くに)” の例文
旧字:
「わたしは新羅しらぎくにからはるばるわたって天日矛命あまのひぼこのみことというものです。どうぞこのくにの中で、わたしの土地とちしていただきたい。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そして、おくにのため、なかのためにはたらく、りっぱな人間にんげんとなってください。これが、わたしからみなさんにもうしあげる最後さいご言葉ことばです。
中学へ上がった日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
西尾にしをからひがしして小僧こぞう皆身みなみため年季奉公ねんきぼうこうと、東西南北とうざいなんぼくで書いてると、おまへ親父おやぢがそれをくにへ持つてつて表装へうさうを加へ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
それによると平左衛門のめかけのおくにが、某日あるひ新三郎が死んだと云ってお露を欺したので、お露はそれをに受けて尼になると言いだしたが
円朝の牡丹灯籠 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
武揚たけあきは、その公使こうし大臣だいじんになって、日本にっぽんくにやくだつひとになりましたが、その武揚たけあきをたすけだしたのは、諭吉ゆきちそのひとでした。
ぼくたちの学校がっこうもん鉄柵てつさくも、もうとっくに献納けんのうしたのだから、尼寺あまでらのごんごろがねだって、おくにのために献納けんのうしたっていいのだとおもっていた。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
皇祖天皇が始めてなかくに御遷おうつりなされた時には、すでにそれ以前からの来住者の、邑里ゆうりし各々首長を戴いている者が少なくなかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そして彼等かれらは、その立派りっぱつばさひろげて、このさむくにからもっとあたたかくにへとうみわたってんでときは、みんな不思議ふしぎこえくのでした。
同一おなしみづ医者いしやうち死絶しにたえた、さればかやうな美女びぢよ片田舎かたゐなかうまれたのもくにがはり、だいがはりの前兆ぜんちやうであらうと、土地とちのものは言伝いひつたへた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「もちろん本当です。くにやぶれて洋酒ありです。もっとも早いところストックにして置いたのですがね……しかし博士せんせい、毒瓦斯の方のことですが……」
その上、三人でいた間は、肥前ひぜんくに加瀬かせしょうにある成経のしゅうとから平家の目を忍んでの仕送りで、ほそぼそながら、朝夕ちょうせきの食に事を欠かなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「兵隊に出すのが嫌だなンか云うことァ出来ねえだ。何でも大きくなる時節で、天子様てんしさまくにを広くなさるだから」と云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
三千代が清水町にゐた頃、代助と心安くくちを聞く様になつてからの事だが、始めてくにから出てた当時のかみの風を代助からめられた事があつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「いいともさ。ぼく、くに半分はんぶんわけてあげるよ。それからおっかさんへは毎日まいにちおかしやなんかたくさんあげるんだ。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
祖父は播磨はりまくに赤松氏あかまつうじに仕えていたが、去る嘉吉かきつ元年の乱に、赤松氏の城を去って、この地にやってきて、それから庄太夫にいたるまで三代の間
電車が十三じふさうと三くにとの間に来ると、出水でみづはもう軌道レエルひたしてゐて、車は鳥のやうに声を立てながらおつかなびつくりに進むより外に仕方がなかつた。
それはさてき、みことはそのさい二晩ふたばんほどおとまりになって、そのままおかえりになられましたが、やがてみかどのお裁可ゆるしあおぎてふたた安芸あきくににおくだあそばされ
二三ねんって、とき、このくに王子おうじが、このもりなかを、うまとおって、このとうしたまでたことがありました。
よくやしなへとおほせによりてなへのころにいたり心をつくしてうゑつけけるに、鶴があたへしにかはらずよくひいでければ、くにかみへも奉りしとかたれり。
それは柏軒のぢよくにが、初め豊島屋から来た三右衛門の配として迎へられ、その離縁せられた後、遂に斎藤氏から来た三右衛門矩之に嫁したと云ふ事実である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そうです、政宗はなかなか食えない男です、邪法くにを迷わすなんぞと、詩にまでうたっていながら、その事実、宣教師を保護し、切支丹きりしたんを信じていたのですな。
大菩薩峠:34 白雲の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
役者やくしゃくにはな』(出板年次不詳)『絵本舞台扇えほんぶたいおうぎ』(明和七年板色摺三冊)その続編(安永七年板色摺二冊)ならびに『役者やくしゃなつ富士ふじ』(安永九年板墨摺一冊)等なり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
外国語では人という名詞めいしをただちにおとこに代用するが、わがくににおいて人というのは西洋のいわゆるペルソン(人格じんかく)を指し、ただちに性の区別をいいあらわさない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
くにには妻もあり子もあったが、信心のためにこうして他国の山中をも歩き、今日は那智を参拝して、追々帰国しようというのであるから前途はそう艱難かんなんではなかった。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
一人をお嬢様と娶合めあわせて、跡取りにするということになりましたが、その時左太松どんはおくにという女とねんごろになっていて、お嬢さんの婿には、祐吉どんとまりました
「こんなことをスパイにでもぎつけられたら大変だが、急ぎの軍需品を積んで行くのでこういう時化でも出帆するそうだ。くに文左衛門というところだな、はっはっは」
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
朕薄徳を以てかたじけな重任ぢゆうにんけたり。未だ政化をひろめず寤寐ごみにも多くづ。いにしへの明主は皆先業をくしてくにやすらかに人楽しみわざわひ除かれさきはひ至れり。何の政化を修め能く此の道をいたさむ。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
英吉利いぎりす野暮堅やぼがた真面目まじめ一方いつぱうくになれば、人間にんげん元来ぐわんらい醜悪しうあくなるにおかれずして
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
西蔵チベット世界せかい屋根やねといはれてゐるほどで、くに全体ぜんたいたか山々やまやまつらなりだ。その山々やまやまなかでもぐんいてたかく、西蔵チベット屋根やねともいはれるのが、印度インドとの国境こくきやうまたがるヱヴェレストざんである。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
くにやさん、これからの役者は、あなたみたいに芸ばかり達者でもだめですよ。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼は参河みかわくに額田郡ぬかだごおりの郷士であって、永禄六年九月、一向宗徒が乱をおこしたとき、大津半右衛門尉おおつはんえもんじょう乙部八兵衛尉おとべはちべえじょうらと共に一揆の徒にくみし、野羽の古塁こるいって反旗をひるがえした
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
四十ばかりのをとこでした、あたまには浅黄あさぎのヅキンをかぶり、には墨染すみぞめのキモノをつけ、あしもカウカケにつヽんでゐました、そのは、とほくにあをうみをおもはせるやうにかヾやいてゐました。
桜さく島:見知らぬ世界 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
障れば絶ゆるくもの糸のはかない処を知る人はなかりき、七月十六日のは何処の店にも客人きやくじん入込いりこみて都々一どどいつ端歌はうたの景気よく、菊の井のした座敷にはお店者たなもの五六人寄集まりて調子の外れし紀伊きいくに
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わしたちは天照大神あまてらすおおかみ高皇産霊神たかみむすびのかみとのご命令で、わざわざお使いにまいったのである。大神はおまえが治めているこの葦原あしはらなかくには、大神のお子さまのお治めになる国だとおっしゃっている。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
いたましくも、豊葦原とよあしはら瑞穂みずほくには、こういういなごみたいな害虫のむしばみにまかせて、荒れ放題ほうだいに国土を荒して来たといっても、そう過言ではない。すくなくも応仁の乱このかたの日本の乱れは。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医者いしゃ玄庵げんあんをはじめ、つまのおむら、座元ざもと羽左衛門うざえもん、三五ろうひころう、その人達ひとたちが、ぐるりと枕許まくらもと車座くるまざになって、なにかひそひそとかたっているこえが、とおくに出来事できごとのようにきこえていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
すもゝみのるみなみ独逸ドイツのたかきくにの中にありといふミユンヘンの町
歌の潤い (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
くにまでも晒すやうな……不忠、不孝なわたくし……
白くれない (新字新仮名) / 夢野久作(著)
まへおなくにける銃架じうかしゃ×(18)
くにありき、綿津見のしほわか
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あらゆるくによりふねこそかよ
横浜市歌 (新字新仮名) / 森林太郎(著)
はや冥府よみくに、血に染めし
哀音 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
おかしてすすみてくにのため
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
せつ戦後せんごくにまつたふす
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
で、露子つゆこは、そんなくにへいってみたいものだ。どんなにひらけているうつくしいくにであろうか。どんなにうつくしいひとのいるところであろうか。
赤い船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此女このをんなくにかられてたのではない、江戸えどつたをんなか知れない、それは判然はつきりわからないが、なにしろ薄情はくじやうをんなだから亭主ていしゆおもてき出す。
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そののち新院しんいんはおとらわれになって、讃岐さぬきくにながされ、頼長よりながげて途中とちゅうだれがたともしれないられてにました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ところが、こんど、キリストきょうをしんずるアメリカが、日本にっぽんくにをひらかせて、自由じゆうにぼうえきをやろうといってきたのです。
としめやかに朱唇しゆしんうごく、とはなさゝやくやうなのに、恍惚うつとりしてわれわすれる雪枝ゆきえより、飛騨ひだくに住人じゆうにんつてのほか畏縮ゐしゆくおよんで
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また紋次郎君もんじろうくんとこのおばあさんのはなしによると、このかねひとが、三河みかわくにのごんごろうという鐘師かねしだったので、そうばれるようになったんだそうだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)