かみ)” の例文
だからとなごとのうちにも、かみのお言葉ことばがあり、ものがたりのうちにも、かみのお言葉ことばはさまれてゐるもの、とかんがしたのであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
みんなはいろいろまよったすえ、けっきょく、かみさまの奇跡きせきのあらわれた人を法王にえらぼうということに、意見いけんがまとまりました。
かみさま、どうぞ、わたしをおたすけくださいまし。」と、かれは、こたえるかわりに、くらい、御堂おどううちかってわせておがんだのです。
酒屋のワン公 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ばかな六部ろくぶめ。よけいなところへして、かみさまのおばつをうけたにちがいない。そのたたりがむらにかかってこなければいいが。」
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とステキに明るい声が奥の方からして、デブデブに肥った四十恰好のおかみさんが、乳呑み児を横すじかいに引っ抱えながら出て来た。
空を飛ぶパラソル (新字新仮名) / 夢野久作(著)
同じ祝詞のりとの中には、また次のような語も見えます。曰く、「国中に荒振神等あらぶるかみたちを、かみはしに問はしたまひかみはらひに掃ひたまひて云々」
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
然し今の日本は、かみにもひとにも信仰のない国柄くにがらであるといふ事を発見した。さうして、かれは之をいつに日本の経済事情に帰着せしめた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
丁度ちようどイタリーの南方なんぱうリパリ群島中ぐんとうちゆう一火山島いちかざんとうたるヴルカーノとうをローマの鍛冶かじかみたるヴルカーノの工場こうじようかんがへたのと同樣どうようである。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
彼アイヌ、蝦夷島アイヌモシリかみ古伝神オイナカムイ、オキクルミのすゑ。ほろびゆく生けるライグル。夏の日を、白き日射を、うなぶし、ただに息のみにけり。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
その当時、あれ模様の空からは、急にはげしい風が吹きはじめたが、それはエフ氏がかぜかみに早がわりをしたかのように思われた。
人造人間エフ氏 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かみの氏子、堀の内にてよめをむかへ又はむこをとりたるにも、神勅しんちよくとてむこに水をたまはる、これを花水祝はなみづいはひといふ。毎年正月十五日の神㕝じんじ也。
なにとなく薄淋うすさびしくなつたなみおもながめながら、むねかゞみくと、今度こんど航海かうかいはじめから、不運ふうんかみ我等われら跟尾つきまとつてつたやうだ。
これからわしもうすところをきいて、十ぶん修行しゅぎょうまねばならぬ。わし産土うぶすなかみからつかわされたそち指導者しどうしゃである、ともうしきかされた。
個人がこういうことをぜひ行いたいと望み、かみほとけに祈れば、その祈願として合理的ならば必ずそれが早晩そうばん達せられると僕は確信する。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「ハイハイ、左様でございますよ、おかみさん、——取って十九、左の眼が見えない、お染という娘を御存じじゃございませんか」
また諸のかみたちに問ひたまはく、「天若日子久しく復奏かへりごとまをさず、またいづれの神を遣はして、天若日子が久しく留まれる所由よしを問はむ」
けれどもまた、そんなにしてたすけてあげるよりはこのままかみ御前みまえにみんなで行く方が、ほんとうにこの方たちの幸福こうふくだとも思いました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
これで見ると、どうしても、二百年ぐらいった代物しろものとしか思えない。フィリップのおかみさんは、その点、気がひけるらしい。
日本書紀にほんしよきに七年夏四月乙未朔辛酉、地動、舍屋悉破、則令四方俾祭地震神とあるが、地震神ぢしんかみといふ特殊とくしゆかみられてゐない。
日本建築の発達と地震 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
蹴殺けころし給ふべしと呪咀しゆそしけるに七日目の明方あけがた十歳ばかりの童子わらべかみ乘遷のりうつり給ひこゑあららげ我が本覺ほんがく眞如しんによの都を出で和光わくわう同塵どうぢんあと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かみもおはしまさば我家わがやのきとゞまりて御覽ごらんぜよ、ほとけもあらば此手元このてもとちかよりても御覽ごらんぜよ、こゝろめるかにごれるか。
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
医者いしやあをくなつて、さわいだが、かみたすけかやうや生命いのち取留とりとまり、三ばかりでとまつたが、到頭たうとうこしけた、もとより不具かたわ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いいかい、かみさまが世界をおつくりになっていた時のことだぜ。神さまが、その仕事をなさっているところへ、せいペテロが通りかかったんだ。
かみ創造さう/″\御心みこゝろ人間にんげんたのしましめんとするにありてくるしましめんとするにあらず。無為むゐ天則てんそくなり、無精ぶしやう神慮しんりよかなへり。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
かみを説きふせると、その晩から、僕は赤い部屋の外側の暗闇の密室のお客様になった。そして、今日までに都合五組。
猟奇の果 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そんなところへ自分のような人間を生ませたのがかみあやまちというもの、われ人臣たらんとすれば、今の世の中では、悩むか、飲むか二つしかない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
商人離れがしている上におかみさんというのが美濃産れの剛勢色っぽい別嬪だったので、素敵も無い繁昌を見せていた。
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いく丁斑魚めだかでも滿足まんぞくられんなら、哲學てつがくずにはられんでせう。いやしく智慧ちゑある、教育けういくある、自尊じそんある、自由じいうあいする、すなはかみざうたる人間にんげんが。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かみさまも、このはなをつつむには、特別上等とくべつじょうとうんだやわらかな春光しゅんこうをつかっていらっしゃるとしかおもえない。そのうえ、またこのがすばらしい。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ロレ 灰色目はひいろめあした顰縮面しかめつらよるむかうてめば、光明ひかりしま東方とうばうくもいろどり、げかゝるやみは、かみまへに、さながら醉人ゑひどれのやうに蹣跚よろめく。
絵葉書に迄成つて居るのだから何か由来があるだらうと思つて絵葉書屋のかみさんに聞くと、この可愛かあいい童子はマヌケン・ピスと云ふ名の昔の幼王である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「このたび私が人形をひとりでおどらせるじゅつを、かみからさずかりましたので、それを皆様みなさまにお目にかけます。このとおり人形には、なんの仕掛しかけもございません」
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
にいさんがいうように、とのさまののかいてあるほごをふみつけてわるいのなら、かみさまのまえのかいてあるおふだをふんだら、どうなるだろうか。
それは柳枝さんの元のおかみさんの小満之助こまのすけという音曲師が大阪から帰って来て、三代目都々逸坊扇歌どどいつぼうせんかとなった。
初看板 (新字新仮名) / 正岡容(著)
おかあさんをさがしあててみると、こちらはむす子よりひとあしさきに死んでいた。そしてふたりは、天へのぼって、かみさまのみもとでめぐりあったのだ。
とうさんはぢいやにれられて、やまかみさまへおもちをあげにつたことおぼえてます。湯舟澤ゆぶねざはといふはうつたやまのはづれに、やまかみさまがまつつてありました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
そも四九保元ほうげん御謀叛ごむほん五〇あめかみの教へ給ふことわりにもたがはじとておぼし立たせ給ふか。又みづからの人慾にんよくより計策たばかり給ふか。つばららせ給へとまうす。
かつ性來せいらい記憶力きおくりよくとぼしきは、此等これら病症びやうしやうためます/\その※退げんたいするをかんじ、治療法ちれうはふ苦心くしんせるときたま/\冷水浴れいすゐよくしてかみ祷願たうぐわんせばかなら功驗こうけんあるしとぐるひとあり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
製本屋のおかみさんと阿久おひさとを先に出懸けさせて、私は三十分ばかりして後から先になるように電車に乗った。
深川の散歩 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
その毅然きぜんとして、なにかかたく信ずるところあるがごとき花前は、そのわざにおいてもじつにかみたっしている。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
をとこをんなべつあらはされてゐますが、ことにをんな土偶どぐうがたくさんにありますのは、この時分じぶんにはをんなかみさまを崇拜すうはいしたゝめにつくつたものだといふ學者がくしやもあります。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
彼は禍津日まがつひかみねたみにふれてただひとりの恋人をうしない嘆きのあまりにかような島となってしまった。
島守 (新字新仮名) / 中勘助(著)
日本紀の一書には、やはり山の神・野の神・土の神などと並んで、かみたち句句廼馳くくのちと号すともある。
始終しじう人間にんげんつくつた都會とくわいなかばかりを駕籠かご往來わうらいしてゐた玄竹げんちくが、かみつくつた田舍ゐなかこゝろゆくまでつたときは、ほんたうの人間にんげんといふものがこれであるかとかんがへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ハテ恵比寿麦酒ゑびすびーる会社長くわいしやちやうで、日本にほん御用達ごようたしおこりは、蛭子ひるこかみが始めて神武天皇じんむてんのうへ戦争の時弓矢ゆみやさけ兵糧ひやうろう差上さしあげたのが、御用ごようつとめたのが恵比須えびすかみであるからさ。
七福神詣 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
しかしあのあか水々みづ/″\したは、ながい/\野山のやまゆきえるまでのあひだを、かみ小鳥達ことりたち糧食りやうしよくにとそなへられたものではないかとおもふと、痛々いた/\しくなたれたひとつみおそろしい。
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
かみさんはしきりと幸ちゃんをほめて、実はこれは毎度のことであるが、そして今度の継母ままはははどうやら人が悪そうだからきっと、幸ちゃんにはつらく当たるだろうと言ッた。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私は、市井ありふれたおかみさんが子供を四、五人も抱えてあくせくしているのを、昔は気の毒だと思ったこともあったが、そのお神さんたちは案外幸福気なのだろうと考える。
平凡な女 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
かみさんは達者でおいでなすった、ひと晩いろいろ話をしたが、その話で、——すっかりわかったんだよ、すっかり、……幸太とおせんさんとなんでもなかったっていうことが
柳橋物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
彼等軍隊の上には神が宿っている、悪魔には容易たやすく勝つ、帰ったら勲章を貰う、褒美を貰う、かみもとに銃砲の弾丸はあたらぬと思っていた。しかし神は間違った思想に保護を与えぬ。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)