むすめ)” の例文
の一のかはをがれたために可惜をしや、おはるむすめ繼母まゝはゝのために手酷てひど折檻せつかんけて、身投みなげをしたが、それのちこと
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あるのこと、むすめは、やまはやしなかへいつものごとくはいってゆきました。すると一のかわいらしい小鳥ことりが、いいこえいていました。
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
三人目の男の履歴りれきについて、少しばかり私の意見を述べて書き送ってあったので、母は「ほんにこのむすめはまた、男さんがちごうてのう」
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
十四、五になる大概たいがいいえむすめがそうであるように、袖子そでこもその年頃としごろになってみたら、人形にんぎょうのことなぞは次第しだいわすれたようになった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
さもたり。ちかづくまゝに。にほは。そもかう款貨舖ぐやの。むすめかも。ゆびはさめる。香盆かうばこの。何爲なにことなりや。時々とき/\に。はなかさして。くめるは。
「西周哲学著作集」序 (旧字旧仮名) / 井上哲次郎(著)
よろこばるゝといへどもおや因果いんぐわむく片輪かたわむすめ見世物みせものの如くよろこばるゝのいひにあらねば、決して/\心配しんぱいすべきにあらす。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
うちとき齋藤さいとうむすめ嫁入よめいつては原田はらだ奧方おくがたではないか、いさむさんのやうにしていへうちおさめてさへけばなん子細しさい
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
といいながら、はこをあけますと、中からかわいらしいお人形にんぎょうさんやおもちゃが、たんと出てきました。むすめはだいじそうにそれをかかえて
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
『ナニ、くじくとふのか』公爵夫人こうしやくふじんあいちんやが、地軸ちゞくつたのをくじくとちがへて、『むすめあたま捩斷ちぎつてしまへ』とひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
おつぎはそれから村内そんない近所きんじよむすめともかよつた。おつぎは與吉よきちちひさな單衣ひとへもの仕上しあげたとき風呂敷包ふろしきづゝみかゝへていそ/\とかへつてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
立通たてとほ指替さしかへの大小并びに具足迄省愼置たしなみおかるゝ程の氣質きしつにては勿々なか/\此金子を受取ざるも道理もつともなりしかしながら某しも一人のむすめうつて昔しの恩を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひとりの男の子はまだッけえうちに、伊勢いせまいりにいった途中とちゅうでかどわかされ、たったひとりのこっていたむすめは……その娘は……
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして冬撰鉱せんこうへ来ていたこの村のむすめのおみちと出来てからとうとうその一本調子ちょうしで親たちを納得なっとくさせておみちをもらってしまった。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
この姑の婦人もまた、旧武士の家庭に育った士族のむすめで、純日本風の礼儀れいぎ正しき教育を受け、かつ極めて善良に優しい心根の人であった。
そうすると、まもなく、綿津見神わたつみのかみむすめ豊玉媛とよたまひめのおつきの女が、玉のうつわを持って、かつらの木の下の井戸いどへ水をくみに来ました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
此間このあひだ御光さんの御母おつかさんがて、三四郎さんも近々大学を卒業なさる事だが、卒業したらうちむすめを貰つて呉れまいかと云ふ相談であつた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ひとみらしてよく見ると、それが女のかぶるかつぎであることがわかり、それを冠ったまま、むすめが一人たおれているのが判りました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
脱毛期だつもうき禿鷹はげたかのような頭をしているくせに若い者と美しいむすめを張合ってみじめに敗れた老人の話をした時、聴衆がドッと笑った。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
何でもその家では、いがみの権太ごんたこそいないけれども、いまだにむすめの名をおさとと付けて、釣瓶鮨を売っていると云う話がある。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
不束ふつつかむすめでございますが、うぞ今後こんごともよろしうおみちびきくださいますよう……。さぞなにかとお世話せわけることでございましょう……。』
そのうちに、ヤルマールがごく小さかったころ、おもりをして、たいそうかわいがってくれた、子もりむすめの住んでいる町へ、やってきました。
ある日無断家出をして、郊外にかかっていたむすめ曲馬団に身を投じたのだ。そこには入学資格も、学費も、親の許しさえも不必要であったから。
江川蘭子 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
……おかあさんたちも、ひとりのこらずその横手よこてに立っていて、さめざめとなみだを流しながら、めいめい自分のむす子やむすめを、目でさぐりあてる。
自分じぶん内職ないしよくかね嫁入衣裳よめいりいしよう調とゝのへたむすめもなく実家さとかへつてたのを何故なぜかとくと先方さきしうと内職ないしよくをさせないからとのことださうだ(二十日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
それからむすめだの、子供こどもたちだの、職人しょくにんだの、小僧こぞうだの、女中じょちゅうだのをびましたので、みんな往来おうらいて、とりながめました。
何々屋なになにや後家ごけさんが、おびってやったとか。酒問屋さけとんやむすめが、舞台ぶたいしたかんざししさに、おやかねを十りょうしたとか。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
だが、わしのむすめをおよめさんにする者は、四十枚のさらに宝石を山もりにして、それを四十人の黒んぼのどれいに持たせてよこさなければいけない。
たらよろしく被仰おつしやつください、』とぼく眞實ほんたうにしないのでむすめだまつてわらつてた。おきぬ此娘このむすめ從姉妹いとこどうしなのである。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
うら若いむすめの面影は、眼の前にちらついて、動悸どうきはもう落着いていたけれど、胸が何か快くめつけられる思いだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
むすめの花子さんは十五さいでしたか、豊頬黒瞳ほうきょうこくとう、まめまめしく、ぼく達のよごれ物の洗濯せんたくなどしてくれる、可愛かわいらしさでした。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
かれは退屈すると一軒おいて隣の家に出かけて行って、日当たりのいい縁側に七ぐらいのむすめの児を相手に、キシャゴはじきなどをして遊んだ。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
武弘たけひろ昨日きのふむすめと一しよに、若狹わかさつたのでございますが、こんなことになりますとは、なん因果いんぐわでございませう。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
岬の村から見る一本松は盆栽ぼんさいの木のように小さく見えたが、その一本松のそばにある家ではお母さんがひとり、むすめのつとめぶりを案じてくれている。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
むすめあゆみながら私の顏をぢつと見入ツた。あゝ其の意味深い眼色めいろ!私は何んと云ツて其を形容けいやうすることが出來やう。
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
彼女かれはひとりむすめで、しかもそのいえは城下でも聞えた大商人おおあきんどであるので、親たちは彼女が好むまゝに育てゝゐた。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「お寺さん」という綽名あだなはそれと知らずにつけられたのだが、実は寺田の生家は代々堀川ほりかわの仏具屋で、寺田のよめ商売柄しょうばいがら僧侶そうりょむすめもらうつもりだったのだ。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
早「わしは下郎さ、おまえはおさむれえむすめだろう、しか口穢くちぎたなく云われゝば、私だって快くねえから、遺恨に思っておめえを鉄砲で打殺ぶちころす心になったら何うするだえ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それを見送っているうち、ふとそのするどい横顔から何んだか自分も見たことがあるらしいその女の若いむすめだった頃の面影おもかげかしのように浮んで来そうになった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
さだめしもうとしよりのおばあさんになつて當時とうじ自分じぶんくらゐのむすめおやとなつてゐることであらうとおもひます。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ロミオ されば明白はっきりはうが、わしはカピューレットのあのうつくしいむすめまた戀人こひゞとめてしまうた。わしめたれば先方むかうもまた其通そのとほりにめたのでござる。
なん醉漢すいかん心中しんちう暴露ばくろするのみようなる。さらすゝんで我妻わがつま我娘わがむすめだんじ、むすめ婬賣いんばいすることまで、慚色はづるいろなくづるにいたりては露國ロコク社界しやかいおどろくべきにあらずや。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
これよりのち此農夫のうふ家をすてむすめをつれて順礼じゆんれいにいでけり。ちかき事なれば人のよくしれるはなしなり。
それは、夏のはじめで、田植たうえのすんだころのある夜でした。林太郎は、右どなりの家のおきぬさんというむすめにつれられて、湖のふちへほたるをとりにいったのでした。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
さうして甲斐かひ/″\しく夕飯ゆふめし支度したく調とゝのへてゐるむすめをみると、彼女かのぢよ祕密ひみつくゐにまづむねをつかれる。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
「先生、うちのむすめっこに、このごろ悪い虫がつきやしてナ、どうも心配でならねえのですが——」
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
道子みちこはうむられたものむすめで、東京とうきやう生活せいくわつをしてゐるのだとこたへ、「おはかいのなら、ちやんとしたいしてたいんですが、さうするにはどこへたのんだら、いゝのでせう。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
それきたれるはひとをそのちちより、むすめをそのははより、よめをその姑嫜しゅうとめよりわかたんためなり。ひとあだは、そのいえものなるべし。われよりもちちまたはははあいするものは、われ相応ふさわしからず。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
気球のように大きなはらをしたおかみさんの木ぐつ、それから、小さいかわいいむすめさんの木ぐつ、そう三足をつくってやると、主人は大喜びで、もうこれでけっこうですといいました。
名なし指物語 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
燃えさしをゆかの上に投げ、また一本摩り、莨を吸付けながら、どうでもいいというようなる風にて戸の方を見る。○モデルむすめ。質素なる黒の上着に麦藁帽子むぎわらぼうしこしらえにて、遠慮らしくしずかきたる。
とやはりさむらいむすめである。夕刻主人公が役所から帰るのを待ちわびて
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)