さゝ)” の例文
これが傍に坐し、左の者の傍には、恩を忘れ心つねなくかつそむやすき民マンナに生命いのちさゝへし頃かれらをひきゐし導者坐す 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
花吉はがツくり島田の寝巻姿ねまきすがた、投げかけしからだを左のひぢもて火鉢にさゝへつ、何とも言はず上目遣うはめづかひに、低き天井、なゝめに眺めやりたるばかり
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
さうして學校がつこう教場内きようじようない竝列へいれつした多數たすうつくゑあるひ銃器臺じゆうきだいなどは、其連合そのれんごうちからもつて、此桁このけたはりまた小屋組こやぐみ全部ぜんぶさゝへることは容易よういである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
これも森林しんりんがあればゆききゆうけませんし、たとひ、おちたゆき樹幹じゆかんさゝへられるので、なだれがおきないですむのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
毎日まいにちあさから尻切襦袢しりきりじゆばん一つで熱湯ねつたうをけみぎかたさゝへてはある威勢ゐせい壯丁わかものあひだまじつてうたこゑきいたのに
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
鑑哲は木乃伊ミイラのやうな身體を起して、薄黒い顏でふり仰ぎました。杖にした青竹を力に上半身をさゝへるのが精一杯です。
其方儀そのはうぎ石川安五郎小松屋遊女いうぢよ白妙しろたへ同道にて立退たちのき候節私しの趣意しゆいを以て追掛おひかけ彌勒みろく町番人重五郎と申者さゝへ候を切害せつがいに及び候段不埓ふらち至極しごくに付死罪申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
品物しなものわびしいが、なか/\の御手料理おてれうりえてはるし冥加みやうが至極しごくなお給仕きふじぼんひざかまへて其上そのうへひぢをついて、ほゝさゝえながら、うれしさうにたわ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
中風の気味らしくよろ/\する脚をステッキでさゝへながら通行の米兵によびかけてゐる易者、似顔かきの老画家、これらの先輩にお仲間入りの挨拶あいさつをして
老残 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
あはれなちひさな蜥蜴とかげ甚公じんこう眞中まンなかて、二ひきぶたさゝへられながら一ぽんびんからなんだかしてもらつてましたが、あいちやんの姿すがたるとぐにみん其方そのはう突進とつしんしました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
鳶口とびぐちにしながらさかうへはうからすべりますと、ツーイ/\と面白おもしろいやうに身體からだきました。もしかすべそこねて鳶口とびぐち身體からださゝそこねた塲合ばあひにはゆきなかころげこみます。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
余程の御癇癖お気にさゝえられん様に、我々はおちいさい時分からお附き申していてさえ、時々お鉄扇てっせんで打たれる様な事がある、御病中は誠に心配で、腫物はれものに障るような思いで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「あなたはくるつてますよ。あなたの頭は亂れてしまつてる。僕が遠慮なしにこんな報知しらせを云つたものだから、あなたはすつかり昂奮して自分をさゝへる力がなくなつたんだ。」
木曾をだにさゝへ得ざるに、關東の頼朝來らば如何にすべき、或は都を枕にして討死すべしと言へば、或は西海さいかいに走つて再擧さいきよはかるべしと説き、一門の評議まち/\にして定まらず。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そのあひだ彼女かのぢよは、無産者むさんしや××同盟どうめい支部しぶはたらかたはら、あるデパート專屬せんぞく刺繍ししう工場こうぢやうかよつて生活せいくわつさゝへた。そのうち、三・一五事件じけんとして有名いうめいな、日本にほん×××ゐん全國的ぜんこくてき大檢擧だいけんきよおこなはれた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
ところで俺は其の沙漠の中に抛出ほうりだされたやうなものなんだ。時々オーシスに出會でつくわするやうなことも無いぢやないか、淋しい旅だ!何方を向いたツて、さゝへて呉れるやうな者が見當みあたらない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
それはたとへば堂塔だうたふ伽藍がらんつく場合ばあひに、巨大きよだいなるおも屋根やねさゝへる必要上ひつえうじやう軸部ぢくぶ充分じうぶん頑丈ぐわんぜうかためるとか、宮殿きうでんつく場合ばあひに、その格式かくしきたもち、品位ひんゐそなへるために、優良いうれうなる材料ざいれうもち
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
清常より後の眞志屋の歴史はいよ/\模糊もことして來る。しかし大體を論ずれば眞志屋は既に衰替の期に入つてゐると謂ふことが出來る。眞志屋は自らさゝふることあたはざるがために、人の廡下ぶかつた。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
戸口とぐちからだい一のものは、せてたかい、栗色くりいろひかひげの、始終しゞゆう泣腫なきはらしてゐる發狂はつきやう中風患者ちゆうぶくわんじやあたまさゝへてぢつすわつて、一つところみつめながら、晝夜ちうやかずかなしんで、あたま太息といきもら
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
それからまた、辛うじて医薬によつてさゝへられてゐた彼の父の三十幾年と云ふ短い生涯から彼自身の健康状態から考へて、子供の未来に、暗い運命の陰影を予想しないわけに行かないのであつた。
哀しき父 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
「誰か!」和作はさゝへながら呼んだ。「誰か早く」
朧夜 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
みんなでさゝえてもた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
夜天やてん宿しゆくさゝへつゝ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
しばらくは我わが顏をもて彼をさゝへき、わが若き目を彼に見せつゝ彼をみちびきて正しきかたにむかはせき 一二一—一二三
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
第一だいゝち墜落物ついらくぶつ張壁はりかべ煖爐用煙突だんろようえんとつなど、いづれも重量じゆうりようだいなるものであるから、つくゑ椅子いすではさゝへることが困難こんなんである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
勘次かんじほとんどむせぶやうなきりつゝまれてふねつた。處々ところ/″\さら/\とかすかにひゞきつたひてふねそこさゝへられようとする。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かささゝへて、ほしざをにかけたまゝ、ふら/\とちうおよいだ。……このなかでも可笑をかしことがある。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
新三郎は下から、僅かにさゝへる身體をのし上げて、必死の言葉をしぼりますが、赤い蝋燭らふそく灯影ほかげに、物凄まじく描き出された、勇吉の顏の怨みは解けさうもありません。
くまばちふる土塀どへい屋根やねしたのやうなところにおほきなをかけますが、地蜂ぢばちもそれにおとらないほどの堅固けんごなもので、三がいにも四かいにもなつてて、それがうるしはしらさゝへてあります。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
どうしてわたし其様そんなものへ娘をることが出来ませう——其れで坑夫共の生活をさゝへる為めに亜米利加アメリカの社会党から運動費を取り寄せる手筈をする、其ればかりでは駄目ぢやと申すので
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
裂けた半分同志は互に離れきらずに、しつかりした地盤と強い根とがその裂け落ちるのをさゝへてゐた。共同の生活力は滅びてしまつたけれども——最早樹液は通ふことが出來なかつた。
祕密の山に常夜のともしびなければ、あなたの木の根、こなたの岩角いはかどに膝を打ち足をくじきて、仆れんとする身をやうやさゝへ、主從手に手を取り合ひて、顏見合す毎に彌増いやまさる太息の數、春の山風身に染みて
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
月日つきひかさが、これをさゝふる水氣のいとき時にあたり、これをいろどる光を卷きつゝそのほとりに見ゆるばかりの 二二—二四
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
中央ちうあうおほきなからつゞ淺瀬あさせさゝへられてふねいつもところへはけられなくつてる。たゞ一人ひとり乘客じようかくである勘次かんじ船頭せんどう勝手かつてところへおろされたやうにおもつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ある極限きよくげんまではかくして大陸たいりく浮動ふどうさゝへてゐるけれども、つひさゝれなくてあるひはなしたりあるひゆびつたりして平均へいきんやぶれ、したがつて急激きゆうげき移動いどうおこるのである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
新三郎は血を吐く思ひ、次第に力の拔けるに、僅かに身體をさゝへて悲憤のまなじりを裂きます。
「いゝなあ、この山毛欅ぶなぽんが、こゝでみづうみさゝへるはしらだ。」そこへ画架ぐわかてた——そのとき、このたふげみちびいて、羽織袴はおりはかまで、さかかると股立もゝだちつた観湖楼くわんころう和井内わゐないホテルの御主人ごしゆじん
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その片腕は頭の上に載せてある水瓶みづがめさゝへる爲めに恰好よく擧げられてゐた。
側なる小卓に片肘かたひぢを立てて、悩まし気にかしらさゝへぬ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
齒を喰ひ縛つてからくも身體をさゝへて居るうちに、上から射した蝋燭の光で、自分をこの九死のさかひおとしいれたのは、臆病者の勇吉だとはわかりましたが、下の舟に居る相棒がわかりません。
旅僧たびそうういつて、握拳にぎりこぶし両方りやうはうまくらせ、それひたひさゝへながら俯向うつむいた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
樣子やうすを、間近まぢかながら、どくのある見向みむけず、呪詛のろひらしきしはぶきもしないで、ずべりとまど仰向あふむいて、やまひかほの、泥濘ぬかるみからげた石臼いしうすほどのおもいのを、ぢつとさゝへて病人びやうにん奇特きどくである。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)