はか)” の例文
高橋空山師とはかって、附近の虚空院鈴法寺の衰えたるをおこさんとして果さなかった。あの寺は関東の虚無僧寺の触頭ふれがしら、活惣派の本山。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
権之助はまた、背中の着物も皮膚も破れるであろう程、地上をりうごいて、母に有利な位置を作ろうと、敵の下からはかっている。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父はそれでもあきらめかねてそういうわけなら嫁にもらおうといわないから叔母が仲に立ってときどき会えるようにはからってくれ
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
またわたくし申上もうしあげることにどんな誤謬あやまちがあるかもはかりかねますので、そこはくれぐれもただ一つの参考さんこうにとどめていただきたいのでございます。
……うでないと、あのふくろふとなへる呪文じゆもんけ、寢鎭ねしづまつたうしたまちは、ふは/\ときてうごく、鮮麗あざやか銀河ぎんが吸取すひとられようもはかられぬ。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
達吉たつきち伯父おじさんは、あたらしくつくってきた、ぴかぴかひかるブリキのといをのきしたててみて、雨水あまみずながれる勾配こうばいはかっていました。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
……ええかね君……温柔おとなしくいて来たまえ。悪くははからわんから。ええかね。君はあの女優が殺された空屋の近くに住んでいるだろう。
冗談に殺す (新字新仮名) / 夢野久作(著)
それは余談ですが、汽車中ではからずも、ここに居られる方に奇妙な同伴者のある事を発見しました。私は彼の行動を厳重に監視しました。
急行十三時間 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
通人はしきりに新参者しんざんものを求めたりしに、あにはからんや新参者は数多あまたの列座中にあったので、それが分った時の通人の驚きは一方ひとかたならなかった。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
御召捕に相成し哉と存じ居候所扨は此忠兵衞が仕業しわざなるか夫にて漸々相分り申候此忠兵衞事私しへ對し遺恨ゐこんの儀御座候に付かくはからひ私しを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、れもれもぢきかれ疲勞つからしてしまふ。かれそこでふとおもいた、自分じぶん位置ゐち安全あんぜんはかるには、女主人をんなあるじ穴藏あなぐらかくれてゐるのが上策じやうさくと。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
といふやうなはかかたをしてゐる事や、ナニガシ君は、たしか、一分三十秒おくれただけであつた、と感心した事などを書いてゐるからである。
「鱧の皮 他五篇」解説 (旧字旧仮名) / 宇野浩二(著)
他人たにんけば適當てきたうひやうといはれやせん別家べつけおなじき新田につたにまではからるゝほど油斷ゆだんのありしはいへうんかたぶときかさるにてもにくきは新田につたむすめなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
やがて馬場ばばを八分目ほど廻った頃をはかって手綱をゆるめると馬は思い存分くびを延ばしてずんずんおくれた馬から抜き出した。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
旦那がおいでになって、例の処で始めますと、昼の雨が利いたのでしょう、打ち込むや否懸り始めて、三年四年以上のはかり、二十一本挙げました。
大利根の大物釣 (新字新仮名) / 石井研堂(著)
それから最初さいしよのうちは、めてはるのは難儀なんぎだから線香せんかうてゝ、それで時間じかんはかつて、すこづゝやすんだらからうとやう注意ちゆういもしてれた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その時はからずも、上人が背負いしという貧しい箱が更に私の前に取り出されたのです。これが実に上人研究の出発を与えたといわねばなりません。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
実際じつさい真面目しんめんもく生涯せうがい真味しんみあぢはひし人のみがたがひともはたらき得る人なり 宗教しふけうを以て茶話席ちやわせき活題くわつだいとなすにとゞまるものは言語的げんごてき捺印的なついんてき一致いつちはかれよ
時事雑評二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
そこで私が何を隙見しようとしたか、又その隙見から、はからずも、どんな大事件が持ち上ったか。これからがこの物語りの本題に入るのであります。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くれるだろうが、ピンビタンではかれこれ言うだろう。そうしたら将校の奥さんの所に行って頼め。きっと渡すようにはからってくれるに違いないから
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「体温はかってみたところで、稲は育つめえで」と一人が言って、浩平に話しかけた。「なア、よう、台の親方。」
(新字新仮名) / 犬田卯(著)
タイル張りの流し床に蒲団を放り出した女房が、こう叫んだのは、すべてはかることの出来ない瞬間のことである。
電気風呂の怪死事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「それでお前達の怨みも消えるだらう。五人の子供達に罪はない、平次が惡いやうにははからはない、許してやれ」
あらたに油渡世をもはじめたについては、伊豆伍を蹴落して、御書院番頭脇坂山城守さまのおはからいで、お城の油御用を一手に引きけたいという念願。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「もう十五分間、お話を續けて下さい。」さうして、彼は、實際その時間をはかる爲めに卓子テエブルの上に時計を置いた。
何ぞはからんその翌日君は再びカンヴアスを抱へて渋川に到り十分に画き直して一週間の後帰京せり。余は今更に君が不屈不撓ふとうの勇気に驚かざるを得ざりき。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
太郎左衛門は時刻をはかって寝床を抜け、宵に調べてあった刀架かたなかけの刀を腰にして、そっと女客のへやへ往った。行燈あんどんの光はぼんやりと二人の枕頭まくらもとを照らしていた。
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
あとで龜裂きれつながさをはかつてみたら、延長えんちよう二十二間程にじゆうにけんほどあつたから、此程これほど噴出ふんしゆつ景況けいきよう壯觀そうかんであつたに相違そういない。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
古来作家が本を出した時、その本の好評をはかる為に、新聞雑誌に載るべき評論を利用する事はまれではない。
澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と毛利さんが頃合をはからって周囲あたりを見廻した。無礼講だというので、僕は毛利さんの隣りに坐っていた。
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
わしとともにこの島でち果てさすにしのびない。都へ帰ってよき主に仕え、世に出る道をはかってくれ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
そのうちの一節に、「今日はからずも甚兵衛の危急を助け申候。されど戦場の敵は私の敵に非ざれば、恩を施せしなど夢にも思うべきに非ず。右後日の為にしるし置候事」
恩を返す話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
我國わがくに國債こくさい状態じやうたいると、今日こんにちすでに五十九億圓おくゑんたつして從來じうらい大勢たいせいもつはかれば年々ねん/\巨額きよがく國債こくさいえるのであつて百億圓おくゑんたつするもあまとほからざることである。
金解禁前後の経済事情 (旧字旧仮名) / 井上準之助(著)
これは小千谷の下た町といふ所の酒楼しゆろう酌採しやくとり哥妓げいしやどもなり、岩居がんきよ朋友はういうはかりてひそかこゝまねきおきてきやうさせんためとぞ。かれは狐にあらずして岩居がんきよばかされたるなり。
、右門、はからず耳に入れたからは、申し上げねばなりませぬ……父上、一大事でござりまするぞ!
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ないものははらへないからそこは宗教しうけうちからで、なんとか便宜べんぎはかつてはくれまいかと嘆願たんぐわんしてたんですが、彼奴あいつはどうして、規定きてい規定きていだから、證明書しようめいしよもなくかねもないなら
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
其頃そのころわたし山田やまだうちを出て四番町よんばんちやう親戚しんせき寄寓きぐうしてましたから、石橋いしばしはかつて、同益社どうえきしや真向まむかう一軒いつけんいへりて、これ我楽多文庫がらくたぶんこ発行所はつかうしよ硯友社けんいうしやなる看板かんばんを上げたのでした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
美術家ほど世に行儀しきものなければ、独立ひとりたちてまじわるには、しばしも油断すべからず。寄らず、さわらぬやうにせばやとおもひて、はからず見玉みたまふ如き不思議の癖者くせものになりぬ。
うたかたの記 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
しないたちひさくなつてた。やがわらきると傭人やとひにん各自てんでそのなはあしからけて迅速じんそくかずはかつては土間どまから手繰たぐげながら、つながつたまゝばうママゝにくゝつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かくて閨房ねやのがれ出でて、庄司にむかひ、かうかうの恐ろしき事あなり。これいかにしてけなん。よくはかり給へと三二七いふも、うしろにや聞くらんと、声をささやかにしてかたる。
春の花見頃午前ひるまえの晴天は午後ひるすぎの二時三時頃からきまって風にならねば夕方から雨になる。梅雨つゆうちは申すに及ばず。土用どようればいついかなる時驟雨しゅうう沛然はいぜんとしてきたらぬともはかりがたい。
寺僮は我心をはかり得て、君は遺骸を見に來給ひしならん、今は猶贄卓にへづくゑの前に置かれたれど、あすはがんをさめらるべしとて、燭を點して我を導き、鑰匙かぎ取り出でゝ側なる小き戸を開きつ。
(九四)曠日くわうじつ彌久びきうして(九五)周澤しうたくすであつきをば、ふかはかるもうたがはれず、交〻こもごもあらそふもつみせられず、すなはあきらか利害りがいはかりてもつ其功そのこういたし、ただちに是非ぜひしてもつ(九六)其身そのみかざる。
打払うちはらい方の儀おごそかに取はからうに付き、阿蘭オランダ船も長崎の外へ乗り寄る事有るまじきことにてもこれ無く、船の形似寄り候えば、かねてその旨を相心得、不慮の過これ無きよう心掛け通船致すべき旨
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それからまた彼女かのぢよは、自分自身じぶんじしんのことよりも、子供こども行末ゆくすゑはかつたのだつたといふ犧牲的ぎせいてきな(みづかおもふ)こゝろのために、みづか亡夫ばうふ立場たちばになつて自分じぶん處置しよちゆるした。結極けつきよくをとこ不徳ふとく行爲かうゐめられた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
つてかたはらなる卓上たくじやう一面いちめん海圖かいづ押擴おしひろげ、つぶさに緯度ゐどはかりつゝ
「そうだ、こよいのうちにも、先発を出して、亀山の家中の者どもに、はや陣用意を触れさせておこう。左馬介、はかろうておくりゃれ」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
古人こじんいはく近きをはかればたらざるが如く遠きに渡れば乃ち餘り有りと爲す我國わがくに聽訟ちやうしようを云ふ者大概おほむね青砥藤綱あをとふぢつな大岡忠相おほをかたゞすけの兩氏が明斷を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
儲けた金は方々の銀行にチョクチョク入れて、頭かくして尻かくさず式の安全第一をはかるようなケチな真似はしないよ。
鉄鎚 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
が、それもこれもじきかれ疲労つからしてしまう。かれはそこでふとおもいた、自分じぶん位置いち安全あんぜんはかるには、女主人おんなあるじ穴蔵あなぐらかくれているのが上策じょうさくと。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)