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抱
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かゝ
ふりがな文庫
“
抱
(
かゝ
)” の例文
鏡台の前に坐つてゐた
抱
(
かゝ
)
への一人の蝶子が言ふと、咲子はまた自分の
頭脳
(
あたま
)
へしつかり詰めこむやうに
復習
(
さら
)
つてから、下駄を突かけた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
門野
(
かどの
)
は
一寸
(
ちよつと
)
其様子を
覗
(
のぞ
)
きに
来
(
き
)
たが、代助の平生を知つてゐるので、言葉も掛けず、椅子に
引
(
ひ
)
つ
掛
(
か
)
けてある羽織丈を
抱
(
かゝ
)
へて
出
(
で
)
て行つた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
無理
(
むり
)
に申させても取上には
相成
(
あひなら
)
ぬぞ其源次郎と申はナ細川の
家來
(
けらい
)
にて井戸源次郎と云者新吉原の三浦屋四郎左衞門
抱
(
かゝ
)
への
遊女
(
いうぢよ
)
空
(
うつ
)
せみを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
が
忽
(
たちま
)
ち、
何
(
なに
)
か
恐
(
おそろ
)
しい
事
(
こと
)
でも
急
(
きふ
)
に
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
したかのやうに、
彼
(
かれ
)
は
頭
(
かしら
)
を
抱
(
かゝ
)
へるなり、
院長
(
ゐんちやう
)
の
方
(
はう
)
へくるりと
背
(
せ
)
を
向
(
む
)
けて、
寐臺
(
ねだい
)
の
上
(
うへ
)
に
横
(
よこ
)
になつた。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
おつぎはそれから
村内
(
そんない
)
へ
近所
(
きんじよ
)
の
娘
(
むすめ
)
と
共
(
とも
)
に
通
(
かよ
)
つた。おつぎは
與吉
(
よきち
)
の
小
(
ちひ
)
さな
單衣
(
ひとへもの
)
を
仕上
(
しあ
)
げた
時
(
とき
)
其
(
そ
)
の
風呂敷包
(
ふろしきづゝみ
)
を
抱
(
かゝ
)
へていそ/\と
歸
(
かへ
)
つて
來
(
き
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
▼ もっと見る
と鬼を
欺
(
あざむ
)
く文治もそゞろに
愛憐
(
あいれん
)
の涙に暮れて、お町を
抱
(
かゝ
)
えたまゝ暫く
立竦
(
たちすく
)
んで居りまする。お町は
漸
(
ようや
)
く気も落着いたと見えまして
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「ウム、
彼
(
あ
)
の松島の一件か」と、大和は例の
無頓着
(
むとんちやく
)
に言ひ捨てしが、
忽
(
たちま
)
ち心着きてや両手に頭
抱
(
かゝ
)
へつ「やツ」と言ひつゝお花を見やる
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
「さあ、どう言つて呼ぶのか……」O氏は髪の毛の長い頭を
引
(
ひ
)
つ
抱
(
かゝ
)
へてゐたが、苦笑ひしながら言つた。「その辺は僕もよく知らんがね。」
茶話:06 大正十一(一九二二)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
人
(
ひと
)
の
知
(
し
)
らない
行
(
ぎやう
)
をします——
其
(
そ
)
の
晝
(
ひる
)
の
寢床
(
ねどこ
)
から
當番
(
たうばん
)
の
女
(
をんな
)
を
一人
(
ひとり
)
、
小脇
(
こわき
)
に
抱
(
かゝ
)
へたまゝ、
廣室
(
ひろま
)
に
駈込
(
かけこ
)
んで
來
(
き
)
たのですが、
皆
(
みんな
)
來
(
こ
)
い! と
呼立
(
よびた
)
てます。
みつ柏
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
「さうか。それではお前はおれの
抱
(
かゝ
)
へ
医者
(
いしや
)
になるか——」
斯
(
か
)
う、万事を呑込んでゐるやうな
鷹揚
(
おうやう
)
な態度で云ふのであつた。
哀しき父
(新字旧仮名)
/
葛西善蔵
(著)
よからぬ猫の群のなかに鼠は入來れるなりけり、されどバルバリッチヤはその腕にて彼を
抱
(
かゝ
)
へて曰ふ、離れよ、わが彼をおさゆる間 五八—六〇
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
おかみさんは、二人の小さいお子さんを
抱
(
かゝ
)
へてさへゐられなかつたら、こんなことなぞをなさらなくもいゝ人柄である。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
凡
(
およそ
)
織物
(
おりもの
)
を
専業
(
せんげふ
)
とする所にては、
織人
(
はたおり
)
を
抱
(
かゝ
)
へおきて
織
(
おら
)
するを利とす。
縮
(
ちゞみ
)
においては
別
(
べつ
)
に
无
(
な
)
き一国の名産なれども、
織婦
(
はたおりをんな
)
を
抱
(
かゝ
)
へおきておらする家なし。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
女中たちも、若殿の話が可笑しいよりは、彼の珍しい脱線振りが可笑しいので、彼が一と言云うたびにみんなどっと腹を
抱
(
かゝ
)
えた。すると河内介は
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
絶えざる低い
大太鼓
(
おほだいこ
)
の音に例の
如
(
ごと
)
く板をバタバタ
叩
(
たゝ
)
く音が
聞
(
きこ
)
えて、左手の
辻番
(
つじばん
)
小屋の
蔭
(
かげ
)
から
仲間
(
ちゆうげん
)
と
蓙
(
ござ
)
を
抱
(
かゝ
)
へた女とが大きな声で争ひながら出て来る。
すみだ川
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
例
(
たと
)
へば客の乗車券を買つて来てやつたり、ステーションまで手荷物を
抱
(
かゝ
)
へて客を送つたり、夜になると泊り客を届け帳に記入して派出所へ持つて行つたり
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
お
媼
(
ばあ
)
さんは、
今日
(
けふ
)
もうれしさうに
畑
(
はたけ
)
を
見廻
(
みまは
)
して
甘味
(
うま
)
さうに
熟
(
じゆく
)
した
大
(
おほ
)
きい
奴
(
やつ
)
を一つ、
庖丁
(
ほうてう
)
でちよん
切
(
ぎ
)
り、さて、さも
大事
(
だいじ
)
さうにそれを
抱
(
かゝ
)
えてかえつて
行
(
ゆ
)
きました。
ちるちる・みちる
(旧字旧仮名)
/
山村暮鳥
(著)
お前さんのは
其処
(
そこ
)
にお
葉漬
(
はづけ
)
かありますよ、これは
儂
(
わたし
)
が
儂
(
わたし
)
のお
銭
(
あし
)
で買つたのですと
天丼
(
てんどん
)
を
抱
(
かゝ
)
へ
込
(
こ
)
み
候如
(
そろごと
)
きは
敢
(
あへ
)
て社会
下流
(
かりう
)
の事のみとも
限
(
かぎ
)
られぬ
形勢
(
けいせい
)
に
候
(
そろ
)
内職
(
ないしよく
)
と
人心
(
じんしん
)
もゝはがき
(新字旧仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
都て不快な
衝動
(
しようどう
)
を
與
(
あた
)
へたに
抱
(
かゝ
)
はらず、
而
(
しか
)
も心には何んといふことは無く
爽快
(
そうくわい
)
な氣が通ツて、例へば重い石か何んぞに
壓
(
お
)
ツ
伏
(
ぷ
)
せられてゐた草の
芽
(
め
)
が、
不圖
(
ふと
)
石
(
いし
)
を除かれて
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
お糸はどう骨を折つても、奧方を味方に引入れることが出來さうもないとわかつて、
手洗鉢
(
てうづばち
)
の前で手を洗つてる奧方を、後ろから
抱
(
かゝ
)
へるやうにして胸を刺してしまつた。
銭形平次捕物控:289 美しき人質
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
声——たゞ、病人を
抱
(
かゝ
)
へて、生活の不安と闘ふことは、君にとつて、負担が
重
(
おも
)
すぎやしないか?
クロニック・モノロゲ
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
「風呂敷のなかに、寝間着と
歯磨楊子
(
はみがきやうじ
)
を入れて、チヤンと
抱
(
かゝ
)
へてゐるのでございますよ。」
姉弟と新聞配達
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
海
(
うみ
)
の
面
(
おもて
)
は
瀧壺
(
たきつぼ
)
のやうに
泡立
(
あわだ
)
つて、
酷
(
ひど
)
いも
酷
(
ひど
)
くないも、
私
(
わたくし
)
と
少年
(
せうねん
)
とは、
頭
(
あたま
)
を
抱
(
かゝ
)
へて、
艇
(
てい
)
の
底
(
そこ
)
へ
踞
(
うづくま
)
つてしまつたが、
其爲
(
そのため
)
に、
昨夜
(
さくや
)
海水
(
かいすい
)
に
浸
(
ひた
)
されて、
今
(
いま
)
漸
(
やうや
)
く
乾
(
かわ
)
きかけて
居
(
を
)
つた
衣服
(
きもの
)
は
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
私は教科書を包んだ風呂敷包みを
抱
(
かゝ
)
へて
梯子段
(
はしごだん
)
を下り、士官の
音調
(
アクセント
)
に似せ、「行つて参ります」と言ふと、亭主は皮肉な笑ひを洩しながら、「へえ」と、
頤
(
あご
)
で答へるだけだつた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
と
母親
(
はゝおや
)
よりの
言
(
い
)
ひつけを、
何
(
なに
)
も
嫌
(
い
)
やとは
言
(
い
)
ひ
切
(
き
)
られぬ
温順
(
おとな
)
しさに、
唯
(
たゞ
)
はい/\と
小包
(
こづゝ
)
みを
抱
(
かゝ
)
へて、
鼠小倉
(
ねづみこくら
)
の
緒
(
を
)
のすがりし
朴木齒
(
ほうのきば
)
の
下駄
(
げた
)
ひた/\と、
信如
(
しんによ
)
は
雨傘
(
あまがさ
)
さしかざして
出
(
いで
)
ぬ。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
薙刀
(
なぎなた
)
を
抱
(
かゝ
)
へた白衣姿の小池と、母親が
丹精
(
たんせい
)
を
凝
(
こら
)
した
化粧
(
けしやう
)
の中に凉しい眼鼻を浮べて、紅い唇を
蕾
(
つぼ
)
めたお光とが、連れ立つて歸つて行くのを、町の人は取り卷くやうにして眼を
注
(
そゝ
)
いだ。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
この
他
(
ほか
)
に
家
(
いへ
)
に
召
(
め
)
し
仕
(
つか
)
はれてゐるもの
大勢
(
おほぜい
)
手
(
て
)
ぐすね
引
(
ひ
)
いて
待
(
ま
)
つてゐます。
家
(
いへ
)
の
内
(
うち
)
は
女
(
をんな
)
どもが
番
(
ばん
)
をし、お
婆
(
ばあ
)
さんは、
姫
(
ひめ
)
を
抱
(
かゝ
)
へて
土藏
(
どぞう
)
の
中
(
なか
)
にはひり、
翁
(
おきな
)
は
土藏
(
どぞう
)
の
戸
(
と
)
を
締
(
し
)
めて
戸口
(
とぐち
)
に
控
(
ひか
)
へてゐます。
竹取物語
(旧字旧仮名)
/
和田万吉
(著)
昂奮と、不安と、他の何よりも
優
(
まさ
)
る恐怖の感情が、私の精神機能を混亂させた。やがて、私は、誰かゞ私をいぢつてゐるのに氣がついた。私を
抱
(
かゝ
)
へ起しながら坐る姿勢にして支へてゐるのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
只その患者が、數百圓の前借を背負つてゐる場合は、その
抱
(
かゝ
)
へ主のため、その前借を殺してはならぬといふ義務から——女自身の命を生かさうとするのではない——割合に丁寧な見方をした。
天国の記録
(旧字旧仮名)
/
下村千秋
(著)
横田河原
(
よこたがはら
)
の一戰に
脆
(
もろ
)
くも敗れしに驚きて、今はとて平家最後の力を盡して北に打向ひし十五萬餘騎、一門の存亡を
賭
(
と
)
せし
倶利加羅
(
くりから
)
、
篠原
(
しのはら
)
の二戰に、哀れや殘り少なに打ちなされ、
背疵
(
せきず
)
抱
(
かゝ
)
へて
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
おほつづみ
抱
(
かゝ
)
へかねたるその頃よ
美
(
よ
)
き
衣
(
きぬ
)
きるをうれしと思ひし
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
大抵はもう、
冬支度
(
ふゆじたく
)
、マフを
抱
(
かゝ
)
へて
有
(
も
)
つてるに
牧羊神
(旧字旧仮名)
/
上田敏
(著)
「
俺
(
お
)
らおめえ、
手洟
(
てばな
)
はかまねえよ」といつたりがら/\と
騷
(
さわ
)
ぎながら、
笑
(
わら
)
ひ
私語
(
さゝや
)
きつゝ、
濡
(
ぬ
)
れた
手
(
て
)
を
前掛
(
まへかけ
)
で
拭
(
ふ
)
いて
再
(
ふたゝ
)
び
飯
(
めし
)
つぎを
抱
(
かゝ
)
へた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
秋「ムヽウ、其の医者は何処の者だえ、いやさ近辺にいるというが、よもやお
抱
(
かゝ
)
えの医者ではあるまい、町医か
外療
(
げりょう
)
でもいたすものかえ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
御米
(
およね
)
は
特別
(
とくべつ
)
の
挨拶
(
あいさつ
)
もしなかつた。
小六
(
ころく
)
は
其儘
(
そのまゝ
)
起
(
た
)
つて六
疊
(
でふ
)
へ
這入
(
はい
)
つたが、やがて
火
(
ひ
)
が
消
(
き
)
えたと
云
(
い
)
つて、
火鉢
(
ひばち
)
を
抱
(
かゝ
)
えて
又
(
また
)
出
(
で
)
て
來
(
き
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
頼
(
たの
)
み彼の金子を以て
何方
(
いづかた
)
へか住込
仕送
(
しおく
)
り用人に成んと心掛けしに幸ひ嘉川家にて仕送り用人を召
抱
(
かゝ
)
へたしとのことに付多兵衞を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
其處
(
そこ
)
へあの、
牝
(
めす
)
の
黒猫
(
くろねこ
)
が、
横合
(
よこあひ
)
から、フイと
乘
(
の
)
りかゝつて、お
君
(
きみ
)
のかいた
歌
(
うた
)
の
其
(
そ
)
の
懷紙
(
ふところがみ
)
を、
後脚
(
あとあし
)
で
立
(
た
)
つてて
前脚
(
まへあし
)
二
(
ふた
)
つで、
咽喉
(
のど
)
へ
抱
(
かゝ
)
へ
込
(
こ
)
むやうにした。
二た面
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
おくみは、寝ぼけてむづかしい顔をしていらつしやる坊ちやんを
抱
(
かゝ
)
へるやうにして、やつと蒲団の上へお寝かせした。
桑の実
(新字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
イワン、デミトリチは
昨日
(
きのふ
)
と
同
(
おな
)
じ
位置
(
ゐち
)
に、
兩手
(
りやうて
)
で
頭
(
かしら
)
を
抱
(
かゝ
)
へて、
兩足
(
りやうあし
)
を
縮
(
ちゞ
)
めた
儘
(
まゝ
)
、
横
(
よこ
)
に
爲
(
な
)
つてゐて、
顏
(
かほ
)
は
見
(
み
)
えぬ。
六号室
(旧字旧仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
時平は途端に
噴
(
ふ
)
き出してわッは/\腹を
抱
(
かゝ
)
え始めたが、いつ迄たっても笑いやまず、体がふるえてその文案を受取ることが出来ないので、その間に道真が悠々と事務を
執
(
と
)
り
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
さいぜんよりこゝにありつる
妻
(
つま
)
子らこれを見るより
妻
(
つま
)
は
夫
(
をつと
)
が
首
(
くび
)
を
抱
(
かゝ
)
へ、子どもは
死骸
(
しがい
)
にとりすがり
声
(
こゑ
)
をあげて
哭
(
なき
)
けり、人々もこのあはれさを見て
袖
(
そで
)
をぬらさぬはなかりけり。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
古谷俊男
(
ふるやとしを
)
は、
椽側
(
えんがは
)
に
据
(
す
)
ゑてある長椅子に長くなツて、
兩
(
りやう
)
の腕で頭を
抱
(
かゝ
)
へながら
熟
(
じつ
)
と
瞳
(
ひとみ
)
を
据
(
す
)
ゑて考込むでゐた。
體
(
からだ
)
のあいた日曜ではあるが、今日のやうに降ツては
何
(
ど
)
うすることも出來ぬ。
青い顔
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
あの人の
抱
(
かゝ
)
へてる鞄をみ給へ。君たちが五人や十人来たつて、びくともしさうにないだらう。あの人が、摺沢さんつて云ふ多額納税者だ。北極書院の隠れたる金主だから覚えとき給へ。
雅俗貧困譜
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
更にまた四十歳前後で死んでゐたら惜しむべき新進作家といはれたかも知れない。若しまた五十歳前後で死んでゐたら、女房に逃げられて二児を
抱
(
かゝ
)
へながら
悶死
(
もんし
)
したといはれたであらう。
老残
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
こぼれるほどに
乘
(
の
)
つた
客
(
きやく
)
は
行商
(
ぎやうしやう
)
の
町人
(
ちやうにん
)
、
野
(
の
)
ら
歸
(
がへ
)
りの
百姓
(
ひやくしやう
)
、
乳呑兒
(
ちのみご
)
を
抱
(
かゝ
)
へた
町家
(
ちやうか
)
の
女房
(
にようばう
)
、
幼
(
をさな
)
い
弟
(
おとうと
)
の
手
(
て
)
を
引
(
ひ
)
いた
町娘
(
まちむすめ
)
なぞで、一
度
(
ど
)
出
(
で
)
かゝつた
舟
(
ふね
)
が、
大
(
おほ
)
きな
武士
(
ぶし
)
の
爲
(
た
)
めに
後戻
(
あともど
)
りさせられたのを
死刑
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
私
(
わたくし
)
は
急
(
いそ
)
ぎ
取上
(
とりあ
)
げた。
素早
(
すばや
)
く
一個
(
いつこ
)
を
夫人
(
ふじん
)
に
渡
(
わた
)
し、
今一個
(
いまいつこ
)
を
右手
(
めて
)
に
捕
(
とら
)
へて『
日出雄
(
ひでを
)
さん。』とばかり
左手
(
ひだり
)
に
少年
(
せうねん
)
の
首筋
(
くびすぢ
)
を
抱
(
かゝ
)
へた
時
(
とき
)
、
船
(
ふね
)
は
忽
(
たちま
)
ち、
天地
(
てんち
)
の
碎
(
くだ
)
くるが
如
(
ごと
)
き
響
(
ひゞき
)
と
共
(
とも
)
に
海底
(
かいてい
)
に
沒
(
ぼつ
)
し
去
(
さ
)
つた。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
平次はそれを後ろから
抱
(
かゝ
)
へて、あり合せのぬるくなつた茶を呑ませました。
銭形平次捕物控:100 ガラツ八祝言
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
抱
(
かゝ
)
へ
主
(
ぬし
)
は
神棚
(
かみだな
)
へさゝげて
置
(
お
)
いても
宜
(
い
)
いとて
軒並
(
のきなら
)
びの
羨
(
うら
)
やみ
種
(
ぐさ
)
になりぬ。
にごりえ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
二人は信一を前後から
抱
(
かゝ
)
へながら、家のなかに
担
(
かつ
)
ぎ込んだ。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
抱
(
かゝ
)
へた手をば放す時
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
抱
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“抱”を含む語句
抱擁
引抱
抱合
介抱
一抱
召抱
抱込
辛抱
抱妓
二抱
掻抱
抱上
三抱
相抱
五抱
抱緊
抱占
懐抱
御抱
抱付
...