年頃としごろ)” の例文
しかもリザヴェッタは世間の青年たちが追い廻している、つらの皮の厚い、心の冷たい、年頃としごろの娘たちよりは百層倍も可愛らしかった。
十四、五になる大概たいがいいえむすめがそうであるように、袖子そでこもその年頃としごろになってみたら、人形にんぎょうのことなぞは次第しだいわすれたようになった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
感心なし事急ぐなればつまんで咄さんが某し江戸表に奉公なし年頃としごろ給金其外とも溜置ためおきし金百五十兩程に成たり依て此度古郷へ立ち歸り家を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
こそならべてたしとわれすらおもふに御自身ごじしんなほなるべしおよぶまじきこと打出うちだして年頃としごろなかうとくもならばなにとせんそれこそはかなしかるべきを
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
年頃としごろ遠野郷の昔の話をよく知りて、誰かに話して聞かせ置きたしと口癖くちぐせのようにいえど、あまりくさければ立ち寄りて聞かんとする人なし。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
娘が二人はずかしめられ、村中の若い女は震え上り、年頃としごろの娘をもつ親は急いで東京に奉公に出すやら、無銭飲食を恐れて急に酒樽を隠すやら
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
けれども三にんともあしうごかさない。そして五六にんおな年頃としごろ小供こどもがやはり身動みうごきもしないでばあさんたち周圍まはりいてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「そんだがむすめ年頃としごろてんのにるとかとるとかしねえぢや可哀相かあいさうだよなあ」ばあさんくちはそれからそれときなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ここすむ近在きんざい后谷村ごやむらといふあり。此村の弥左ヱ門といふ農夫のうふおいたる双親ふたおや年頃としごろのねがひにまかせ、秋のはじめ信州善光寺へ参詣さんけいさせけり。
一例を挙げると、もし坊さんに女の子があって、その女の子が年頃としごろになったとすると、檀家だんかのものが相談して、どこか適当な所へ嫁にやってくれます。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
人が、もしこれを性の欲望に関する変態のものだったろうと言うなら、あるいはそうかも知れないと答えよう。丁度ちょうど年頃としごろもその説を当嵌あてはめるに妥当だとうである。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「あら、よし子さんじゃいらッしゃいませんか。」と同じ年頃としごろ、同じような風俗みなりの同じような丸髷が声をかけた。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
うしおのように近づいてきたかと思うと、やがて青々あおあおとした草のなみから、おなじ年頃としごろの少年ばかりが二十人ほど、まっ黒になって、竹童ちくどうのほうへなだれてくる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
女は、そろそろ四十歳に近い年頃としごろに思える。上品な紺いろの明石らしい和服を着て、同じテーブルには、娘だろう、肩をむき出したピンクの服の少女がいる。
十三年 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
シューラはいそいでポケットの中から、この年頃としごろの男の子につきものになっている他愛たあいのない品々しなじなを、すっかり出して見せた——それから両方りょうほうのポケットもひっくりかえした。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
『でも、可愛かあいいぬころだッたわね!』やすまうとして毛莨キンポーゲかゝつたときに、其葉そのはの一まいつてあふぎながらあいちやんがひました、『わたししそんなことをする年頃としごろならば、 ...
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
けれどもそれはあなたがた年頃としごろでは、こまかにいてもむりですから、もっとながうたしたしんでもらつて、自分自身じぶんじしん批評ひひよう出來できるまでは、まづよいうただとかんがへていてください。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
いくら眠っても寝足りない年頃としごろの奉公人共は床に這入るとたちまちぐっすり寝入ってしまうから苦情をいう者はいなかったけれども佐助は皆が熟睡じゅくすいするのを待って起き上り布団ふとん
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その火の光りでこゝにります女を見ると、年頃としごろは三十二三服装なり茶弁慶ちやべんけい上田うへだうす褞袍どてらりまして、頭髪つむり結髪むすびがみでございまして、もとに愛嬌あいけうのあるあだめいた女ですが
さるほどに弟も生長して年頃としごろとなりしかば、縁ありしをさいわいとして兄はそのためつまを迎へりしに、この婦心狭くしてからぬものなりしゆゑ夫にむかひて、おんみはあたかも奴隷しもべのやうなり
印度の古話 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しかるにそれが年頃としごろになると、この自覚を感じ、人の前に出ると恥かしくなり、ことに婦人の前に出ると、前に述べたる生理上の関係のみならず、容貌ようぼうしゅうなるを恥じて気が弱くなる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ふとわがあゆ街路がいろ前方ぜんぽうけた。五六けんさきから年頃としごろむすめが歩いて來る。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
おそよは十八、おつぎは十六、どっちも年頃としごろの若い娘であるから、世にいう恋煩こいわずらいのたぐいではないかとも疑われたが、ひとりならず、姉妹揃っておなじ恋煩いというのも少しおかしい。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これ年頃としごろになったのでございますから、縁談えんだんくち諸方しょほうからあめるようにかかりましたが、俚諺ことわざにもおびみじかしたすきながしとやら、なかなかおもつぼにはまったのがないのでございました。
おせんも年頃としごろきなおきゃく一人ひとりくらいはあろうかと、折節おりふしのおっかさんの心配しんぱいも、あたしのみみにはうわそらあぶりでんだお七がうらやましいと、あたしゃいつも、おもいつづけてまいりました。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
口に出して言いつけられぬうちに、何の用事でも果たすような、敏捷びんしょうな若者で、武芸は同じ年頃としごろ同輩どうはいに、そばへ寄りつく者もないほどであった。それに遊芸が巧者で、ことにふえ上手じょうずいた。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(右の方に向き、耳をそばだてて聞く様子にて立ちおる。)何だか年頃としごろ聞きたく思っても聞かれなかった調しらべででもあるように、身に沁みて聞える。かぎりなきくいのようにもあり、限なき希望のようにもある。
「この子は、よめ様にもなる年頃としごろで、食うこツばかり云いよる」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
我は年頃としごろ恋をして
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
しかし、袖子そでこはまだようや高等小学こうとうしょうがくの一学年がくねんわるかわらないぐらいの年頃としごろであった。彼女かのじょとてもなにかなしにはいられなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
年頃としごろめで玉ひたる梅にさへ別れををしみたまひて「東風こちふかば匂ひをこせよ梅の花あるじなしとて春なわすれぞ」此梅つくしへとびたる事は挙世よのひとの知る処なり。
かれ奉公ほうこうして給料きふれう自分じぶんつひやしてころでは餘所目よそめにはうたがはれる年頃としごろの卅ぢかくまで獨身どくしん生活せいくわつ繼續けいぞくした。そのあひだかれ黴毒ばいどくんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
年頃としごろ廿一二の女惣身そうしん打疵うちきずおほくしてころし候樣子に相見申候尤も衣類いるゐ紬縞小袖つむぎじまこそで二枚を着し黒純子くろどんすりう模樣もやう織出おりだしの丸おびしめ面部めんぶまゆひだりの方にふるきずあと相見あひみえ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
兄の二人、弟の一人と、姉婿が棺側に附いて、最早墓守夫妻が其亡くなった姉をはじめて識った頃の年頃としごろになった彼女の妹が、紫の袴をはいて位牌を持った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
築地のこの界隈かいわいにはお妾新道めかけじんみちという処もある位で妾が大勢住んでいる。堅気かたぎの女房も赤い手柄てがらをかける位の年頃としごろのものはお妾に見まがうような身なりをしている。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
仕立したてかけの縫物ぬひものはりどめしてつは年頃としごろ二十餘はたちあまりの意氣いきをんなおほかみいそがしいをりからとてむすがみにして、すこながめな八丈はちぢやうまへだれ、おめしだいなしな半天はんてん
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日けふはじめて自然しぜんむかしに帰るんだ」とむねなかで云つた。う云ひ得た時、彼は年頃としごろにない安慰を総身そうしんに覚えた。何故なぜもつと早くかへる事が出来なかつたのかと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それからこういう人たちは手引のために、眼の見える娘を育てて使ったが、それは奉公人と同じで、年頃としごろになれば縁に付け、是にも絶対にみだらな行儀は無かったとっている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
さすがに辺鄙ひなでもなまめき立つ年頃としごろだけにあかいものや青いものが遠くからも見え渡る扮装つくりをして、小籃こかごを片手に、節こそひなびてはおれど清らかな高いとおる声で、桑の嫩葉わかばみながら歌をうたっていて
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
年頃としごろ此辺にて殺生関白が辻切を物し侍るよし聞及びし、必定是なるべしと思ひつゝ、かく盲目と成さへに、如何いかなる悪業あくごふにせめられて、此身と成ぬるよとかなしく存候に、如何してながらふべき
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ここすむ近在きんざい后谷村ごやむらといふあり。此村の弥左ヱ門といふ農夫のうふおいたる双親ふたおや年頃としごろのねがひにまかせ、秋のはじめ信州善光寺へ参詣さんけいさせけり。
勘次かんじさん彼女あれこがれたんぢやあんめえ、もつと年頃としごろつゝけだからつれ一人ひとりぐれえ我慢がまん出來できらあな、そんだがあれつなくなつちやつてこまつたな
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
をとこはまだはじめてと年頃としごろであるが、ちやうひとツで、をんなならばだれにでも出来でき商売しやうばいのこと。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
きやく結城朝之助ゆふきとものすけとて、みづか道樂だうらくものとはのれども實体じつていなるところ折々をり/\えて無職業むしよくげふ妻子さいしなし、あそぶに屈強くつきやうなる年頃としごろなればにやれをはじめに一しゆうには二三かよ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
となりのおゆうさんもあの『おばこ』をつてることをたのしみにするやうなをさな年頃としごろでした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かう惡戯いたづらをする年頃としごろむすめもとよりのこと子供こども子供こどもそだげた經驗けいけんのない宗助そうすけは、このちひさいあか夜具やぐ尋常じんじやうしてある有樣ありさまをしばらくつてながめてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
教へ居し内年頃としごろにて相成候へば何處どこぞへ奉公ほうこうに出し度由お三婆より私へ頼みに付私し右娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
年頃としごろ此山中を経過すれども、未だ見たること無き処なれば、始めて道に迷ひたることを悟り、かつは山の広大なることを思ひ、歎息してたゝずみしが、偶〻たまたまあたりの谷蔭に人語の聴えしまゝ
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
年頃としごろめで玉ひたる梅にさへ別れををしみたまひて「東風こちふかば匂ひをこせよ梅の花あるじなしとて春なわすれぞ」此梅つくしへとびたる事は挙世よのひとの知る処なり。
蘿月は机を離れて座敷の真中まんなかに坐り直ったが、たすきをとりながら這入はいって来る妻のおたきと来訪のお豊、同じ年頃としごろの老いた女同士は幾度いくたびとなくお辞儀の譲合ゆずりあいをしては長々しく挨拶あいさつした。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)