かへ)” の例文
旧字:
なんだ、またこれをつてかへるほどなら、たれいのちがけにつて、這麼こんなものをこしらへやう。……たぶらかしやあがつたな! 山猫やまねこめ、きつねめ、野狸のだぬきめ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雨がしきりなので、かへるときには約束通りくるまを雇つた。さむいので、セルのうへへ男の羽織をせやうとしたら、三千代は笑つてなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かはつてかへつてたのはくま膏薬かうやく伝次郎でんじらう、やちぐさんだかさかむたぬき毛皮けがはそでなしをて、糧切まぎりふぢづるでさや出来できてゐる。
竹村たけむらは一ねんたつかたゝないうちに、大久保おほくぼかへつてたのに失望しつばうしたが、大久保おほくぼ帰朝きてうさびしかつたことも、すくなからずかれいたましめた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
いつになく元のいい、明るい顏付かほつきつとめ先からかへつて※たM会社員くわいしやゐんの青木さんは、山ののあるしづかな裏通うらとほりにある我家わがやの門口をはひると
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
『ラランいふのはおまへか。ヱヴェレストはそんなからすようはないぞ。おまへなんぞにられるとやまけがれだ。かへれ、かへれ。』
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
道子みちこはバスのとほるのをて、その停留場ていりうぢやうまであるき、つてゐるひとみちをきいて、こんどは国府台こふのだいから京成電車けいせいでんしや上野うへのまはつてアパートにかへつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
川塲をはつして沼田にかへれば、郡役所、警察署、収税署等の諸員及有志者等、一行の安着を歓迎くわんげいし、たたちに三好屋に於てさかんなる慰労会ゐらうくわいもよふされたり。
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
かへみちくだんの課長は何故俺を死人扱ひにして加之おまけに顔の棚卸しまでしたと言つて、雄弁家に喧嘩を吹き掛けたさうだ。
淡路嶋かよふ千鳥、明石の浦、このそよぐすずしき風に、親子づれかへさ安しと、この日なか、波折なをり光ると、甲板かふはんに鼠出でぬと、おもしろとその影見やる。
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
私は家へかへつて来た。家の小路の両側りやうがは桃色もゝいろはなで埋まつてゐた。このたなびくはなの中に病人びやうにんがゐようとは、何と新鮮しんせんな美しさではないか。と私はつぶやいた。
美しい家 (新字旧仮名) / 横光利一(著)
それでもすつかり手拭てぬぐひまへまでつて、いかにもおもつたらしく、ちよつとはな手拭てぬぐひしつけて、それからいそいでめて、一目いちもくさんにかへつてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かへりけるひときたれりといひしかばほとほとにき君かと思ひて 〔巻十五・三七七二〕 狭野茅上娘子
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
しかしつぎかた、おれはかへりゆく労働者らうどうしやのすべてのこぶしのうちにぎめられたビラのはし電柱でんちうまへに、倉庫さうこよこに、かぜにはためく伝単でんたんた、同志どうしやすんぜよ
江河こうが潔清けつせいなれば女に佳麗かれい多しと謝肇淛しやてうせつがいひしもことはりなりとおもひつゝ旅宿りよしゆくかへり、云々しか/″\の事にて美人びじんたりと岩居がんきよに語りければ、岩居いふやう、かれは人の知る美女なり
これはまた格別かくべつにぎはひ、郡司大尉ぐんじたいゐ壮行さうかうをまのあたり見て、子やまごかたりて教草をしへぐさにせんと、送別さうべつほか遊人いうじんも多くして、かへさはつゑこゝきしもすくなからで、また一倍いちばいにぎはひはありしならん
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
さう/\おぼえて八百屋やをやお七の機関からくりたいとつたんだツけ。アラいやうそばつかり。それぢやア丹波たんばくにから生捕いけどつた荒熊あらくまでございのはうか。うでもようございますよわたし最早もうかへりますから。
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やあ おとうさんがおかへりになつた
としきてひとかへらず。
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
広田先生は又立つて書斎につた。かへつた時は、手に一巻の書物を持つてゐた。表紙が赤黒あかぐろくつて、くちほこりよごれたものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これからたくかへつて支度したくをしてうち長家ながやの者も追々おひ/\くやみにる、差配人さはいにん葬式さうしき施主せしゆ出来できたのでおほきに喜び提灯ちやうちんけてやつてまゐ
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「いけません。おはらひでなきやアあとへおかへンなさい。」とおつしやつた。先生せんせいめうかほをしてぼんやりつてたがすこしむきになつて
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして田舎ゐなかかへつてから、慇懃いんぎん礼状れいじやう受取うけとつたのであつたが、無精ぶしやう竹村たけむら返事へんじしそびれて、それりになつてしまつた。
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
のこる所の二十七名は之よりすすむのみにしてかへるを得ざるもの、じつすすりて决死けつしちかひをなししと云ふてなり、すでにして日やうやたかく露亦やうやへ、かつ益渇をくわ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ばうさんは道子みちこ孝心かうしんを、いまにはまれなものとして絶賞ぜつしやうし、そのかへるのを門際もんぎはまでおくつてやつた。
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
江河こうが潔清けつせいなれば女に佳麗かれい多しと謝肇淛しやてうせつがいひしもことはりなりとおもひつゝ旅宿りよしゆくかへり、云々しか/″\の事にて美人びじんたりと岩居がんきよに語りければ、岩居いふやう、かれは人の知る美女なり
韓国からくにらはしてかへ丈夫武男ますらたけを御酒みきたてまつる 〔巻十九・四二六二〕 多治比鷹主
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「おかへんなさい。——いつたいまあなんなの? いきなりそんな大きなこゑをなすつて……」
(旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
お客はかへみちに、会社に寄つて、同僚にたしかめてみると、夫人の言葉は大抵間違で、機関長の年齢としは三十七。尺八が好きなのは船長で、無器用な機関長は吹くすべさへ知らなかつたさうだ。
むかふの一ぴきはそこで得意とくいになつて、したして手拭てぬぐひを一つべろりとめましたが、にはかにこはくなつたとみえて、おほきくくちをあけてしたをぶらさげて、まるでかぜのやうにんでかへつてきました。
鹿踊りのはじまり (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
かへるともせず、ひそやかに、はた、はてしなく見入みいりぬる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
くたくたにつかれた演習えんしふかへりに
わたしだつてかへりたいわ
としつきひとかへらず
寡婦の除夜 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
それがいけないので、わつし子供こども時分じぶんから、人の見てまいでは物ははれない性分しやうぶんですから、何卒どうぞかへつて下さい、お願ひでございますから。
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「なにかへつて仕舞つたと云ふ訳でもないんです。一寸ちよつと神楽坂かぐらざか買物かひものがあるから、それをまして又るからつて、云はれるもんですからな」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
真先まつさき案内者あんないしや権七ごんしちかへつてたのが、ものゝ半時はんときあひだかつた。けれども、あし爪立つまだつてつてには、夜中よなかまでかゝつたやうにおもふ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
綺麗きれいつくつてからかへると、つま不図ふと茶道具ちやだうぐともなかとをわたしそばはこんで、れいしとやかに、落着おちついたふうで、ちやなどれて、四方八方よもやまはなしはじめる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
に入れば当宿の主人かへきたる、主人は当地の深山しんざん跋渉ばつしやう経験けいけんありとの故を以て、んで一行と共にせんことをだんず、主人答へて曰く、水源を溯源さくげんして利根岳にのぼ
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
パレスのはう借金しやくきんかへしてしまふし、御礼奉公おれいぼうこうもちやんと半年はんとしゐてやつたんだから、かアさんがきてればうちかへつて堅気かたぎくらすんだけれど、わたし、あんたもつてるとほ
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
ひさかたの天道あまぢとほしなほなほにいへかへりてなりまさに 〔巻五・八〇一〕 山上憶良
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
「さうだ、虫干をかう、宗左へはかへみちにしたつて遅くはあるまい。」
密通みつつうしたるをんなのただ一人ひとりをつといへかへるがごとく
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うけ玉ひて日本ひのもとかへり玉ひたりと
さあ みんなかへらう
になつて其様そんなことがさせられるかさせられねえか考へて見ねえ、とてもそれなりに世話せわつてもゐられねえからかへつてたのよ。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「代助はまだかへるんぢやなからうな」とちゝが云つた。代助はみんなから一足ひとあしおくれて、鴨居かもゐうへに両手がとゞく様なのびを一つした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞ姿すがただけせればい。温泉宿ゆのやど二階にかいたかし。あの欄干らんかんから飛込とびこませろ、……女房にようばうかへらぬぞ、女房にようばうかへらぬぞ、とはね天井てんじやうをばさばさらせろ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「これもいまとなつてみれば、んでもない。ふねからうみてようかとおもつたけれど、到頭たうとうまた日本にほんつてかへつた。」
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そしてたつた今朱文公に会つたかへみちだといふやうな生真面目な顔をして