)” の例文
旧字:
「わたしは新羅しらぎくにからはるばるわたって天日矛命あまのひぼこのみことというものです。どうぞこのくにの中で、わたしの土地とちしていただきたい。」
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
が、道行みちゆきにしろ、喧嘩けんくわにしろ、ところが、げるにもしのんでるにも、背後うしろに、むらさと松並木まつなみきなはていへるのではない。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
始めのうちは音信たよりもあり、月々つき/″\のものも几帳面ちやん/\と送つてたからかつたが、此半歳許はんとしばかり前から手紙もかねも丸で来なくなつて仕舞つた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と、海蔵かいぞうさんがいいました。そばにてみると、それはこの附近ふきん土地とちっている、まちとしとった地主じぬしであることがわかりました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ラプンツェルは、まだ一も、おとこというものをたことがなかったので、いま王子おうじはいってたのをると、はじめは大変たいへんおどろきました。
ひるすこしまえにはもう二人ふたりにいさんが前後ぜんごして威勢いせいよくかえってた。一人ひとりにいさんのほう袖子そでこているのをるとだまっていなかった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
其跡そのあと入違いれちがつてたのは、織色おりいろ羽織はおり結城博多ゆうきはかたの五本手ほんて衣服きもの茶博多ちやはかたおびめました人物、年齢四十五六になるひんをとこ。客
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
はたけえ、牧場ぼくじょうえてはしってくうち、あたりは暴風雨あらしになってて、子家鴨こあひるちからでは、しのいでけそうもない様子ようすになりました。
かれとらえられていえ引返ひきかえされたが、女主人おんなあるじ医師いしゃびにられ、ドクトル、アンドレイ、エヒミチはかれ診察しんさつしたのであった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
細い釘店くぎだなの往来は場所がらだけに門並かどなみきれいに掃除されて、打ち水をした上を、気のきいた風体ふうていの男女が忙しそうにしていた。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「食えない者は、誰でもおれにいてな。晩には十銭銀貨わんだらふたツと白銅の五銭玉一ツ、みんなのポケットに悪くねえ音をさせてやるぜ」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「こいづば鹿しかでやべか。それ、鹿しか」と嘉十かじふはひとりごとのやうにつて、それをうめばちさうのしろはなしたきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
大久保おほくぼ出発しゆつぱつしてからもなく、彼女かのぢよがまたやつてた。そのかほつてあかるくなつてゐた。はなしまへよりははき/\してゐた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「ふん。むかしいまもあるもんじゃねえ。隣近所となりきんじょのこたァ、女房にょうぼうがするにきまッてらァな。って、こっぴどくやっけてねえッてことよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
するとあるとき、ライオンが猟人かりうどつかまつてしばられたとこへれいねづみて「おぢさん、つといで」とつてしばつたなわ噛切かみきつてやりました。
しばらくうまと一しょあそんで、わたくしたいへんかる気持きもちになってもどってましたが、そのってにもなれませんでした。
検疫船けんえきせん検疫医けんえきいむ。一とう船客せんかくどう大食堂だいしよくだうあつめられて、事務長じむちやうへんところにアクセントをつけて船客せんかくげる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
そんなことをしているところへ、船からつぎつぎに泳ぎついて、二十日の間、苦楽をともにした見張台みはりだいの上の人間の顔がれなく揃った。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
反絵は時々戸の隙間から中をのぞいた。薄暗い部屋の中からは、一条の寝息が絶えずかすかに聞えていた。彼は顔をしかめて部屋の前をした。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「ちぇッ……藁が無けりゃ、藁の代りになりそうな、麦稈むぎわらでも、かやでも、それが無けりゃな、人の家の畳でもむしりこわして持ってねえな」
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
自分じぶん内職ないしよくかね嫁入衣裳よめいりいしよう調とゝのへたむすめもなく実家さとかへつてたのを何故なぜかとくと先方さきしうと内職ないしよくをさせないからとのことださうだ(二十日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
それからまた、いつもちがいのあるいいもの、菓子かしとかとかめずらしい玩具などを持っててくれるから、きだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
絶えず機関車のする音が聞え、時々はすぐ窓の外で、鋭い汽笛が鳴り響くのだが、そんな物音にも、雪子はビクッと身を震わせて驚くのだ。
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
彼は結婚した翌日に「匇々そうそう無駄費ひをしては困る」と彼の妻に小言を言つた。しかしそれは彼の小言よりも彼の伯母の「言へ」と云ふ小言だつた。
或阿呆の一生 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「霞ゐる富士の山傍やまびに我がなば何方いづち向きてか妹が嘆かむ」(巻十四・三三五七)の、「我が来なば」も、「我が行かば」という意になるのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この話はすべて遠野とおのの人佐々木鏡石君より聞きたり。さく明治四十二年の二月ごろより始めて夜分おりおりたずたりこの話をせられしを筆記せしなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
貫之つらゆきの哥に「しほのぼるこしみづうみちかければはまぐりもまたゆられにけり」又俊成卿としなりきやうに「うらみてもなにゝかはせんあはでのみこしみづうみみるめなければ」又為兼卿ためかねきやうとしを ...
やがて電車通でんしやどほりいへけんかりると、をとこ国元くにもとから一よめつたことのある出戻でもどりのいもうとに、人好ひとずきのよくないむづかしい母親はゝおやとがたゝめ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
あの方とは、昨年お目にかかりましたのちは、お互にちょいちょいゆきはしておりますが、唯うたのお友達というだけ、それほど深い話もありません。
柳原燁子(白蓮) (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
『おい、ペンペ、下界したろ。すばらしい景色けしきじやないか。おまへなんぞこゝらまでんでたこともあるまい。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
シューラは、新しい歌をあつめたほんを持っててやると、きのうクルイニンに約束やくそくしたのをおもした。ポケットへ手をっこんでみたが、本はなかった。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
そういいすてると、彼は歩調ほちょうもゆるめず、大きなマスクの頭をふりたてて、ドンドンもとた道に引返ひきかえしていった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これを決するためには終日終夜心魂しんこんを痛め、あるいはひざまずいて神意を伺わんとしたり、あるいは思案に沈んで、ほとんど無意識に一室をしたという。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
六日——牧野雪子(雪子は昨年の暮れ前橋の判事と結婚せり)より美しき絵葉書の年賀状たる。△腫物はれもの再発す。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
このときなみだはらはらといてた。地面ぢめんせ、気味きびわるくちびるではあるが、つちうへ接吻せつぷんして大声おほごゑさけんだ。
土堤の上も暗くなり、ときたまする人たちも、影絵のようにぼんやりと黒く、こころもとなげに見えた。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「熱は大してないねんな。———ま、こじらすと悪いよってに臥てなさい。兎に角櫛田くしださんにもらおう」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
がほかほかとたってきました。しじゅうからが、はやしいています。そらは、うすあおれて、なんとなく気持きもちのびとするいいお天気てんきでした。
雪消え近く (新字新仮名) / 小川未明(著)
思ひ出しても、身慄みぶるひのするあの頃——朝から晩まで、ひつきりなしの銃声、馬の蹄の音、負傷兵をのせた担架の、窓をかすめる飛行機の翼の影……。
けむり(ラヂオ物語) (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
ある日の夕暮れなりしが、余は獣苑じゅうえんを漫歩して、ウンテル・デン・リンデンを過ぎ、わがモンビシュウ街の僑居きょうきょに帰らんと、クロステルこうの古寺の前にぬ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そのいでたちの異様なるにその声さへ荒々しければ子供心にひたすら恐ろしく、もし門の内に這入りなばいかがはせんと思ひ惑へりし事今も記憶に残れり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
奥のかたなる響動どよみはげしきに紛れて、取合はんともせざりければ、二人の車夫は声を合せておとなひつつ、格子戸を連打つづけうちにすれば、やがて急足いそぎあしの音立てて人はぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
客の食べ残りなどを貰ひにい来いしてゐたのを、伯父がその親達に幾らかの金を与へ、二度とその辺へ顔を見せぬといふ約束で拾ひ上げたのだといふ話だつた。
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
千代ちいちやんひどく不快わるくでもなつたのかいふくくすりましてれないかうした大変たいへん顔色かほいろがわろくなつてたおばさん鳥渡ちよつと良之助りやうのすけこゑおどかされてつぎ祈念きねん
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
私たちは、その光の橋を渡っておたがいにするんだ。ああ、なんという美しい景色だ。これは詩ですな。うん。そしてこの景色こそが、真実の愛のそれだ。
軍国歌謡集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
住いが近くなったので、団子坂へのが繁くなります。観潮楼の広い二階は書斎と客室とになって、金屏風きんびょうぶが一双引いてありました。これも母の趣味なのです。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
『まさか』と自分おれ打消けして見たが『しかし都は各種の人が流れ流れて集まって来る底のない大沼である。彼人あれだってどんな具合でここへ漂ってまいものでもない、』
まぼろし (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
けど、奥はんが大層同情して、けっとどうぞしてやるさかいに又明日云うてやった。先の頃の事などパッキリ忘れて会うとくれやはったさかい、ほんに有難かった。
栄蔵の死 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そうでしょう、みちがあるおかげで、方々ほうぼう土地とちに出来る品物しなものがどんどんわたしたちのところへはこばれて来ますし、おともだち同士どうしらくったりたりすることが出来ます。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
貴方あなた。人殺しのあったうちチウて、あんまり評判が悪う御座いますけに誰も買いになざっせん。
山羊髯編輯長 (新字新仮名) / 夢野久作(著)