落葉おちば)” の例文
君が御名みなさちの井の、ゐどのほとりの常磐木ときはぎや、落葉木らくえふぼく若葉わかばして、青葉あをばとなりて、落葉おちばして、としまた年と空宮くうきうに年はうつりぬ四十五しじふいつ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
落葉おちばには灰際はひぎはから外側そとがはつたひてがべろ/\とわたつた。卯平うへい不自由ふじいう火箸ひばし落葉おちばすかした。迅速じんそく生命せいめい恢復くわいふくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そこで、その日はいつもよりたくさんに枯枝かれえだ落葉おちばを拾ってきて、中には生木なまきの枝までも交えて、煙が多く出るようにしました。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
満地まんち満天まんてんに木々の落葉おちばをふき巻くりあれよと見るまに、咲耶子は砂塵さじんをかおに吹きつけられて、あ——とまなこをつぶされてしまう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、くさたけ落葉おちばは、一めんあらされてりましたから、きつとあのをとこころされるまへに、餘程よほど手痛ていたはたらきでもいたしたのにちがひございません。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
落葉おちばし尽した木立こだちの間から石と泥とを混ぜた家家いへいへ白茶しらちやけた壁に真赤まつか蔦紅葉つたもみぢつて居るのはつゞれにしきとでも月並ながら云ひたい景色であつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
もりしたこみちけば、つちれ、落葉おちばしめれり。白張しらはり提灯ちやうちんに、うす日影ひかげさすも物淋ものさびし。こけし、しきみれたるはかに、もんのみいかめしきもはかなしや。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一曲いつきよく舞ひ納む春鶯囀しゆんあうてん、細きは珊瑚を碎く一雨の曲、風に靡けるさゝがにの絲輕く、太きは瀧津瀬たきつせの鳴り渡る千萬の聲、落葉おちばかげ村雨むらさめひゞきおもし。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
鳥居とりいのまわりから、草ぼうぼうと生えてる。宮の前にはさすがに草は生えていないが、落葉おちばで埋まるばかりになってる。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
昼寐ひるね夜具やぐきながら墓地ぼちはう見下みおろすと、いつも落葉おちばうづもれたまゝ打棄うちすてゝあるふるびたはか今日けふ奇麗きれい掃除さうぢされて、はな線香せんかうそなへられてゐる。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
道翹だうげうかゞめて石疊いしだゝみうへとら足跡あしあとゆびさした。たま/\山風やまかぜまどそといてとほつて、うづたかには落葉おちばげた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
くろ枯枝かれえだくろえるおうちうら桑畠くはばたけわきで、毎朝まいあさぢいやはそこいらからあつめて落葉おちばきました。あさ焚火たきびは、さむふゆるのをたのしくおもはせました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
樹本生茂おいしげり、昼でさえ薄暗い処ことには曇っておりまするから漸々よう/\足元が見えるくらい、落葉おちばうずもれている上をザク/\踏みながら花車が先へ立ってむこうを見ると
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
若さを持てあまして、剣術に凝った。星影ほしかげ一刀流に、落葉おちば返しという別格の構えをひらいたのは、この若松屋惣七だ。それはいま、同流秘伝の一つに数えられた。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
たとえば『甲斐かい落葉おちば』にはオカダッコ、食物調理の真似をして遊ぶこと、すなわちままごととあるが、南大和みなみやまとの方言集にも、雛遊ひなあそびをここではオカタサンゴトというとある。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
かゝしまこととて、みちなどのあらうはづはなく、熊笹くまざゝあひだ掻分かきわけたり、幾百千年いくひやくせんねんらいつもつもつて、あだか小山こやまのやうになつて落葉おちばうへんだり、また南半球みなみはんきゆう特有とくいう黄乳樹わうにうじゆとて
その男はこういうと、降り積った落葉おちばを、ガサガサとくだきながら、腰を下ろした。
自殺 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そのうちあきて、もりはオレンジいろ黄金色おうごんいろかわってました。そして、だんだんふゆちかづいて、それがると、さむかぜがその落葉おちばをつかまえてつめた空中くうちゅうげるのでした。
おくさまのこのみ六づかしけれど、れも御縁ごゑんくてぎゆく、落葉おちばしもあさな/\ふかくて、かぜいとゞさむく、時雨しぐれよひ女子をなごども炬燵こたつあつめて、浮世物うきよものがたりに小説しようせつのうわさ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「まだ早いぢやありませんか。日が当つてゐますぜ」と云ひながら、坊主あたまを両手で抑えて椽端にあらはれた。代助は返事もせずに、庭の隅へもぐり込んで竹の落葉おちばを前の方へ掃きした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はりねずみ、りす、それから、わたしの好きで好きでたまらなかったあのしめっぽい落葉おちばのにおい。……わたしは今これを書きながら、白かばの林のにおいをしみじみかぐような気持がします。
かわらのおもてに、あとからあとからまれて秋雨あきさめの、ときおり、となりいえからんでやなぎ落葉おちばを、けるようにらしてえるのが、なに近頃ちかごろはやりはじめた飛絣とびがすりのようにうつった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
落ちしける落葉おちばにはなほいのちありてたまゆらのまにたまよばひあへず
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
風の中の落葉おちばのやうに、あちらに舞ひ、こちらにころがりしてゐるうちに、路用はだんだんなくなり、ひどい生き方に落ちて来てしまつた。こんな虱なんかに、いつか親しむやうになつてしまつた。
良寛物語 手毬と鉢の子 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
みなかみにのぼりてゆけば水の道落葉おちばしたかくろひにけり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
とろけたゆたふうみに、われ落葉おちば
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
碎けしそれか、落葉おちばのゆくへ。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
焔の落葉おちばか、燃え上る草むらか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
秋には入るとすぐ落葉おちばする
ああ、地に敷いた落葉おちば
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
狐色きつねいろ落葉おちばの沈んだ池へ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
落葉おちばの 学校の
朝おき雀 (新字旧仮名) / 野口雨情(著)
あき落葉おちば栗毛くりげ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
提灯は径を歩かして、余は月のあかりを便りに今一度疑問の林に分け入った。株立になった雑木は皆落葉おちばして、林の中は月明つきあかりでほの白い。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
與吉よきちなゝめくのがすこ窮屈きうくつであつたのと、叱言こごとがなければたゞ惡戲いたづらをしてたいのとでそばかまどくちべつ自分じぶん落葉おちばけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その人かげのあとから、幾年いくねんくちつんだ落葉おちばをふんで、ガサ、ガサと、歩いてくる者があった。小具足こぐそくをまとった武士ぶしである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
村から少し離れた山のふもとに、松やかしわやくぬぎやしいなどの雑木林ぞうきばやしがありました。秋のことで、枯枝かれえだ落葉おちばなどがたくさん積もっていました。
お山の爺さん (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
おもふかおもはないうちに、つまたけ落葉おちばうへへ、ただ一蹴ひとけりに蹴倒けたふされた、(ふたたびほとばしごと嘲笑てうせう盜人ぬすびとしづかに兩腕りやううでむと、おれの姿すがたをやつた。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
第二図三囲みめぐりの堤を見れば時雨しぐれを催す空合そらあいに行く人の影まれに、待乳山まつちやま(下巻第三図)には寺男一人落葉おちばを掃く処、鳥居際とりいぎわなる一樹の紅葉こうように風雅の客二人ににん
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
荒く触つたと言ふばかりで、その身体からだが揺れたとも見えないのに、ぽんと、かさぐるみ油売あぶらうりの首が落ちて、落葉おちばの上へ、ばさりと仰向あおむけに転げたのである。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
が、若松屋惣七は、今でこそ金勘定の町人だが、武家出で、しかも若いころは剣道の達人であった。星影一刀流に落葉おちば返しの構えという一手を加えた名誉でさえあった。
巷説享保図絵 (新字新仮名) / 林不忘(著)
また像をおほうて今は落葉おちばして居る一じゆ長春藤ちやうしゆんとうが枝を垂れて居た。ブリゲデイエ君に礼を云つて酒手さかてを遣らうとしたが中中なかなかかぶりを振つて受けない。西洋人としては珍らしい男である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
思ひ胸に迫りて、吁々あゝ太息といきに覺えず我れにかへりてかうべぐれば日はなかば西山せいざんに入りて、峰の松影色黒み、落葉おちばさそふ谷の嵐、夕ぐれ寒く身にみて、ばら/\と顏打つものは露か時雨しぐれか。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
とんと掃除などを致したことはなく、れ切れた弁天堂のえんは朽ちて、間から草が生えて居り、堂のわきには落葉おちばうずもれた古井があり、手水鉢ちょうずばちの屋根はっ壊れて、向うの方に飛んで居ります。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
落葉おちばたくなるけふりすゑか、れかあらぬかふゆがれの庭木立にはこだちをかすめて、裏通うらどほりの町屋まちやかた朝毎あさごとなびくを、金村かなむら奧樣おくさまがお目覺めざめだとひとわるくちの一つにかぞへれども、習慣ならはしおそろしきは朝飯前あさはんまへの一風呂ふろ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こおろぎの細々ほそぼそれて、かぜみだれる芒叢すすきむらに、三つ四つ五つ、子雀こすずめうさまも、いとどあわれのあきながら、ここ谷中やなか草道くさみちばかりは、枯野かれの落葉おちばかげさえなく、四季しきわかたずうた
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
落葉おちばもかくぞ相舞あひまひりはゆけども
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
されば落葉おちばと身をなして
藤村詩抄:島崎藤村自選 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
落葉おちばのやうにはらはらと
みづおもつき落葉おちばよ……
海潮音 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)