全身ぜんしん)” の例文
そんな素直すなおかんがえもこころのどこかにささやかないでもなかったのですが、ぎの瞬間しゅんかんにはれいけぎらいがわたくし全身ぜんしんつつんでしまうのでした。
(いゝえたれりはしませんよ。)とましてふ、婦人をんな何時いつにか衣服きものいで全身ぜんしん練絹ねりぎぬのやうにあらはしてたのぢや。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
全身ぜんしんくろく、かおだけがしろくて、きつねかさるにて、かたちは、かわいげがないというよりは、なんだか気味悪きみわるがしたのであります。
母犬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
博士はくし全身ぜんしんが、さっとひいていくようだった。かれの頭には、その時、夕方書斎しょさいできいたピストルの音が、ありありとかんでいた。
机博士はみるみるうちに、全身ぜんしん針鼠はりねずみのようになって、床のうえに倒れ、しばらく七転八倒しちてんばっとうしていたが、やがて、ピッタリ動かなくなった。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その火のぬくみに全身ぜんしんの血が活々いきいきとよみがえってくるのをおぼえて、かれは、この新しい力を、どこへそそごうかといさみたった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かれ熱心ねつしんいてくさうへこしからうへて、そのてたひざ畫板ぐわばん寄掛よりかけてある、そして川柳かはやぎかげうしろからかれ全身ぜんしんおほ
画の悲み (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
しなわづか日數ひかずよこつてたばかりにおとろへたものかやゝまぶしいのをかんじつゝひかり全身ぜんしんびながら二人ふたりのするのをた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
野猪ゐのしゝかたちぶた全身ぜんしん黒褐色こつかつしよくのあらいでおほはれてをり、くびみじかいのでけだすときゆうには方向ほうこうへられない動物どうぶつです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
と、きふひと院長ゐんちやうだとわかつたので、かれ全身ぜんしんいかりふるはして、寐床ねどこから飛上とびあがり、眞赤まつかになつて、激怒げきどして、病室びやうしつ眞中まんなかはし突立つゝたつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かれ地上ちじやうたふれ、次々つぎ/\に×(6)き×(7)されるじう×(8)もとに、うしほ退しりぞくやうに全身ぜんしんからけてちからかん
そのおと寂寞せきばくやぶつてざわ/\とると、りよかみけられるやうにかんじて、全身ぜんしんはだあはしやうじた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
主人あやしみ人をして是をとらへしめしに、全身ぜんしんからすにして白く、くちばしまなこあしは赤きからすひななり、人々としてあつまる。
かれ全身ぜんしんしぶかきちやいろ法衣ころもまとつてゐた。あしえなかつた。たゞくびからうへえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
なほらざるとき全身ぜんしん冷水れいすゐそゝぎてそのいたみまつたりしゆゑに、其後そのご頭痛づつうおこごと全身ぜんしん冷水灌漑れいすゐくわんがいおこなひしが、つひ習慣しふくわんとなり、寒中かんちゆうにも冷水灌漑れいすゐくわんがいゆるをたり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
今度こんどねずみ全身ぜんしん逆立さかだつてたので、あいちやんは屹度きつとねずみひどおこつたにちがひないとおもひました。『そんなにおまへきらひなら、もうたまちやんのことははなさないわ!』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
そのも、あさはや彼女かのぢよあがらうとしたが、自分じぶんにどうむちうつてても、全身ぜんしんのひだるさにはてなかつた。あがるとはげしい眩暈めまひがした。周圍しうゐがシーンとして物音ものおとがきこえなくなつた。
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
全身ぜんしん落つる日をびて真夏まなつの海をうちにらむ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大体だいたいおいもうしますと、天狗てんぐ正体しょうたい人間にんげんよりはすこおおきく、そして人間にんげんよりはむしけものり、普通ふつう全身ぜんしんだらけでございます。
と、きゅうひと院長いんちょうだとわかったので、かれ全身ぜんしんいかりふるわして、寐床ねどこから飛上とびあがり、真赤まっかになって、激怒げきどして、病室びょうしつ真中まんなかはし突立つったった。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
で、はて亭主ていしゆが、のみけるためののみつて、棕櫚しゆろ全身ぜんしんまとつて、素裸すつぱだかで、寢室しんしつえんしたもぐもぐり、一夏ひとなつのうちに狂死くるひじにをした。——
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
頭から顔じゅうをほうたいでぐるぐるき、ほうたいの白い中からはなだけが赤くのぞいていて、そのぶきみさは、全身ぜんしんの毛がそうけ立つほどだった。
かれは、まだ羞恥はぢ恐怖おそれとが全身ぜんしん支配しはいしてるおつぎをとらへてたゞ凝然ぢつうごかさないまでには幾度いくたびかへ苦心くしんした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
主人あやしみ人をして是をとらへしめしに、全身ぜんしんからすにして白く、くちばしまなこあしは赤きからすひななり、人々としてあつまる。
そのかたが、あにそっくりなので、わたしは、はっとして、このときばかりは、全身ぜんしんがあつくなりました。
たましいは生きている (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねずみみづなかから一びはねて、なほもしさうに全身ぜんしんふるはしてました。『あら御免ごめんよ!』とあいちやんはいそいでさけびました、このあはれな動物どうぶつ機嫌きげんをそこねたこと氣遣きづかつて。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ぼくの身体はもうほこりにまみれて、かつて倉庫番からめちぎられたときのような金色きんいろ光沢こうたくは、もう見ようとしたって見られなかった。全身ぜんしんつやをうしない、変に黄色くなっていた。
もくねじ (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌朝よくてうかれはげしき頭痛づつうおぼえて、兩耳りやうみゝり、全身ぜんしんにはたゞならぬなやみかんじた。さうして昨日きのふけた出來事できごとおもしても、はづかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ゆきなす鸚鵡あうむは、る/\全身ぜんしんうつくしいそまつたが、ねむるばかり恍惚うつとりつて、ほがらかにうたつたのである。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
じぶんで決心けっしんしてやったことだが、こうして成功せいこうして全身ぜんしん透明とうめいになってしまうと、さすがのぼくも、たいへんなことをやったなと、心おだやかでなかった。
をつと簑笠みのかさを吹とられ、つま帽子ばうしふきちぎられ、かみも吹みだされ、咄嗟あはやといふ眼口めくち襟袖えりそではさら也、すそへも雪を吹いれ、全身ぜんしんこゞえ呼吸こきうせま半身はんしんすでに雪にめられしが
なかはがらんとしてからだったので、せっかくわすれたかなしみが、またあたらしく全身ぜんしんをしめつけました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたくしはますます全身ぜんしん寒気さむけかんじ、こころうちではげてかえりたいくらいおもいましたが、それでもおじいさんが一こう平気へいきでズンズンあしはこびますので、やっとのおもいでついてまいりますと
「それから、外は寒いし、気圧はゼロなんだから、そのままでは、からだは大きくふくれて、しかもこおってしまうよ。つまり全身ぜんしんしもやけになった氷人間になっちまうよ。もちろん、たちまち君は死んじまう」
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌朝よくちょうかれはげしき頭痛ずつうおぼえて、両耳りょうみみり、全身ぜんしんにはただならぬなやみかんじた。そうして昨日きのうけた出来事できごとおもしても、はずかしくもなんともかんぜぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はだへきぬすばかり、浴衣ゆかたあをいのにも、胸襟むねえりのほのめくいろはうつろはぬ、しか湯上ゆあがりかとおもあたゝかさを全身ぜんしんみなぎらして、かみつやさへしたゝるばかり濡々ぬれ/\として、それがそよいで
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
何年なんねんまえにも、どこかでたことがあるような記憶きおくがしました。やせこけた、あばらぼねうまが、全身ぜんしんみずをあびたようにあせにぬれて、おもくるまをひきかねているのでした。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けろ!』アンドレイ、エヒミチは全身ぜんしんをぶる/\とふるはして。『おれめいずるのだツ!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
旅僧たびそう年紀とし四十二三、全身ぜんしんくろせて、はなたかく、まゆく、耳許みゝもとよりおとがひおとがひよりはなしたまで、みじかひげまだらひたり。けたる袈裟けさいろせて、法衣ころもそでやぶれたるが、服裝いでたちれば法華宗ほつけしうなり。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そして、全身ぜんしん悪感おかんかんずるのでありました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けろ!』アンドレイ、エヒミチは全身ぜんしんをぶるぶるとふるわして。『おれめいずるのだッ!』
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
全身ぜんしん緋色ひいろなんだつて。……
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)