事實じじつ)” の例文
新字:事実
記録きろくつゝしまなければらない。——のあたりで、白刃しらは往來わうらいするをたは事實じじつである。……けれども、かたきたゞ宵闇よひやみくらさであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
火山かざん地震ぢしん安全瓣あんぜんべんだといふことわざがある。これには一めん眞理しんりがあるようにおもふ。勿論もちろん事實じじつとして火山地方かざんちほうにはけつして大地震だいぢしんおこさない。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ちょっとかんがへても、時代じだいあたらしくなるほど、うたがわからなくなるといふような、不自然ふしぜん事實じじつを、あなたがたはまともに、うけれますか。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
不幸ふかうにも、この心配しんぱいくれ二十日過はつかすぎになつて、突然とつぜん事實じじつになりかけたので、宗助そうすけ豫期よき恐怖きようふいたやうに、いたく狼狽らうばいした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うはさがきか、あるひ事實じじつきか——それはとにかくがさしたのだと彼女かのぢよはあとでぢつゝかたつた——もなく彼女かのぢよ二人ふたり子供こどもとも
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
また有力いうりよくなる銀行團ぎんかうだん援助ゑんじよもとめることは、充分じうぶん了解れうかい事實じじつあらは意味いみおいもつと必要ひつえうかんがへてクレデイツトの設定せつてい交渉かうせふ開始かいししたのであるが
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
しかしその材料ざいれう構造こうざう依然いぜんとして舊來きうらいのまゝで、耐震的工風たいしんてきくふうくはふるがごと事實じじつはなかつたので、たゞ漸次ぜんじ工作こうさく技術ぎじゆつ精巧せいこうすゝんだまでである。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
兩性りやうせいしか他人たにんりてひとつに婚姻こんいん事實じじつ聯想れんさうすることから彼等かれらこゝろ微妙びめう刺戟しげきされる。彼等かれらすべてはことごと異性いせいまたらんとしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是等これら石鏃せきぞくは鳥獸獵のさい射損ゐそんじて地にちたるものなるべく、其存在の事實じじつは、如何にコロボックルが鳥獸捕獲ほくわくの爲め高山に登りし事有るかを告ぐるものたり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
村ざかひに鹿のねてゐたといふのも森林が筑波山に續いてゐた事實じじつを語るものである。私達の七つ八つの頃は立ち覆ふ大木にさへぎられて小貝川の堤が見えなかつた。
筑波ねのほとり (旧字旧仮名) / 横瀬夜雨(著)
赤坂傳馬町二丁目長助店元麹町三丁目浪人藤崎道十郎後家願人みつ 其方儀願ひ出候目安めやす取調とりしらべる處事實じじつ相違さうゐ無之これなくかつ永年えいねんをつと無實むじつ罪科ざいくわあひしをなげかはしく心得貞節ていせつ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これは無論むろん作者さくしやに對する一しゆ僻見へきけんかも知れませんが、事實じじつに於ては、私も氏の作品さくひんに強く心をかれ乍らも、どこかにまだ心持こゝろもちにぴつたり來ない點がないではありません。
三作家に就ての感想 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
またその弟子でしのワルセイが、先生せんせいせつ事實じじつによつてだん/\證明しようめいしてつたのでありますが、どうしてこの北歐ほくおう一小國いちしようこく學者がくしやが、かようなせつすにいたつたかといふのに
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
登山者とざんしやくまにぶつかるなどといふことは、さう/\あるものではないのです。しかし、本州ほんしゆう四國しこく九州きゆうしゆうやまにわたつてくま、ゐのしゝ、しか、かもしかなどおほきなけものんでゐるのは事實じじつです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
ゆゑ其著書そのちよしよ餘萬言よまんげん大抵たいていおほむ(二一)寓言ぐうげんなり(二二)漁父ぎよふ盜跖たうせき胠篋きよけふつくり、もつ孔子こうし詆訿ていしし、もつ老子らうし(二三)じゆつあきらかにせり。(二四)畏累虚わいるゐきよ亢桑子かうさうしたぐひみな空語くうごにして事實じじつし。
此關係このかんけい關東大地震かんとうだいぢしん但馬地震たじまぢしん丹後地震たんごぢしんおいて、此頃このごろ證據立しようこだてられたところであつて、別段べつだん説明せつめいようしない事實じじつである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
百兩ひやくりやうをほどけばひとをしさらせる)古川柳こせんりうたいしてはづかしいが(特等とくとうといへば番頭ばんとうをしさり。)は如何いかん? 串戲じようだんぢやあない。が、事實じじつである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
さうかんがへてると、爲替相場かはせさうばさがつてることが國民こくみんいづれの階級かいきふにもだいなる影響えいきやうあたへることはあきらかな事實じじつである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
其所そこ段々だん/\調しらべてて、宗助そうすけ自分じぶんいまかついたことのない事實じじつ發見はつけんしたときに、おもはずおそおどろいた。胎兒たいじ間際まぎはまで健康けんかうであつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうして被害者ひがいしやから事實じじつ相違さうゐしたといふ意味いみ取消とりけしせばそれでいといふことにまではこびがついた。微罪びざいといふのでそのすぢ手加減てかげん出來できたのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
室内しつないの有樣に付きては口碑こうひ存せず。火をきしあとの他、實地じつちに就いての調査てうさも何の證をも引き出さず。余は茲に想像そうぞうを述べて此點に關する事實じじつ缺乏けつばうおぎなはんとす。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
文學ぶんがくうへによいひとがたくさんたから、かならずしもよい文學ぶんがく出來できるといふわけのものではないといふ事實じじつを、このときほど、はっきりとせたことはありません。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
一目見るより此奴こやつ容易よういならざる不敵の者なれば尋常じんじやう糺問たゞしにては事實じじつはくまじと思はれしによりかく氣長きながさとしながら糺問たゞされしなりしかりといへども長庵は何事も曾て存ぜずと而已のみ申立口を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
これはその時分じぶん河内かはち役人やくにんから朝廷ちようてい報告ほうこくした事實じじつでありまして、とにかく當時とうじうまることがおこなはれてをり、また埴輪はにわうま御陵ごりようつてゐたことを、われ/\にをしへてくれるはなしであります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
以上いじやう日本にほん固有名こいうめいこと地名ちめいについて、その理由りいうなく改惡かいあくされることのなるをべたが、ここにさら寒心かんしんすべきは、吾人ごじん日用語にちようごが、適當てきたう理由りいうなくして漫然まんぜん歐米化おうべいくわされつゝあるの事實じじつである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
私がほとんど全身的に搖り動かされたのは、さう事實じじつの發見であつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
宗助そうすけはそれをえないあいせいに、一種いつしゆ確證かくしようとなるべきかたちあたへた事實じじつと、ひとり解釋かいしやくしてすくなからずよろこんだ。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さつせずしてこれふ、いづれも世道せだう執着しうぢやくして、眞相しんさうあやまつなり。く、こゝしるすものはみな事實じじつなりと。
怪談会 序 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今日けふらもろ、かどみせ自棄酒やけざけんでおこつてたつけぞ」一人ひとり自慢じまんらしくあらた事實じじつ提供ていきようした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかしながら今日こんにち金解禁きんかいきんによつて爲替相場かはせさいばすで頂上ちやうじやうまで騰貴とうきをしたのであるから、爲替相場かはせさうばあがため經濟界けいざいかい不景氣ふけいきすで過去くわこ事實じじつになつたとてよろしいのである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
活火山かつかざんあらたに活動かつどう開始かいししようとするとき何等なんらかの前兆ぜんちようともな場合ばあひがある。土地とち噴火前ふんかぜん次第しだい隆起りゆうきしたことは、大正三年たいしようさんねん櫻島噴火さくらじまふんかおいはじめてづかれた事實じじつである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
此類このるゐの石器にしてはたして粉製こつくりの臺たらば、これたいする粉潰こつぶしの道具どうぐも有る可きはづなり。事實じじつ如何いかんと云ふに日向和田においては實際じつさい石皿と伴ふてこれ適合てきがふする橢圓石だゑんせき發見はつけんされしなり。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
吉野山よしのやまは、ふるくからずいぶんながく、ぼうさんそのほか修道者しゆどうしやといつて佛教ぶつきよう修行しゆぎようをするひとこもつてゐたことは、あきらかな事實じじつでした。その經驗けいけんから、はじめのうた出來できたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
見請候はゞ其せつ道十郎身分にもかゝはり候事故早速さつそくにも申立べくの處其儀無く打過うちすぎ候段不埓に付屹度申付べきの處此度證人に相立其方が申立によつ事實じじつ明白めいはく行屆ゆきとゞき候儀も有之に付格別の御憐愍れんみん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「あゝ、こんなときには、兩國下りやうごくしたいわしはしないかな。」と、にもつかないが、事實じじつそんなことおもつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかるに事實じじつはさうでなく、あのような悲慘ひさん結果けつか續發ぞくはつとなつたのであるが、これをとほ海外かいがいからながめてみると、日本につぽんおそろしい地震國ぢしんこくである。地震ぢしん度毎たびごと大火災だいかさいおこくにである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
日本につぽん地震國ぢしんこくであり、また地震學ぢしんがくひらはじめたくにである。これはあやまりのない事實じじつであるけれども、もし日本につぽん世界中せかいじゆう地震學ぢしんがくもつとすゝんだくにであるなどといふならば、それはいさゝかうぬぼれのかんがある。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
これ教訓けうくんではない、事實じじつであると、本文ほんぶん添書そへがきがあるのである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)