そだ)” の例文
世界せかい植物しょくぶつあいするひとたちで、おそらく、わたしをっていないものはあるまいね。わたしは、みなみあたたかなしまはやしなかそだちました。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
谷崎氏は混沌たる今日の文壇に於てうじそだちも共々に傑出した作家である。自分の評論の如きは敢て氏の真価を上下するものでない。
谷崎潤一郎氏の作品 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
なに下品げひんそだつたからとて良人おつとてぬことはあるまい、ことにおまへのやうな別品べつぴんさむではあり、一そくとびにたま輿こしにもれさうなもの
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ところで、たけなかからは、そだかたがよかつたとえて、ずん/\おほきくなつて、三月みつきばかりたつうちに一人前いちにんまへひとになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
樹木じゆもくには、それ/″\日陰地ひかげちにもよくそだや、また日陰ひかげ日陽ひなた中間ちゆうかんのところをこのなど種類しゆるいによつて、土地とちてき不適ふてきがあります。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
うるほせしが此方に向ひてコリヤ娘必ず泣な我も泣じ和女そなたそだて此年月よき婿むこ取んと思ふ所へ幸ひなるかなと今度の婚姻無上こよなき親娘おやこが悦びを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とき勘次かんじもおしなはら大切たいせつにした。をんなが十三といふともうやくつので、與吉よきちそだてながら夫婦ふうふは十ぶんはたらくことが出來できた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
たいわたし幼少ちひさ時分じぶんには、ごくよわかつたものですから、この白狐しろぎつねはこれでもそだつかしら、とみんなはれたくらゐださうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それもはじめから宿やどたねがなかつたのなら、まだしもだが、そだつべきものを中途ちゆうとおとしたのだから、さら不幸ふかうかんふかかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
夫婦ふうふわらいながら、この子供こどもをだいじにしてそだてました。ところがこの子は、いつまでたってもやはりゆびだけより大きくはなりませんでした。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その心持こころもちは今、私をだん/\と宗教的しうけうてき方面はうめんみちびかうとし、反動はんどうのやうに起つて來た道徳的だうとくてきな心は、日光につくわうとなつて私の胸に平和へいわの芽をそだてます。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
南無冥加なむみょうがあらせたまへ! 多勢おほぜいそだてた嬰兒あかさんうちいっ可憐いたいけであったはおまへぢゃ。そのまへ御婚禮ごこんれいることが出來でくれば、わし本望ほんまうでござります。
たゞし其時そのときから、両親りやうしんわたくしをとこにしました。それまで、三人さんにん出来できみんなそだたなかつたので、わたくしをんなにしていたんです。雪枝ゆきえをんなのやうな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さて、ひとりっ子というものは、わがままっ子のきかんぼうがそだつものですが、林太郎はどっちかといえば、いくじなしのむし子にそだちました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
けれどかへるが、「子守歌こもりうたらないでどうしてあかばうそだてられませう。」といひますので、また元氣げんきして、「げつ げつ げつ」とならふのでした。
お母さん達 (旧字旧仮名) / 新美南吉(著)
これはあなたとはえんのあるものでございます。どうぞあなたの子にしておそだてをねがいます。おねがいでございます。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そだちのいい家鴨あひるはそのおとうさんやおかあさんみたいに、ほら、こうあしひろくはなしてひろげるもんなのだ。さ、くびげて、グワッってって御覧ごらん
わがまま勝手かってそだてられてたおこのは、たとい役者やくしゃ女房にょうぼうには不向ふむきにしろ、ひんなら縹緻きりょうなら、ひとにはけはらないとの、かた己惚うぬぼれがあったのであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
だれもおいてはきません。ひとりのこらずくのです。でもね、いいですか、それまでにおほきくそして立派りつぱそだつことですよ。壯健たつしやからだつよはね! わかつて
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
お八重は此反對に、今は他に縁づいた異腹はらちがひの姉と一緒にそだつた所爲せゐか、負嫌ひの、我の強い兒で、娘盛りになつてからは、手もつけられぬ阿婆摺あばづれになつた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
「鳥にとっては、この上もなくかなしいことね。」と、おかあさんは思いました。「そうなったら、みんな、いったいどこへいって、ヒナをそだてるのかしら?」
海上のガス即ち霧が襲うて来るので、根菜類こんさいるいは出来るが、地上にそだつものは穀物蔬菜何も出来ず、どうしても三里内地に入らねば麦も何も出来ないのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
なにをきかれてもこのこたえ簡単かんたん明瞭めいりょう幽界ゆうかいそだった小供こどもには矢張やはりどこかちがったところがあるのでした。
けれども、今まで山の中にばっかりそだって、あまり町を見たことのない清造の目には、それがどんなに美しくうつったことでしょう。清造はすっかりおどろきました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
そういうはげしい動きのなかで、幼い子どもらは麦めしをたべて、いきいきとそだった。前途ぜんとに何が待ちかまえているかをしらず、ただ成長することがうれしかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
ソログーブが四つのときにちちんで以来いらいはははよそのいえ女中奉公じょちゅうぼうこうをして一人子ひとりごそだげた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
わたしたちの生まれ合わせは、ほかのあまやかされてそだった子どもたちが、あんまり多いキッスにへいこうしてそれをさけなければならないのとは、大ちがいであった。
ランチュウのがありまして、こいつは、うまくそだてりや、たいしたものになるでしよう。いえ値段ねだんはいいです。さしあげるんですよ。えさは、当分とうぶんのうち、たまご黄身きみにしてください。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
だケエに十年も後家ごけ立デデせ、ホガガらワラシもらわらの上ララそだデデ見デも、羸弱キヤなくてアンツクタラ病氣ネトヅガれデ死なれデ見れば、派立ハダヂ目腐めくさ阿母アバだケヤエに八十歳ハチヂウ身空みそらコイデ
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
相当さうたう身柄みがらいへそだつただけに青木さん夫婦ふうふ相方さうはう共に品のいい十人なみ容姿ようし持主もちぬしで、善良ぜんりやう性格せいかくながらまた良家りやうかの子らしい、矜と、いくらかえをるやうな氕質きしつもそなへてゐた。
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
むかし印度いんどのある国に、一人の王子がありました。国王からは大事だいじそだてられ、国民からはしたわれて、ゆくゆくは立派りっぱな王様になられるにちがいないと、みなからのぞみをかけられていました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
「三十年にもなりますよ、あなた。あのお三人共に私がおそだて申しました。」
「それならわかつて居る、お小夜は深川そだちで、海も川も近いから子供の時は河童のやうによく泳いだし、半次郎は材木屋の若旦那で、たまにはいかだにも材木にも乘るから、泳ぎはうまい筈だ」
娘がお前でなければならないとわずらう迄に思い詰めたというと、浮気なようだがうではない、あれが七歳なゝつの時母が死んで、それから十八までわしそだった者だから、あれも一人の親だと大事に思い
あらかぜいとうてそだてられたきはめて多幸たかう愛娘まなむすめである。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
対手は曲輪くるわそだちの気性の勝った花魁おいらんだ。
そうだ、これをおとうとせてやろう。そして、りこうなはちが、どうしてつくり、また子供こどもそだてるのに苦心くしんするかをおしえてやろう。
ある夏の日のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひんよしとよろこぶひとありけり十九といへど深窓しんそうそだちは室咲むろざきもおなじことかぜらねど松風まつ ぜひゞきはかよ瓜琴つまごとのしらべになが春日はるび
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
以上いじようはなししたのは、つゞめていふとあつ𤍠帶ねつたいからだんおんかんといふふうにその各地方かくちほうてきしてよくそだ森林しんりん區域くいきと、そのたい特徴とくちようとでした。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
たとへば」と云つて、先生はだまつた。けむりがしきりにる。「たとへば、こゝに一人ひとりの男がゐる。ちゝは早く死んで、はゝ一人ひとりたよりそだつたとする。 ...
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
付て一同に通夜迄もなし翌朝よくあさ泣々なく/\野邊のべおくりさへいとねんごろに取行なひ妻の紀念かたみ孤子みなしご漸々やう/\男の手一ツにそだてゝ月日を送りけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そこでおじいさんとおばあさんは、あわてておゆうをわかして、あかちゃんにおゆうをつかわせて、あたたか着物きものの中にくるんで、かわいがってそだてました。
瓜子姫子 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「さうだともよ、こらおつうでもくつちやそだたなかつたかもんねえぞ、それこそ因果いんぐわなくつちやなんねえや、なあおつう」女房等にようばうらはいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とうさんも馬籠まごめのやうなむらそだつた子供こどもです。山道やまみちあるくのにれてはます。それにしても、『みさやまたうげ』は見上みあげるやうなけはしい山坂やまさかでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「たゞのひとでないとはいひながら、今日けふまでやしなそだてたわしをおやおもつて、わしのいふことをきいてもらひたい」
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
たづぬるにくはしからず、宿題しゆくだいにしたところ近頃ちかごろ神田かんだそだつた或婦あるをんなをしへた。茄子なす茗荷めうがと、油揚あぶらあげ清汁つゆにして、薄葛うすくづける。至極しごく經濟けいざい惣菜そうざいださうである。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
どうぞ辛抱しんぼうして、話相手はなしあいてになっておくんなさいまし、——あたしゃ、王子おうじそだった十年前ねんまえも、お見世みせかようきょうこのごろも、こころ毛筋程けすじほどかわりはござんせぬ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
乳母 はて、おわかかた母御樣はゝごさまこのやしき内室おかたさまぢゃがな、よいおひとで、御發明ごはつめいな、御貞節ごていせつな。わしは、いま貴下こなたはなしてござらしゃったぢゃうさまをそだてました。
東の京に住む君は、西なる京なつかしとおぼさぬにてはあらざりき。父の帝の眠ります西の京、其処そこれまし十六までそだち玉ひし西の京、君に忘られぬ西の京。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこにそだつ木といえば、わずかに、シラカバやカンバやエゾマツぐらいのものです。こういう木は、高い土地のさむさにもたえ、わずかの土地でもがまんできるのです。