大層たいそう)” の例文
『まァ、大層たいそうよろこんでること』あいちやんはおもつてほもつゞけました。『をしへて頂戴てうだいな、ね、わたし此處こゝから何方どつちけばいの?』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
天神様の境内は大層たいそうな人出でした。飴屋あめやが出ています。つぼ焼屋が出ています。切傷のなお膏薬こうやくを売っている店があります。
梨の実 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
まゐりましたところ堺町さかひちやうでうきたまちといふ、大層たいそうづかしい町名ちやうめいでございまして、里見さとみちうらうといふ此頃このごろ新築しんちくをした立派りつぱうち
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
左様さよう御在ございます。身体からだは病後ですけれども、今歳ことしの春大層たいそう御厄介になりましたその時の事はモウ覚えませぬ。元の通り丈夫になりました。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
りや大層たいそう大事だいじにしてあるな」醫者いしやきたな手拭てぬぐひをとつて勘次かんじひぢた。てつ火箸ひばしつたあとゆびごとくほのかにふくれてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仲間の馬方達うまかたたちに見せても、どうしたのか誰にもわかりませんでした。甚兵衛は大層たいそう心配しましたが、どうにも仕方しかたありません。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
すると翌日よくじつかへつて大層たいそう謝罪しやざいをされるから何故なにゆゑ返事へんじをしなかつたとたづねると返事へんじ端書はがきしてきましたといふのです。
女教邇言 (旧字旧仮名) / 津田梅子(著)
我邦わがくにの家庭にも近頃は食パンを用ゆる事が大層たいそう流行して中流以上の人は朝の食事をパンと牛乳で済ませる人も多いようです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
彼はペロリとたべて厚く礼を言い、出ていっあと間も無く八重吉が戻って、その話を聞きまたしても畜生がと、大層たいそう立腹せしに驚き秀調その訳を訊ねしに
枯尾花 (新字新仮名) / 関根黙庵(著)
和尚をしやうさん、和尚をしやうさん、こちらは大層たいそういお住居すまゐですね。このむら澤山たくさんうちがありましても、こちらにかなふところはありません。村中むらぢうだい一の建物たてものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
御覽ごらんなさい大層たいそう蜻蛉とんぼです。」「へゝい。」とおほきな返事へんじをすると、濡手ぬれてながしておよぐやうにつてそらた。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そこがどうにも行悩みだが、御隠居ごいんきょ奥様も大層たいそう物のお分りになった方だし、御親類内にもさばけた方が多いので、そんな訳なら、とにかく、屋敷へ呼寄せたい。
悪因縁の怨 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
わたくしが子ープルスのいへかへつて、なみだながらに良人をつと濱島はまじま再會さいくわいしたときには、弦月丸げんげつまる沈沒ちんぼつうわさ大層たいそうでした。何事なにごと天命てんめいあきらめても、本當ほんたうかなしう御坐ござんしたよ。
「きょうは大層たいそうおそかったではないか、どうしてからだをふるわせているのか、犬にでも会ったのか。」
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
まへまつり姿なり大層たいそうよく似合にあつて浦山うらやましかつた、わたしをとこだとんなふうがしてたい、れのよりもえたとめられて、なんれなんぞ、おまへこそうつくしいや
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
力が非常ひじょうに強く、かたちも大層たいそうおそろしく、それにはげしいどくをもっていましたので、あらゆるいきものがこの竜にえば、弱いものは目に見ただけで気をうしなってたお
手紙 一 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
つかねてまでことで、醫者いしやびますにも、はぬとふので、大層たいそうあはてました。
見るに間口まぐちは六七間奧行おくゆきも十間餘土藏どざうは二戸前あり聞しにまし大層たいそうなるくらし成りければ獨心中に歡び是程の暮しならば我等一人ぐらゐどのやうにも世話してれるならんと小腰こごし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「お広さん、大層たいそうせいが出ますね」久さんが挽く肥車の後押して行くおかみを目がけて人が声をかけると、「天狗様てんごうさまの様に働くのさ」とおかみが答えたりしたのは、昔の事になった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そうでもございません。これは大層たいそうにいたしてよいことではございません」
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大層たいそうかたづけておっしゃった。三次は大恐縮、ヘイコラ頭を掻いて出て行く。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この夫婦ふうふ大層たいそうなかかったが、小児こどもがないので、どうかして一人ひとりほしいとおもい、おかみさんは、よるも、ひるも、一しんに、小児こどもさずかりますようにといのっておりましたが、どうしても出来できませんでした。
駕籠かごつてかうかとおもつたけれど、それも大層たいそうだし、長閑のどか春日和はるびよりを、麥畑むぎばたけうへ雲雀ひばりうたきつゝ、ひさりで旅人たびびとらしい脚絆きやはんあしはこぶのも面白おもしろからう、んの六ぐらゐの田舍路ゐなかみち
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しげさん、大層たいそうはええの」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
大層たいそうお待たせした」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
けれども自分では大層たいそう上手じやうずなつもりで、自慢じまんをして家来けらいに見せますると、国王こくわうのいふ事だから、家来けらいが決してそむきませんで
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
加うるに森山とう先生も何も英語を大層たいそう知て居る人ではない、ようやく少し発音を心得て居ると云うぐらいとてれは仕方しかたないと、余儀なく断念。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
小石こいしゆかうへつたときに、それがのこらずちひさな菓子くわしかはつたのをて、あいちやんは大層たいそうおどろきました、がまた同時どうじことかんがへつきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
中川は好んで対手あいてにもせず「大層たいそうむずかしくなって来た。別に何の意味でもない、ただ会食の時に人々の眼を悦ばしめるため花が飾ってあるのさ」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
大層たいそうよく魚が取れました。晩になると、魚を売ったお金で酒を求めて、正覚坊が来るかも知れないと待ってみました。
正覚坊 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
つくればイエそれにはおよびませぬ裏通うらどほりをけばつい其處そこなりなべうちのことがいそがしう御座ございますツイゆきてツイかへるにともなどゝは大層たいそうすぎます支度したくなにりませぬ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
嘉川家の御用人ごようにん平左衞門殿の申さるゝには御手討てうちになりたる者ゆゑ此方にて取置とりおきたり然樣さやうぞんずべしとのことで御座りましたが其平左衞門と申人はおそろしい人で大層たいそう見識けんしきにて私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とうさんがあそびにきましたら、數衛かずゑ大層たいそうよろこびまして、にかけたおなべ菜飯なめしをたいてれました。それからお茄子なす味噌汁おみおつけをもこしらへまして、おわかれに御馳走ごちさうしてれました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
これでは、ぬまが、なんだか不氣味ぶきみなやうですが、なに一寸ちよつとことで、——四さがり、五まへ時刻じこく——あつで、大層たいそうつかれて、みぎはにぐつたりとつて一息ひといきいてうちには、くも
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
へい、うも有難ありがたぞんじます、これうも大層たいそう奇麗きれいなお薬で。殿「ウム、早くへば水銀剤みづかねざいだな。登「へえー、これのみましたらのどつぶれませう。 ...
華族のお医者 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
誠に世話のない話で、大層たいそう便利を得て、亜米利加アメリカまで行て、帰りの航海中も毎日用いて、到頭とうとう日本までもっかえって、久しく私の家にゴロチャラして居た。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
第四十七 鳥と米のスープ は大層たいそう病人のよろこぶもので先ず半斤ほどの鶏肉けいにくの上等を三十分間ばかり湯煮ておきます。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
多くの馬方の馬のうちでも、一番立派なこの自分の黒馬を、甚兵衛は大層たいそう可愛かわいがって大事にしていました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたしちつともりませんでした』と丁寧ていねいつて、あいちやんは談話はなし乘勢はずんでたのを大層たいそうよろこびました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
太吉たきちはがた/\と溝板どぶいたおとをさせてかゝさんいまもどつた、おとつさんもれてたよと門口かどぐちから呼立よびたつるに、大層たいそうおそいではないかおてらやまへでもゆきはしないかとくらいあんじたらう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
開て忠兵衞が若旦那樣相變あひかはらず今日も御本ごほんで御座りますかと進み這入はひるに此方は見返へりオヽたれかと思へば管伴ばんたう忠兵衞昨今さくこん水揚みづあげ荷物にもつありて店は大層たいそういそがしいと聞しに今頃何用にて
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
とうさんの田舍ゐなかはうではあのはち佃煮つくだにのやうにして大層たいそう賞美しやうびするといたら、お前達まへたちおどろくでせうか。一口ひとくちはちひましても、木曾きそ賞美しやうびするのは地蜂ぢばちからつただけです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
づツと心得こゝろえつもりぢやつたが、さてあがときるとおもひのほかうへまでは大層たいそうたかい。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
或時あるとき是真翁ぜしんをうところくと、是真翁ぜしんをうが「おまへ此頃このごろ大層たいそう怪談くわいだん種子たねを探しておいでださうだ。」「どうか怪談くわいだん種子たねを百種買出いろかひだして見たいと思ひます。 ...
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
第四十六 あゆの鮨 は大層たいそう上品な味で各地の名物になっていますがこれには鮎の善悪よしあしで非常な相違があります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
悪魔あくまの子は大層たいそう喜びました。甚兵衛が馬の口を開けてやると、いきなりぴょんと飛び込んで、腹の中にはいってしまいました。それを見て甚兵衛は、あはははと声高こわだかに笑い出しました。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたし此子このこはゞわたしためまもがみで、此樣こん可愛かあい笑顏ゑがほをして、無心むしんあそびをしてますけれど、此無心このむしん笑顏ゑがほわたしをしへてれましたこと大層たいそうなは、のこりなくくちにはくされませぬ
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大層たいそうなものだね。」
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とつちやん血が大層たいそう出るよ。父「アー大層たいそう出るか。子「アー大層たいそう流れるからね……あのねばうすつてげようか。 ...
夏はお釜の底へ梅干うめぼし一つ入れて炊いてもあるいはおひつの底へ梅干一つ入れても持ちが大層たいそうようございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)