いの)” の例文
わたしが、お約束やくそくをいたします。いさましい、とお船出ふなでから、あなたのおかえりなさるを、氏神かみさまにご無事ぶじいのって、おちしています。」
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
僧正そうじょうむらさきころもをきました。人形の前にこうをたき、ろうそくの火をともしました。そしてじゅずをつまぐりながら、いのりをはじめました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
てんにでもいゝ、にでもいゝ、すがらうとするこゝろいのらうとするねがひが、不純ふじゆんすなとほしてきよくとろ/\と彼女かのぢよむねながた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
この子はやっと四つになったばかりでしたが、それでもほかの子供たちと同じように、『主のいのり』をとなえることができました。
、三このいのりをりかえしてうちに、わたくしむねには年来ねんらいみこと御情思おんなさけがこみあげて、わたくし両眼りょうがんからはなみだたきのようにあふれました。
それで夫婦ふうふ朝夕あさゆう長谷はせ観音かんのんさまにおいのりをして、どうぞ一人ひとり子供こどもをおさずけくださいましといって、それはねっしんにおねがもうしました。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
世の妻たちは、一日も早く良人のかえりの早いのをいのっていると云うのに……、千穂子は、一日も遅く良人が帰って来ることを祈っていた。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
今日けふごと浪路なみぢおだやかに、やがあひとも※去くわこ平安へいあんいはひつゝ芙蓉ふようみねあふこと出來できるやうにと只管ひたすらてんいのるのほかはないのである。
同時に、私は、今日の私の言葉が、君らを強制して、盲従もうじゅういるような結果にならないことを、心からいのらずにはいられない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
と、蔦之助つたのすけはまた悶々もんもんとだまって、いまはただ、この民部の頭脳ずのうに、神のような明智めいちがひらめけかし、とジッといのるよりほかはなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これは結婚けつこん先立さきだつて、あたらしいいへてる、その新築しんちくむろ言葉ことばで、同時どうじに、新婚者しんこんしや幸福こうふくいの意味いみ言葉ことばなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
そしてわたしは、ジナイーダのためにも、父のためにも、そしてまた、自分のためにも、しみじみいのりたくなったのである。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
立ち退のき候て何國のはてにても永く夫婦と相成申したくと夫のみ此世の願ひといのり居り※どうぞ/\御目おめもじのうへ山々やま/\御ものがたり申し上ぐべく候
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
僕のいのりの中にあなたのことを忘れぬことゝ、あなたの爲めに、切に、あなたが本當に難破なんぱした人にならないやうにと、神さまに願ふことです。
とってください。ああなさけぶかいサンタマリヤ、まためぐみふかいジョウジ スチブンソンさま、どうか私どものかなしいいのりを聞いてください
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
唯、金環蝕が終ってようのはじまるときに生をうけた子供が、五月の微風びふうにそよぐ若葉の色彩しきさいの中に、すくすくと伸びてゆくことをいのるのみである。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
にんじんと兄貴のフェリックスは、夕方のおいのりから帰ると、急いで家へはいる。それは、四時のおやつだからである。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
れはきみ幸福しやわせなれかし、すこやかなれかしといのりて此長このながをばつくさんには隨分ずいぶんとも親孝行おやこう/\にてあられよ
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
どうか或る意味においては親に似ぬ鬼子おにごになってくれと思うて手出しの途もないのでただ自然にいのりをかけている。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
宿屋の主人はこの話を聞いてしまうと、しばらくの間だまって目をつぶって、神様にいのるようなふうをしていました。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
正直しやうぢきかうべかみ宿やどる——いやな思をしてかせぐよりは正直しやうぢきあそんでくらすが人間にんげん自然しぜんにしていのらずとてもかみまもらん。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
きやくのもてなしもしつくしてほとんど倦果うみはてつひには役者仲間なかまいひあはせ、川のこほりくだきて水をあび千垢離せんごりしてはれいのるもをかし。
ながらくひでりつゞいたので、ぬまみづれさうになつてきました。雜魚ざこどもは心配しんぱいしてやま神樣かみさまに、あめのふるまでの斷食だんじきをちかつて、熱心ねつしんいのりました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
ロミオ おゝ、いでさらば、わが聖者せいじゃよ、所爲わざくちびるさしめたまへ。くちびるいのりまする、ゆるしたまへ、さもなくば、信心しんじんやぶれ、こゝろみだれまする。
これは關東大地震かんとうだいぢしんさい其處そこ生埋いきうづめにされた五十二名ごじゆうにめい不幸ふこうひと冥福めいふくいのるためにてられたものである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
かれ悲慘みじめ自分じぶん自分じぶんいぢめてやるやうな心持こゝろもちを一ぱうにはつた。一ぱうにはまた無智むち彼等かれら伴侶なかまくするやうにかれ持病ぢびやう平癒へいゆほとけいのつたのでもあつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
下山げざんとき面影おもかげは、富士川ふじがはきよに、白蓮華びやくれんげはなびらにもられよとて、せつ本腹ほんぷくいのつたのである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
し九仭のこうを一に欠くあらば大遺憾だいいかんの至りなり、ねがわくは此一夜星辰をいただきて安眠あんみんするを得せしめよと、たれありてか天にいのりしなるべし、天果して之を感ぜしか
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
そのあさ学校で、おいのりの前に、講堂こうどうにいるシューラのそばへ、ミーチャ・クルイニンがって
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
毎日、夕暮ゆうぐれになるとあなたからの手紙が廻送かいそうされているような気がして、姉の子をおぶい、散歩に出た浜辺はまべから、いのるような気持で、姉の家に帰って行ったものです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
一年生も五年の後には卒業するだろう、そのときにはまた会える、はるかに浦和の天をながめて諸君の健全をいのろう、諸君もまたいままでどおりにりっぱに勉強したまえ
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
あの貧乏びんぼう百姓ひゃくしょうの、やさしい、まるで母親ははおやのようなほほえみだの、おいのりの十のしるしや、あのくびよこにふりながら、「ほんに、さぞたまげたこったろうになあ、なあぼう
少年はさがしながらも、泣いたり、いのったり、思いつくはしからさまざまのことをちかったりしました。これからは、けっして約束をやぶったりしません。いじわるもしません。
不愉快でないとおっしゃればそれまでです、またそんな不愉快は通りしているとおっしゃれば、それも結構であります。ねがわくは通り越してありたいと私はいのるのであります。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あられ鹿島かしまかみいのりつつ皇御軍すめらみくさわれにしを 〔巻二十・四三七〇〕 防人
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
そんなものはございません、とったが、少し考えてから、老婢ろうひ近処きんじょ知合しりあい大工だいくさんのところへって、うまいのり出して来た。滝割たきわり片木へぎで、杉のが佳い色にふくまれていた。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こぶしむねつていのるかとおもへば、すぐゆびあな穿つたりしてゐる。これ猶太人ジウのモイセイカともので、二十年計ねんばかまへ自分じぶん所有しよいう帽子製造場ばうしせいざうばけたときに、發狂はつきやうしたのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
いくさのお手だてについて、神さまのお告げをいただこうとおぼしめして、大臣の武内宿禰たけのうちのすくねをお祭場まつりばへおすわらせになり、御自分はおことをおひきになりながら、お二人でおいのりをなさいました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
人はかかる場合に会うと、これは夢ではないかと思い、夢であれかしといのる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
だからわたくしはらそこ依然いぜんとしてけはしい感情かんじやうたくはへながら、あの霜燒しもやけの硝子戸ガラスどもたげようとして惡戰苦鬪あくせんくとうする容子ようすを、まるでそれが永久えいきう成功せいこうしないことでもいのるやうな冷酷れいこくながめてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自ら火に投じたことだけは確かだが、最後の一月ひとつきほどの間、絶望の余り、言語に絶した淫蕩いんとうの生活を送ったというものもあれば、毎日ひたすら潔斎けっさいしてシャマシュ神にいのり続けたというものもある。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
この夫婦ふうふ大層たいそうなかかったが、小児こどもがないので、どうかして一人ひとりほしいとおもい、おかみさんは、よるも、ひるも、一しんに、小児こどもさずかりますようにといのっておりましたが、どうしても出来できませんでした。
あるいてとほ旅人たびびと無事ぶじいのるためには、道祖神だうそじんまつりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その日ジェンナーは朝早く起きて、神様にいのりました。
ジェンナー伝 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
魔法使まほうつかいは、うつくしいはなまえにいって、おなじようにいのりをささげました。はなは、魔法使まほうつかいをとおして、おうさまにおこたもうしあげました。
王さまの感心された話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あなたが毎日熱心ねっしんにおいのりなさるのを感心して、上手じょうずに人形を使うことをおしえてあげたいと思って、ここにでてまいったのです。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
海のかなたの大空を見上げたとき、女の子の眼はきらきらとかがやきました。両手が合されました。『主のいのり』をとなえたように思われます。
ふねのはげしき動揺どうようにつれて、幾度いくたびとなくさるるわたくしからだ——それでもわたくしはその都度つどあがりて、あわせて、熱心ねっしんいのりつづけました。
一念の声、一念のいのり! いのらなくても、人のまことは天地をうごかすという……。だが、床下ゆかしたのやみは、しいんとしていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこで、ついおとなり和泉国いずみのくに信田しのだもり明神みょうじんのおやしろ月詣つきまいりをして、どうぞりっぱな子供こども一人ひとりさずくださいましと、熱心ねっしんにおいのりをしていました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)