まづ)” の例文
見榮坊みえばう! には見榮みえをんなものつたり、らなかつたりするもの澤山たくさんある。ぼくこゝろからこのまづしい贈物おくりもの我愛わがあいする田舍娘ゐなかむすめ呈上ていじやうする!
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
べて神聖しんせいものはてよろこびる。われらがしゆきみはこのあかいばらうへに、このわがくちに、わがまづしい言葉ことばにも宿やどつていらせられる。
かへつて説淺草福井町に駕籠舁かごかきを渡世として一人は權三といひ一人は助十とよび二人同長屋に居てまづしきくらしなれども正直ものといはれ妻子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
そのまづしさには決してへられません。私達はもう少し人間にんげんらしく生きなければなりません。今にもうすぐ私達の一生にもふゆがまゐります。
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
まづしい店前みせさきにはおほがめかふわに剥製はくせい不恰好ぶかっかううをかはつるして、周圍まはりたなには空箱からばこ緑色りょくしょくつちつぼおよ膀胱ばうくわうびた種子たね使つかのこりの結繩ゆはへなは
しかし汽車きしやはその時分じぶんには、もう安安やすやす隧道トンネルすべりぬけて、枯草かれくさやまやまとのあひだはさまれた、あるまづしいまちはづれの踏切ふみきりにとほりかかつてゐた。
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
けさもまづしい病詩人びやうしじんがほれぼれとそれをきいてゐました。ほかのものの跫音あしをとがすると、ぴつたりむので、だれもそれをいたものはありません。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
自分ながら自分の藝術のまづしいのが他になる、あわれたいしてまた自分に對してなやみ不平ふへいが起る。氣がンずる、悶々もだ/\する、何を聞いても見ても味氣あじきない。
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
ガメノシユブタケ(藻の一種)の毛根を幽かに顫はせ、しかるのち、ちゆうまえんだの菜園を一周囘めぐりしてまづしい六騎ロツキユ厨裏くりやうらに濁つた澱みをつくるのであつた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
かれけつして他人たにん爭鬪さうとうおこしたためしもなく、むしきはめて平穩へいをん態度たいどたもつてる。たゞ彼等かれらのやうなまづしい生活せいくわつもの相互さうご猜忌さいぎ嫉妬しつととのそばだてゝる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其所そこにはたかさ二しやくはゞしやくほどわくなかに、銅鑼どらやうかたちをした、銅鑼どらよりも、ずつとおもくてあつさうなものがかゝつてゐた。いろ蒼黒あをぐろまづしいらされてゐた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
言道ときみちもやはり、曙覽あけみ同樣どうようまづしいくらしをしてゐました。けれどもそれについて普通ふつうひとでありませんから、たいしてにかけたりあせつたりはしてゐなかつたのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
鮑叔はうしゆくわれもつたんさず、まづしきをればなりわれかつ鮑叔はうしゆくめにことはかり、しかうしてさら窮困きうこんす。鮑叔はうしゆくわれもつさず、とき不利ふりるをればなり
もとより以前いぜんから、友造ともざういへは、土地とちでも、場末ばすゑの、まちはづれの、もと足輕町あしがるまちやぶ長屋ながやに、家族かぞく大勢おほぜいで、かびた、しめつた、じと/\したまづしいくらしでたのであるから
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まづし氣な樣子の中に、たつた一人取り殘された十八になるお美乃は哀れ深くも美しい姿です。
る処には人数にんずを略してゑがけり)右は大家たいかの事をいふ、小家のまづしきは掘夫ほりてをやとふべきもつひえあれば男女をいはず一家雪をほる。吾里にかぎらず雪ふかき処はみなしかなり。
それは彼のあしを止めたところが郊外かうぐわいにあつたからで、そこは平野神社から銀閣寺へ途中とちうえる衣笠山のなだらかな姿がのきの下から望まれるやうな場所にある、まづしい家であつた。
(新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
わがもてるものはまづしとおもへども狂人きやうじんりてこの世はなむありのまにまに
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
道子みちこはもと南千住みなみせんぢゆ裏長屋うらながやまづしいくらしをしてゐた大工だいくむすめである。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
三 まづしけれどもゑず。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
まづしい子供こどもたちよ。
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
いへまづし、ともすくな
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
事ともせず日々ひゞ加古川の渡守わたしもりしてまづしき中にも母に孝養怠らざりし其内老母は風の心地とてふしければ兵助は家業かげふやすみ母のかたはらをはなれず藥用も手を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
タツ! タツ! タツ! あゝあのおと形容けいようするのはむづかしい、なんといふ文字もんじまづしいことであらう、あれあんなにやさしい微妙びめうおとをたてゝゐるのに……。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
主人しゆじん細君さいくん説明せつめいによると、この織屋おりやんでゐるむら燒石やけいしばかりで、こめあはれないから、やむくはゑてかひこふんださうであるが、餘程よほどまづしいところえて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それがまづしい生活せいくわつ人人ひと/″\のみはうしてあまんじてることを餘儀よぎなくされつゝあるのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ヂュリ 内實なかみの十ぶん思想しさうは、言葉ことばはなかざるにはおよばぬ。かぞへらるゝ身代しんだいまづしいのぢゃ。わしこひは、分量ぶんりゃうおほきう/\なったゆゑに、いまその半分はんぶんをも計算かんぢゃうすることが出來できぬわいの。
あに元太郎もとたらう至極しごく實體じつていで、農業のうげふ出精しゆつせいし、兩親りやうしん孝行かうかうつくし、まづしいなかにもよく齊眉かしづき、ひとづきあひは義理堅ぎりがたくて、むらほめものなのであるが、次男じなん小助こすけうまれついたのらくらもの。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
まづし氣な調度の中に、二枚屏風びやうぶを逆樣にして、お君の死體は寢かしてありました。枕許には手習机を据ゑて、引つきりなしに香をひねつてゐる五十男は、お君の父親で清水屋の亭主の市兵衞でせう。
山のべにひそむがごとき切支丹きりしたんまづしき村もわれは見たりき
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
こゝに鍛冶かぢの兄弟あり、ひとりの母をやしなふ、家もつともまづし。
のろのろとさがるなまけもの、あるは、まづしく
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
三 まづしけれどもゑず
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
いへまづし、ともすくな
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
もちまづしき上にまづしくならん今の中に江戸に出て五六年もかせぎなば能き事も有べしと思ひ或日叔母女房に向ひ此事を直談ぢきだんに及びければ大いにおどろき是は思ひかけなき事を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ねんねんゆめぎ、未亡人びぼうじん操行さうかうくわんして誰一人たれひとり陰口かげぐちものもなかつた。まづしくはあつたけれど彼女かのぢよ家柄いへがらもよかつたので、多少たせう尊敬そんけい心持こゝろもちもくはへて人々ひと/″\彼女かのぢよ信用しんようした。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ダヌンチオの主人公は、みんなかねに不自由のない男だから、贅沢ぜいたく結果けつくわあゝ云ふ悪戯いたづらをしても無理とは思へないが、「煤烟」の主人公に至つては、そんな余地のない程にまづしい人である。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そのまづしさをるまゝに、おもはず獨語ひとりごって、このマンチュアでどくれば、すぐにもいのちらるれども、しもどくしければりさうなのは此奴こいつめ、とおもうたが、今日けふあるらせであったまで。
それは勘次かんじは二三のものとも巡査じゆんさ注意人物ちういじんぶつであつたからである。しかかれまづしい建物たてもの何處どこにも隱匿いんとくされる餘地よち發見はつけんすることが出來できなかつた。とき勘次かんじ餘所よそはこんだあとなのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
読者どくしやるや、とんさんと芥川あくたがは……あゝ、面影おもかげえる)さんが、しか今年ことしぐわつ東北とうほくたびしたときうみわたつて、函館はこだてまづしい洋食店やうしよくてんで、とんさんが、オムレツをふくんで、あゝ、うまい、とたん
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こゝに鍛冶かぢの兄弟あり、ひとりの母をやしなふ、家もつともまづし。
まづしきはきよらかに窻ひらきて。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)