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悉
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こと/″\
ふりがな文庫
“
悉
(
こと/″\
)” の例文
毛といふ毛は
悉
(
こと/″\
)
く蛇で、其の蛇は悉く首を
擡
(
もた
)
げて舌を吐いて、
縺
(
もつ
)
るゝのも、
捻
(
ね
)
ぢ
合
(
あ
)
ふのも、
攀
(
よ
)
ぢあがるのも、にじり出るのも見らるゝ
毒と迷信
(新字旧仮名)
/
小酒井不木
(著)
加ふるに物質的文明の輸入堤を決するが如く、上は政治の機関より、下万民の生活の状態に至るまで、千枝万葉
悉
(
こと/″\
)
く其色を変へたり。
明治文学管見:(日本文学史骨)
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
間斷
(
かんだん
)
なく
消耗
(
せうまう
)
して
行
(
ゆ
)
く
肉體
(
にくたい
)
の
缺損
(
けつそん
)
を
補給
(
ほきふ
)
するために
攝取
(
せつしゆ
)
する
食料
(
しよくれう
)
は一
椀
(
わん
)
と
雖
(
いへど
)
も
悉
(
こと/″\
)
く
自己
(
じこ
)
の
慘憺
(
さんたん
)
たる
勞力
(
らうりよく
)
の一
部
(
ぶ
)
を
割
(
さ
)
いて
居
(
ゐ
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
しかも
知
(
し
)
らうと
思
(
おも
)
ふ
事
(
こと
)
は
悉
(
こと/″\
)
く
知
(
し
)
る
事
(
こと
)
が
出來
(
でき
)
なかつた。
己
(
おの
)
れの
弱點
(
じやくてん
)
に
付
(
つ
)
いては、
一言
(
ひとこと
)
も
彼
(
かれ
)
の
前
(
まへ
)
に
自白
(
じはく
)
するの
勇氣
(
ゆうき
)
も
必要
(
ひつえう
)
も
認
(
みと
)
めなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「或る程度を超えた音響になると、
悉
(
こと/″\
)
くが白雲の茫漠に通ふのみで、初めから何の種別もないわけなんだね。つまり、例へば——」
環魚洞風景
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
▼ もっと見る
子供
(
こども
)
には、
話
(
はな
)
した
跡
(
あと
)
でいろ/\の
事
(
こと
)
を
問
(
と
)
はれて、
私
(
わたくし
)
は
又
(
また
)
已
(
や
)
むことを
得
(
え
)
ずに、いろ/\な
事
(
こと
)
を
答
(
こた
)
へたが、それを
悉
(
こと/″\
)
く
書
(
か
)
くことは
出來
(
でき
)
ない。
寒山拾得縁起
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
家中の者は、主人の眼玉をのがれるやう、一人拔け、二人拔け
悉
(
こと/″\
)
く櫻の馬場に飛出して、寶掘りの仲間に加はつてしまつたのです。
銭形平次捕物控:301 宝掘りの夜
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
水を
渉
(
わた
)
る
状
(
すがた
)
に
似
(
に
)
たるゆゑにや、又
深田
(
ふかた
)
を
行
(
ゆく
)
すがたあり。
初春
(
しよしゆん
)
にいたれば雪
悉
(
こと/″\
)
く
凍
(
こほ
)
りて
雪途
(
ゆきみち
)
は石を
布
(
しき
)
たるごとくなれば
往来
(
わうらい
)
冬よりは
易
(
やす
)
し。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
我はや汝の前に置きたり、汝今より自ら
食
(
は
)
むべし、わが筆の
獻
(
さゝ
)
げられたる歌題はわが心を
悉
(
こと/″\
)
くこれに傾けしむればなり 二五—二七
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
「朝鮮へ
国替
(
くにかへ
)
仰せ付けられたく、一類
眷属
(
けんぞく
)
悉
(
こと/″\
)
く引率して彼地へ渡り、直ちに
大明
(
だいみん
)
に取って掛り、事果てぬ限りは帰国
仕
(
つかまつ
)
るまじき旨の
目安
(
めやす
)
」
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
元禄より享保に至るまで人
各
(
おの/\
)
、自己独創の見識を立てんことを競へり。斯の如くにして人心中に伏蔵する思想の礦脈は
悉
(
こと/″\
)
く
穿
(
うが
)
ち出されたり。
頼襄を論ず
(新字旧仮名)
/
山路愛山
(著)
三四の科目のほか
悉
(
こと/″\
)
く九十点を取つてゐるのに、今度から学期毎に発表記入されることになつた席次は九十一番だつた。私はがつかりした。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
然し
渡場
(
わたしば
)
は
未
(
いま
)
だ
悉
(
こと/″\
)
く東京市中から其の跡を絶つた訳ではない。
両国橋
(
りやうごくばし
)
を
間
(
あひだ
)
にして其の
川上
(
かはかみ
)
に
富士見
(
ふじみ
)
の
渡
(
わたし
)
、その
川下
(
かはしも
)
に
安宅
(
あたけ
)
の
渡
(
わたし
)
が残つてゐる。
水 附渡船
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
尤
(
もつと
)
も構内俥夫の中でも私の家に味方する者も少数はあつたけれど、性質の荒い俥夫は
悉
(
こと/″\
)
く他の宿屋に買収された形であつた。
ある職工の手記
(新字旧仮名)
/
宮地嘉六
(著)
余
(
よ
)
の一
家
(
か
)
は
悉
(
こと/″\
)
く
涙含
(
なみだぐ
)
んだ。
此
(
この
)
優
(
やさ
)
しい
少女
(
せうぢよ
)
。
境遇
(
きやうぐう
)
が
變
(
かは
)
つて
居
(
ゐ
)
たのと、
天候
(
てんかう
)
が
曇
(
くも
)
り
勝
(
がち
)
なのとで、一
層
(
そう
)
我々
(
われ/\
)
は
人
(
ひと
)
の
心
(
こゝろ
)
の
優
(
やさ
)
しさが
感
(
かん
)
じられたのであらう。
探検実記 地中の秘密:07 末吉の貝塚
(旧字旧仮名)
/
江見水蔭
(著)
彼は寝床へもぐり込む前に血の附いた衣類などを
悉
(
こと/″\
)
く
大篝
(
おゝかゞ
)
り火の中へ投げ込んで、むしろ證拠を
堙滅
(
いんめつ
)
するのに骨を折った。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
然
(
しか
)
るに
南方
(
なんぱう
)
の
文帝
(
ぶんてい
)
、
元嘉
(
げんか
)
の
年中
(
ねんちう
)
、
京洛
(
きやうらく
)
の
婦女子
(
ふぢよし
)
、
皆
(
みな
)
悉
(
こと/″\
)
く
愁眉
(
しうび
)
、
泣粧
(
きふしやう
)
、
墮馬髻
(
だばきつ
)
、
折要歩
(
せつえうほ
)
、
齲齒笑
(
うしせう
)
をなし、
貴賤
(
きせん
)
、
尊卑
(
そんぴ
)
、
互
(
たがひ
)
に
其
(
そ
)
の
及
(
およ
)
ばざるを
恥
(
はぢ
)
とせり。
唐模様
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と清左衞門
悉
(
こと/″\
)
く悦んで、ニコ/\しながら
家
(
うち
)
に帰って来ました、娘お筆は、寒さの
取附
(
とっつき
)
だと云うにまだ綿の入った着物が思うように
質受
(
しちうけ
)
が出来ず
政談月の鏡
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
諸外國
(
しよぐわいこく
)
の
事情
(
じじやう
)
を
悉
(
こと/″\
)
く
頭
(
あたま
)
の
中
(
なか
)
に
入
(
い
)
れて
考
(
かんが
)
へなければならぬのであつて、
最
(
もつと
)
も
見通
(
みとほ
)
しの
立
(
た
)
ち
惡
(
にく
)
いものである。それで
常
(
つね
)
に
商賣人
(
しやうばいにん
)
に
累
(
るゐ
)
を
來
(
きた
)
すものである。
金解禁前後の経済事情
(旧字旧仮名)
/
井上準之助
(著)
殆ど五六ヶ所から、
凄
(
すさま
)
じい火の手が上つて、それが灰色の雨雲に映つて、
寝惚
(
ねぼ
)
けた眼で見ると、天も地も
悉
(
こと/″\
)
く火に包まれて了つたやうに思はれる。
重右衛門の最後
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
しかし
金屬
(
きんぞく
)
がはひつて
來
(
き
)
たからとてすぐに
今
(
いま
)
までの
石器
(
せつき
)
を
悉
(
こと/″\
)
く
捨
(
す
)
てゝ
全部
(
ぜんぶ
)
金屬器
(
きんぞくき
)
を
使
(
つか
)
ふようになつたのではありません。
博物館
(旧字旧仮名)
/
浜田青陵
(著)
それは別荘の窓は
悉
(
こと/″\
)
く開け放つてあるのに、只一箇所の窓丈鎖してあると云ふ事である。
熟
(
よ
)
く視れば、この二つの窓は重げな扉で厳重に閉ぢてある。
復讐
(新字旧仮名)
/
アンリ・ド・レニエ
(著)
マーキュ
出來
(
でき
)
た。
此上
(
このうへ
)
は
洒落競
(
しゃれくら
)
べぢゃぞ。これ、
足下
(
おぬし
)
の
其
(
その
)
薄
(
うす
)
っぺらな
靴
(
くつ
)
の
底
(
そこ
)
は、
今
(
いま
)
に
悉
(
こと/″\
)
く
磨
(
す
)
り
減
(
へ
)
って、
果
(
はて
)
は
見苦
(
みぐる
)
しい
眞
(
ま
)
ッ
赤
(
か
)
な
足
(
あし
)
を
出
(
だ
)
しゃらうぞよ。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
繰出さる天一坊
方
(
かた
)
には山内伊賀亮が
計
(
はから
)
ひにて
忍
(
しの
)
びを入れ此樣子を承知して
遠見
(
とほみ
)
を出し置雅樂頭殿
出門
(
しゆつもん
)
有
(
あら
)
ば此方も出門に及ぶべしと
悉
(
こと/″\
)
く夜の内に支度を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
大佐
(
たいさ
)
ばかりでない、
快活
(
くわいくわつ
)
なる
武村兵曹
(
たけむらへいそう
)
も、
其他
(
そのた
)
の
水兵等
(
すいへいら
)
も、
電光艇
(
でんくわうてい
)
より
上陸
(
じやうりく
)
した
一同
(
いちどう
)
は、
悉
(
こと/″\
)
く
色蒼
(
いろあほ
)
ざめ、
頭
(
かうべ
)
を
垂
(
た
)
れて、
何事
(
なにごと
)
をか
深
(
ふか
)
く
考
(
かんが
)
へて
居
(
を
)
る
樣子
(
やうす
)
。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
所謂
(
いはゆる
)
敵情偵察
(
てきじようていさつ
)
である。
敵情
(
てきじよう
)
が
悉
(
こと/″\
)
くわかつたならば、
災禍
(
さいか
)
をひき
起
(
おこ
)
すところのかの
暴力
(
ぼうりよく
)
を
打
(
う
)
ち
碎
(
くだ
)
くことも
出來
(
でき
)
よう。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
それでも私は貴方に背きはしなかつたではありませんか。それから私の窮乏
困蹶
(
こんけつ
)
が始まり、多數の同志は
悉
(
こと/″\
)
く脣を反らし、
完膚
(
くわんぷ
)
なきまでに中傷しました。
計画
(旧字旧仮名)
/
平出修
(著)
それから後は、フランスの事は
悉
(
こと/″\
)
く削除してしまふ。なぜかと云つても、説明はしない。或る日編輯長が云つた。
板ばさみ
(新字旧仮名)
/
オイゲン・チリコフ
(著)
其外
(
そのほか
)
の百
姓家
(
しやうや
)
とても
數
(
かぞ
)
える
計
(
ばか
)
り、
物
(
もの
)
を
商
(
あきな
)
ふ
家
(
いへ
)
も
準
(
じゆん
)
じて
幾軒
(
いくけん
)
もない
寂寞
(
せきばく
)
たる
溪間
(
たにま
)
! この
溪間
(
たにま
)
が
雨雲
(
あまぐも
)
に
閉
(
とざ
)
されて
見
(
み
)
る
物
(
もの
)
悉
(
こと/″\
)
く
光
(
ひかり
)
を
失
(
うしな
)
ふた
時
(
とき
)
の
光景
(
くわうけい
)
を
想像
(
さう/″\
)
し
給
(
たま
)
へ。
湯ヶ原より
(旧字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
爰
(
こゝ
)
に
於
(
お
)
いてか
滿座
(
まんざ
)
悉
(
こと/″\
)
く
拍手
(
はくしゆ
)
喝釆
(
かつさい
)
しました、それは
眞
(
しん
)
に
王樣
(
わうさま
)
が
其日
(
そのひ
)
に
仰
(
おほ
)
せられた
中
(
うち
)
の
最
(
もつと
)
も
巧
(
たくみ
)
みなるお
言葉
(
ことば
)
でした。
愛ちやんの夢物語
(旧字旧仮名)
/
ルイス・キャロル
(著)
又飜つて小説を見るに、
苟
(
いやし
)
くも小説の名を下し得べき小説は
如何
(
いか
)
なるものと雖も、
悉
(
こと/″\
)
く人物の意思と気質とに出づる行為、及び其結果より成立せざるはなし。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
〔評〕南洲、
顯職
(
けんしよく
)
に居り
勳功
(
くんこう
)
を
負
(
お
)
ふと雖、身極めて
質素
(
しつそ
)
なり。朝廷
賜
(
たま
)
ふ所の
賞典
(
しやうてん
)
二千石は、
悉
(
こと/″\
)
く私學校の
費
(
ひ
)
に
充
(
あ
)
つ。
貧困
(
ひんこん
)
なる者あれば、
嚢
(
のう
)
を
傾
(
かたぶ
)
けて之を
賑
(
すく
)
ふ。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
事
(
こと
)
に
依
(
よ
)
つたら
御覧
(
ごらん
)
になつたかも
知
(
し
)
れないが、
幼児
(
をさなご
)
のことゆゑ、
気
(
き
)
を
付
(
つ
)
けてやらねばなるまい。
真昼時
(
まひるどき
)
で
気
(
き
)
が
重
(
おも
)
くなる。
物
(
もの
)
皆
(
みな
)
悉
(
こと/″\
)
く
白
(
しろ
)
つぽい。しかあれかし、
亜孟
(
アメン
)
。
浮浪学生の話
(新字旧仮名)
/
マルセル・シュウォッブ
(著)
私
(
わたし
)
の
身
(
み
)
に
近
(
ちか
)
い
者
(
もの
)
となると
悉
(
こと/″\
)
く
不人情
(
ふにんじやう
)
に
成
(
な
)
るのであらうか、
右
(
みぎ
)
を
向
(
む
)
いても
左
(
ひだり
)
を
向
(
む
)
いても
頼
(
たの
)
もしい
顏
(
かほ
)
をして
居
(
ゐ
)
るは
一人
(
ひとり
)
も
無
(
な
)
い、あゝ
厭
(
いや
)
な
事
(
こと
)
だと
捨
(
す
)
てばちになりまして
この子
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
ポーが、この芸術の為めの芸術を主張した当時は、何等省みられませんでしたが、やがて、フランスに影響し露英
悉
(
こと/″\
)
くその風靡するに任せたことは御存じの通りです。
ポーの片影
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
セルギウスは全身の血が
悉
(
こと/″\
)
く心の臓に流れ戻つて、そこに淀んだやうな気がした。息が詰つた。やう/\の事で、「而して主は復活し給ふべし、敵を折伏し給ふべし」
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
余が無罪の証拠と
見認
(
みと
)
むる者は
悉
(
こと/″\
)
く有罪の証拠なり細君の言葉は
仮令
(
たと
)
い目科の評せし如く幾分か「小説じみ」たるに相違無しとするも道理に叶わぬ所とては少しも無し
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
これまでは
簿書
(
ぼしよ
)
の
堆裏
(
たいり
)
に没頭してゐたり、平凡な世間の娯楽に時間を費したりしてゐたので、それが出来なかつたのだ。古い議論は
悉
(
こと/″\
)
く反駁して遣る。反証を挙げて遣る。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
感情の貫くところ——努力の通ずるところが
悉
(
こと/″\
)
く現実の世界であるという事は明かである。
絶望より生ずる文芸
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
過日来御約束の被害土壌四種調査致候処、
悉
(
こと/″\
)
く銅の化合物を含有致し、被害の原因全く銅の化合物にあるが如く候、別紙は分析の結果及被害圃の処理法に御座候、不具。(別紙略)
政治の破産者・田中正造
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
或は
畳
(
たゝ
)
めるは、
応
(
まさ
)
にこの時なるなからむや、今は山と、人と、石室と、地衣植物と、
尽
(
じん
)
天地を霧の
小壺
(
せうこ
)
に蔵せられて、
混茫
(
こんばう
)
一切を
弁
(
べん
)
ぜず、登山の騎客は
悉
(
こと/″\
)
く二合二勺にて馬を下る。
霧の不二、月の不二
(新字旧仮名)
/
小島烏水
(著)
都
(
すべ
)
ての
悦
(
よろこび
)
も
満足
(
まんぞく
)
も
自負
(
じふ
)
も
自信
(
じゝん
)
も、
悉
(
こと/″\
)
く自分を
去
(
さ
)
ツて
了
(
しま
)
ツて、
代
(
かはり
)
に
恐怖
(
きようふ
)
が來る。
平民の娘
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
若
(
も
)
しも、
建築
(
けんちく
)
の
根本義
(
こんぽんぎ
)
が
解決
(
かいけつ
)
されなければ、
眞正
(
しんせい
)
の
建築
(
けんちく
)
が
出來
(
でき
)
ないならば、
世間
(
せけん
)
の
殆
(
ほと
)
んど
總
(
すべ
)
ての
建築
(
けんちく
)
は
悉
(
こと/″\
)
く
眞正
(
しんせい
)
の
建築
(
けんちく
)
でないことになるが、
實際
(
じつさい
)
に
於
(
おい
)
ては
必
(
かならず
)
しも
爾
(
しか
)
く
苛酷
(
かこく
)
なるものではない。
建築の本義
(旧字旧仮名)
/
伊東忠太
(著)
飯を焚くし、ミルクを作るし、夕方の
菜
(
さい
)
から、
悉
(
こと/″\
)
く僕だ。三四月からだつたゞらう。僕が、
胡座
(
あぐら
)
をかいて子供を、脚の間へ入れると、丁度、股が枕になつて、すつぽり、子供の身体が入る。
貧乏一期、二期、三期:わが落魄の記
(新字旧仮名)
/
直木三十五
(著)
其後
荊棘
(
けいきよく
)
の為めに
悉
(
こと/″\
)
く
破壊
(
はくわい
)
せられ、躰を
被
(
お
)
ふべきもの
更
(
さら
)
に無く、全身
挙
(
こぞ
)
りて
覆盆
(
ふくぼん
)
の雨に
暴露
(
ばうろ
)
せらる、
其状
(
そのじやう
)
誠に
憐
(
あはれ
)
むに
堪
(
た
)
へたり、衆相対して
眼
(
め
)
を
開
(
ひら
)
くも
閴
(
げき
)
として
声
(
こゑ
)
なく、
仰
(
あほ
)
ぎて天の無情を
歎
(
たん
)
す
利根水源探検紀行
(新字旧仮名)
/
渡辺千吉郎
(著)
フエデリゴは又我に接吻して、衣のかくしより美しき銀の
※
(
とけい
)
を取り出し、これをば汝に取らせむ、といひて與へき。われはあまりの嬉しさに、けふの恐ろしかりし事共、はや
悉
(
こと/″\
)
く忘れ果てたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
私は往来の人々や、両側の店々の人々の眼が
悉
(
こと/″\
)
く私の上に注がれ、そしてみんな
可笑
(
をか
)
しがつて笑つてゐるやうな気がして、子供ながらも恥かしいやら情けないやらで、顔もよう上げられなかつた。
乳の匂ひ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
身内の
筋
(
すぢ
)
が
悉
(
こと/″\
)
く
弛
(
ゆる
)
んですつと胸が開く様な
暢達
(
ちやうたつ
)
な気持を覚える。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
此等
(
これら
)
の
七福
(
しちふく
)
を
余
(
よ
)
は
悉
(
こと/″\
)
く
灌水
(
くわんすゐ
)
の
徳
(
とく
)
に
歸
(
き
)
するものなり。
命の鍛錬
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
然し、健康なものが
悉
(
こと/″\
)
く幸福であろうか。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
悉
漢検準1級
部首:⼼
11画
“悉”を含む語句
悉皆
知悉
悉達多
悉達
悉知
悉々
悉達太子
悉皆成仏
悉檀
悉多太子
詳悉
悉皆屋
悉曇
草木国土悉皆成仏
竝波悉林
蘇悉地経
瞿摩悉達
衆怨悉退散
衆病悉除
皆悉
...