋根の上の火の見台で涼んで居ました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
『十五年も前の古い馴染なじみだから、ツイられて、君と一所いつしよにこんなとこへ來たんだね。……初めて會つたんだと、僕は君なんぞ見向きもしないんだけど。』と、不躾ぶしつけに言ひ放つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
もう返らない幾年いくねんまへ蘿月らげつ伯父をぢにつれられおいと一所いつしよとりいちへ行つた事があつた………毎年まいとしその日の事を思ひ出すころからもなく、今年ことしも去年と同じやうな寒い十二月がやつて来るのである。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「貴方がたも一所いつしよにお立ちなさらんか」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
すゞめだつて、四十雀しじふからだつて、のきだの、えのきだのにまつてないで、ぼく一所いつしよすわつてはなしたらみんなわかるんだけれど、はなれてるからこえませんの。
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
みづはじいてふたつが一所いつしよあつまつたとふよりも、みづはじかれたいきほひで、まるつた結果けつくわはなれること出來できなくなつたとひやうするはう適當てきたうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さあ、一所いつしよに、我家うちの日曜の朝の御飯。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
と、さそはれたかれも、ぐら/\と地震なゐふるはかなかに、一所いつしよんでるもののやうなおもひがして、をかしいばかり不安ふあんでならぬ。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
其所迄そこまで一所いつしよませう。いでせう」と云つた。三四郎は靴のひもを結びながら、「えゝ、うでも」と答へた。女は何時いつの間にか、和土たゝきうへりた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さあ、一所いつしよに、我家うちの日曜の朝の御飯。
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
ではい。一所いつしよさがしにかけやうとふと、いや/\山坂やまさか不案内ふあんない客人きやくじんが、やみ夜路よみちぢや、がけだ、たにだで、かへつて足手絡あしてまとひにる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
一所いつしよに居ることは居ますが、つい面倒だからいたこともありません。何でもくこぼしてる様です」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
母と一所いつしよにしたその旅の記憶を
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
が、たれては不可いけない、きつては不可いけない、いづれ、やがて仕事しごと出来できると、おうら一所いつしよに、諸共もろともにおかゝつてあらためて御挨拶ごあいさつをする。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
有意識か無意識か、ともえめぐるに従つて次第にせばまつてた。つい三巴みつどもえ一所いつしよつて、丸い円にならうとする少し前の所で、忽然其一つがけたため、残る二つは平衡を失なつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「お遊びな、一所いつしよにお遊びな。」とせまりて勧めぬ。小家こいえあちこち、このあたりに住むは、かたゐといふものなりとぞ。風俗少しく異なれり。
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もうして、一所いつしよちや。西洋軒で御茶でもげます。なにわたしは用があるから、どうせ一寸ちよつと行かなければならない。——会のことでね、マネジヤーに相談して置きたい事がある。懇意の男だから。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ものすごいとつては、濱野はまのさんが、家内かない一所いつしよなに罐詰くわんづめのものでもあるまいかと、四谷通よつやどほりはひつて出向でむいたときだつた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
無論むろん婿むこがねと一所いつしよで、それは一等室とうしつはあつたかもれない。が、乗心のりごゝろ模様もやうも、色合いろあひも、いまおもふのとまつたおなじである。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はなしを——或時あるときとんさんと一所いつしよえたことのある志賀しがさんがいて、西洋せいやう小説せうせつに、狂氣きやうきごと鉛筆えんぴつけづ奇人きじんがあつて、をんなのとはかぎらない
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
思切おもひきる、断念あきらめた、女房にようばうなんぞけがらはしい。貴女あなた一所いつしよいてください、おぢいさんもたのんでください、一度いちどつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「いかに方々かた/″\御前ごぜんまをし、何某殿なにがしどの御内室ごないしつをも一所いつしよ此中このなかまをさむか、雌雄つがひならでは風情ふぜいなくさふらふ」などと散々さん/″\
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
してくだすつた兵隊へいたいさんを、こゝでもをがみませう。」と、女中ぢよちう一所いつしよかさなつてかどのぞいた家内かないに、「怪我けがをしますよ。」としかられて引込ひきこんだ。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いや、そんなことより、力餅ちからもちさへはぬ二人ふたりが、辨當べんたうのうまさうなのに、ごくりと一所いつしよをのんでおなかいてたまらない。……船頭おやぢさい糠鰊こぬかにしんで。……
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
途中とちうあつたとつて、吉井勇よしゐいさむさんが一所いつしよえた。これは、四谷よつや無事ぶじだつた。が、いへうら竹藪たけやぶ蚊帳かやつてなんけたのださうである——
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぶんだけは、鰐皮わにがは大分だいぶふくらんだのを、自分じぶん晝夜帶ちうやおびから抽出ひきだして、袱紗包ふくさづつみと一所いつしよ信玄袋しんげんぶくろ差添さしそへて
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此方こつち意氣いきあらはれる時分じぶんには、親仁おやぢくるまのぞくやうに踞込しやがみこんで、ひげだらけのくちびるとんがらして、くだ一所いつしよに、くちでも、しゆツ/\いきくのだから面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それから清水港しみづみなととほつて、江尻えじりると、もう大分だいぶん以前いぜんるが、神田かんだ叔父をぢ一所いつしよとき、わざとハイカラの旅館りよくわんげて、道中繪だうちうゑのやうな海道筋かいだうすぢ町屋まちやなか
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いえなん貴僧あなた。おまいさん後程のちほどわたし一所いつしよにおべなさればいゝのに。こまつたひとでございますよ。)とそらさぬ愛想あいさう手早てばや同一おなじやうなぜんこしらえてならべてした。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ふのが情婦いろで、「一所いつしよにキヤツとつて、跣足はだし露地ろぢくらがりを飛出とびだしました。それつきり音信いんしんわかりませんから。」あわててかへつた。——知合しりあひたれとかする。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)