のゝし)” の例文
よ、愚劣ぐれつな×(2)に対してこぶし子供こどもらを、かほをそむけてのゝしをんなたちを、無言むごんのまゝ反抗はんこう視線しせんれつきつけるをとこたちを!
離屋を覗いて、親分の平次が居ないと見ると、寶雲齋坊と、何にかひどくやり合つて居るらしく、のゝしりわめく聲が筒拔けに聞えます。
夜中のわめのゝしる声に驚いて雨戸まで開けた近所の人達は朝には肩を並べて牛を引いて田圃たんぼに出て行く私共父子を見て呆気あつけにとられた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
取たることまで逐一ちくいち訴へ呉ん邪魔じやませずと其所そこひらいて通しをれとのゝしるを段右衞門はいかおのいかして置ば我が身の仇なり覺悟をせよと切付るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひつゝ法華僧ほつけそう哄然こうぜん大笑たいせうして、そのまゝ其處そこ肱枕ひぢまくらして、乘客等のりあひらがいかにいかりしか、いかにのゝしりしかを、かれねむりてらざりしなり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
釋迦がおのが來しかたを説いて提婆達多だいばだつたのゝしりしは、罵ることの極めて深きものなりと。逍遙子が言も亦罵り得て好からずや。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
『僕も不幸にして郡視学を叔父に持たなかつた』とかなんとか言ひたい放題なことを書き散らし、普通教育者の身をうらのゝし
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ゾオラが偶々たま/\醜悪しうあくのまゝをうつせば青筋あをすじ出して不道徳ふだうとく文書ぶんしよなりとのゝしわめく事さりとは野暮やぼあまりに業々げふ/\しき振舞ふるまひなり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
技法ぎはふ尖鋭せんえい慧敏けいびんさは如何いかほどまでもたふとばれていいはずだが、やたらに相手あひて技法ぎはふ神經しんけいがらして、惡打あくだいかのゝしり、不覺ふかくあやまちをとが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
彼は何かぶつ/\のゝしつてゐたらしいが、私にはわからなかつた。がとにかく咒文じゆもんのやうなものをとなへてゐたので、直ぐには返辭をしなかつた。
口穢くちぎたなくのゝしるのを此方こちらは何を云われても只おど/\して居ると、お虎婆アは無闇に来てお筆の袂から巾着を引出して
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
滿ののゝしる声がしたかはたれどきに、鏡子は茶の間へ出てくと、お照は四畳半で榮子をじつとじつといだいて居た。(終り)
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
下人は、老婆が屍骸しがいにつまづきながら、あはてふためいて逃げようとする行手を塞いで、こうのゝしつた。老婆は、それでも下人をつきのけてかうとする。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
今の所謂基督教信者なるものに幾等いくとうか加ふるところありし、然るも基督は之を排して、まむしすゑとまでのゝしりぬ。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
一方で家の爲といふのをたてにすれば、一方では個人主義しゆぎ振廻ふりまはす。軈がては親は子に對つて、不孝ふかうなるやくざ者とのゝしる、子は親に對つて、無慈悲じひかたりだとどく吐く。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
なかに一人ちよつぴり鼻の尖つた狐のやうな表情をした、商人あきんどらしい男が、口汚くウヰルソンをのゝしるのが、殊更ことさら耳立みゝだつて聞えた。総長某氏はしやくにさへて口を出した。
「そればかりでない。人妻に対して汝は不埒ふらちな考へなどを持つてゐくさるぞ、此の不届者……!」と隊長は事のついでに其の事までも素つぱぬいてのゝしつてゐるやうな気がして
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
扉をとざして鳩首きうしゆ密議する三個の人影を見る、目を閉ぢて沈黙する四十五六とも見えて和服せるは議長の浦和武平ぶへい、眉をげて咄々とつ/\のゝしる四十前後とおぼしき背広は幹事の松本常吉
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
○英雄をのゝしる、快事たり。美人を罵る、亦快事たり。されども共に、銭なき時の事たり。
青眼白頭 (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
汝が二心あることを知らざりしこそ不覚なれ、されども太閤の高恩を忘れ、義を捨てゝ約にたがい、関ヶ原に於いて裏切りせしこと、汝心に耻じざるやと、声を励ましてのゝしったので
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
文句もんく色々いろ/\へて、あるひつよく、あるひよわく、あるひのゝしり、あるひはふざけ、種々樣々しゆ/″\さま/″\こといてやつた。中途ちうとへたたれてはまつたてき降伏かうふくするわけだから、れい持藥ぢやくのつもりで毎日まいにちいた。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
ごくからかへつて見ると石がない、雲飛うんぴは妻をのゝしち、いかりいかり、くるひにくるひ、つひ自殺じさつしようとして何度なんど妻子さいし發見はつけんされては自殺することも出來できず、懊惱あうなう煩悶はんもんして居ると、一夜
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
東皐子とうくわうしはそれをいて、手紙てがみで『おもなほしていかとり枯木かれきに二とまる』とつて寄越よこす。幻翁げんおうもすゝめる。のゝしりながらもじつきたいので、また出掛でかける。相變あひかはらずなにい。
答がないので半ば歌のやうな調子から次第に独語のやうにぶつぶつと父をのゝしり乍ら、その時分にはもう整理した家具什器じふきの一杯に押し込んであつて誰もは入れないやうになつてゐた離れに
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
おがみますとこゝろからいて、このある甲斐かひなき活計くらしかぞへれば、らうのゝしられしことはらたゝしく、おためごかしの夜學沙汰やがくさたは、れを留守るすにしてたのしみをおもゆゑぞと一にくやしく
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お信さんはさう自分で自分をのゝしりながら、更にしつかり私にしがみついて
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
軍艦ぐんかんにしても、あんなにはや船脚ふなあし新式しんしき巡洋艦じゆんやうかんか、水雷驅逐艦すいらいくちくかんほかはあるまい。』と二とう運轉手うんてんしゆ非番ひばん舵手だしゆ水夫すゐふ火夫くわふ船丁ボーイいたるまで、たがひ見合みあはせつゝ口々くち/″\のゝしさはいでる。
まち人々ひと/″\ことかれいつ輕蔑けいべつして、無教育むけういく禽獸的生活きんじうてきせいくわつのゝしつて、テノルの高聲たかごゑ燥立いらだつてゐる。かれものふのは憤懣ふんまんいろもつてせざれば、欣喜きんきいろもつて、何事なにごと熱心ねつしんふのである。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
もとより青木さんは、しかとした事を捉へるまでは、奥さんに向つては、そんな事だけで奥さんのすべてをのゝしられるやうもないのだけれど、おかみさんだけにそつと疑をもらされたのであつた。
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
腰から下のバツとひらいた清国しんこく学生が五六人何やら大声にのゝしつて居た。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
井中よりにはかに火をいだし火勢くわせいさかんにもえあがりければ近隣きんりんのものども火事くわじなりとしてはせつけ、井中より火のもゆるを見て此井を掘しゆゑ此火ありとて村のものども口々に主人をのゝしうらみければ
透谷と思想の傾向を同ふするもの僕等を形而下けいじか派とのゝしるに至れり。
透谷全集を読む (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
にあらばとしきりにつまなるおにのゝしりぬ
鬼桃太郎 (旧字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かたみに低くのゝしりつ。
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
のゝしものころさるべし。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こしたばさみ此青壯年あをにさいいざ行やれとのゝしりつゝ泣臥なきふし居たる千太郎を引立々々ひきたて/\行んとすれば此方こなたむねくぎ打思ひ眼前がんぜん養父のあづかり金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
はじめは人皆ひとみな懊惱うるさゝへずして、渠等かれらのゝしらせしに、あらそはずして一旦いつたんれども、翌日よくじつおどろ報怨しかへしかうむりてよりのちは、す/\米錢べいせんうばはれけり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中にはあの男をのゝしつて、画の為には親子の情愛も忘れてしまふ、人面獣心の曲者くせものだなどと申すものもございました。
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
思ひ/\のことを言ふ人々に近いて、其となく会の模様を聞いて見ると、いづれも激昂したり、憤慨したりして、一人として高柳をのゝしらないものは無い。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「圭一郎が居らんからこないなことになるんぢや。不孝者の餓鬼奴。今に罰が當つて眼がつぶれようぞ」とお父さまはさも/\憎しげにお兄さまをのゝしられました。
業苦 (旧字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
彼は偽学偽弁に長じたるパリサイ人をのゝしれり、彼は罪にち汚れに満てるサマリヤの女を救ひに入らしめたり、彼は生命いのちを人間に備へたり、彼は死を人間より絶たんとせり
実行的道徳 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
と言つて口を極めてのゝしつたものだ。忘れてゐたが上西氏は人並外れた口達者くちたつしやである。実業家としてはつかのない口達者が自動車をこきおろす場合に初めて役に立つ事になつた。
田中は直に再度の質問書を提出し、その十四日、議会最終日の演壇で次のやうにのゝしつた。
政治の破産者・田中正造 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しかるを愚図々々ぐづ/\さかしらだちてのゝしるは隣家となりのおかずかんがへる独身者ひとりもの繰言くりごとなんえらまん。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
余りの事に友之助がかたりめ泥坊めと大声を放ってのゝしりますと、門弟どもが一同取ってかゝり、友之助を捕縛ほばくして表へ引出し、さん/″\打擲ちょうちゃくした揚句あげくはて、割下水の大溝おおどぶ打込うちこ
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
私のうちは朝の忙しい商売で、学校へ子供達を出すのも大方は時間かつ/\なのでしたから、どうしても私は水谷のひどいのゝしりを受けたあとでなければ先生のお顔を見られませんでした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
さるに數奇失意の人は造化を怨み、自然を憤りて、此世を穢土ゑどのゝしり、苦界とそしるなり。さて亦得意の人はこれに反して造化を情深き慈母のやうにおもひて、此世を樂園とおもへり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
馬鹿野郎ばかやらうめとのゝしりながらふくろをつかんでうら空地あきち投出なげいだせば、かみやぶれてまろ菓子くわしの、たけのあらがきうちこえてどぶなか落込おちこむめり、げん七はむくりときておはつと一こゑおほきくいふになに御用ごようかよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
井中よりにはかに火をいだし火勢くわせいさかんにもえあがりければ近隣きんりんのものども火事くわじなりとしてはせつけ、井中より火のもゆるを見て此井を掘しゆゑ此火ありとて村のものども口々に主人をのゝしうらみければ
小六郎が指した木戸の外、この中二階から五間とも離れてゐない路地を、お勝手の方へ蟲のやうに這つて居るのは、見る影もないゐざりの乞食老爺で、のゝしりわめく男達の顏をうらめしさうに見上げながら